覚醒の刻
リフュレスの鋭い鎖に貫かれそうな時、俺の心臓が強く鼓動を打ったのを感じた。
ホーリーを、リレイヤを、リフュレスを護りたい。
その一心で俺は拳を突き出し、強く握っていた。
周りの景色は一切動かない。
今動いているのは俺だけ。
その状況を冷静に判断する前に、2人を鎖の軌道上から外した。
そして、この状況の解除なんて知らないはずなのに、俺は拳を突き出し、強く握った。
ホーリーとリレイヤはいつの間にか移動している自分に驚き、リフュレスは目の前にいたはずの対象が移動していることに目を見開いていた。
その状況でリーズィーはニヤリと、、、いや違う。
何故か俺に褒めるように笑っていた。
ギラギラした歯をのぞかせることはなく、ただただ微笑んでいた。
何故か少し懐かしさを感じた。
「何が起きた!?」
リフュレスは驚き戸惑う。
だが、その言葉は棒読みのように感じた。
しかし、殺意はそのままに鎖はもう一度俺たちを狙う。
俺はもう一度拳を突き出し、強く握る。
ピシィっと世界が止まる。
瞬く間に貫きそうな速度の鎖も空中で完全に静止して、ホーリーとリレイヤはどうにか防御しようとしている。
俺は2人を抱えて、鎖を避ける。
2人を降ろしてから、また拳を突き出し、強く握ると、世界は動きだした。
対象を見失った鎖は虚無に進む。
「何が起きている!?」
また棒読みに聞こえた。
鎖はもう一度俺たちを狙おうと向かってくる。
もう一度時を止めようと拳を握ろうとした時、
「もういいよ。」
バシィっと言う音と同時に、鎖は緑のバリアに弾かれた。
そのバリアを張ったのは、リーズィーだった。
「何の真似だ。」
強くリーズィーを睨む俺の目とは裏腹に、リーズィーの目は優しく包み込むような目だった。
ホーリーとリレイヤも何故守られたのか理解していない様子だ。
「はぁ、疲れた。グラディが覚醒しないで、貫いちゃってたらどうするつもりだったのよ。」
肩の力が抜けたように、リフュレスはペタンと座り込んだ。
「まぁ俺の弟だし、確実に覚醒するさ。何より、大切な2人を守るために、そして君を守るためだからね。手荒な真似をしてすまない、グラディ立てるか。」
敵だと思っていた相手の差し出す手、普通であればその手は払うべきだ。
だけど、俺はその手を掴み立ち上がった。
「説明してくれ、リーズィー。今俺の弟と言ったよな。」
その説明を聞く前に、リーズィーは俺を抱き寄せて、涙を零した。
「良かった。」
ホーリーとリレイヤは目の前に起きている光景に唖然としている。
「とりあえず、リーズィーは元々敵ではなかったということよ。私もリミュも操られていない。」
そう言って、リフュレスは耳に手を当てて「もういいわよ」と誰かに告げた。
すると、玉座の後ろからリミュが飛んできた。
「いぇーい、ドッキリ大成功ー!!」
その明るい声はリミュそのものだ。
リーズィーは手を離して、リミュとリフュレスの方を向いた。
リミュは俺たちに満面の笑みで、ピースをしてきた。
「リミュ、どういうことか説明してくれ。何も分からない。」
「その説明はここでするよりも全員で集まってする方が早いでしょ。」
そう言ってリミュはパチンと指を鳴らす。
ポンポンポンと何かがはじける音がする。
他のみんなが戦っている方向を向くと、リミュの分身体が煙となり、どんどん破裂していく。
「新しいスキル、クラッカー分身だ!」
何を覚えているんだリミュは。
「同感。」
リーズィーは腕を組んで深く頷いていた。
本当に少し前まで殺し合いをしようとしていたとは思えない。
「え!?面白くない?これ」
リミュ、変わらないな。
「リミュ、ふざけるな。」
やっぱりホーリーも怒ってるな。
「俺にも教えろ!!」
ズコー、ホーリーもそっち側かい。
「変わらないわね、あなた達。」
「ほんと」
リレイヤは涙を浮かべながら、笑っていた。
5人で魔王城を降りて、事情を説明しようとする。
真っ先にアロリエルの矢が飛んできた。
リーズィーは緑のバリアを張って、その矢を防ぐ。
次の矢が来る前に、ホーリーがリーズィーの前に立ち、次の矢を静止した。
「話を聞いてくれ。」
浮かべていた殺意は薄まり、各々の武器を下げた。
リーズィーはみんなの前に立ち、降参とばかりに両手をあげる。
「これでまずは私の負けを認めよう。そして、なぜこのような行為に及んだのかの説明をしたい。」
その言葉に「了解した、しかし信用した訳では無いので腕を縛らせてもらう。」と賢絃はロープで腕を縛った。
特に抵抗することも無く、リーズィーはされるがままに腕を差し出した。
そして、ワープポイントにたち、全員で会議室に戻る。
あっけなく完結した最終決戦。
本当にこれで平和になるのかな?
あと魔王城直せるのかな?
と呑気に考えていた。
その後に本当の最終決戦が起きることを誰も知らない。
ただ一人の男を除いては。




