想像と現実
あれから、一週間が経ち、皇帝と将軍との会合の日となった。
一週間前とは比べ物にならない実力だと、自分でも感じる。
手を握りグーパーグーパーと繰り返す。
手には大量の潰れた豆がある。
スーパースキルは5つ増え、ノーマルスキル、コモンスキルに至っては100種以上増えた。
エクストラノーマルスキルやエクストラスーパースキルも何個か増え、スキルの数だけならホーリーをも凌駕する数になった。
しかし、剣技に関してはホーリーに未だ一撃も当てれてすらいない。
ホーリーのスキルの理解度、剣との共鳴、全てにおいて勝てる気がしなかった。
「グラディは感情が顔に出やすすぎるな、ただその刃は確実に近づいているよ。いつ当てられるかわかったもんじゃない」
ホーリーは悔しがっている俺を見て、慰めるようにそう言った。
「うむ、刃も強くなっているが、スキルに関しても飲み込みが早い。いとも容易くスーパースキルですら覚える。教えるのが楽しくなってくる」
ホピリスも目を輝かせて、次のスキルの教科書を大量に持っている。
「あの〜、さすがに僕にも限界というものが」
さすがにぶっ通しで勉強と修行は堪える。
その言葉に2人は分かりやすくガッカリしていた。
いやガッカリしないでくれ。
「あなた達、グラディに無理させすぎないようにね。倒れたら大変なのあなた達は分かってるでしょ」
女神に叱られる命導師と勇者って貴重だなぁ。
「リレイヤ落ち着いて。グラディの吸収力は凄いし、教えるのが楽しくなるのもしょうがないわ」
リフュレスが飲み物を持って、リレイヤをなだめた。
俺はお茶、ホーリーはカフェオレ、ホピリスはブラックコーヒー、リレイヤとリフュレスは紅茶を飲む。
俺はごくごくと喉を鳴らす。
身体に染み渡る冷たさに、生を実感していた。
「ホーリー、あなたどれだけ水分補給無しでやらせたのよ」
ホーリーはいやぁと目を逸らす。
「そういえば、ホーリーってなんでここにいるんだ?生き返ったのなら人間族のところに戻って、リミュの無実を証明出来るんじゃ」
沈黙が走った。
そう、今ここにいるホーリーが本物であれば、リミュが無実であり、ジルラギルさんが黒幕であるという証明ができるはずだ。
「そうだなぁ、それはできるだろうが、そうなるとジルラギル、いやリーズィーが悪人となる。あいつを簡単に悪人にしたいとは思わない」
ホーリーの優しさ、か。
「あと俺はそもそも死んでないぞ?ただ死んだと流布してくれと頼んだだけだ。リーズィーの誘いに乗っただけという事だな。リレイヤに伝えればよかったな」
その言葉を聞いた瞬間、リレイヤが立ち上がり、ホーリーの胸ぐらを掴む。
「本当ですよ!ホーリーが死んだと聞いて、どれだけ悲しんだか!」
リフュレスとホピリスはうんうんと頷く。
「ごめんごめん、そんな暇はなかったんだよ。兄者とドリグレストを極秘に我が国に戻して、極秘会議を重ねていたからね。それがリーズィーにバレては全てが水の泡だったしな」
「ナイトレスト様とドリグレスト様が帰ってきているのですか!?私の情報網ですらすり抜けているなんて、どのような手段を使ったのですか」
リフュレスが珍しく興奮している。
「まぁ我々だけしか使えない手段だな。そして、我々三兄弟が集まった理由は、近く大きな戦いが起こる。それには私だけでなく、世界の名だたる強者の力が必要だ。そのため世界を旅している2人の力は必須という訳だ。この国では女神リレイヤ、命導師ホピリス、冥王リフュレスの力を借りたいと思っている」
リレイヤ、ホピリスの肩書きは知っていたが、リフュレスにも肩書きあったんだな。
「冥王、懐かしい響きね。そうね、もう戻らないと。今この時我が名リフュレス、女神リレイヤに全てを捧げ、我が命尽きるまで、女神を護ることをここに誓う」
その仰々しい名乗りと共に、リレイヤとリフュレスがオーラを纏い、オーラ同士が繋がった。
「リフュレス、あなた何を」
リレイヤは相当に焦っているように見える、リレイヤの焦りは俺が見てきた中でも1番と言っていい程に焦っていた。
「リレイヤ、私もずっと後悔していたのよ。姉として、あなたを護らせて」
そのオーラが消えて、少しシーンとなる。
「お姉ちゃん!!」
リレイヤはリフュレスに抱きつきながら泣いていた。
「お姉ちゃん、私頑張ったよね。ずっと、ずっと、頑張ったよね」
少し微笑みながら、リレイヤの頭を撫でるリフュレスのその姿は姉でしかなかった。
「グラディ、この名乗りは女神が統治する種族特有の物でな。この名乗りをしたものは命尽きるまで護ることを誓い、離れることは許されない。そうそう見れるようなものでは無い」
ホーリーが目の前で起きたことを説明してくれた。
「リフュレス、お主が居るのであれば百人力だ。これから共に支えてくれ」
俺は何も理解できず、目が点になっている。
とりあえずなにかすごいことが起きたのだろう。
「グラディ、とりあえず明日の授業はこれだな」
いつの間にか明日の授業が決まっていた。
「とりあえず、そろそろ出発しないと間に合わないだろうな」
そういえば今日会合の日なんだった。
すぐに準備して、出発という名の言伝の根に飛び込む。
リレイヤ、リフュレス、ホピリスはエルフ族に伝わる装束に着替え、ホーリーは鎧を着る。
俺は特に着るものがないので、リレイヤに借りた。
「勇者ホリレスト、女神リレイヤ、命導師ホピリス、冥王リフュレス、そしてグラディか。私は将軍ストレイグ、終焉の神に対抗するためと聞き、勇者に招集された」
将軍、と聞いて勝手に男だと思っていたが、髪が短い女の子で、その頭には猫の耳が着いていて、威厳はあるが少し癒される。
「同じく勇者に招集された皇帝の肩書きを持つオガセバルだ。よろしく頼む」
オーガの名に恥じぬ体格で、その手は握られると潰されそうだ。
今この場に五種族の王が四人揃っている。
「もうすぐ兄上達も来るはずだ、しばし待ってくれ」
ホーリーがそう言うと、別の言伝の樹が輝き出した。
ホーリーの来ている鎧と少し色が違う鎧を着た2人が出てきた。
「勇者ホリレストが兄、ナイトレスト、こちらが我々兄弟の末、ドリグレストだ」
「ただいま紹介に預かりました、ドリグレストです。皆々様本日はよろしくお願いします」
ここにとんでもないメンバーが続々集まっている。
またひとつ言伝の根が光る。
「そろそろ動くか、少しハエが動いているが支障はない。この傀儡魔王さえいればな」
ホーリーは何を企んでいるのか。
グラディは続々集まる名者の威厳に怯えていた。




