襲来
前々から伏線()を張ってたこいつを使う時がついにやってきた。
うん?投稿が遅いって?
ところで百合小説っていいですよね。名前が由井正雪みたいだし(大学のアレコレと私用で遅れました、大変申し訳ございません)
「とっ、止めろ!!コイツらを、とめっ」
「黙って死んでろっ!!」
狼狽える指揮官らしき鎧武者の首を刎ねて抹殺し、取り巻きどもに機銃をぶち込んで黙らせる。
超人的な反射神経で弾丸を切り飛ばしたサムライに飛び蹴りをかまし、押し倒して首を搔き切る。
刃を返して刺突し、膂力に任せて鎧ごと引き裂く。
龍種特有の超感覚が、ヒョウと、空を割く矢羽根の音を捉え。
「クロさん!一度下がってください!!」
「承知いたしました」
言われるがままに全力で後ろに飛び退り、秘色の刃が篠突く矢雨を切り払う。
一斉射撃の切れ目をついて生成された氷壁の後ろに潜り込み。
「クロさんっ、ケガしてな」
「エリナ様、耳、塞ぎますね」
「へっ?ちょっ、何を」
僅かにとんがったエリナ様の耳を掌で塞ぎ、沈黙を発動。
大きく、深く息を吸い込んで。
「イイィィィイイァァァアアアアアアァァァッッッ!!!!」
呪々唄合。
自身の声に致死の呪いを乗せることで無差別に呪殺する、対軍勢魔法。
耳を塞ぐだけで対処できてしまうチャチなものだが、一度っきりの不意打ちで使うなら十分だ。
………最も、手ごたえから判断して、神教国の兵士はともかく、この国のサムライは過半数が耐えたようだが。
やっぱり頭おかしいって、この国の人間。
独で弱り切った死に体とはいえ、龍が放った呪詛だぞ?
なんで気合で耐えてるんですかねホント。
若干のやるせなさを感じつつ、抜身の太刀(聖剣君が頑張って形態変化してくれました)を大盾に変形させ。
「クロ、やりなさい?」
「………承知いたしました、お嬢様。どうかご武運を」
「わかってるわ?」
強化術式・怪力乱神を発動しつつ前に走り、盾を掲げて腰を落とし。
「オッ、ラァッ!!」
お嬢様が盾に飛び乗った瞬間、全身の膂力を総動員して旋回させ、カチあげる。
無茶な強化とお嬢様の脚力の相乗効果で吹き飛ばされつつ、振り返り。
「………クロさん、本当に大丈夫なんですかね、こんな作戦とも呼べないような乱雑なやり方で」
「実際、こうするのが一番手っ取り早いので仕方ないかと。それに」
指差した先、赤黒い魔力の奔流が、渦雲のように空を埋め尽くし。
「お嬢様はお強いですから」
悍ましいほどに研ぎ澄まされた魔力の刃の雨が降った。
「はふぅ~………」
「あっ、あの、ご主人様。さすがにこの状況でコレは、少し気恥しいといいますか………」
「ナナ、私、疲れてるの。あきらめてちょうだい?」
「………まったく、ご主人様は甘えん坊さんですね。わかりました、気が済むまでこうしていてあげます」
お嬢様が大暴れした結果1時間足らずで陥落した城塞の、天守閣。
絶賛軍議中の天幕の中で、お嬢様がナナに膝枕されていた。
………一応、というか普通にまじめな会議中なので出来ればやめてほしかったりするのだが、俺にあの間に割って入る度胸はない。
臆病者?大いに結構。
お兄ちゃんはナナに嫌われたくないのだ。
「………ま、確かに、この城をまともに攻めるならこちらも被害は大きかっただろうし、初手で戦が片付いたから相手方もまだ動けないだろうけどさ。結果的によかったにしろ、よくもまぁ、あんな思い切った手を打てたものだね。最近の若者はみんなこうなのかい?」
「いくら儂ら法力僧が術をかけてやったとはいえ、1人であの城を攻め落とすとはなぁ。似たような事が出来る者など、右近殿くらいしかおらんじゃろ」
「単騎駆けは戦の花形とはいえ、流石にアレはちょっと………っていうか貴女、もしかして鬼の系譜ですか?」
「半分だけど、吸血鬼の血は混じってるわね?」
「ああ、なるほど」
「そういうことか」
「鬼なら仕方ないですね」
お嬢様の蛮行にドン引きしていた魑魅魍魎どもが、それを聞いて一気に合点がいったようなリアクションを取った。
「………ねぇ、そんな反応されると、なんだか少し心外なのだけれど?」
「でも鬼なんですよね?」
「………まぁ、そうね?」
「じゃあ仕方ないですね」
「鬼は頭おかしいからなぁ」
「あいつら、負け戦でも嬉々として突っ込んでくるからなぁ」
「高位の鬼なら首刎ねられた程度じゃ即死しませんしね」
「ねぇ、私、そんな脳筋と一緒にされているの?さすがにひどくないかしら?」
「でも、ご主人様って脳筋ですよね?」
「………」
「………あの、ご主人様?なんで黙ってってひゃうんっ!?」
「悪い子にはオシオキが必要ね?」
「やっ、あうぅ~………」
さらっとイチャイチャし始めた2人を、努めて無視して。
「それで、今後はどうするつもりで?」
「そう、さねぇ………。このまま一気に攻め入っちまいたいが、足軽どもの疲労が強い。この城で二日ほどの休息をとって、鴨沢領を迂回してミヤコに向かうのが得策かね」
「まぁ………それが一番いいでしょうね。個人的には、【國守】殿と死合いたかった気もしますが………」
「やめとけやめとけ、悪心坊。いくらお主でも、ありゃ無理じゃ。あんな奴と殺り合うなぞ、命がいくらあっても足りんわい」
「ですね。この戦が終わった後で、個人的に果し合いでも申し込みましょうか」
「そうせい。まだ、お主に死なれては困るでな」
「あの………その、國守というのは?」
好き勝手話始めたサムライどもに、おずおずと話しかけるナナ。
可愛い、ナナ可愛い。
うちの妹はマジで天使なのかもしれない。
「ああ、國守ってのは、島津長可────1人の騎馬武者の事だよ。国盗り戦の際、押し寄せる攻め手の軍勢を相手に一歩も引かず、倒れもせず、戦が終わるまで城の大手門を守り続けた、正真正銘の化け物さ」
「えっと………強くないですか?」
「強いさ。龍国一の大武辺者、『死なずの島津』、『鬼島津』だ。弱いわけがないだろう?」
「じゃ、じゃあ、その人が攻めてきたら大変じゃないですか?」
「………いや、それはないね。臆病者の鴨沢のボンボンが鬼札を手放すってのは考えづらい。よしんば手を出してくるにしても、兵力が足りないからね。先代の頃なら龍騎兵が12騎もいたが、今残ってる2騎以外、あのボンクラを見限って出て行っちまった。どちらにせよ、恐るるには足りないさ」
「………ならいいんですけど………」
「なにか、気になることでもあるのかい?犬神娘様?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど………」
「………ま、何かあったら遠慮なくいってくれよ?あんたらには世話になってるんだからさ」
「………はい」
「ほら、ナナ。今日はもう遅いですし、そろそろ寝てください。明日も早いでしょうから、ね?」
「はい!」
「お嬢様も、そろそろ眠ったほうがよろしいかと」
「わかったわ。ナナ、添い寝してくれるかしら?」
「かしこまりました!!クロ兄さんも、おやすみなさい」
「おやすみなさい、ナナ」
いつもより気だるげなお嬢様といつも通り元気なナナを見送り、なんだか粘着質な視線を感じる。
振り返って、婆が、面白いものでも見るような目で俺を見つめていた。
「………どうかしましたか?」
「いや、アンタ、犬神娘様の兄なんだろう?兄妹で妹のほうが背が大きいってのも、妙な話だと思ってね」
「俺とナナの血がつながってないだけです」
「なんだ、義理だったのかい。魂氣が似ているから気づかなかったよ」
不思議そうに尋ねる婆にそう返して、知らない単語が返ってきた。
「何ですか、それ」
「ああ、龍国の外じゃオーラっていうんだったか。生き物には、生まれつきの『魂の色』みたいなもんがあってね、アタシみたく長く生きてりゃ、そういうのが見えるようになるのさ」
「なるほど?」
「アンタとあの娘の魂の形が似てたから、てっきり実の兄妹だと思ってたんだけど………ああ、でも、アンタら、色がだいぶ違うね。あの娘の魂は日輪みたいな色してたけど、アンタのは死肉漁りの長蟲の目玉みたいな黒だ。形がそっくりで色がここまで違うってのも、珍しいもんだね」
「そうですか。とりあえず、ナナの魂がきれいなようで安心しました」
「………普通は、アタシに文句の1つや2つでも言うところだと思うんだがね」
「ある意味、ナナに一番ふさわしくないのが俺なのは、間違いなく事実ですから。………少し話過ぎましたね。俺もそろそろ休ませてもらいます」
湯呑に注いであった緑茶………のような見た目のクソまずい薬湯を飲み干し、席を立ち。
「ああ、それと、老婆心から忠告しておくけどね。誰かを守りたいなら、まずは自分を大切にすることだ。自分すら守れない奴に、誰かを守る資格はないよ」
「………わかりました。頭に留めておきます」
一礼だけして、部屋を出た。
「敵襲!!てきしゅーーう!!!」
「ふっざけんなよクソが」
ガンガンせわしなく鳴り響く警鐘の音に目が覚めた。
オフトゥンから飛び起きて窓に駆け寄り、大手門を抜けた先、2の門のあたりで火の手が上がっていた。
………見張りがいたにしては、やけに突破されるのが早いな。
いくら龍国の人間がスーパーサイヤ人めいた戦闘民族でも、この速度で城を攻略するなどそうそう出来ることではない。
俺たちがそうしたように、なにか、思い切った奇策が。
「………お前か」
「クロさん!!敵襲です、急いで迎撃の用意を」
「エリナ様」
「はい?」
「ちょっと、デートと行きましょうか」
「へっ?ちょっと、クロさん、何を」
大慌てで部屋に飛び込んできたエリナ様を、お姫様抱っこして。
「舌、嚙まないでくださいね?」
「ふにゃっ!?ちょっ、やめっ────」
かわいらしい悲鳴を無視して障子めがけて全力で突撃し、体当たりで突き破って夜空へ躍り出る。
鱗を足場に、2歩、3歩と跳躍し。
「っ!?お前っ、どこからっ」
「こんばんは、そしてさようなら」
鳥のソレに酷似した純白の翼で滞空していた男の肩に渾身の踵落としを叩き込み、人外の膂力でもって引き千切る。
同僚の身に降りかかった突然のスプラッタに怯みつつも、もう1人いた鳥人間が、機敏な動きで距離を取ろうとして。
「逃がさんよ」
左手の義手に仕込んでおいたフックショットが、とっさにのけぞった奴の右目を大きく抉り取る。
ちょっとした便利アイテム程度のものでしかないが、それでも、鋼鉄製の鉤爪を至近距離から高速で射出されれば、人は死ぬ。
奴の肩の肉を引き裂いて引っ掛けたフックショットを、ぐいと引っ張って跳び。
「死ね」
全力で喉に短刀を突き立て、巻き込むようにして落下。
クッション代わりにして着地しつつ首を掻き切り、槍を構えて突撃してきた侍の脳天に適当な瓦礫を投げて頭部を四散させる。
刃を、担ぐようにかまえ。
「クロさん、後でお説教です」
「かしこまりました、エリナ様」
背を屈めて、満月色の魔力の刃が敵陣に降り注いだ。
ブレイクダンスめいた体勢から身を起こしたエリナ様が、冷たい目で俺を見て。
「避けてください」
「承知いたしました」
ノータイムで放たれた致死の刃をダッキングで躱し、軽機関銃で前方を薙ぎ払う。
案の定というか超反応で弾いた馬鹿が数人いたので追加でぶち込んで黙らせ、弾倉を交換。
喉奥から溢れかけた血を、飲み下し。
「………エリナ様、気を付けてください。こいつら、動きが妙です」
「………そうですか?」
「はい」
攻城戦において、攻め手が門を突破したのならば一気呵成に攻め込むのが常だ。
グズグズしていれば門を再封鎖され、下手すれば挟み撃ちに遭う。
龍国の侍たちがそれを知らぬということはあり得ないし、なにより、攻めてくる敵の数が少なすぎる。
兵の練度も決して低くないのに、指揮がお粗末………というよりは、遅滞戦闘のソレに近いものを感じる。
まるで何かを待っているような────
「エリナ様、なにか恣意的なものを感じます。注意して────」
ぞわり、と。
うなじの毛が逆立った。
脊椎に氷塊を捻じ込まれたような悪寒に、全身の細胞が警鐘を鳴らす。
押しつぶされそうなほどの重圧に、気合で耐えて。
「オ、オオォオォォオオオオオオ!!!!!」
地響きのような蹄の音と、咆哮。
エリナ様にタックルをかまして全力で退避した俺の背後を、漆黒の砲弾が貫いた。
漆黒に金斑の見事な龍鱗を纏った巨馬が、鼻息荒く蹄を踏み鳴らして俺を威圧する。
その馬上、鞍に跨った一人の大男がいた。
黒漆塗りの当世具足を着込み、鬼の貌のような鉄兜を被り、右手に構えた巨大な十文字槍の切っ先が、剣花菱の家紋の描かれた黒の陣羽織を揺らす夜風を、断ち切るように薙ぎ斬る。
黒鋼の面頬をした男が、鬼のように牙を剝き。
「我が名は島津長可興里!!先代、鴨沢景昭公の頃より鴨沢家に仕えし島津家の棟梁、【國守】なり!!腕に覚えの者あらばいでよ!」
「クソが」
悪い予感が、当たったか。
イメージ的には鬼庭刑部雅孝とアンデラのアンブレイカブルと錆喰いビスコのサタハバキを足して割った感じですね。鎧は「黒漆塗黒糸縅二枚具足」で検索すれば出てくるかと。前田利政さんの鎧です。
ナナ「………この作者、ずっと百合小説ばかり読んでますね」
作者「もちろんです、プロですから」
クロ「そんなだから妹が腐るんだよなぁ」
お嬢様「???」
クロ「いえ、小4の妹に百合の存在を教えたらいつの間にか腐ってただけです」
お嬢様「ますます意味が分からないわ?」
次回「妹よ、お兄ちゃんを題材にして腐本を書くのだけはやめとくれ。お前地味にイラスト書けるし怖いんだよ。………え?もうやった?」
※ナナに腐本を渡すと覚醒して夢喰い狼の権能をフル活用し始めます。




