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五回目の天国 (能力ものの冒険もの)  作者: マルキ
1章 記憶喪失〜仲間加入
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3月6日 蘇る記憶

頂上につくと

そこには少し赤い泉があった


「これが能力の泉だ、これを飲んで暫くすれば

能力を得られる」


リュウさんが説明してくれるが、

その泉の水はとても自分から飲もうと思うような

色ではなかった。


「なんか血で滲んだ水みたいな見た目だけど...」


「ちょっと飲むのは気が引ける色だね...」


「健康被害でねぇだろうな?」


ヤワラも引いている

あのタイシですら飲むのを躊躇している


「大丈夫だ。これ自体は高エネルギー液でウイルスなどが混入している恐れはない。

ただ、先程言った能力に適応するための体の変化から熱を出す可能性はあるとは言っておこう。」


これ自体に危険はないと。


はあ、飲むかぁ。

今更引き下がることもできないし。


俺は中腰になり、水をすくって飲む


「ほんとに血みたいな鉄臭い味がする」


「ああ、実際血だからな。」


飲んだあとにリュウさんはとんでもないことを言う。


「冗談ですよね...?」


ヤワラは戦慄しながらリュウさんに尋ねる


「冗談なものか。この山には大昔に神が創った大型生物の死骸が埋まってるんだ。

過度なエネルギーによって創られたそれは、今もなお

死んだ後ですら大量のエネルギーを孕んだ血を流して続けているらしい」


「その血がこの泉ってことですか?」


「そうだ。まぁあくまで都市伝説的な部分は否めないのだが。」


リュウさんは薄ら笑いを浮かべている

絶対揶揄うためにこの話をもってきたな、これ。



「そう睨むな。ほれ、こっちに来てみろ。

ここからの眺めはなかなかなものだ。

やはりここで飯にするべきだな。」


飲み終わった俺らをリュウさんは呼ぶ

崖から下を見下ろすと結構高い


「ここから落ちたらひとたまりもないな

タイシ、ネタでもなく絶対押すなよ」


「俺なら落ちても大丈夫だがな。」


タイシの嘘が本当か分からない発言を笑った。


その瞬間、背中に衝撃が走る


何が起こった?


気づけば、自分の体は宙を舞っていた。


血の気が引いて行く感じがする

これが夢なら学校の机でガタッって音を鳴らしながら

起きるのにどうやら夢ではないらしい。


凄く時間がゆっくりと流れている

だんだん、自分は死ぬんだという実感が湧いてくる

下を見れば地面がゆっくりと近づいてくる

不思議と恐怖はなかった

記憶を失う前からこうなんだろうか?


正直、これから死ぬんだと言うのに

焦燥感も何もなかった

死ぬなら死ぬで、それでいいと納得してる自分がいた

死ぬのはいいけど、痛いのは嫌だったな。




「ヒサト、死ぬのは嫌か?」


どこからか老人の声がする

そして時間が完全に停止した。

幻聴かもしれないがとりあえず返事をしてみよう


「少なくとも、こんな死に方は嫌かな。」


「そうか、やはり死にたくないか。」


得体の知れない声なのにどこか聞き覚えと

安心感のある声だ


「お前が望むのならある条件と引き換えに

お前の危機を救い、記憶まで戻してやってもいいぞ」


「それなら、お願いします。」


そんなの即答するしかない。


「おっとまだこっちの条件は...」


相手の話の途中で割り込んで頼む。


「自分の死と天秤にかければどんな条件だろうと

かまわないです。」


「本当にいいのか?いつものお前ならもっと考えて

結論を出すはずだろ?」


「構いませんよ生きていられるなら」


ん?とは言ったけど

よく考えれば言い草的に俺のことを知っているのか?


「そうか、じゃあ契約成立だな、ヒサト

今からとりあえず記憶を戻してやる。

記憶が戻ればワシのことをまたボロクソに言う

だろうな」


「?それはどう言う...」


過去の記憶が流れ込んでくる。



俺は、自分のことが嫌いだ。


俺は、ごく普通の高校で、特別何を成したと言うわけでもない。

それどころか俺は、勉強や運動すらも本気で取り組んだことがなかった。

なまじどちらも最初から中途半端にできてしまっていたからだろうか。

勉強は何もしなくても平均点少し上ぐらいは取れたし、運動に関しても人に向いていると言われた。

それらの才能があったと言うより、コツを掴む才能だと思う。

だから勉強においても運動においても、自分にとって最適なやり方はすぐに見つかっていた。


それでも、結局そこから努力をしなければ人は成長しない。努力なしで成果を得ることなんてできない。

努力が報われるとは思わないが、努力しなければ報われるわけもない。それも、最後までやり切らなければ。


俺はそれを知っていて。いや知っていたのに。

全てにおいて中途半端だ。

最後までやり切ろうとしない。

同じ努力を続けることができなかった。


あのまま運動を続けていたらタイシと張り合えただろうか?

あのまま勉強を続けていたらヤワラに追い越されなかっただろうか?


周りが何かしら努力をしていて自分だけが取り残されているこの状況に、俺は劣等感を抱いた。


この劣等に恐怖を抱いているわけじゃない。


ただ、友達と。仲間たちと。

自分は釣り合っていないんじゃないか。

このままだと

見捨てられて、切り捨てられてしまうんじゃないか。


そう言った方面から自己嫌悪を繰り返す。




深く、深く、

考えれば考えるほど、闇へ落ちていく感覚がある。

このまま、自分がなくなってしまえば、

消えてしまえればいいと、そんな闇に沈んでいく。


いや沈んでいるかさえわからない。

どこからきてどこへいくのか。

どこまでいくのか。


...しかし、それすらもどうでもいい。

だんだん自分の存在が不明確になっていく。

この世の何にも属せず、漂流している。

たとえ何かが自分という存在に衝突しようとしたとしても、全て体をすり抜けて、何にも触れることはできない。そしてそれらを知覚することすら出来なくなっていく。





幸いなのはこれが存外そう長く続くことではないことだ。

意識が底から湧き上がって、この四次元的体験から、現実に戻ってくる。



はーぁあ。馬鹿馬鹿しい。


思春期だからこんなに考え込んでしまうのだろうか?


憂鬱になった気分から冷静になって帰ってきた。


こんな風に鬱になることなんて、一部の高校生ならありえることだろう。

自分が一番不幸だと考えてしまう瞬間が。


でもそんな不安も、一度冷静になれば杞憂だと気づく。


みんなが俺を見限る気ならとっくにされているし、

そもそもみんなはそんな奴らじゃない。


みんな優しいから。

だからそれにできる限り応えるために、

俺自身も最低限、その優しさを返せるようにと思ってる。



と、反省はこれくらいにして。



「あー、やってくれたな、ジジイ。」


嵌められたこの声の正体は俺のおじいちゃん

今回の旅を提案した企画者だ

そして、いつも俺のことを嵌めてくる


今回は多分代わりに世界を救ってくれって話を

概要すら聞かずに断ったから

無理やり契約をさせたんだろう。

まさか本気だとは思ってなかったんだけどなぁ。


「今からでもそのまま落ちていい?」


「そしたらヒサトは死んじゃうよ?」


「今更契約の破棄はできないよ

もう成立した後だからね。」


でしょうね、こんだけ手間かけてるんだから

なしにしてくれるわけがない

って言うか人を嵌めるために記憶消去まで

使いやがったよこの人


「契約内容は多分予想はついてると思うけど」


「『世界を救って欲しい』ってやつ?

なんで俺に頼むのさ、もっと頼める人はいたんじゃないの?」


「ヒサトじゃなきゃ救えないんだ。

ワシはヒサトが優しい奴で、人のために動くことをしってるからね

それに、人のためなら諦めないことも。

世界を救うってことは大勢の人のためってことでしょ?

だからヒサトがうってつけなんだ。

ワシが見込んだ奴だからね。」


「はぁ、めんどくさ。」


「さて、具体的にやってもらうこととしては

この柱を集めてもらう。」


その声が聞こえると、目の前に謎の棒が現れた。

よく見ると猫とカエルと人間の顔を持つ謎の生物が模様のように刻まれている。


「集めるったって、なんで?どこにあるの?それにいくつくらい集めればいいの?」


「まあまあ、あせるでない。

なんでかって言えば、それこそ世界を救うためだよ。


どこにあるかは、この大陸のそれぞれの国に一個ぐらいあるんじゃないかな、多分。


いくつかってのは...72個。」


「72!?多すぎるし数字も謎すぎる。

ソロモン72柱かよ。」


「ちなみにこの柱の名前は『バエル』」


「ソロモンじゃねえか!」


なんかおじいちゃん相手だと語気がつよくなるな。


「ワシそういうの好きだから、せっかくだしそうしてみた。」


「つくったのお前かよ」


俺はだんだん呆れてきた。


「まあまあ、この柱を集めれば集めるだけ

ワシの神としてのチカラが復活するから。

頑張って集めて。」


「は?」


いま自分のことが神みたいなニュアンスのこと言わなかった?


「おっと時間だ、そろそろこの空間も維持できなくなる

詳しいことはクニヤに聞いて」


「え?俺はこの状態でどうしたら?」


「ヒサトの能力、瞬間移動だから、

それ使って頑張って生きて」


「なんでそんな地味な能力なんだよ」


「いや?隙のない瞬間移動なんて

攻めや回避とか、純粋な移動とか、

撹乱までできる最強能力だよ?

あと、ヒサト専用の固有能力だし。

じゃ、そう言うことで。あと頑張って。」


「ちょっ...」


時間停止の空間が切れた

俺の体はまた落下し始める


「こんなとこで突然時間を進めだすんじゃねえ!」


渡された柱をキャッチした後、

急いで俺は上を向き、苦し紛れに能力を発動する

幸い、落ち始めてそれほど経っていない。

一回の能力で何とか崖上まで登ることに成功する


なんとか戻って来れた

ぶっつけ本番で能力使わせるとか

やばいなあの人


上にのぼると

記憶を取り戻した様子のヤワラがいた。


ヤワラ

男性

武器、槍

優しい口調で他人を気遣える奴

俺の義理の兄弟でもある

どちらが兄とか弟とかは決めてない

友達くらいの心地よい距離感で接している

さらに努力家で俺とは間反対の性格をしている

そして嘘がつけない

嘘をつこうとすると吐きそうになるらしい

ちょっと嫉妬深い一面もある


同じく記憶を取り戻したタイシも。


タイシ

男性

武器、拳

実は一つ上だか本人も周りもそのことについては

気にしていない

色々事情があって学校では同級生

留年したわけではない

まあ、学校の成績は良いといえたものではないが

料理が趣味で将来の夢も料理人

そろそろ進路を決めなければならないこの時期に

明確に夢があるのは正直羨ましい

単純な性格だが、悪いやつではない


その二人の後ろにいるのは...


スズネ

女性

武器、銃

タイシの妹

人見知りで自分に自信がないが

集中力が凄まじく、集中してる時は

いろんなことでとても良いパフォーマンスができる

ちなみに集中してるときは話しかけても聞こえていない


エマ

女性

武器、西洋剣

スズネの友達、俺たちの同級生、ヤワラの彼女

元気とも、ちょっと気が強いとも言える

怒らせると怖い。

多分俺を突き飛ばしたのはこっちだ。




「よくも突き飛ばしてくれたね」


「あはは...まあ、ヒサトならいっかなって」


少し悪びれた様子で彼女は笑う


「いつも俺の扱いが雑なんだよなぁ、それはさておき

いろいろ聞きたいことがあるんだけど」


俺はエマを問い詰めようとする


「そこら辺はクニヤさんがまとめてくれるって

ってかここ結構高いからさ、

とりあえず降りようよ、さっきからヤワラが震えてる。ヤワラ『が』かわいそう」


がを強調しやがったな。


「俺のことはかわいそうだと思わないの?

もはやここから突き落としてるんだけど」


「そりゃあお前とヤワラじゃあ扱いは違うよ」


「彼氏だから?」


俺がいつもの調子に戻ってエマを揶揄う。


「口を開ければくだらないことしか言わないんだから。」


カップルいじりは定番の流れだ。

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