格差の国
スラム街を抜け、俺たちは次の国についた
その国は壁で囲まれており、外からは中の様子が分からない。
俺たちは中に入るために関所でその旨を伝える。
「入国をご希望ですか?ええ。我が国はとても良いところですよ。どうぞ、皆さん入国なさってください。
ああ、ガイドをつけ、宿も先取りしますので少々お待ちください。」
何か厳重な手続きがあるのかと思ったがそんな事はなく、むしろ手厚く歓迎された。
待っている間、そこから見える景色で雑談をする。
「街を見た感じは、殺伐としてるけど特に何か問題がありそうな雰囲気はしないね」
エマが客室の窓から外を見ながら呟く。
「確かに、まるで近くにスラムが形成されるような貧富の差があるようには見えないかも」
ヤワラもそれに同調する。
「貧富の差じゃないんなら何か差があるんだろうけど、何だろ。能力関連の事とか?」
俺は色々考えてみる。そう言えば...
「クニヤさんとかリコはここの事知ってるんですか?」
「俺たちは知らないな。スラムの連中に聞いても誰も語ろうとしないんだ。まるで口裏を合わせたみたいにな。」
「...私も知らない。」
リコはクニヤさんのことを抱え、守るような姿勢でそう答えた。
しばらくはこれが続きそうだ。
少し待っていると奥から男性が出てきた。
「お待たせ致しました。それでは旅のご案内をさせていただきます。」
その男は服装こそしっかりとした正装だったが、髪は今整えたような痛んだ髪、やつれた顔、あざのある手の甲など、不審な点が沢山見つかる人物だったので、俺は一瞬だけ、顔を顰めてしまった。
周りをみれば皆んなもそれを感じたのか表情が曇っていた。
とは言え、せっかく案内してくれるんだからついていく他ない。どこか不気味さを感じながら街を歩いていく。
「みなさまはこの国が初めてでしょうからこの国の文化から説明致しましょう。
この国はその人能力に応じて階級が設けられており、国によってABC三つのランクを定義されます。
とは言えこれらはあくまで人材の適材適所を図るために設けられたものであり、これによって待遇が変化することはございません。
かく言う私もCランクの身分ではありますが、とても充実した日々を送らせて頂かせています。」
タイシはそれらについてしっかり素直にメモを取っている。
だけど俺はまるで今の話が全て真実だとは思えなかった。前述した不気味な点と、この説明の声が震えていたところからも、間違いなく待遇が平等であることは嘘だ。
「次は建物についてです。これらは...
考えながら警戒をしていたせいで何も話を覚えてないし、気づいたら夕方になっていた。
「こちらに宿がございますので、どうぞ、ゆっくりなさってください。」
そのガイドとは別れ、俺らは宿の一室で会議をする。
「やはり、ここはどうもきな臭いな。長居をして得をする事はないだろう。
明日までには柱を回収してここを立つ。みんな、それでいいか?」
「異論はないです。」
リュウさんの言葉に全員が頷いた。ただ、一人を除いて。
リコはあいも変わらず、全員が敵だと言わんばかりの眼差しで俺たちにすら警戒を解こうとしない。
まぁいいや、今日は疲れた。よく眠れるはずだ。
寝れない。
それもそうか。ただでさえ俺は知らない土地では寝にくいって言うのに、こんな不穏な場所で安心して寝れる訳がない。
一度外気にあたるついでに、この町を散歩してみよう。そうして危険がないことを確認できれば寝付けるようになる筈だ。
俺は体を起こすと、能力を発動して宿を出る。
念の為人にはバレないように散策しよう。
屋根伝いに音を潜めながら進んでいく。
散歩ではあるけど、一つ行く場所は決まっている。
昼間の案内役の人の入って行った家だ。実際のCランクがどんな扱いをされているかを見てみよう。
俺はそちらの方向に向かって進んでいく。
すると突然、
「んなこともできねぇのかCランクはよぉ!」
男の怒声が聞こえてきた。
その元は俺が行こうとしていた家からだった。
窓から様子を見てみれば昼間の案内役は大柄な男に殴打を受けていた。
やっぱり、差別がないなんて嘘じゃないか。
「お前のせいであの外人どもにこの国について怪しまれちまった。おかげで今日アレを実行することになっちまったんだぞ!聞いてんのか!あぁ!?」
男はボロボロの男をいたぶりながら怒鳴っていたが、ボロボロの男は既に事切れている様子だった。
その全身はもはや原型はなく、見るも無惨なほどぐちゃぐちゃにされてしまっていた。
それを見た俺を襲ったのは怒りと嫌悪感。
不思議なことに恐怖なんかは一切感じなかった。
そして自分でも驚くほど冷静に脳内で自分に二択を提示していた。一つは宿に帰って仲間と共に一度この国からさっさと逃げること。さっきの男の口ぶりからみんなの身を案じるのならこっち。
もう一つは柱を先に自分一人で回収してから逃げ出し、後腐れなくここをさること。まだ警戒はされてない分、今の方が回収はしやすいと思う。
ただ、俺はここで後者ほど勇者ではないのでそれほど迷いはなく、宿に戻ろうと決めて振り返る。
すると、そんな俺の顔の横をナイフが掠めていった。
「チッ、運がいいね。」
振り向いてなかったらあの"加速"したナイフは俺に刺さってた。
「なんでよりによって今なんだよ、リコ」
いつか牙をむくとは思ってたけど一番嫌なタイミングだ。
「そりゃそうでしょ、せっかく孤立してくれたんだから削れるところから削ってかなきゃ。」
「今はやめてくれ、この国はやばい。早く逃げないとリコも巻き込まれる!」
「それは好都合。ここでお前さえ足止めすれば皆んなそれに巻き込まれるって訳でしょ?
アタシは逃げる算段ならあるし、停戦の理由にはならないかな。」
言い終わるとまた加速した刃物を投げつけてきた。
「勘弁して...」
今度は避けられそうにもなかったので能力で横に回避する。
あっぶねぇ、この能力じゃなかったら絶対死んでた
「厄介な能力。」
そう言うとリコはナイフやらフォークやらを連続して俺に投げつけてきた。
流石に一つ一つに能力を使っていたら体力がなくなる。俺は屋根の瓦を一枚剥がして投擲を防ぐ盾にした。それでも伝わってくる衝撃からはやっぱり生身で受けたらひとたまりもないと言う事がわかる。
「ってかこれ宿の備品の食器じゃね?」
「だから何なの?使えるものは持っていくのが生き方ってもの。アタシはソレができないお前らが信頼できない。」
治安が悪いなぁ。でもなるほど、リコにとっては強かさが信頼になってるのか。
正直ここは戦わずに上手く撒いて皆んなを助けようと思ってたけど、一度この場で戦って実力を証明すればリコは信頼してくれるかもしれない。
まぁ勝てるかは分からないし、俺は実力というか能力のスペックだけでいつも勝負してる訳なんだけど。
俺は短剣を抜いた。
その直後に能力でリコの裏に回り込んで、不意打ちで勝負を決めにいく。
が、すんでのところで回避をされてしまった。
普通の人ならあそこまで近づかれてからの回避は不可能だけど、リコは自身に加速を付与してそれを可能にしていた。
「卑怯な技を使うね。」
「食器泥棒に言われたくはないかな。」
俺たちは睨み合う。
ここからは反射神経の勝負。
どちらかの反応が遅れたら負けのゲーム。
ただ長期戦になればこちらの体力が先に尽きてしまうだろう。早く終わらせる必要もある。
色々考えた結果、俺は相手の意識の外を狩る作戦を思いついた。
俺は短剣を構え直すとリコもバールを構え、俺の周りを加速でグルグル回り出した。
俺が加速に追いつこうとしても偏差を考えて移動する必要があって難易度やリスクが段違いだ。
ならどうするか、一番の好期は相手が攻撃してくるタイミング。そのタイミングはどうしたって行動が読める。ただ、俺のこの能力以外で加速にカウンターできる気はしないけど。
なんか使う技が不意打ちとカウンターって嫌だな。
まぁいいや、勝った方が正義だ。
予想通り、痺れを切らしたリコはこちらに攻撃してきた。そこで俺は予定通り瞬間移動を使う。
だが、そこまでは予想していたのか放った攻撃は浅く、すぐに体制を立て直してカウンターに対応しようとしていた。
が、周りを見回しても俺を見つけられない様子。
それもそうだと思う。
俺が移動した先、それはリコの上空だった。
いける!ここまできたら流石に...
しかし、剣を振り下ろしたものの、俺の剣はリコの上着の一部を切り取っただけだった。
「残念だったね。でもやっぱりアタシの方が一枚上手みたい。」
「そう、じゃあアレなーんだ。」
俺はさっき切った服の切れ端を指差す。
「何ってただの切れた服...あ。」
リコはそれを回収せんと加速を使うが、行き先がこんなにも明確にわかっているなら俺の能力によって剣を当てる事は不可能じゃない。
俺はそれを回収しようとしたリコの手首を切った。
するとリコは倒れ込んでしまった。
手首は確かこの特殊剣で切りつけたら10分もすれば起きれるくらいの場所だった筈。ちょうどいい決着になった。
ちなみにリコが回収しようとしたソレとは、クニヤさんの端末だった。
昼間のあの様子でクニヤさんを置いていくのは想像できない。上着のポケットらへんが妙に膨らんでたことを確認してからはそれを作戦の要にしてたってこと。
さて、みんなに伝えないと...
俺は宿の前まで戻ってきたが、そこには既に人がいた。
「大人しくしろ。なに、今なら殺しはしな...
相手が言い終わる前に瞬間移動で宿の中にワープし、みんなを起こし、状況説明をした。
「ならば君たちの命が第一だ。一度ここは撤退しよう。」
リュウさんがそう指示する。
「でももう...」
その瞬間、当たりが明るくなり、パチパチとした火の燃える音が聞こえてくる。
宿の扉が炎によって消失した。
「大人しくしろって言っただろ?守れないならお前ら全員焼却処分だ。」
そう言い、宿を燃やした男はこちらににじり寄ってくる。
「おらぁ!」
タイシはその男に向かって突進する。服が燃えてるけど大丈夫なのかあれ?
「こいつは俺が倒しておく、なぁに俺にとっちゃ火なんて道具にすぎねぇよ。」
ここは俺に任せて先に行けってやつか。
でもタイシだったら何となく何とかなりそうな気がしなくもない。
タイシが交戦しているのを横目に俺たちは国を出ようとするが、道中二人の女性に阻まれてしまった。
「アタシらアンタたちを殺したい訳じゃない。」
「だから素直に捕まってください!」
その口上はさっき聞いたんだけど...
「嫌だ」
全員がソレを拒んだ。その返事を聞くや否や、二人は能力を使い始める。
一人の周りには水滴が浮き始め、もう一人の周りには植物が生え、建物に根が張っていった。
炎水草って御三家かよ。
「俺がこっちの植物女を相手しよう。
そちらの水女は任せたぞ。」
リュウさんはそう言うと次々植物を斬りながら植物女に近づいて行った。
「子供とはいえアタシが4体1かい。面倒だね。」
「スズネは建物に、エマとヤワラは二人がかりで戦って!俺は横から追撃する!」
俺はみんなに指示を出す。
「おやおや3対1になったね。少しはやりやすいってもんだ。」
まだ能力を使う気はないのか、相手は剣を構えてこちらを待っている。
「エマ、いくよ!」
「オッケー!」
二人は息を合わせて飛び出す。そして1対2の近接戦が始まった。
以外にもそこは拮抗していた。なら俺が瞬間移動で後ろから隙をつけば確実にやれる!
ただ、俺の能力の行使は今日だけで五回。
限界ははっきりわかってないけど、そろそろ辛くはなってきた。
そんなことを考えながら俺はその人に不意打ちをかます。やばい、疲れてるのか少し遠くにワープしちゃった。まぁこの距離だし、この状況で俺に対処することはできないだろ。
そう思って近づこうとするが、そこで気づかれてしまい、一瞬こっちを振り向いた。
そして次の瞬間、その人にまとわりついていた水滴が全て俺に向かって飛んできた。
水は速さを極めれば鉄さえ切る事ができる。
これはその類の速さだと感じ、もう一度能力を使う。
今一瞬全てがスローモーションに見えたけど、あれもしかして死にそうなときになるやつ?まじで危なかった。
能力で避けたのちにもう一度近寄っていく。
今度こそいける!
そう思った刹那、地面から勢いよく水が吹き出し、俺たち3人はぶっ飛ばされる。
「あんまり子供相手に本気は出したくなかったが...
そうも言ってられなそうだからな。」
ついに本気モードになった相手にヤワラとエマは武器を構え直す。
「いいねぇ、最後まで諦めないその姿勢!
さぁ、存分に...」
パァン!
銃声が響く。
その人は話している途中で撃ち抜かれて倒れてしまった。
「ナイス、スズネ!」
打ったのはスズネ。
相手は勝手に勘違いしてたけど、『建物に』って言うのは『建物から狙撃して』って意味で、ずっと狙ってくれてたんだよね。
エマと上から降りてきたスズネはハイタッチをする。
こっちの戦闘が終わってリュウさんの方を見るとあちらもちょうど終了したらしい。
「本来ならかなり手こずる相手なんだろうが、俺の能力が万物を斬れる特性を持つばっかりにあっさり決着がついてしまった。」
なんか急にカッコつけ始めたなこの人。
昼のこと根に持ってるのかな。
「おい、こっちも終わったぜ。」
そこにリコを担いだタイシも合流し、全員が揃った。
「寝てたからコイツも運んできてやった。」
「ナイス、じゃあ逃げるか」
その時、俺たちが倒した三人組から何か細長いものが浮いて街の高台へ飛んでいった。
そして...
「俺にひれ伏すがいい!」
それが飛んでいった先からそんな声が聞こえてくる。
「なんか追ってきたぜ?早く逃げるか。」
俺はとりあえず逃げようとするが、俺以外のみんなはそうしなかった。
立ち止まって声の方に向き直したかと思えば、片膝をつき、本当にひれ伏したのだ。
「は?なんで...」
「何故か?位の高い者が低いものを統べるなど当然のこと。
むしろ何故お前は俺の命令に背く...いや背ける?
それほどに優れた能力を所持しているとでもいうのか?」
俺も振り向くと、その先にはドヤ顔で細長いものを持った威圧的な男がいた
「なるほど、お前の自分よりランクの低い能力の人を操る能力とかそこらへんの能力か?」
「質問を質問で返すとは...まぁいい。
唯一俺と対等となったお前に敬意を表してその質問に答えてやろう。
答えはNO。
俺の能力は...」
そこまで言うとその男は三本の柱を持った手を掲げた。
するとあたりの瓦礫などの様々な物が浮いていき、遂には空中に浮かぶ城となった。
俺の足場も浮いていき、城に向かっている。
まるで特別招待されているかのように。
こちらにできることもないのでとりあえずそれに乗っていく。
「私も行く!」
さっきまで倒れていたリコが俺の浮いている足場につかまっていた。俺はそれを引っ張り上げる。
「リコもあの謎の力の影響を受けてないのか。」
「そうだけど違う。私じゃなくてコレのおかげ。」
そう言うとリコは破れてない方のポケットから細長いものを取り出した。
「コレ、悪魔の柱。アンタも持ってるんでしょ?
それのおかげで影響を受けなかったの。」
この細長いシルエット、そうか。アイツが持ってた三個の棒も悪魔の柱だったんだ。
「じゃあアイツはこの柱のなんらかの能力を?」
「商人から聞いた柱についてのことを話すわ。
悪魔の柱は高エネルギー物質で能力の効力を増幅させることが出来る。
これを使ってこの浮島をつくってるわけ。
そしてここからが重要。
単体でも柱はなんらかの力を持ってるけど、それはそんなに大それたものじゃない。
だけど三つ柱を集めることで、その範囲内の'法則"そのものを書き換えることができる。
それで絶対的なカーストの法則をつくったってわけね。
ただ、それは柱を持っていれば無効化される。
だからいまから重要になってくるのは
・この柱を手放さないこと
・相手の三つの柱を回収して無力化すること
の二つ。
わかった?」
言ってくれてもよかったんじゃないの、クニヤさん。
情報の後出しは困るんだけど。
まあいいや切り替えよう。
「わかった。
そういえばリコは俺のこと信用してくれたの?」
「まあ多少は?
あれは私の負けだし、0から1にはなったんじゃない?」
そこが一番難所だからな。進展したならよかった。
0にだけは戻さないようにしないと
そんなやりとりの間に足場はどんどんと上昇し、遂には浮いている城についた。
「一人多いようだが、まあいい。
我が力をもって、真の強者であることを証明しよう!」
男はそう宣言するが、一度それは無視して俺は問いかける。
「何を思ってこんな制度をつくったのかが知りたい。」
「いいだろう、俺の理想を話してやる。
人間とは、数多の進化を経ていまに至るもの。
進化とは種の厳選、それによりさらに強い種へと適応していくことだ。
今現在、人間という種は停滞している。
誰もが生き残れる世の中で厳選は行われないのだ。だから俺は国民を選別しなければならない。
ただ、だからと言って弱者を排斥することが正解かといえばそれは間違いだ。
そもそも人間社会の構造上、弱者が存在しなければ成立しない。
俺の嫌う真の悪は自分の身の丈に合わないことを成そうとする分不相応な愚か者だ。
この者たちが強い種への進化を止めている。
それを否定するため、強者と弱者をあらかじめ分けておく必要があるのだ。
明確にそれらを区別することで弱者は社会を支え、強者がその社会の質を上げる役割を持ち、停滞することはなくなるのだ。」
これ自体は悪くはないんだけど、そうやって明確にカーストをつけると差別意識が高まって結局悪循環がはじまるんだよなぁ。
「はぁ、なるほど。別に分からないことはないな。
感情論者の俺の考えとは会ってないけど。
でも一つ聞きたいんですけど、どうやってあなた自身が強者側であると証明するんですか?」
「定義の話か?
それは簡単に証明できる。
お前らを殺すことでな!」
そう言うと男は瓦礫のいくつかをこちらに飛ばしてきた。
俺は瞬間移動で、リコは加速でそれらを避ける。
俺らの勝利条件は柱を奪うこと。正面から戦って勝てる気がしないし、それを優先しないと。
俺は能力で相手の側に移動し、柱を探す。
しかし相手は上着を脱いでそれを勢いよく飛ばし、俺はそれに巻き込まれて壁に叩きつけられてしまう。
リコがこちらを向いたので俺は首を振って返す。
予想通り、柱は男が直接保持しているわけじゃないらしい。
その瞬間、下からレーザーのような物が地面を貫き、天井をも貫いて天高く登っていった。
そのレーザーにより、城の後ろの方の壁が破壊されて
隠されていた悪魔の柱が見えた。
俺はそれを能力で回収し、柱の主導権を取り返そうとするが、やり方が分からずにグダグダしていると
二発目のレーザーが俺の前を過ぎて行った。
俺はその挙動を見て少し考え、一つの仮説を立てる。
その間にも男は柱を取り返そうとこちらに近づいてくる。俺はもう一度能力を使いリコの元に移動する。
「コレどうすればいいの!?」
「私もわかんないよそんなの!」
しょうがない、あれにかけるしかないか。
「リコの柱も貸して!」
その言葉にリコは一瞬躊躇ったが柱を俺に渡してくれた。
そして俺は計5柱全てを男に向かって投げた。
「何してんの!?」
リコは叫ぶ。でもコレしか俺は思いつかなかったんだ。博打だけど...
「なんだ?急に投降する気になったのか?
いいだろうその心に免じて...」
男の言葉は最後まで続かなかった。
地面からの三本目のレーザーが男を貫いたからだ。
俺が柱を回収し直すとその瞬間、男が気絶して能力の制御を失ったせいで浮いている城は落下し始めた。
やばいコレまで考えてなかった、どうしよう。
一人で焦っているとリコが俺の背中に触れた。
すると俺とリコは加速し始めて一瞬で地面に到達する。
死のジェットコースターにでも乗った気で死を覚悟していると、地面に激突しても傷一つつかなかった。
「私の能力、落下の衝撃が無くなるの。」
「あ、そうなんだ」
考えてみれば自分が加速してそのせいで大ダメージ受けたらアホすぎるもんな。そこは対策されてるのか。
下に戻ってくると三人の人影があった。リュウさんと...
「ハクさん!に...誰?」
一人は全く知らない人だった。
「やっと夜の便所の付き添い以外で"集合"使ってくれたな。」
その人はそんな軽口を叩いた。
「助かった。二人とも、よくきてくれたな。
まぁあと二人ほど足りないようだが、アイツらは今遠いし、仕方ないか。」
リュウさんはそう返すとこちらに向き直った。
「君たちにも助けられたよ、ありがとう。
コイツらの紹介をしよう。
ハクのことは知っていると思うが、
コイツらは俺の同期たちで、俺らは五人組で一応なにか大きな出来事があった時に招集できるように"集合"の信号を送れるベルトを付けてるんだ。
それを使って、来てもらったって訳だな。
でお前の知らないコイツは...」
「自己紹介は自分でしよう。キリンだ。
能力は釘をうつ能力。
あのレーザーの正体は僕の釘なんだ。
そして所属委員会は対異常現象委員会」
「あのレーザーってもしかしてエネルギーの多いところを狙って打ってました?」
「そう、下からじゃあ状況が分からなかったからね。
柱のエネルギーを頼りに打っていたよ。
さて、ここからが僕の仕事だ。ここは任せて、
君たちは次の国へ行くといい。」
俺たちは全員を回収して車へと乗り込んだ。
そして俺は運転しているリュウさんの隣に座る。
するとリュウさんは対異常現象委員会について話してくれた。
「対異常現象委員会ってのは別名対柱委員会とも呼ばれる委員会だ。
柱によって法則の書き換えられた国を是正して柱を回収し、委員会を配置することが本当の仕事さ。」
「委員会は柱を回収してるんですか?」
「ああ、だがあくまで悪人に利用されないようにするためだ。今は俺たちのために柱を集めてくれてる味方だよ。」
「この柱は持ってても?」
「言及されてないならいいんじゃないか?
お前だってスパイがいたことを知ってる組織に預けるのは不安だろう?」
まぁ確かにそれはそうかも。
それにしても、皆んなに何もなくてよかった。
近くにスラムが出来たのは、不当な扱いに遭った人々が国を抜け出して柱の効果がなくなったのはいいものの、
近くに逃げ込める国はなく、さらに国から離れ過ぎればゾンビがいるので仕方なくそこに住むことになったことから。
じゃあ何故、次の目的地の国も近いのにそっちには行かなかったんだろうね。




