語り継がれし伝説
オーガ族の国を始め、各国に伝わる俺の両親の遺言。
冷静に考えて両親の遺言が大国に伝わっていることがおかしいが、この際無視しよう。
まずはホーリーが立ち上がり、話を始める。
「まずは人間族から、『我が息子グラディバスディアを守護せよ、我が息子は世界を救うことを我がエンディアバスディアの名を持ち保証する。そして、幼い人間族の王と魔族の王と永劫の友になることを願う。』という遺言が伝えられています。そのため、もとよりグラディが終焉の神となり、我々の敵になるとは信じられない話でした。私が常に冷静でいられたのもこの遺言のおかげです。」
そう語った後、ホーリーは俺の方を向いて微笑んだ。
ホーリーの口から語られる言葉は俺にとっても嬉しい言葉で、俺も恥ずかしさと嬉しさで、いつの間にか笑顔になっていた。
「うむ仲睦まじい事はいい事だ。では我々獣人族からも。『闇照らし下僕が五種族の敵となる時、五種族が手を取り対抗すれば、我が息子の秘めた力が目覚める。その力をグランドバーストスキル『タイムルーラー』と呼ぶ。』これが我々獣人族に伝わる遺言だ。この力が目覚めるには少なくともリミュオーバが戻ってくることが条件だろうな。」
グランドバーストスキルか、聞いたことがないな。
「誰かそのスキルのランクを知ってる人は居ますか?」
俺は疑問を会議になげかけた。
「そのスキルランクは聞いたことがないな。しかし名前から見て、グランドスキルが進化したものと捉えるのが良さそうだな。」
セバルの考察はおそらく当たっているだろう。
『タイムルーラー』というスキルに聞き覚えは無いが、俺には『タイムブレイカー』があるから、その進化系だろう。
「では次は我々エルフ族からも、と言いたいのだけれど。実はエルフ族に伝わる遺言は無くて、宝石が伝わっているの。私たちは「時の翡翠」と呼んでいるわ。」
そう言って取り出した宝石は風に揺れる木々のような爽やかな緑色をしていた。
その中身は何かがぐるぐるとしているように見えた。
「この宝石は女神しか持つことを許されない。時が来たるまでその宝石の力を使うことを禁ずる。これも我々エルフ族に伝わる掟ね。」
リフュレスが補足をした。
「僭越ながら、私の見立てによれば、この宝石はグラディの力と共鳴していると思われます。私が以前に見た時よりも確実に回転が早くなっているのです。」
リレイヤ、リフュレスも頷いているところを見ると、正しい情報なのだろう。
「もう1つ可能性があるとすれば、グラディの力ではなく、来たる時が近いという可能性もあるだろうな。」
確かに、と全員が納得する。
恐らく賢絃はこの中で頭の回転が最も早いだろう。
「では最後に魔族から。『終焉の神は永久の封印をしない限り、無限に蘇る。永久の封印は時の繋ぎ人、そして魔勇将皇神の6人が未来を願う時、紅蓮に燃ゆる鳳を初めとした幻獣の四天王が来たりて、永久の鎖を持ち封印する。』と伝えられています。もしかすれば、幻獣の四天王の召喚をできるものが居なければ達成できない可能性もあるかと。」
少し悔しそうに俯くシルディラス。
「召喚に関しては問題は無い。聖陽鳳はグラディが召喚の契約を結び、私が朧闇龍との契約を結んでいる。もし私の記憶が正しければ、賢絃殿が雷嵐虎、アロリエル殿が風帝獅子と契約されていたかと。」
「命導師様の情報収集は侮れませんね。確かに私は風帝獅子を呼び出せます。その部分においての心配は無用かと。」
「同じく、幻獣四天王を使役する四人が揃うことは何世紀ぶりなのでしょうね。」
俺が簡単に契約できただけで、3人は数年をかけて契約したらしい。
なんか、ごめんなさい。
「恐らくですが、条件はほぼ揃っている。唯一心配するとすればリミュだけと言えるでしょうね。そうなるとリフュレス様の情報がとても重要になります。」
リフュレスはこくっと頷いて話し始めた。
「まず最初に敵の兵力から、リーズィーはリミュオーバの力を抽出し、リミュオーバの劣等分身を兵としています。その力は本人の百分の一にも及ばないとは思いますが、数が脅威となると思います。リミュ並びにリーズィーの魔力が尽きない限りは増え続けます。皆様もご存知の通りリミュの魔力は我々の中でも郡を抜いていますので耐久戦となれば敗北は濃厚かと。次にリーズィーが本陣とするのは魔族の領土、ラスバリオル山にあるエンディア城です。名前の通りエンディア様が建築したことでも知られています。この城は崖の付近に建っているので、そちらから行くにしても最低条件として空を飛べる手段を持つことになります。陸路空が現実的だとは思いますが、その道は1本しかなく、大量の劣等分身が配置されています。以上です」
2つの情報とはいえありがたい情報だ。
それが無ければ負ける可能性の方が高いだろう。
「そしてもうひとつ。今現在ここにいるのは分身体のリフュレスです。本体の私は操られている為、刃を向けるかもしれません。そして、私はこれ以上ここにいるのは限界なので、最終決戦は皆様の力を頼ることになります。申し訳ありません」
ここにいるリフュレスは分身体か。
あれ、もしかして告白って、、、
「あなたに対しての感情は本当よ。分身とはいえ感情も共有しているしね。そんなしょんぼりしなくても大丈夫よ。」
その言葉にホーリーが吹き出し、周りも釣られて笑い出す。
俺は恥ずかしくなり顔を真っ赤にして俯く。
「ならば、もう少しの間は研鑽に励むべきだな。もうひとつはリフュレス殿を解呪する方法か。」
セバルの考えをリフュレス本人が遮った。
「私にはその方法は共有されていませんが、既にその呪いを解除する方法は実践されているとの事です。なので解呪の心配はないかと。」
なるほど、リフュレスは用意周到なんだな。
なんにも知らないけど恋人になってるってのも変な話だな。
少しモヤモヤしながらも、少しずつリフュレスに対しての意識が高まっていく。
同時に最終決戦も近くなり、戦いへの不安も増していた。
絶対に勝たないと。
その意志を固めるように、こぶしを握る。
「もうすぐです。もうすぐですよ。貴方様のご尊顔をこの目におさめたい。」
そう言って握るロケットには闇に染まっている顔とグラディとその両親、そしてリーズィーの顔があった。




