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見切り発車注意
人生ってのは分からないもので、今まで勉強一筋だった俺は大学でイメチェンに成功し彼女が出来た
そして、堕落した
よくよく考えてみれば当たり前だった
勉強一筋でたいした娯楽も、恋愛も、コミュニケーションすらも育って居なかった所に「大好きな彼女」が現れたのだ
そりゃあ、学校休んでいちゃつくよねって話
そして、無事に大学を留年し家族と絶縁、そして同じく家族と絶縁した彼女と同棲という流れだ
幸いにも一人暮らしであり、二人ともバイトは在宅ワークをしてたので、大学を辞めてバイト生活に励んでいた
◆
「良い話と悪い話、どっちから聞きたい?」
「んだよ突然」
最後の行を打ち終えて一息ついた頃、彼女である井上 咲がいきなり話かけてきた
「答えて」
「うーん、じゃあ良い話から」
「良い話からね」
そういうと咲は布団から起き上がり俺の正面に正座した
「実は先月にね………宝くじ当たったの」
「へぇー、って、え!?」
「宝くじ当たった」
「何等!?」
「1等と前後賞で、あわせて7億」
「な、なな」
慌てて口を塞ぐ
叫ばなくてよかった!!
「7億かぁ、7億、へへへ」
「それでね、悪い話なんだけど」
「何か宝くじの話を聞くと怖いなぁ」
「……その7億、もう全部使っちゃった♪」
「へ?」
は?
「金使い荒ぁ!!!」
「でもどうせあぶく銭だし……」
「いやいや、えぇ……」
「ごめんね?」
「いや、咲のお金だし良いんだけどさぁ……」
一月で7億使うのはヤバすぎない?
「もちろん宝くじで当たったお金以外は使ってないよ?」
「誤差みたいなものじゃん」
「そうかもしれないけどさぁ」
「でも、咲のことだし、何か考えがあって買ったんだろ?」
「うん、私が買ったのは核シェルターだよ」
「なんでそんなもの買ったんだよ……」
近々核戦争でもあるのか?こんなに平和なのに……
「近々ね、戦争が起きるらしくってね、前から欲しかったんだぁ」
「……それ、どこ情報?」
「ゲーム」
「ウッソだろお前」
「ううう」
マジかよ、お前仮にも大学の主席合格者だったろ……
「いいもん!私が注文した核シェルターは自己完結型だから一生その中で生きていける最新型だもん!」
「今も引きこもりだけどさぁ、まだ引きこもりレベル上げるの?」
「うん!」
「うん!じゃないが」
しかし、買ったものは仕方ない
「それでね、ついさっき核シェルターのリフォームが終わったって連絡が来たの」
「リフォーム?」
「うん、元々偉い社長さんの所有物だったらしいんだけどね?会社が潰れちゃって売りに出されたんだって」
「へぇ、ってことは中古だったのか」
「そうだよ、だから凄く安く買えたの!」
「凄く安くて7億かぁ、違う世界の話だなぁ」
元々は100億以上したらしい
それが立地と自己完結故の欠点でこんなに価格が下がったらしい
「つまり、そのシェルターはド田舎の山をくり貫いて作られたと?そして自己完結型だから中に人が住んでいる前提で野菜畑や養殖場、養鶏場まであると?」
「そうだよ!」
「それって普通に核シェルター内で農家になるだけなんじゃ……」
「でも核シェルターだよ!ロマンだよ!」
「いや、ロマンなのは分かるけど……」
普通に田舎で農家したほうが良かったんじゃないかなぁ……
「後は何といってもシェルター管理システム!ナノマシンが自動的に掃除や設備修復、空調、インフラ何かも全てやってくれる究極のシステム!」
「急にSF出して来るの辞めて貰っていい?」
「いや?SFじゃないよ?前オーナーの社長さんの会社の開発物だったらしいよ?でも売り出す前に会社が潰れちゃったから探してもこのシステムがあるのはここだけでしょうね」
「いやぁ、しかしナノマシンかぁ、つい最近スマホが出たばかりってのに、技術って進歩するんだなぁ」
「まあ、仕組みはある程度理解出来たし心配するようなAIの反乱とかは起こらないと思うよ?」
「そんな心配欠片もしてないんだが……」
ナノマシンなんて50年後とか100年後とかにようやく出来るものだと思ってたけど2019年現在でもう開発されていたのか……
「というか、理解出来たのか」
「まあね♪この天才咲ちゃんに不可能はないのだぁー!」
「料理」
「うぐっ」
「掃除、洗濯」
「むぐぐっ」
「音楽、絵描き、書道、芸術……」
「いやーー!!」
ほんと、家事と芸術系統は苦手だよな
「時代はコンピューターなの!プログラムなの!」
「プログラムには正解があるからな」
「そういうこと!」
まあ、制御できるならそれで良いよ
「ともかく、買ったものはしょうがない」
「そうだよね!じゃあ早速一緒にシェルターに行きましょ♪」
「うん、色々準備してからな?」
「よーし、レッツゴー!」
こうして俺たちはアパートを出て核シェルターへと向かった