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五回目の天国 (能力ものの冒険もの)  作者: マルキ
1章 記憶喪失〜仲間加入
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3月7日 いつかの記憶

「やっぱり解せないなー

なんだって俺がこんな旅をする必要があるんだよ」


借りている宿の部屋の椅子に腰掛けながら

ぽろっと自分の本音が漏れてしまう。



ここは異世界...のようなところ。


ここにいる俺たち五人は普通に学校に通う

高校生だったが、自分たちの国の外に出ると

漫画やアニメのような異世界みたいなとこだった


俺たちの住んでいた国は家電だのスマホだのの存在する発展していて、そこでぬくぬく育ったわけなんだが、そんな平和に育った俺らは何故か

平和とは程遠い外の世界を旅する羽目になった。


目的としては、この悪趣味な模様の刻まれた柱集め。

これを72個集めることらしい。

それ以上のことはまだわからない。

いや、なんとなく伝えられているけど、自分の中で半信半疑だ。



俺の名前はヒサト


ゲームが好きでちょっと厨二病を拗らせているところはあるけど、自分ではごく普通の高校生の範疇だと思っている。


まあ普通とは言ったが、俺は責任を負うのが嫌いなめんどくさがりだ。

だから目的のよくわからないこんな旅に付き合わされてる事に愚痴がでてしまう。




「まだ言ってんのか?ヒサト。」


横から、大柄な俺の友達がため息混じりに返す


彼の名前はタイシ。

強靭な肉体と抜群すぎる運動神経の持ち主だ

頭は...良いとは言えない。

だけど、バカじゃないし意外と冷静なやつ。

勉強はできないけどちゃんと先のことは考えれるタイプだ。

そして女子力も高く、家事が得意で将来の夢は料理人らしい。


「だって俺ら全員高校生だよ?

しかもあんなに治安の良くて技術力も高い

中央国で生まれて、何不自由ない暮らしをしてた貧弱が、いきなり文化も何もかも違うファンタジーみたいなとこでゾンビやら能力者やらと戦えるわけないじゃん。


あ、お前は別かもしれないけどさぁ」


俺は構わず愚痴を続ける


そう。この外の世界はゾンビなんかが跋扈する、とても恐ろしい世界だった。

そんな恐ろしい世界で温室育ちの子供に何ができると言うのだろう。


「なんでだよ、生まれも育ちもみんな同じだろ?

俺だって去年までは能力やらこの旅やらには無関係だぞ?」


タイシが返す


「ちがう、そうじゃなくて、

お前はその身体能力で敵との戦闘が成り立つかもしれないけど、

俺らにとってはそう簡単な話じゃないってこと


ゲームで例えるならタイシは最初からlv99あるけど

俺らはlv1から始まってるって話。

だからお前には俺らを姫プしてもらわないと。」


立ち上がりながらそう言い返す


タイシの身体能力は理由は不明として、人間を超越している。

タイシがいなければそもそもの俺たちの旅は成り立っていないレベルだ。


「まあそうか。お前は家でゲームしてばっかの引きこもりだもんな。」


タイシが安い挑発をする。


「別にお前だって好きで外に出るタイプの人間じゃないだろ。料理ばっか研究して。

自分の趣味に時間を費やす趣味人間としては俺と同じだ。」


この喧嘩にわざわざ乗るのはひとえに信頼の表れだ。

仲のいい友達じゃない限りこんなしょーもない問答はしないだろう。

...一応、本人の地雷である頭があんまり良くないことはディスらないように気をつけてはいる。


「はーいはい。わざわざ喧嘩しないで。そもそも論点がどんどんズレてるし。

私は何か熱中できる趣味があるってだけで羨ましいよ。


でもさっきヒサトも自分がlv1みたいな発言したけど

ヒサトはこんなかで唯一能力持ってるじゃん。」


向かい側の席から身を乗り出しながら、俺の言葉に噛みついてきたのは

気の強めな女子高生のエマだ

怒らせると何されるかわからないから怖い


「そうそう、しかも結構強い能力だし、

ヒサト専用の能力なんでしょ?」


それに加勢するのは中性的な見た目の男の子のヤワラ。

頭の良さはテストの点で言えば、この中で一番高くこう見えて努力家。

そして俺の義理の兄弟であり、優しい性格の持ち主

...俺以外には。


そう、俺は能力を持っている。

この世界のファンタジー要素の一つだ


能力とは、条件を満たすことで誰でも発現する可能性がある、物理法則を無視して様々なことができるとても強力なものだ。

...強力なのはいいんだけどいかんせん今のところ発現してるのは俺だけのせいで戦闘において前に出なければならないという責任が存在している。

強い力には責任が伴うらしいが、さっきも述べたように俺は責任の二文字が嫌いだ。

くそっ、早いとこみんなにも発現しないだろうか。


俺の能力は瞬間移動。どうやら俺しか持っている人がいない専用能力ってやつらしい。

これは能力をもらう時に説明されたことだが、

そもそもこの世界で得られる能力は通常能力といって

255種類の中からランダムに選ばれて、余裕で他の人と能力が被ることがあるらしいけど、ごく稀にその255種類以外の能力である専用能力を発現する。


...その俺しか持ってない能力ってのはそそるんだけど

いかんせんこの能力、全体的に地味だ。

いや、ノーモーションかつ即時発動で瞬間移動ができるのはめっちゃ強いんだけど...

もっとこう、派手なエフェクトとかなんかなかったんだろうか?

...まぁ目立たない方がより強い能力ではあるし、

変に特別な能力を持ってるってバレたらめんどくさいし、その点ではいいんだけど。



「いやー、カップルの二人から言われちゃったよ」


俺は軽口を叩く

そう、この二人は付き合っているカップルでもある

そしてこのイジリをして二人に睨まれるまでが

ワンセットだ。


「・・・」


無言のまま、エマは席を立ち

俺の至近距離まで歩いて顔を覗き込んでくる


エマの顔が近づき、

俺は心臓の鼓動が早まっているのを感じた




そして、頭からは血の気が引いていく

俺の体は恐怖のサインを出したのだ


「すいませんでした。許してください」


「よろしい。」


エマは座っていた席に戻って行った


危ねぇ、殺されるところだった


一息つき、俺は立ち上がる。

そして、冷蔵庫のメロンソーダを手に取り、自分の席にもどる。


席に戻ってジュースを飲みながら

俺はずっと黙っている女子の方を見る

彼女はスズネ。

タイシの妹で、活発的な兄とは反対に物静かな女の子だ

見た目こそ儚げな少女だか

耳栓をすることで、とてつもない集中力を発揮し

そう言う点ではカッコ良さも兼ね備えている

そしてスズネは...


視線を感じ、それが発されている方を向くと

エマがニヤニヤとこちらをみていた。


そうだ、エマは知ってるんだった。

いつもの俺の言動が言動だから

このことをいつからかわれてもおかしくない


その時、人が走って近づいてくる足音が聞こえた


「唐突ですまないが、イロンの奴から伝令だ。

『近くでゾンビが確認されたんだが

討伐の依頼を頼めないか?』とのことだ。」


若い男の人が部屋のドアを勢いよくあけると

俺らに助けを求めてきた

彼の名はリュウ。

この町の住民の一人だ


「近くかぁ、だったら行くしかないか」


俺はそれを承諾する俺らにとっての初陣だ。

一応は俺がこのメンツのリーダーなので決定権は俺にある。

...リーダーは押し付けられたものだけど




身支度を済ませたのちに、その現場へと赴く。

そこはほとんど平原のような場所だが

奥に壁のような崖の見える地形だった


「すまない。この町に、ワクチンの打ってある集団が

君たちしか今現在いないんだ。

俺は用事があるから手助けはしてやれないが

激励だけはおくっておこう。


そこまで強くないだろうし

お前らなら勝てるはずだ。」


リュウさんはそう言う


さて、まずは作戦会議だ


「じゃあヤワラ、作戦考えて」


俺はヤワラに丸投げした


「なんでよ、リーダーはヒサトでしょ」


ヤワラは当然の文句を垂れる


「いやいや、なんでみんな俺がリーダーで

納得してるの?俺はやっぱり向いてないと思うんだけど。」


数秒の沈黙の時間を経て

俺が折れる


「...わかった、じゃあ作戦を話すよ」


みんなは待ってましたと言わんばかりの表情をしている


はぁ、やっぱり俺がやるのか。


「って言っても、単純だよ?

タイシは主戦力として大まかな敵を片付けて

エマとヤワラはそのカバーに

人や変異種がいた場合は

俺が前に出てなんとかするから

スズネは銃で援護してくれ」


作戦を伝えると各々自分の役割を

全うするために散会していく


ゾンビとはとあるウイルスに感染し、

凶暴化した動物の名称だ

このウイルスは動物は空気感染するが人間はしない

しかし、体液感染はする

感染した人間は十秒経たないうちに破裂して

跡形も残らなくなってしまう

幸い、ワクチンは存在しているので

コレさえ打っておけば感染はしなくなる。

とはいえ、数が少ないので限られた人しか

ワクチンは接種できない。

そのためワクチンを打った人にはゾンビから

人々を守る使命が課せられる。


...巷ではこのウイルスは人間によって

作られたものだとか、"能力"によるものだとかの

噂が流れたりしているが...

それは今考えることじゃないな

結局、ゾンビ化した動物はそもそも脳がウイルスに

侵食されるから元には戻らない。


俺は専用の武器を手に取る

この武器は対ゾンビに特化した武器で

ゾンビ化した動物をコレで切ることで

ウイルスを滅菌でき、ゾンビを倒せる


俺の専用武器の形は短剣。

コレにした理由は...

大きな武器を振り回せるほどの体力がないからだ


っと、色々考えているうちに

タイシが専用グローブでシカのゾンビの大群を

殲滅している

ヤワラは槍、エマは西洋剣でタイシに続く


さて、俺の仕事は...


あそこにいるチーターか

チーターは本来意外と臆病だったり

単独行動が主だったり普通なら

他の肉食動物よりは危険は少ないんだけど

なんせゾンビ化で凶暴化してるし

足の速さは本物だから、かなり手強いだろう


こちらが近づくとチーターはそれに反応して

こちらに走り出した。


時速100kmを超える速度を、瞬間的とはいえ出しているその姿は圧巻だ。


どんどんと、俺とチーターの距離が縮まっていく

流石にあの速度を正面から受けたらやばい


10メートルの距離まで近づいたとき、

俺は"能力"を発動した


俺の能力は瞬間移動を使う。

そして、チーターのすぐ上に瞬間移動して首を刈る。


つえーなやっぱりこの能力。

応用も効くし、使い勝手がいい、日常生活でも使えると三拍子そろっている。


「ヒサト!まだいる!」


ヤワラが俺に向かって大声で警告する


振り向くと、まだもう一体のチーターが俺に迫っていた。

誰だ、チーターは単独行動って言った奴は。

って、早く能力を使わないと...


バン!


銃声がして、俺に向かっていたもう一体のチーターは倒れた

スズネが援護してくれたのだ


俺はスズネにグーサインをだすと

向こうもグーサインを返してくれた





コレでゾンビの討伐は全て終わったが

タイシが何か言いたげにしていたので聞いてみると


「そこの崖のところにある洞窟に、

人間が入っていくのを見たんだ。

ちょっとオレ、行ってきていいか?」


行こうとするタイシを俺は止める


「いや、俺がいくよ

あの洞窟...坑道かな?いつ落盤してもおかしくない

俺なら仮に坑道が落盤しても

外の景色さえ覚えてれば帰ってこれるし」


俺が一番の適任だろう

そう思って俺が行くことを主張した


「やっぱり、そう言うところでちゃんと

やってくれるのがヒサトだよね」


ヤワラが言う

正直、俺には何が言いたいか理解できなかったが

他のみんなは頷いていた










俺は一人で坑道の奥へと向かった


そこには一人の40代くらいの男がいた


「・・・誰だ?なぜここに来た?」


おっさんは俺に聞いてくる


「この坑道、もうボロボロでいつ崩落しても

おかしくないくらい危険なんで、それを伝えようと...」


男は俺に近づくと即座に俺の胸板に触れ、


「固定化」


...能力を使われた

字面から動けなくなる能力だろうか?

ん?あれ?


「悪いな、誰かは知らんが

お前はここで地面に埋まって死ぬ、

そういった『運命』なのだ」


そう男が言い放った瞬間

俺は能力で男の背後に能力で瞬間移動し、短剣を刺した。


この短剣などの俺たちが使う武器ははあくまでゾンビを倒すためのもので、人間に刺しても外傷は負わない。

が、相手のエネルギーを奪って気絶させることができるので、十分対人でも自己防衛くらいは果たせる。


「なぜ、能力が効かない?」


自分でもわからないけど、何故か動けた

能力が不発に終わったのか?


「そうか能力の効かず、瞬間移動の能力を持った少年。

お前がヒサトか

まだ出会う『運命』ではない奴と出会ってしまったようだ。

しかし私も、ここで倒れる『運命』ではないのだよ」


そう言うとその男は忽然と姿を消した


なぜ、あの男は俺の名前を知っていたのか

なぜ、目の前で突然消えたのか

様々な疑問が出てきた。


それらは最終的に、大きな疑問に変わった


「俺は一体、何に巻き込まれているんだ?」



そう呟くと俺は、

一人残された坑道の中で、俺は少し前のことを思い出していた

この物語を完結させる意思を固めました

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