記憶喪失
なんでこんなことしてんだろ。
かなりの長い距離を歩いた気がする。
のどかすぎる平原。
何もない一本道、一昨日から変わっていない景色。
どこまでも続く地平線。
そこから覗く日の光が僕らの3本の影を作っている。
いつ辿り着くかわからない不安、旅の疲労。
ふと、泣き言が口から出てしまう
「つら」
別にこんなことを言っても変わらないのはわかっているけど、逆に変わらないと知っているからこそ
口に出すことで楽になるかもと思った。
「ネガティブなこと言うとみんな辛くなるって言ってたのは誰だったっけか?」
タイシが突っかかってくる
「いや、こんなに辛いとは思わなくて」
俺は弱音を吐き返す。
正直疲れすぎて軽い会話を交わすことすら疲労が溜まっていく感覚がある。
「ここでちょっとふざけないところからヒサトは本当に疲れてるんだよ」
ヤワラが擁護する。
実際その通りで今は余裕が微塵もない。
「そうか...まぁそうだな」
タイシはそう言って黙りこくった
いや、黙ったのはタイシだけではないんだけど。
急に目眩が俺を襲って、俺は少しよろけた。
「ほんとに大丈夫?」
ヤワラに心配の声を掛けられる
「大丈夫だよ、でもちょっと休ませて
ちょっと休んだらまた歩ける...」
そうは言ったものの、結構ヤバいかもしれない。
二人を気遣ってあまり水を摂取してないからか
平衡感覚がわからなくなっていく。
それどころか思考すら回らなくなって...
あ...
ベットの上で目が覚める
俺は倒れて気を失ったんだ。
あー、やっちゃったなぁ
冷静になって部屋を見渡したけど、見覚えのない場所だった。
体を起こして少し考える。ここはどこだ?
すると、スキンヘッドのおっさんが部屋を覗いてきた。
「お、目が覚めたな。
待ってろ、今友達を呼んでやるから」
そう言うとおっさんは部屋を離れる。
まだ気持ちが悪い。
窓を開けて外を見ながらぼーっとしていると
少ししてヤワラとタイシが部屋に入ってきた。
そして入って来たや否やヤワラが俺に説教する。
「脱水症だよ、いくら資源が限られてるからって
水を飲まなきゃ立ってられる訳ないでしょ。
気遣ったのかもしれないけど、倒れられたら本末転倒だよ」
本当にそうだ。こんなことで皆んなに迷惑かけちゃいけない。旅はまた始まったばかりだし。
「ゴメンナサイ...」
ヤワラがため息をつくとタイシを指さす
「謝罪は僕じゃなくてタイシにして。
ここまで背負ってきてくれたからね」
俺はタイシの方に向き直る
「いーよそうゆーのは、俺にとっちゃぁ
苦じゃないことだからな」
「そっかありがとう。」
さて、ひとまずは色々確認しないことにはなにもできない訳だし、切り替えよう。
「ここは? 目的地?」
ヤワラに確認する。
「そうだよ」
その言葉を聞いてひとまず安心する。
とりあえず事は順調に進んでるらしい。
安心するとまた眠気が襲ってきた。
まだ寝てたほうがいいかなとか考えてると、おっさんは何か俺らに言いたいことがあるらしい。
「あー、ちょっといいか?
外からきたお前らに検閲に協力してもらうぜ
俺だってあまり疑いたくはないが、今は特別穏やかなご時世でもないんでな。」
俺たちのバックを持ってきて俺たちに聞く
そりゃあ怪しいか。
さっき窓から外を見たときあまり発展していない小さな村のような感じだった。
何か理由もなしに子供だけで来るところじゃない
「持ち物、確認してもいいよな?」
断る理由はないはず。やましいことはないし
みんなで目を合わせる、そして頷く
「じゃあこの場で調べるぞ。
缶詰食糧、水、ほとんどがこれらだな。その他には...
テント、寝袋、ここら辺は野宿するための道具か。
そんなに長い旅をしたのか?
聞きたいんだが、お前らはどこからきたんだ?」
バックの中身を並べながらおっさんは問う。
「えっと...あれ?」
思い出せない...
いやでも、みんなの事は覚えてるし、何かここに来る明確な理由があったことも覚えてるのに、全てふわふわしていて内容と具体性がない。
「なんかよく思い出せない...
ごめん、まだ体調がよくないのかも」
なにか体調不良が関係してるのかとも思い、二人に代わりに答えてもらおうとする。
「いや、オレもだ...思い出せねー」
「...僕も」
二人は困惑した顔をしながら、自分も記憶がないことを訴えてきた。
それを聞き、焦りを覚える。
どこからかやってきた謎の子供三人組が、身元を聞かれて記憶喪失だと主張しているこの状況。
どう考えても、このおっさんからすれば怪しいことこの上ない。
検閲に引っかかってしまえば、記憶のない上に見知らぬ土地で居場所のない状況になってしまうかもしれない。
それはまずい。
「タイシの腕のメモ帳は?何か書いてないの?」
「確認したが...食料等の残量のメモしか載ってなかった」
まずい、最後の頼みの綱まで...
「はぁ?なんだそれ
まぁとりあえず取り調べを続け...」
おっさんの言葉が途切れる。
それと同時に何か黒い立方体の箱を俺らのバックから取り出した。
「お前らに聞くまでもなく、この中に答えが入ってそうだな。弁明があるなら聞くぞ」
俺達はその箱がなんなのか俺らはよくわからず、記憶がないことと相まって混乱していた
「そんな、僕たちは本当に...」
ヤワラの言い分には耳も貸さず、おっさんはその箱の電源っぽいのをつけた。
「やあおはよう。」
その箱から声が聞こえてくる。
「この箱、収能システムじゃないのか!?」
おっさんはそれが言葉を発したことに驚嘆している。
「どこから話すべきか...まぁいいや、俺は人工知能だ。」
その箱は自分をそう名乗った
「人工知能か...紛らしいような形にするなよ。」
人工知能は驚かないんだ...
するとその人工知能は俺達の代わりにおっさんの説得を始めた
「俺はコイツらの案内役を任されてて、コイツらが怪しまれるのも想定内だ。
俺がコイツらの身分を保証しよう。
そのためにゴルディ長老にあわせてくれ、そのバックの中の紙を渡したい」
「わかった」
それは信じるんだ...とか少し思ったが、俺らの疑いが晴れるならなんでもいいや
程なくして俺らより5つくらい下の子供がやってくる
「ナンダ、コレヲヨメバイイノカ?」
なんでそんな棒読みなのか不思議だったけどとりあえず流してこの後の流れを見届ける。
「ハナシハワカッタ、コノマチニトマルトイイ」
結局普通に許されるんかい。
あぁもう、情報量が多い...何から聞けばいいのか...
「よかったじゃねぇか。なんとかなりそうだぜ?」
それはそう。状況はかなり良くなったのはタイシの言う通りではある。
だけど、完全に置いてかれてる、
一度ここで考えを整理しようとしたが、疲れで眠気が襲ってきて、瞼が閉じていく。
「混乱してるだろ。それに疲れも見える。
明日俺が説明するから今日は寝とけ」
例の箱が言う
あなたの存在が一番混乱する...
とか思ったけど眠気には逆らえなかった...




