女神と冥王と将軍
リフュレスがなぜリーズィーに従っているのかを聞き、重たい空気が流れた。
一度会議は解散して、各種族は自国に戻っている。
しかし、リレイヤだけは会議室から出てこなかった。
自分が終焉の神であるというのは母さんと父さんの銅像がある部屋の時に、少しだけ思いだしていた。
終焉の神が倒される直前に、俺の魂を呪おうとしたことを。
その呪いを止めるために母さんと父さんは命を賭けて、封印しようとした。
しかし、封印しきれないことを察した母さんと父さんは時間を操り、その封印を実行できる人、もしくは護ってくれる人を選んだ。
つまりは、呪いを伸ばしただけ。
だから、俺はその時そんなに驚かなかったんだ。
でも、この時に飛ばしたということは今の皆が護ってくれるってことだ。
だけど、今の状況ではそう信じることはできない。
今の種族間の亀裂は相当に大きく、そう簡単に埋まるとは思えない。
どうすれば、
そう考えている時、ホーリーが会議室の扉を開けた。
「リレイヤ、少しいいか?グラディも」
リレイヤは目元が赤くなっていた。
ずっと泣いていたのだろう。
ホーリーが口を開いた。
「リレイヤ、私はリーズィーとの戦いをあきらめるつもりは無い。もちろん、グラディを見捨てるつもりもない。そして、その両方が達成される条件は五種族の王が揃うことしかない。これは、私とリフュレス、各種族の叡智を集り、幾度となく考え、悩み出した結論だ。その時にリフュレスがリーズィーに情報を流していることも教えてもらった。しかし、リフュレスの流す情報は我々に特に害はないが、相手にとっては大きい情報に感じるものだ。つまり元より我々は裏切られたとは思っていない。」
あの時の冷静さはそれが理由か。
ホーリーがリーダーとなり、ナイトレスト、賢絃、アロリエル、ネロム、リフュレスが各種族の判断役となっていた。
ドリグレストも多少は驚いていたが、兄2人が冷静であることからすぐに冷静さを取り戻していた。
「私は何も出来ない。お姉様を守ることも。グラディを守ることも。」
その言葉にホーリーはふふっと笑う。
「なぜ笑うのよ」
リレイヤは珍しくホーリーに対して、怒りを表していた、その鋭い眼光にホーリーは怖気付くことなく、
「女神である君は救えばいい。守るのは勇者である俺の仕事だ。」
そう、さらっと言ってのけた。
少しリレイヤは顔を赤らめた。
「なんでホーリーはいつでも格好いいのよ。」
少し笑顔になりながら、小さな声でこぼしたそのセリフは、2人の想いを感じて、暑く感じた。
俺お邪魔者じゃね?と思っている時、
「ちなみに、グラディに1つ聞きたいのだが、なぜあの時そんなに驚いていなかったんだ?君にとっても相当な事実だと思ったのだが。」
その問いにあの部屋で感じたことを話した。
「父さんと母さんは今のみんなが居れば、封印できると信じて、この時代に飛ばしたんだと思う。あと、俺もそう思うから、そう信じてるから。」
「そこまで信頼されてるなら、頑張らなくちゃね。女神として、種族の王として。」
リレイヤの目に炎が灯っているような気がした。
次の日、改めて会議が行われた。
リーズィーと戦う意志があるのか。
「我々魔族は全てを賭してでも魔王リミュオーバ様を助けなければなりません。これからも協力させてください。」
まずは魔族が参加する意志を表明した。
「エルフ族も同様です、グラディを助ける。私にとって弟みたいなものだから。」
「獣人族、オーガ族はどうされますか?」
ホーリーの問いかけに、オガセバルは机に拳を振り下ろし、会議室には轟音が響いた。
ストレイグはその光景を見て、ニヤリと牙を光らせ、足を振り下ろす。
2度の轟音が響き、砂埃がおさまる。
「オーガ族は協力させてもらう。私は何の事情も聞かず責め立てた。その冷静さを欠いたことは種族の王としては恥ずべきことだ。この拳の痛みはその謝罪の気持ち、そして二度と仲間を、友を疑わぬことの証明とする。」
「獣人族も同様だ。何よりここにいるのは楽しい。ここにいる時は私が種族の王であることを忘れる。私のこの脚の痛みもオガセバルと同様、そして、オガセバルと共にあゆみたいという気持ちも込めているが、オガセバルはどうかな?」
片目だけオガセバルの方を向き、してやったりな顔をするストレイグ。
会議室の沈黙の空気は変わって、衝撃が起きる。
全員が驚嘆し、アロリエルがオガセバルの肩を掴む。
普段は冷静なアロリエルが狂ったようにオガセバルの揺らしているその様はどうしても笑ってしまう。
「オガセバル様!?いつの間にそのような関係に!?というかなぜこの場で!?」
賢絃は目を開けたまま気絶していた。
「唐突な宣言だな、、、」
ホーリーですら驚きすぎて引いていた。
「私とオガセバルは数年前から恋仲だよ。ずっと隠してはいたけど。」
その言葉にアロリエルの揺らす速度が上がる。
「なぜです、セバル様。なぜ教えてくれなかったのです。」
普段の厳かな会議とは打って変わって、もはやコメディだ。
「アロリエル、落ち着け。」
ラムリアルがアロリエルを制止して、オガセバルが開放された。
「教えなかったのは済まない、あまり話すべきでは無いと思ったからだ。ストレイグ、いやスレイの気持ちは受け取ろう。」
その言葉は獣人族とオーガ族の王が結ばれることを意味する。
ここで起きていい宣言なのかこれ。
「そっか、スレイちゃんの恋人ってセバルくんだったんだね。」
その呼び方にホーリーを始め、各種族がリレイヤの方に振り向く。
「え?一応私種族の王じゃ最年長だし、あだ名で呼ぶのおかしいかな?」
そういえば、リレイヤって若く見えるけど200歳を超えてるんだよな。
エルフの中で若いってだけで、この中じゃ圧倒的に最年長なんだよな。
「リレイヤのそんな呼び方初めて聞いたから。」
ホーリーの戸惑いって珍しいな。
「じゃあホーリーはどうなの?私と一生を共にしてくれる?」
普段ホーリーからからかわれたりしているリレイヤが、今日はホーリーを攻めている。
ホーリーも勇者とはいえ、唐突な告白に呂律が回っていない。
「えっちょっと、今は、えっと」
その光景に兄弟のふたりはずっと笑っている。
それ以外の種族はずっと固まっているのが面白さに拍車をかける。
「ホーリー?」
いつにもなくリレイヤの圧を感じる。
俺も少しワクワクしながら、ホーリーの返事を待つ。
その瞬間、言伝の根が輝いた。
「楽しそうな話ね。」
言伝の根から飛び出してきたのは、この会議を去ったはずのリフュレスだった。
今日の会議は驚きばかりだ。
「じゃあ、私も真似ようかな。」
リフュレスの登場だけでも驚きだが、その後のリフュレスの言葉に、会議室はさらに混沌を極める。
「グラディ、私と付き合って。」
何が起きているんだこれ
その混沌の会議の最中、紫の炎が辺りを覆う椅子に鎮座している人物がいた。
その人物はリーズィー、その横には鎖で繋がれ、意識のない魔王リミュオーバ。
リーズィーの左手には水晶玉があり、その水晶玉はとある情景を写している。
それを眺めるリーズィーは、牙を除かせ、笑っていた。




