チビ・デブは人権ないよね?って言ってた金髪美女に、 背が高く、細マッチョになって、クラス中が見つめる中、告白したんだけど、 バッサリと断られてショックを受けていたら、可愛い女子から次々と告白された。
よろしくお願いします。
昼休みに入るとクラスの熱気がグイグイと増した。
野郎どもだけじゃなく、女子まで俺を注目している!くぅ~!
燐火の元へゆっくりと自信満々に歩いて行く。
燐火と目があった!
「杜山燐火さん、好きです、俺と付き合ってください!」
・・・
今日は高校の入学式。
雲一つ無い青空のもと、川沿いの満開の桜並木を歩いている。
新しい生活、新しい仲間か、ちょっと面倒だな・・・
「ねえ、聞いてる?
どうして入学式なのに、そんなだらしない格好なのよ!
どうして、髪を切らなかったの?寝癖あるし!
猫背が酷くなっているし!
制服はぶかぶかだし、ホント、だらしないよ!
ねえ、聞いてる、良太!」
このウルサイ奴は幼なじみの里見美弥子、通称ミャーコ。
ショートカットで大きな目、外見は猫をイメージさせる可愛らしさだ。
中身は、わがままで、気分屋で、俺に対するマウントが凄くて、そのくせ人見知りという
中身も猫を彷彿させている。ちなみに中身は可愛いとは思っていない。全くな。
「すぐに大きくなるから、大丈夫だよ!」
「え~、中1は10センチ、中2は8センチ、中3は5センチしか伸びなかったじゃん。
もう、伸びないよ!」
「うるさいよ、なんで俺より詳しいんだよ!」
「そ、それは・・・」
「俺のことはほっとけって。」
「俺ってボクちゃんのくせに!」
「ミャーコ、うるさい!」
そんなやりとりを続けていたら、背の高いメガネをかけた綺麗な女の子に微笑まれてしまった。
恥ずかしい・・・
クラス分けを見てみたら、5組でミャーコと同じクラスだった。
知り合いがいてホッとしたけど、ちょっと面倒だなっとも思った。
「やったね!良太、よろしくね。」
ルンルンになったミャーコについて教室に入ったら、雷が落ちた!
ドカーン!ビリビリとシビれた!
目の前にいる女の子は身長165センチくらいか、俺より少し高そう。
輝いている金髪はゆるふわウェーブで、大きな目も黄金に輝いていた。
(後で聞き耳を立てていたら、カラコン入れてた。)
高校の制服がコスプレかっていうくらい違和感がある体型で、
つまり胸が大きくて、お尻も大きいのにぎゅっとくびれている感じだった。
ミニスカートからのぞく太ももはなまめかしいまでの白さだった。
つまり、好みにドンピシャ!
一目見て恋に落ちた。さっきの雷はそう、フォーリン・ラブ・サンダー!
自分の席を探し、その周りの生徒たちと挨拶を交しながら、その金髪美女を観察し続けた。
その金髪美女はもう一人いたギャルとにらみ合ったあと、フレンドリーに話し始めた。
聞き耳をたてようとしたら、ミャーコに邪魔されてしまった。
入学式が終わって、クラスで自己紹介して、あっという間に帰宅時間になった。
彼女の名前は杜山燐火。
燐火はB子(もう一人のギャル。名前は忘れた。)と楽しそうに話していたので、
ミャーコが帰ろうと急かすのをもたもたとして聞き耳を立てていた。
「燐火はカレシいるの?」
「いないよ。」
「アタシもいないんだ。今度、合コンしようよ!どんな男が好きなの?」
「背が170センチ以下はありえないよね?
あっ、チビ・ハゲ・デブは人権ないよね?
で、イケメンで、キラキラ輝いている奴がいいけど、今は面倒だなって。」
俺って人権ないんだ・・・でも、でも、これから大きくなれば!
「ほら、もう帰るよ!」
ミャーコに背中を叩かれてしまった。
川沿いの満開の桜並木を歩いているけど、登り坂だけの理由ではなく足が重い。
ミャーコはテンション高く、ニコニコしながら話していた。
通学途中にやりとりを笑われた、背の高いメガネをかけた綺麗な女の子も同じクラスで、
ミャーコにフレンドリーに話しかけてきて、珍しく初対面で仲良くなったそうだ。
仙波奈美っていう名前で、学級委員に指名されていた。
入試でトップの成績だったんだろう。
「なあ、ミャーコ。俺ってイケメンかな?」
「えっ、何よ、急に。」
俺の唐突な質問にミャーコは戸惑ってから、何故か照れていた。
「う、うん、髪を切ったら、人によってはイケメンって思うんじゃない?
まあ、可愛いってカンジの方が強いけど。」
「そうか・・・じゃあ、俺ってデブかな?」
「なによ、今さら!えっと、まあ、デブっていうよりは、ちょっとぽっちゃり?」
「やっぱりか!ありがとう、また明日!」
「あっ、ちょっと!」
・・・
家に帰ったら、父親と母親が仲良くお茶していた。
「母さん、髪の毛切りたいから、お金くれよ。」
「なによ、アンタ。ゴールデンウィークで良いって昨日、言ってたじゃない。」
そう、昨日、断ったばっかりだった。
言い訳が浮かばない。
「ううう、好きな子が出来たんだ。」
「ほほう、なんていう子?」
母親がニヤニヤしていやがるけど、背に腹は代えられない。
「燐火っていう同級生だよ。それから、制服も少し詰めてくれない?」
「え~、ミャーコちゃんじゃないの?
しょうがないわね。・・・面倒だけど分かったよ。まあ、頑張りなよ。」
「ありがと。で、父さん、背が高く、カッコ良くなりたいんだけど、どうしたらいい?」
ちなみに、父親は身長180センチ、細マッチョでカッコいい。
母親は身長150センチ、すこしぽっちゃり。
俺は身長162センチ、体重61キロ。
母親似って思い込んできたけれど、生まれ変わるんだ!
「どれくらい高くなりたいんだ?ボディービルダーとかじゃないんだよな?」
「2学期までに170センチに!高校生らしい格好良さだよ。」
「じゃあ、カルシウム、タンパク質をいっぱい取って、
運動をすることだな。筋トレも少し。」
・・・
「どうしたのよ!」
次の日の朝、俺を迎えに来たミャーコは素っ頓狂な声をあげた。
「何驚いているんだよ。昨日、ミャーコが言うから直したんだけど。」
そう、髪を切って、きちんと櫛で寝癖を直した。
猫背に気を付けていて、昨日からフェイスケアも始めた。
制服の袖と裾を詰めた。
そのほかにもいずれはランニングだけど、昨日からウォーキングを始めた。
今日から筋トレもやるぞ!
「そうだけど・・・」
「どう?マシになった?」
「ま、まあね。でもそんな急に変えない方がいいんじゃない?」
「なんで?」
「えっと、それは・・・」
なぜか答えに困るミャーコ。
「あっ、ちょっとコンビニ寄るわ。」
・・・
コンビニで買ったカルシウムマシマシの牛乳を、教室に入るなり一気飲みしてやった。
うん、普通の牛乳の方が美味いね。
初日と外見が激変し、牛乳1リットルを一気飲みするという謎行動が受けて、
なんかクラスの人たちに話しかけられることが増えてしまった。
調子にノって、一番賑やかなイケメン二人と話してみたら、
マウントの取り合いが凄くて太刀打ちできず、すごすごと引き上げた。
イケてるキラキラ男子になるためにはファッションも頑張らないと。
これまでの地味系じゃ駄目だ。お金がいるな・・・
クラブに入るのは止めて、土曜日にコンビニでバイトすることにした。
色んな人が色んな話をしてきて、色んなクレームも受けたから、
対処能力がぐっと上がったよ。
初めて給料をもらったので、服を買いに行くことにしたら、
ミャーコがついてきてしまった。
「イケてるファッションは私にお任せ!」
「本当かよ?」
「どう、私のこの格好は?」
ミャーコが腰に手を当てて胸を張った。ないのに張られてもな・・・
「でも、似合っているよ。」
「でもってなによ!まあ、ありがと!」
・・・
Tシャツと夏用ジャケット、スニーカーを買った。
今までと全く違うカンジのモノで、似合っていないような気もするけど・・・
選んでくれたお礼にミャーコにアイスクリームを奢ることにしたら、
季節のイチゴとチョコクッキーで悩んでいた。
「両方買って、半分こにしようよ。」
「うん!」
アイス二つを前にウキウキしているミャーコに「待て!」をすると、
紙コップを二つ取ってきた。
イチゴアイスとチョコクッキーを半分に分け、
紙コップに入れた方を俺が食べることにすると、
ミャーコの恨みがましい目に気づいた。
「なに?ミャーコの方を多くしたけど?」
「いや、それはいいんだけど!もう!
ファッションだけじゃなくって、乙女心も勉強しろ!」
ミャーコにチョップされてしまった。
・・・
ゴールデンウィークにクラスメイトみんなに声を掛けてカラオケに行った。
ミャーコはもちろん、我が憧れ、金髪ギャル燐火とそのツレB子、
学級委員でメガネが似合うお嬢様仙波奈美、来なくてよかったイケメン2人を含め
20人ほどが来てくれた。
特訓の成果を発揮して、美声を披露したら、ミャーコは目をうるうるさせているし、
仙波奈美も「凄く上手ね!」って微笑んでくれた。イエス!
だけど、燐火はイケメンと話をしていて、俺のことは気にしていなかった。ちっくしょー!
月曜日、もう一度イケメン2人と交流してみたら、
今度は自慢話が7割、残り3割は同級生へのディスりなので、
全く話が合わなくって、燐火に近づくためといえども、2度と近づくもんかって決心した。
もうすぐ初めての中間テストだから、図書室に行って参考書を探していたら、
小柄な女の子が高いところにある本を取ろうと背伸びしていた!
なにあれ、小柄女子の背伸びって可愛い!同じクラスの与謝野ユキだった。
与謝野ユキは小柄で、ご機嫌になるとポニーテールが揺れる可愛い女の子だ。
話したことはなかったけど。
「与謝野さん、俺が取ろうか?」
「えっ、久住くん。うん、ありがとう。」
あっ、今さらだけど、俺の名前は久住良太。
本を渡すと与謝野ユキは、「ちょっとこっち。」って図書室の端っこへ向かうと、
小さな声で面白そうに話しかけてきた。
「ねえ、毎朝、牛乳1リットルを一気飲みしているけど、なんで?」
「えっと背が高くなりたくってね。」
「家で飲めばいいんじゃないの?」
「家では夜に飲んでいるよ。でも、どんどん背が伸びるペースが下がっているからね。
だから、焦っているんだ。」
「へー、でも1リットル一気飲みって凄いよね。
男子に一気コールされているけど、その方がいいの?」
「一気コールがないと、1リットルはつらいね。
でも絶対に笑わせないでね。牛乳吹き出したら大惨事だし、鼻から牛乳出そうだし!」
「ホントだ。一度、笑わしてみよう!面白そう!」
「ひでえ!」
与謝野ユキが微笑むと、ポニーテールが揺れていた。
・・・
中間テストに自信のないミャーコが一緒に勉強しようって誘ってきた。
学級委員の仙波奈美が一緒だそうだ。
ミャーコはともかく、仙波奈美が一緒なら成績も上がりそうだ。
うん、成績がよければ、燐火に教えるっていうイベントが発生するよな!
1時間以上、三人とも黙って勉強していたのだが、
ミャーコがうんうんとうなり始めた。難問にぶつかったようだ。
「ねえ、良太。これ教えてよ。
てか、もっと綺麗な字を書きなさいよ!こんなの読めないよ!」
「うるさい。試験の時は丁寧に書いてるからいいんだよ!」
「普段から綺麗に書かないと、いつまで経ってもヘタなままだよ!」
「うるさいよ!」
いつものとおりミャーコが意味不明なマウントを取ってきたので、
うんざりしながら対応していた。
仙波奈美なうふふと微笑んだ。
「貴方たちって突き合っているの?」
「付き合ってないよ。」
「ていうか、奈美の言葉、意味が違う気がする。」
真面目に答えた俺に対し、ミャーコは不審そうだった。
「そうかしら。結果として一緒でしょ?
じゃあ、デートはしたことあるの?」
仙波奈美は意味不明のことをミャーコに応えて、妖しく笑うとさらに切り込んできた。
「デートなんてしてないよ。」
「この前、二人で良太の服を買いに行って、アイスクリームを分け分けしたよ!」
俺の真面目な答えをミャーコは全否定した。
「それはお前がまとわりついてきただけだろ?」
「それでもデートでしょ!」
「いや、デートは好きな人とするもので、お前じゃない!」
軽く否定してやるとミャーコはわなわなと震えた。
「じゃあ、そんなに頑張っているアンタの好きな人って誰よ!」
「えええっと、今はいないって・・・」
ミャーコのツッコミにマズいと誤魔化そうとしたけれど、
仙波奈美の目が妖しく輝いた!
「嘘ね!お前じゃないってことは他にいるってことよね?」
「誰よ!」
「杜山燐火よね!
身長170センチ以上じゃないと相手にしてもらえないから、
毎日、牛乳1リットルを一気飲みしているんだよね!」
仙波奈美が断定するから酷く動揺してしまった!
「ななななななんですと!」
「あんなギャル、どこがいいのよ!」
「なに言ってんだ?
凄く可愛くて、胸が大きくて、お尻が大きくて、エロくて最高じゃないか!」
つい正直に答えてしまうと二人がハモっていた。
「「最低!!」」
・・・
中間テストの結果はクラスの男子ではトップで、学年で11位だった。
どう燐火?尊敬の目で見ていいんだよ。
期末テストは教えてあげようか?
って無視かよ~!イケメンばかり見てるんじゃねーよ!
ちなみに学年1位は仙波奈美だ。
休み時間になると仙波奈美が妖しい笑顔で近寄って来た。
「学年11位、おめでとう。」
「いや、1位の人に言われてもな・・・」
「11位は私のお陰だよね?なにか奢ってよ。」
「ああ、いいよ。じゃあ、放課後ケーキでも食べに行こうか?」
「いいわね。じゃあ、放課後よろしくね、良太。」
「ちょっと待った~。なんで二人っきりで行くのよ?
いつの間に良太って呼ぶように?」
ミャーコが髪を逆立てて、俺と仙波奈美の間に割り込んできたら、
仙波奈美の笑顔がより妖しくなった。もう、怖いくらいだよ。
「あら、ミャーコは良太に教えてもらったんだから、
良太にお礼をすればどうかしら。ふたりっきりで!」
「えっ、あっ、そうね、うん、じゃあ、良太、明日の放課後ね。」
怒っていたミャーコはたちまち沈静し、
何にも聞かれずに俺の明日の予定が決まってしまった。
・・・
ケーキ屋さんに行くと、仙波奈美はイチゴのタルトを選んで、俺はフロマージュを選んだ。
一口食べると口の中が至福となってうっとりとした俺を見て、
仙波奈美はやっぱり妖しく笑った。
「これも美味しいよ。はい、あ~ん!」
イチゴのタルトをフォークに突き刺して、
俺の口の前でゆっくりくるくる回している。
か、か、間接キスだとぅ!
動揺を見せたら負けだ!
「あむっ!うん、ホントに美味しいね。じゃあ、俺のもどう?」
フロマージュをフォークに突き刺して、彼女の口の前でゆっくりくるくる回してやった。
秘技「くるくる回し返し!」、語呂が悪すぎる!
「あむっ。うん、ホントに美味しいね。良太、ありがとう。」
いつもの妖しい笑顔じゃなく、照れ笑いの様な気がする。
今度からはこっちから攻めるようにしよう!
二人で商店街をお話ししながら歩いていると、向こうで女の子が男2人に挟まれていた。
「あれって与謝野ユキじゃない?」
ホントだ!相手は他所の高校生か!与謝野ユキは困っているカンジだ。
「ちょっと待って。その娘を離してくれる?」
丁重に頼んでみたのに、けんか腰で応えられてしまった。
「なんだ、お前?」
「その娘の友達だよ。」
与謝野ユキは俺にすがるような目をみせた。やっぱり助けないと!
「お前はそんな綺麗な彼女がいるから、コイツはいいだろ?」
「綺麗な彼女って・・・ホントのことだけど。」
「なあ、俺とこの人たち、どっちと行く?」
男の言葉と体をくねらせている仙波奈美を無視して与謝野ユキに問いかけると即答された。
「久住くん!」
「だってさ、その手を離してくれるかな?」
笑顔で頼んでみたら、チャラい方がキレて、殴りかかってきた!
「この野郎~!」
その拳を手で受け止めると、全力で握りしめ、手を下側に絞り上げると、
「痛い、痛い、痛い!」
悲鳴を上げながら、チャラ男は手を押さえ、跪いた。
鍛えていないチャラ男なんかに、パワーで負けるかよ!
「覚えていろよ!」
負け犬らしいセリフを吐いて、2人の男は逃げ出した。
・・・
頬を赤く染めた仙波奈美に右腕をホールドされた!う、動けない!
「強いんだね、良太!」
頬を膨らませた与謝野ユキに左腕をホールドされた!う、動けない!
「助けてくれて、ありがとう!良太くん!」
仙波奈美が与謝野ユキを睨んでから、囁いてきた。近いよ!
「助けてくれてありがとう、良太・・・」
負けじと与謝野ユキも、囁いてきた。近い、近すぎる!
「仙波さんは関係ないよ。私だけを助けてくれてありがとう、良太くん!」
「良太がいなかったら、私もホテルに連れ込まれて、レイプされて、
それを録画されて、それをネタに脅かされて、ヤツらの性奴隷になってたよ。
助けてくれて、ありがとう、良太。」
「そこまではないでしょ!」
・・・
6月は球技大会があって、1年男子はソフトボールだった。
イケメンAのピッチング、イケメンBのバッティングで決勝まで勝ち上がったんだけど、
決勝戦は最終回となっていて、3対1で負けていた。
ノーアウト、ランナー1塁、2塁となったけれど、
3番バッター、イケメンAの痛烈な打球は3塁ライナーでワンアウト。
続く4番イケメンBの打球はレフトにぐんぐん伸びていったが、
レフトのファインプレイでツーアウトになってしまった。
で、次のバッターは俺、久住良太だ!
見てろ、燐火。俺は打つ!サヨナラ逆転スリーランを!
ツーボールの後、振り抜いた打球はセカンドの頭を越え、運動場の奥へ転々と転がっていく!
クラスメイトの大歓声の中、ダイヤモンドを一周し、
ホームインした俺はクラスメイトにもみくちゃになった。
「良太、凄いよ!」
興奮したミャーコが両手を高くあげていたので、ハイタッチした。
仙波奈美と与謝野ユキ、そのほかのクラスメイトも待ち構えていたので、
次々とハイタッチしていく!最高に気分がいいよ!
あれ~、燐火はどこかな~
イケメン2人と向こうへ仲良く歩いている燐火がいた。う~ん、りょ~た、ショック!
・・・
7月1日。いつもどおり教室に入ると牛乳パックの口を開いた。
今は、このカルシウムマシマシ牛乳を最高に気に入っている。
「良太くんの、ちょっといいとこ、見てみたい!
大きく一気!ちゃちゃちゃ!小さく一気!ちゃちゃちゃ!
一気、一気、一気、一気・・・」
野郎どもの囃子に乗ってごっごっごっと飲み干していく。
そして飲み干すと牛乳パックを勝利のトロフィーのごとく高く、高く掲げた!
・・・
休み時間になると保健委員のミャーコを連れて、保健室に行った。
そして身長を測ると・・・
「やったよ!171センチ!良太、やったね!」
「イエス!」
・・・
教室に戻ると野郎どもに取り囲まれた。
「どうだった?」
「171センチ!」
「やったな!お前、急にデカくなったもんな。俺も牛乳飲もうっと!」
「で、いつやるんだ?今からか?」
「いや、昼休みに入ってすぐだ!」
・・・
4時間目が終わるとクラスの熱気がグイグイと増した。
野郎どもだけじゃなく、女子まで俺を注目している!くぅ~!
燐火の元へゆっくりと歩いて行く。
燐火と目があった!
「杜山燐火さん、好きです、俺と付き合ってください!」
「はあ、何言ってんの?」
燐火があきれたように大きく息を吐いた。
「えっと、好き・・・」
「170センチ超えたから、アタシと付き合えると思ったの?
バカじゃない?顔、整形してから来なよ、元がなくなるくらいな!」
顔を全否定されたので、泣きそうだ!
元々静まり返っていたが、熱々の雰囲気が冷え冷えの雰囲気に変わってしまった。
「ぎゃはははは!燐火、スゲーな、お前!
がんばれ、久住!顔、全部整形しちゃえよ!」
イケメン2人が馬鹿笑いしていた。
「・・・」
下を向いて、肩を落として、トボトボと自分の席に向かって歩き始めた。
「良太。」
仙波奈美の声が響くと、ギャル2人、イケメン2人は馬鹿笑いを止めた。
顔を上げると、いつもの妖しい笑顔でなく、
上気して緊張した笑顔の仙波奈美が立ち塞がっていた。
「良太、好きよ。私と付き合って。」
「「「「「えええっ~!」」」」」
俺も含めてクラスメイト全員がびっくりしていた。
俺が言うのはなんだけど、この娘、なに考えているの?
「はわわ~!」
みんな固まっている中、ミャーコが慌てふためきながら、俺の前に走ってきた。
「良太、好き!好き!好き~!」
「「「「「えええっ~!」」」」」
またクラスメイトの驚きの声が上がった。
仙波奈美の時より小さかったけど。まあ、幼なじみだしな。
ミャーコは叫んでから、急に恥ずかしくなったようで、小さくなってしまった。
固唾を飲んで、俺たちを見守るクラスメイト。
俺はどうすればいいんだ?フラれたばかりなのに!
「それで、どうするの、良太?」
いつもの妖しい笑顔になった仙波奈美が自信満々に問いかけてきた。
「ま、ま、ま、待ってください!」
遠くから決意の声が聞こえた。
顔を真っ赤に染めた与謝野ユキが近づいて来た。
「良太くん。す、す、す、好きです。私を選んでください!」
「「「「「えええっ~!」」」」」
俺も含めてクラスメイト全員がびっくりしていた。最高に!
固唾を飲んで、俺たちを見守るクラスメイト。
俺はどうすればいいんだ?フラれたばかりなのに!アゲイン!
「うふふ。じゃあ、4人でお弁当をたべましょうか、屋上で。」
仙波奈美が妖しい笑顔のまま提案して、歩き出した。
仙波奈美について歩き出すと、背中に野郎どもの視線が突き刺さって怖かった。
・・・
屋上へ上がると、雲が広がっていてそんなに暑くなくってそれだけはホッとした。
これからどうすればいいんだろうって途方にくれていたら、またドアが開いた。
燐火だ!ギャルB子とイケメンAとBも一緒だ。
「ねえ、久住のどこがいいの?」
燐火の興味津々の問いにミャーコが喰い気味に答えた。
「良太は、私がイジメられていたら全力で守ってくれたし、
この前、良太のお母さんが困っていたら全力で助けてたし、
目標ができたらそれに向かって全力を尽くしていて、凄いんだよ!」
ミャーコをほのぼのとした目で見ながら、仙波奈美が話し出した。
「入学したばかりの時は、陰キャのチビでぽっちゃりさんで、成績も普通だったのに、
たったの3ヶ月で、背は9センチも高くなって、細マッチョでカッコ良くなって、
それに、中間テストはトップクラスだよ。
その上、球技大会ではサヨナラホームランを打つという勝負強さと運を持っていて、
さらに2人のチャラ男から私を守ってくれたんだよ!」
「奈美ちゃん、ズルい!守ってもらったのは私だよ!」
「えええっ、そんな事があったの?ずるい!良太、私も守ってよ!」
ミャーコと仙波奈美と与謝野ユキがにらみ合っていた。三すくみだ!
3人の俺への恋心を見てイライラしたイケメンA、Bが喚いた。
「おい、久住!お前だれを選んだんだ?」
「ミャーコだよな?お前ら、幼なじみだもんな!」
「お前らには関係ないだろ。」
「うるせー、お前みたいな雰囲気イケメンに奈美は似合わないんだよ!」
「そうだ、お前みたいな高校デビューにユキはもったいないんだよ!
俺をディスるついでに、ヤツらの好きな人が判明した。
イケメンA、Bの言葉を聞いて、燐火とギャルB子が明らかに消沈した。
「貴方たちはそのギャル2人で満足しなさいな。ほら、がっかりしているわよ。」
「そうです、私たちはお断りです!
4人とも良いところはチャラい顔だけなんだからピッタリですよ!」
奈美が冷たく突き放すと、ユキまで猛烈な毒を放って追随した。
「「嘘だろ・・・」」
呆然として動けないイケメンA、B。
「おい、もう話は終わっただろ?もう俺たちだけにしてくれよ。」
「「くそが~!」」
俺の言葉に怒り狂ったイケメンA、Bは俺の襟を掴んだ。
「やっちまいな!」
燐火が喚くとギャルB子が続いた!
「顔は止めておきな!ボディにしな、ボディに!」
イケメンA、Bの手首を渾身の力で握りしめた。
「パワー!」って叫びながら。
「「痛い、痛い、痛い!は、離してくれ!」」
たちまち顔をゆがめてギブアップするイケメンA、B。
「帰れ、顔だけ野郎。」
「良太に顔しか勝ってないくせにエラそうにするな!」
「ホントに顔だけなんだから!」
ミャーコと仙波奈美、与謝野ユキがイケメン2人をディスっているけど、
君たち、俺は不細工だってディスっているからね?
ホント、大勝利のはずなのに、メンタル、ゴリゴリやられたよ!
4人が肩を落としながら去って行くと、ミャーコが呟いた。
「ねえ、良太。どうするの?まだ、燐火を追いかけるの?」
「いや、さすがにアレだけ言われたら、諦めるよ。」
「じゃあ、私と付き合ってください!」
与謝野ユキが食い付いてくると、仙波奈美がまあまあとミャーコと与謝野ユキを止めた。
「ねえ、良太。貴方には選択肢がたくさんあるのよ。」
「たくさん?
ミャーコ、奈美、ユキの中から選ぶか、3人とも選ばないか、4択じゃないの?」
仙波奈美が最高に妖しい笑顔を見せた!
「そうじゃないわ。ハーレムルートがあるのよ。
この中の2人を選ぶ、3人を選ぶって言う選択肢もあるから合計8択ね。」
「「「えええっ~!」」」
俺とミャーコ、与謝野ユキのビックリ声が曇り空に響き渡った。
「あら、ミャーコとユキは、1人じゃないと嫌なの?自信満々でうらやましいわ。
私はフラれるのが怖いから、ハーレムメンバーでいいけど。」
最高に妖しい笑顔の仙波奈美がミャーコと与謝野ユキを見比べた。
「・・・うん、私もフラれるのは我慢出来ない。」
ミャーコがうなり声を出した。
「・・・そうですね。結婚は1人しか駄目ですけど、
恋人なら合意があれば何人でもイケますよね。」
ユキがうんうんうんうんと肯いていた。
「ええええっ!えっと、マジで、ハーレム可なの?」
「「「うん!」」」
3人とも笑顔になった。マジか!
ほとんどを塗りつぶしていた燐火への恋心はもう真っ白となっていた。
ミャーコ、奈美、ユキとのことを思い出すと、心が温かくなっていた。
ぐいぐいと3人への恋心が大きくなっていった。
今のところ、3人併せて燐火の半分くらいかな。
で、3人は甲乙付けがたい大接戦だ。
この中から誰かを選ぶの?
3人とも断るの?
そんなの無理!
3人の目を順番に見つめると、3人とも希望に満ちていた。
断られるとは思っていないみたい。
「・・・ホントにハーレム可なの?」
「「「うん!」」」
3人の笑顔が大きくなった。マジか!
「じゃあ、悪いけど、ハーレムからお願いします。」
ミャーコがさすがの瞬発力で抱きついて来た!
「良太、好き~!」
「あ、ズルい、私も!」
ユキも抱きついてきた!
ゆっくりと歩いて来た奈美は俺の顔をホールドすると、唇を奪って満足げに微笑んだ。
「平等に可愛がってね、良太。」
「「あ、ズルい、私も!」」
ミャーコとユキにも唇が奪われてしまった!
うむ、ハーレム万歳!
読んでくれてありがとうございました。
3月12日に投稿しますので、これもよろしくお願いします。
「俺の父が、大好きな幼なじみの母親をレイプして捕まった。それから俺は・・・」