能力について
朝起きると、昨日のスキンヘッドのおっさんは
朝食を用意してくれていた
「ありがとうございます。」
「いいんだよ、俺も昨日は疑って悪かった。
俺の名前はイロン、短い間だろうがよろしくな」
そこから少しイロンさんと会話をしながら食事をする。
昨日の警戒していた態度から一変して
気のいい兄ちゃんくらいの雰囲気を感じた。
用意された朝食も簡素なものでなく、焼き鮭やら味噌汁やらの何処か安心感が湧き出るような少し豪華な朝食だった。
町の雰囲気こそ違えど文化圏は案外俺らの祖国と似ているのかもしれない。
まぁ記憶はないんだけど。
...昨日アポ無しで来たばかりだというのにこんなものを用意できるだろうか?
いや用意してくれたんだから感謝して食べるのが礼儀か。
朝食を食べ終わるとクニヤさんが話しかけてくる。
「おはよう。
それで、何か俺に聞きたいことはあるか?」
色々聞きたいことはあるが記憶を失っているのは俺だけじゃない。
ヤワラとタイシもこの話を聞くべきだ。
その箱を持ち、二人を探す。
二人は談合室のような所でくつろいでいた
「おはよう、ヒサト。
よく寝れた?体の調子は大丈夫?」
ヤワラが俺の心配をする
「うん、俺はもう大丈夫だよ。
ところで...二人はどれくらい覚えてる記憶ある?」
椅子に座りながら質問する。
二人とも俺と同じようにほとんどのことを覚えていなかった。
例の箱にその件について聞こうとしたら返事がなかった。
その箱をコンコンと叩いてみる
「おお、すまん寝てた。
この機械は電力の消費をなるべく抑えるために
すぐに節約モードになるんだ。
それで?何か聞きたいことはあるか?」
とは言われても逆に聞きたいことが多すぎて
何から聞けばいいのかわからない
「誰から聞く?」
他の二人に最初の質問を委ねる
「じゃあ僕から」
ヤワラが先導して例の箱に質問する
「僕たち、記憶喪失で何かをしにここにきた事は覚えてるんですけど、それ以外全部忘れちゃって...
これは大丈夫なんですか?僕らの記憶は戻るんですか?」
例の箱は少し考えて
「記憶喪失は心配しなくしていい。旅の道中での必要な工程だったんだ。俺が全部覚えてるし、ちゃんと旅の案内はしてやる。どうせすぐ思い出すしあんまり深刻に考えなくていい。」
次にタイシが質問する
「よくわかってないんだけどよ、とりあえず整理するために知っておきてぇ。俺らはどこから来たんだ?」
それを受けてクニヤさんは液晶画面に十字架のような地図を表示した。
「俺たちが今いるのがこの十字の下の部分。
お前らの出身はこの十時の真ん中の国で中央国という。
この町と敵対関係にある国だ。」
その言葉に俺たちは全員、は?と言わんばかりの表情をした。そしてそれについて詰めようとする。
「落ち着け。当然の反応だが理由がある。
お前らは旅をしている。そのことは覚えてるな?」
俺たちは頷く。それだけはみんな覚えているようだ。
「その旅の第一目的地がここなわけだが、その理由としてヒサトの祖父がこの地域と関わりがあって、比較的安心できる場所なんだ。」
俺のおじいちゃんが出てきた。
記憶のない身ではあるけど俺のおじいちゃんという
言葉だけで、なんだか嫌な予感がした。
「でもだからって敵対関係の国に来ますか?」
「因みにだが、中央国はこの大陸の全ての国と敵対関係にあるぞ?」
とんでもないことを聞かされた。一旦現実逃避して別の質問をしよう。
「っていうかこの町はどんな町なんですか?」
「ミネラル町って町だ。鉱山が近く、資源が豊富な町だな。」
そんだけ?もっとなんか俺らにとってめっちゃ有益だからとかじゃなくて?
「その、結局町長とは話はついたんですか?」
ヤワラは少し質問を変えて昨日の交渉の結果について聞いた。
「何言ってんだ、ゴルディさんは快諾してくれただろ」
ゴルディ?ゴルディってまさか...
「ゴルディってあの金髪の幼い子供?」
「外見上はな。
そうだ、これも言わなきゃな。
この世界には"能力"があるんだ。漫画とかでよくある特殊能力な。あれは巻き戻しの能力だ」
「能力!?」
三人とも急に出てきたファンタジーな言葉に驚く
「実は俺のこの箱もその能力に関するアイテムで、収能システムって言うのを改造したんだ。
この箱には能力がしまえる。
って言っても基本的に犯罪者から能力を没収するのに使うんだが。」
「じゃあ俺も能力を使えるってこと?」
使えるなら使ってみたい気持ちは誰だってあると思う。
「いいや、使えない。そもそも中央国では能力の存在が秘匿されているからな。
だが、お前らの能力を手に入れる準備は進めている。
というか、そのためにこの町に寄ったんだ」
まじで?俺能力使えるの?
ちょっと普通にはしゃいでる自分がいる。
「能力ってのはお前らの国ではアニメやら漫画やらで
よく出てくる物だから想像はつくだろ?
まぁ作品によって違うものもあるからそこの齟齬がないよう説明しておこう。
まず、能力は一人一個まで発現する。
そして能力の使用には人間のエネルギーを必要とする。
このエネルギーってのは何も特別なもんじゃない
人が毎日を生きるためのエネルギー。これを必要とする。
そしてここが重要。
能力は全部合計で255種類ある。
その中からランダムに一つ選ばれる感じだ。
だから世界を探せば何人か同じ能力のやつはいるだろうな。
で、能力に対する価値観としては地域によって違う。
ここのように生活と能力が結びついている場合もあれば、中央国のように完全に存在すら隠蔽されている場合もある。
他にも能力によって上下関係が決まったり、そもそも軍人や貴族のような特定の立場の人間しか能力を持つことが許されなかったり、酷いところだと能力者そのものを異端だとして弾圧する地域もあるな。
ま、これは雑談に近い話だったか。
とは言えここが重要なんだが、
『どの国でも子供が能力を持つことは許されていない』
ということだ。
そう、お前らは特例だ。
手に入れた後もそのことを肝に銘じろよ。」
子供が能力を使うことは許されない...?
なんか理由があるのか?
「何で子供が能力を使っちゃいけないんですか?」
「例えるなら酒だな。能力を持つことによって健やかな子供の成長を阻害する可能性があるんだ。それも、酒類より深刻な症状を引き起こす。
お前らはその対策をしてあるから安心して能力を使っていいぞ。」
「もしかしてこの記憶喪失って、能力を子供でも使えるようにするための副作用とかだったりします?」
「うん?あ、ああ、そうだ。」
嘘くさ。
いやなんでそこで嘘つく必要があるんだろ。
記憶喪失は他が原因?
まぁいいか。隠すってことは問い詰めても変わらなそうだし。
「そうだ。大事なことなんですけど、
この旅の目的って何なんですか?」
「能力を得ることだ。」
「それだけですか?もっと他にあるんじゃあないですか?」
「それは...記憶が戻ってから確かめてくれ。」
「ええ?」
そんなことある?
「と、他に質問はあるか?
こんなもんでいいか?整理はできたか?」
お前は何なんだとか俺のおじいちゃん何者なんだとか
もっといろいろ聞きたいけど、それは記憶が戻ればわかるか。
最低限のことは聞いたし、今聞くべき事はないかな。
「おい、そろそろ行くぞ」
イロンさんが部屋に入ってきた
「どこに?」
イロンさんに代わってクニヤさんが答える
「さっき言ったろ、
能力を手に入れるための準備だ。」




