3月15日 余波
「そういえばあの女の子はどうなったの?」
ヒサトが言うそれにアユタが答える
「ああ、あの子は施設にいったよ
何でも体に異常があったらしい
暗い話題だからヒサトに話すのは躊躇ったんだ。
もっと早く話すべきだったね」
「いや、いいよ。
でもあの子が心配だから会えないかな?」
「うん、じゃあ行こう」
「僕もついていっていい?」
「もちろん、ヤワラくんは優しいし、
彼女もすぐ心を開くさ」
わかってないなぁ、本当に優しいのは
僕じゃなくてヒサトの方なのに
その子がいると言う施設までやってきた
「能力障害の女の子の様子を見にきました」
能力障害?聞き馴染みのない言葉だけど
決して良い単語ではないのだけは分かる
「ああ、アユタか。いいよ、連れも一緒に入りな」
施設の人に断ってその子の部屋に入る
「...あれ?あの時のアユタさんと
あの時のお兄ちゃん、私のために来てくれたの?」
それはとても弱々しい声だった。
聞いた話ではこの子はヒサトと
戦ったらしいけどそんなことが出来る
状態には決して見えず、
ベットの上に横たわっていた
「...どう言うことなの?」
僕がアユタくんに聞く
「僕も詳しくは知らないけど
一般的に能力障害っていうのは
その体が自分が使う能力に耐えられなくて
能力を使うたびに何かしらの体に悪影響が
でちゃうことらしい。
理由として、そもそも能力を得る時に
補助能力って言って、
その能力を効果的に使ったり
自分が能力の影響を受けないように
する仕組みがあって
本来体の仕組みが三ヶ月から
1年以上かけて変化するんだ。
それが終わるまでは能力が使えないはずだけど
その使えないはずの能力を無理矢理を使ってしまう
ことによってソレが起こるんだって。
しかも一度使ってしまうと
そこから体の変化は止まって
一生能力を使うたびにその障害がでちゃうらしい。
この子の場合、
時を止める能力なんだけど
使うと自分の心臓が一瞬止まって
胸の痛みがした後、酸欠の症状が出る。」
それはだいぶ詳しいんじゃない?
「でも、普通はその状態で能力は使えないんでしょ?
なんだったってこの子は能力を使わないといけない
状況になったんだろ」
ヒサトが疑問を述べる
「じゃあそのことも聞いて見る?
いや、まず名前からの方がいっか。」
みんなあの子やこの子って言うだけで
名前を知らないし、
「君の名前は?」
「名前?前に大勢の大人たちに色々されてた
ときは「ヒケンタイ」っていわれてたよ」
その言葉で色々なことを察した
無理矢理能力を使わざる終えなかったのも
それが関係してそうだ。
「じゃあ、お父さんやお母さんからからは
なんて呼ばれてた?」
「私はお父さんとお母さんに
呼ばれたことがないの」
ヒサトからは両親が亡くなって
心が壊れたって聞いていたけど、
その両親すらそんな酷い人達なのか
何も知らない子供は両親から無視され続けても
その人を心の拠り所にしていたんだ
なんて残酷な話なんだろう
そしてそこで救われることはなく
その後被験体にされる
こんなことってあっていいの?
皆んなも彼女の言葉の節々から
彼女の境遇を感じとったらしく
暗い顔をしている
そこで急に妙に声色の明るいヒサトが話し出す
「それの能力障害ってのは、私らの監督不届だね
今すぐ治してやりたいんだけど
生憎今は弱りきってる上に
緊急アクセスも使っちまったんだ
でも、ほうちゃんなら治せるよ。
だからそのために私らの旅についてくる
気はないかい?」
「俺の体で勝手に喋らないで下さい。」
「だって、君がラジオをそのまま
置いてこうとしたから
慌てて君の体に戻るしかなかったんだよ」
「別に自分で話さなくても
頭の中で俺に話せばいいでしょう?」
「そうは言ってもだね。私だって生身の体で
いたいものなんだよ」
はたから見ればヒサトが自分と言い争ってる
ようにしか見えなくてすごくシュールだ
その様子を見て、沈んだ表情の彼女も
少しの笑みを見せた
「私、みんなについていきたい。
やさしさを教えてくれたみんなに。」
「やったー仲間に可愛い女の子が増えたー!」
「だから俺の体で騒がないで下さい
っていうかなんで俺の体なんですか
他の人のところ行って下さいよ」
「私が入れるのは無機物か
器の資格がある人の体だけだよ...
あれ?でもその女の子にも入れそうだね」
「資格があるってことですか?」
「いや、というより」
その時、それまでヒサトがちっちゃんの代わりに
話していたのが女の子の声になった。
「バグのせいでこの子の世界からの判定が
あやふやになってるね
ヒサトみたいに能力の影響を受けないとかはないけど
私は入りこむことができたよ」
「私のなかにもう一人いるの
不思議な感じ」
「これならちょっとだけど能力障害を
軽減できるかもしれないね。
うーん今の私の力の大きさを考えると
一日三回までなら能力を使っても
心臓が止まったりしないよ」
「だからって無理はさせないですよ?」
ヒサトが僕の思ってることを言ってくれた
なんだか彼女にも明るい未来が
ありそうでよかった。
「そうだ、俺アソギさんに呼ばれてたんだった
...アユタ、お前もいくか?」
「あいつの方から来ないのは癪だけど
顔ぐらい見せてやろうかな」
アユタくんがあんなに悪態をついてる
よっぽど父親のことが嫌いなんだろうなぁ
せっかくここまできたし、
僕も行くことにした
女の子も、アユタの服の裾を掴んで
一緒についてきている
城のようなところについて
大広間に通された
そこには少しいい服を見にまとったアソギさんがいた
「やぁ、アユタ
軍の最高司令官の功績が認められて
私は今、国の最高責任者になったぞ。」
「久しぶりにあった息子に開口一番それかよ
もういい、僕帰るから」
「待ってやってくれ、
本当にアソギさんはアユタのことを
思ってたんだって」
「...ヒサトが言うならちょっとくらい話してやるか」
俺は親子水入らずで平和な会話を期待する。
「僕の願い。ちゃんと考えてくれたんだ。」
「そうだ。やり遂げただろ?誰も死なない戦争。
ここから、誰もが救われるような国を...」
「誰もが救われる国?
そんなものは、ない。」
そこで一代目ヒサトが捕まえた
白衣のおじさんがいた。
その場にいる誰もが存在に気づかなかった。
なぜ彼がここにいるのか、それを考えるまえに
ヒサトは行動に移した。
ヒサトは危機を感知して腰の短剣を抜き、
能力で近寄る
「構わない。
君たちがどんなことをしようと、私がこの場で死のうと、『運命』からは逃れられない」
そういうとおじさんは注射器を自分に刺す
すると数秒経ったのち、
全身が破裂した
これは人間が例のウイルスに感染した
ときの症状だった。
しかしここから聞いていた話と違うことが起こる。
本当ならば跡形も残さず消えるはずだが
破裂した体からは数十個の大きめの黒いなにかが
出てきた。
形は二本足があるものや、虫のように足が多いもの。
ノミのように小さいものまで様々だ。
そしてそれは近くのアソギさんを襲い...
「アユタ、逃げろ!」
アソギさんは破裂した
そしてそのアソギさんの体からも黒い何が
出てくる
「皆んな逃げろ!とりあえずここは
ワクチンを打ってあって能力を持ってる俺が
食い止める。
そしてなるべく早く応援をよんでくれ!」
いきなりの展開についていけていけず
僕は唖然としてしまっていた。
そこから理性を取り戻し、考える
僕に出来ることは...そうだ!
タイシの能力でこの緊急事態をみんなに伝えて
共有で人の能力を借りよう!
「皆んな城にきて!
説明が難しいけどとにかくやばい!
あと、リコちゃん、能力ちょっと借りるから!」
上手く言葉にできなかった
でもこれで助けは来るはず。
「アユタくん!その子を連れて
安全なとこまで走って!
アユタくん?」
アユタくんの表情は絶望に包まれていた
それもそのはず
彼はまた、目の前で家族を亡くしたんだ。
動け無くなっているアユタくんを
精一杯自分の槍を振り回して守る
この特製の槍なら一突きで黒いのは消滅する
でも数が多すぎる。
その場にいた人も結構巻き込まれて
黒いやつは今や300を超えるレベルで
城に跋扈している
ヒサトも頑張ってはいるけど、
あの能力と武器では殲滅には向いていなく、
数はあまり減らない
僕は槍にリコちゃんの能力を付与する
そして、勢いよく目の前の黒いやつの大群に
投げつける。
能力を帯びて加速した槍は絶大な
威力を発揮し、50くらいの黒いやつを
消すことに成功した。
「ヒサト、その刺さってる槍とって。
今のもう一回やる」
リュウさんの能力も使って槍を戻して
自己完結もできたけど流石に初めてで
能力を二つ同時に使うのは無謀だと考えた
それにリュウさんも能力を使った対象が
速すぎると維持が大変だと言っていたから
少なくとも今の僕に出来ることじゃない
とはいっても初めて能力をつかうし、
えもいえぬ感覚が襲ってくる
今ので消費した体力と
残りの体力を考えると
後二回しか打てない。
それでも、目の前の大群に勝つためにやるしかない
ヒサトから槍を受け取り、二回目を放つ
今度も絶大な威力だったが
強すぎて槍が建物を貫通した
武器を失い、僕らは絶対絶命の状態に晒された
しかし、そこにタイシが駆けつけた。
「場所を伝えてくれ、
飛んでった槍で初めて場所がわかったぞ」
「あ、ごめん忘れてた」
「なんども場所を聞いても無視しやがって」
「こっちに精一杯で聞こえてなかった、
ごめん」
「まぁお前らが無事なら責める必要もねぇんだけど」
「みんなは?」
「俺だけ先に来た、まだ10分はかかる。」
10分!それじゃくるまで耐えられるか怪しい。
あの槍で残り200くらいまで削れたはずだけど
ここから一匹もここから出さずに耐えるのは
かなり難しい。
一匹でもこの建物から出れば
また被害者が増えて、本物のウイルスのように
どんどん数を増殖させるだろう
だからその犠牲者を出さないために、
考えるんだ、なにか!
「そうだ、天井を崩して
黒いやつを一掃しよう!
まず柱を全部壊して
そのあとタイシがいつものトンデモ身体能力で
上から力を与えて天井を落とすんだ!」
かなり粗がある作戦だがそれ以外
思いつかない
タイシもヒサトも頷いてくれたし、
早速実行に移す。
柱をタイシが全て壊す
そしてタイシは建物の上に登り
屋根に拳を突き立てる
その間に僕らはアユタと女の子を連れて
建物の外に出て扉を全力で塞いでいた
そして、天井が落ちた。
それを確認して扉を開けると
ほとんどが天井の下敷きになっていた
そこから
残った黒いやつを全て排除して
この騒動はこの建物の被害だけで収まった




