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五回目の天国  作者: マルキ
3章 遺跡
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3月?日 タイシの記憶

僕は今、タイシの記憶の中にいる


なんでこうなったかは分からないけど、

これなら過去に父親と何があったのかわかるかも知れない。


「俺の家族は至って普通の家族だった。」


タイシの声が聞こえる。


僕はタイシに話しかけてみようとしたが、タイシは僕のことを認識できていないらしい。

とりあえず、静かに昔話を聞こう。


「俺の家族は仲が良く、俺とスズネはほとんど喧嘩をしなかった。ひとえに母さんの優しさの賜物で

俺らはそれに絆されたんだろう。


その生活に不満があるとしたら、父さんが仕事に追われてなかなか家に帰ってこないことだ。


母さんはいつも家にいて、俺たちの世話をしてくれるが、ずっと父さんのことを考えてる様子だった。

優しい母さんが好きだった俺は、子供心ながら父さんに嫉妬心を抱いていた。

家にあまりいないから父さんのことはよく知らなくて

良い印象を持ってなかったのもそれに拍車をかけてたんだろう。


そんな俺だったが、その考えが変わるエピソードが起こる。」


場面が切り替わる。ここは...神社?


「元旦、丁度休みが取れた父さんと共に、家族全員で、初詣へ行った。」


タイシがそう語ると、その日の光景が再生される。


「いやー。この日に休みが取れて本当に嬉しいよ」


タイシの父は二人と一緒にどこかへ行けることにとても喜んでいるようすだ。


「四人で外出するのは初めてか、今日は思い出に残る日にしよう!」


タイシの母も次いつ訪れるかわからないこの機会に

テンションが上がっている。


「せっかくみんなでどっか行って思い出作るなら、遊園地がよかったなぁ」


タイシは文句を垂れている。子供ならみんなそう思ってしまうだろう。


「私もそっちがよかった!」


スズネもタイシの言葉に賛成する。


「それは次の休みが取れた時に行こう。」


タイシの父がそう言って宥めようとするが、二人は不満のようだ


「今日初めてみんなで外に出たのに、そんなのいつになるかわかんないよ!」


スズネが不満を口にして、タイシもそれに「そーだそーだ」と言っている。


「来月末、タイシの誕生日だろ?そこは絶対に休むって約束するから。」


タイシの父が説得を続ける。


「絶対だぞ?約束だからな?」


二人は大いによろんだ。



神社は初詣ということもあってかなり人がごった返していたが、なんとか賽銭箱の前まで来た。


「お祈りは二礼二拍手一礼だよ。二人は知ってる?」


タイシの父が説明するが二人はそんなこと知ってると言わんばかりの表情をしていた


「知ってる、むしろ知らないのは父さんの方だろ?

俺らが毎年初詣に来てること。」


嫌味たっぷりにタイシが返す。


「母さんからそれは聞いてるし、一応確認しただけなのに...嫌われたもんだな...」


タイシの父は悲しそうな表情を浮かべた。


みんな一緒に十円玉を投げ、二礼二拍手をして、願い事を心の中で言い、最後に一礼した。



「お兄ちゃん、お願いしたこと『みんなで遊園地行けますように』とかでしょ。」


スズネが馬鹿にし気味でタイシに内容を聞く。

さっきから思っていたけど、今のスズネと性格が全然違うなぁ。


「そんなんじゃねーよ。

...あんま願い事を言うべきじゃないんだろうが

『家族が幸せでありますように』って願ったわ」


意外だ、タイシがそんな願いごとをするなんて。

僕もタイシのことをみくびってたかも。


「父さんと一緒じゃないか、タイシは大人だな。」


「父さんはその中に入ってねーよ。」


「こらこら、そんなこと言うんじゃありません。

お父さんがおみくじ買ってくれなくなるよ〜?」


あからさまに父を嫌うタイシを母が優しく叱る。

おみくじをしたかったのかタイシは少ししおらしくなった。



「やったー!大吉!」


みんなでおみくじを引き、スズネは大吉を当てたようだ。


「お母さんも大吉!」


「うぇ、凶だ。初詣は凶入ってないんじゃなかったのかよ?」


「お父さんと交換してあげようか?」


「いらねーよ、父さんもいうて吉だろ?」


タイシは自分のおみくじを紐に結んだ。


四人は神社を後にし、お昼ご飯を食べにいった。


「父さんの行きつけのラーメン屋だ。

本当は焼肉や寿司屋にしようとしたけど、

元旦だからやってなかったんだよ。」


「ここも、久しぶりね。

タイシとスズネは来たことなかったよね?

ここは父さんと母さんの思い出の店なの。」


母はそう語ったが、子供すぎる二人には興味の湧かない内容だった。



ラーメンが運ばれてきて、みんなはそれを食べ始める。

ラーメン自体は普通の醤油ラーメンだけど、

どことなく懐かしさを感じさせるラーメンだ。

食べた瞬間に実家の温かみを感じて、思わずため息が出てしまうような...


まあ僕は食べれないんだけど。

あー。久しぶりに食べたーい。

人の記憶で飯テロされてまーす。



皆んな無言だけど、そこに嫌な雰囲気は一つもない。

家族団欒の一つの形だろう。


しばらく食べ進めてると、タイシの父が自分のラーメンの海苔をタイシのラーメンに入れた。


「ほら、海苔。好きなんだろ?

母さんから聞いてるよ。

『私たち二人は海苔が食べれないのに、子供たちは食べれるんだよ。不思議だよね』ってね。」


タイシの父はやっぱり、好きで仕事に明け暮れてる訳じゃないんだろうなぁ。ちゃんと子供たちの事を気にかけてるし。


「...ありがとう。」



皆んなはラーメンを食べ終わって店を出た。

だけど、タイシの父はもう仕事のために移動をし始めないといけないらしい。


「はい、二人にお守り。神社で買っておいたんだ。」


タイシの父が二人にお守りを手渡す。

タイシには厄除け、スズネには健康のお守り。


「ありがとう...それとこれ、父さんに。」


タイシはポケットから別のお守りを出した。仕事のお守りだ。


「父さんに?ありがとうな。本当に嬉しいよ。」


言葉通り、本当に嬉しそうな表情をしていた。

そして二人のことを今まで以上に、まるで生まれたての赤ちゃんを見るような、慈しむ目で見た。


「タイシから提案してきたんだよ?

父さんが二人のお守りを選んでいるのを見て

一応買ってあげようって」


タイシの母が説明する。


「せっかく仕事のお守りを渡してやったんだから、

ちゃんと約束はまもれよ。」


「ああ。約束するよ。」







場面はまた変化した。

タイシとスズネは、学校から

家に帰るところのようだ


夕方だからかな?町全体が、どことなく不穏な雰囲気を醸し出している。


住宅街から少し外れた一軒家に着いた

二人がドアを開けて、ただいまを言う。


玄関で二人は男性の大人が履くような大きな靴を見て

首を傾げていた


「父さん?今日家帰ってくるっていってたっけ?

明日が母さんの誕生日でしょ?」


「うん、そうだよ。」


タイシの疑問にスズネが答える。


「父さーん?」


タイシがリビングに向かって叫ぶ。


返事はないけど、何か物音がする


「お母さんもいないの?」


スズネも声を出す


ここまで返事がなかったので、二人はやっと何か不穏なものを感じていた


恐る恐る、二人は不思議な物音のする方へ向かう

音の源は二人の両親の寝室の部屋のようだ


タイシはそっとドアを開ける



そして。


見てしまった。


その光景を。



部屋の中では、二人の父親が母親を

ベットに横たわらせた状態で...






体を解体していた。


タイシはそれを見て硬直してしまい、スズネがそれを見ることを防ぐことができなかった。


二人は声が出ない様子だ。


無理もない。

こんな...こんな...


その父親は解体を続けながら


「ごめん...ごめん...」


と呟いていた。





タイシはやっとの思いで言葉を絞り出す


「父さん!なんで?なんでこんなことしてやがる!?」


父親は、ようやく二人に気づいたようだ


「タイシ...スズネ...

ごめん。これは『命令』なんだ」


二人は直感した。

この男はおかしいということを。



その場から二人は逃げることしかできなかった。

逃げた後、どうなったのかを知る前に

記憶の旅は終わってしまった。






気がつけば僕はスザクさんに抱えられて、二人とは少し距離の離れたところまで運ばれていた





この男はやばい。

タイシがこの反応をするのも納得だ。


でも、だとしたらなんで...


ううん、逃げることを考えよう。

後ろでタイシと父親の戦いを見てる

ルルアとスザクさんにもあいつの異常性を伝えなきゃ...


いや...

少し考える。

タイシはあれを見て、なぜあいつに立ち向かえるのか

僕だったら恐怖に足がすくんで戦うことなんて考えないだろう

それならきっと、タイシの心の中にあるのは

怒りなんだ。


母親を殺された怒り、

突然日常を奪われたことへの怒り

様々な怒りを彼は抱いているんだ。


なら僕は...


「一度でいい。

お前の顔を思いっきりぶん殴ってやる」


タイシが父親に吐き捨てる


そのタイシの思いを応援するしかない


だが、タイシの攻撃は一つも父親に届かない

完全に、そもそも攻撃を繰り出す前に動きを読まれて

防がれている。



僕はまた考える。

ここで彼に加勢すべきなのか


これは彼の問題だ僕が簡単に介入していいのか。

そうも思った


しかし、記憶を見てしまった以上

もう僕には他人事には思えなくなってしまったのだ。


僕だって。弱くても、友達と一緒に何かを乗り越えることはできる。


後からタイシに何か言われて

もしかしたら、関係が崩れてしまうという覚悟はできてる。

それでも、僕はそうすべきと思ったから。

僕の正義が彼を許すことができなかったから。



スザクさんが僕のことをおろして僕に何か言おうとする前に僕は走り出した


「やっぱり僕、ちょっとタイシに加勢してくる。」


後ろの二人に告げる


「は?」


そりゃあそういう反応をされるだろう。

タイシだってそう思うだろうし。


僕は攻防を続ける二人に駆け寄っていった。

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