異海にて巨怪は朽ちる~後編~
英検とか色々あって遅れました。腹を切ってお詫びいたします
「うぅ………魚が1匹、魚が2匹………ウッ、頭がっ」
「寝てろ変態」
「ぬがっ」
変態の頭をモンキースパナでブッ叩いて眠らせ、漂流していた木片で作った即席の大机に、船の設計図を置き。
「というわけで、今回の計画について説明させていただきます。本日12時45分、今から3時間後に作戦を開始、英雄的蛮行、開演・死闘を発動したお嬢様のぶっ壊してぶっ壊すとバーナードの最大出力の極大無双斬撃であやかしの腹を内側から攻撃、むりやり怯ませて海面に浮上させます」
「なんというか………なかなか非道ですね」
引いたような顔をするエリナ様を、努めて無視して。
「最初に出てきた時、こいつは吼えてました。吼えるということは声帯があって、肺でないにしてもそれに類する臓器がある事は確かです。なら、腹の中から全力でブチかまして空気を全部吐き出させてやれば、苦しくなって浮上するはず。せいぜい良い悲鳴を上げてもらいましょう」
「………クロさんって、もしかしてサディストなんですか?」
「かもしれないわ?」
「あやかしの浮上を確認次第、発生炉の出力を最大まで上げて発進、道中のインスマスの迎撃は、ナナとエリナ様、アサカ様、右近様、甚左衛門様にお願いします」
「わかりましたっ!!」
「了解です、クロさん」
「承知した」
「いんすます………?」
「例の半魚人です、右近殿」
「なるほど、刺身にするか」
「右近殿、たぶん喰えません」
「なんじゃとぉ!?」
ギャーギャー喚く爺を無視して、投擲魚雷(即席)を取り出し。
「ダビデから回収した魚雷の内、まだ動くものを再利用して爆弾にしました。中距離までの迎撃程度ならこれでも十分使用に耐えるかと」
「………なんか、すっごく脳筋みたいな武器ですね」
「純粋な火力を押し付けるのも、また一興というものでしょう」
「本音は?」
「めんどくせえからコレで爆殺すればいいや」
「雑ですね」
「否定は致しません」
「いや、そこは否定しましょうよ」
相変わらずの能面顔のエリナ様がフッてきたのでノリノリで返し、なんだか呆れたような眼を頂戴してしまった。
解せぬ。
頭をポンポン撫でて来る義手を、払いのけ。
「とにかく、最高速度でこのバケモノの腹を遡って脱出次第、最大火力でブッ殺します。異論はありませんね?」
「そりゃ、異論はないけどさぁ………ホントに、アレ置いてくの?もったいないよ?」
「仕方ないでしょう、必要ないので」
「そんなぁ~………」
いまだに名残惜しそうなカティア様が指さした先では、パイプやらバルブやらフレームやらが複雑怪奇に絡み合った巨大な構造物が、青白い魔力光を放っていた。
半壊して半ば沈んでいたゴリアテから、なんとか回収した動力炉。
構造を知りたがっていたカティア様からすれば、今後2度と回ってこない解析のチャンスなのだろうが。
「却下です。宝物庫の容量にも限りがありますし、こんな、いつ暴走して爆発するかもわからないような危険物を持ち歩く趣味はありません」
「そこをなんとか」
「ダメです。そもそも、容量が限界間近なのもカティア様が無茶言ったからですよ?これ以上の譲歩は不可能です。どうか諦めてください」
「うぅ~………」
「まぁ、宝物庫の中の龍の頭の残骸を捨ててもいいなら話は別ですが」
「………わかった。我慢する」
親に叱られた子供みたいなありさまでそんな事を言うカティア様。
素材にしてよし、売ってよし、触媒によしの三拍子そろった龍の死骸と、詳細不明の技術のどちらを取るかの選択を技術者に迫るのが残酷なのは分かってるが、仕方ないのだ。
というわけで。
「ほら、そろそろ準備してください。ナナ、お弁当は持ちましたか?水筒は?おやつは銀貨3枚までですよ?忘れ物はしていませんか?あとで思い出しても取りに帰ったりは出来ませんからね?」
「えっと………はいっ、大丈夫です!!」
「保護者かよ」
「兄ですから」
「というか、おやつなんてあったんですか?」
「はい!」
「あるんですか………」
「はいはい、雑談はそのあたりにしてさっさと動いてください。時間は有限なんです」
「コレ、クロさんが始めたお話じゃ」
「エリナ様は黙っていてください」
「ムギュッ」
余計な事を言いかけたエリナ様の口にクッキーを詰め込んで、だまらせた。
「赦し給え、赦し給え、神の名に負いて我が犯す、この蛮行を赦し給え。天にまします主よ、我が罪を憎めども、我が身を憎むことなかれ。神の名に負いて犯す、この大罪を赦し給え。聖体は満ちて杯より四方世界へ零れ落ち、第7の天獄への扉が喇叭の音と共に開かれる、この喜びの時を祝福し給え。祈りの鐘が高らかに響き渡り、四海は救済の雨に包まれる。祈り、崇め、そして救われよ、今ここに、全ての罪は赦された」
「拡張弾倉接続完了、水冷式放熱器、正常に稼働しています。ナナ、初弾を空砲にして擲弾筒を装着してください」
「はい!」
「クロさん、エンジンの最終確認終わりました。いつでも行けますよ」
「ありがとうございます、エリナ様」
朗々と祈祷が響く怪物の腹の中で、淡い燐光が蛍火のように蠢き、掲げられた刃に集っていく。
クソデカ機関銃を即席の銃座に固定して、特大のドラムマガジンをセット。
不安がないと言えばウソになるが、12,3分程度ならなんとか持つだろう。
作業用グローブを着けたまま額の汗をぬぐったエリナ様が、レンチを片手に、僅かに顔を歪め。
「………クロさん、ほんとに、やるんですか?」
「本当も何も、これが最善手でしょう?ならば俺はやるだけです」
「でもっ」
「デモもストもありませんよ。それに、痛いのは慣れていますから。問題ありません」
「………そういう問題じゃないと思うんですけど」
「ほら、さっさと持ち場についてください。もうすぐ始まりますよ?」
「………わかり、ました」
苦虫を百万匹くらい噛んで潰したような表情のエリナ様が、ツカツカと足音を立てて舷側へ歩いていくのを見送り、甲板中央に描いた魔法陣の上に立つ。
アイテムボックスから、魔術回路を刻んだ鉄杭2本を取り出し。
「─────ッ」
鋭く研ぎ澄ました切っ先が、俺の両足の甲を貫いて甲板に縫い留めた。
激痛と灼熱感を堪えて無理やり押し込み、更に取り出した杭を、脇腹と右肩に突き刺す。
歪む視界の中、呪文を唱え。
「接続・身代わり人形」
対象が受けたダメージを自分の身体で肩代わりする魔術を発動し、多重結界を船の外殻に付与。
口から零れかけた血を、飲み下して。
「やってください、バーナードさん」
「歌い、語り、讃えよ!!聖霊に祝福されしこの時を祝え!!幾千幾万の祈りの果てに、神の国は降りて来る!祈りを束ね、そして剣と為せ、七度鍛えた銀の宝剣を以て、我は神の裁きを下す!汝、神敵よ、祈りの剣の前に平伏し、赦しを請え!流される血は審判の終わりを告げ、今ここに、神威たる裁きの鉄槌は振り下ろされた!!我らの主たる・神を崇めよ──────極大無双天殺勇者砲!!!」
「開演・死闘」
螺旋を描いて収束した黄金波が砲撃のように放たれ、直後、耳を聾するような砲撃音が空気をつんざいた。
調練された軍隊であっても一瞬で全壊しかねないような暴威が、非道にも一生命体の内臓に叩きつけられる。
血と肉片と海水と体液が雨のように降りしきる、もはや煉獄めいた光景。
直後、大気が確かに歪み。
「──────ッ!?!?」
「ぬがっ!?」
「ケヒャヒャヒャッ!!いい声で啼くなぁ、おい!!痛ぇか!?痛ぇよなぁ!?そりゃそうだよなぁ!!!」
「クロさんっ、かおっ、すっごく悪い顔になってます!!」
鳴り響いた絶叫に目を白黒させるナナと、間抜けな声をあげてひっくり返るメスガキ。
なぜか少し必死なエリナ様の声を、あえて無視して大きく息を吸い。
「カティア航海士!!対ショック・対閃光防御!!衝撃に備えろ!!」
「なんですかそれっ、そんなの聞いてな」
「アイアイキャプテン!起動・水流掌握!!」
「両舷全速前進、ヨーソロー!!」
「ヨーソロー!!」
「なんでノリノリなんですかお嬢様!!というか、待って、前から波がっ、きゃあぁああ!?」
奇妙な解説王めいた解説口調のエリナ様が素っ頓狂な悲鳴を上げ、船が真正面から大波に突っ込んで、倍以上に加速した。
水流掌握は本来、押し寄せる波の威力を削ぐための魔術だが、上手く使ってやればこうやって船足を速めることも出来るのだ。
無論、魔術の操作難易度は指数関数的に跳ね上がるが、そこは龍特有のハイスペックボディでカバー可能。
疼痛に軋む頭で、魔術を唱え。
「お嬢様ッ、船酔いは」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!ゴミクズみたいにぶっ殺してやる!!死ねっ、死んで詫びろっ!!魚の餌になって生態系に貢献しろ!!!」
「なんですっ、ご主人様!!良く聞こえません!!」
「ううっ、気分悪っ、うぷっ」
「あうぅ~………」
「うおぉぉおおぉぉっ!?お、おちっ、おちっ」
「掴まれっ、甚左衛門殿!!落ちたら死ぬぞ!!」
「あっ、アサカ君っ、危な」
「くははははは!!速いっ、速いぞ!!おい小僧!もっと速くしろ!!こんな速い舟は初めてじゃ!!!」
「ちょっと、静かにしてくれ、今、気分悪」
「うぷっ、もう、げんか」
青褪めたとか土気色とかブッチぎりで超越してもはや腐乱死体と大差ない顔色のお嬢様が死ね死ね言いながら銃を乱射し、まだ耳がやられたままなのか、ボケ老人みたいなセリフを吐くナナ。
姉妹仲良くダウンした変態とアマナ様の横で雑技団めいた人間橋を披露するサムライ3人にクノイチ1人と、とうとうゲロった変態に釣られて貰いゲロするバーナード。
場が完全にカオスに飲まれる中、必死の形相で手すりにしがみついていたエリナ様が、悲鳴を上げ。
「クロさん!!前方に敵影、数不明!たくさんいます!!」
「ライカぁ!!」
「言われっ、なくても!!」
ちょっと夢に見そうなレベルで群がってきたインスマスどもが、雷に焼かれて真っ黒焦げになる。
生きた肉の焼ける悪臭が立ち込める中、幾本ものトライデントが空を切って飛翔し。
「ッてぇんだよ、クソが!!」
「クロさん!?」
もとより見えてなかった左目と右わき腹が弾けた。
揺らぐ意識を気合で維持し。
「付呪・復讐請負人!─────ナナ、好きに暴れてください!!」
「M24・連投モード!!」
受けたダメージの分だけ範囲内の人間の攻撃力を底上げするバフを撒き、棍棒めいた形状の兵器がばら撒かれる。
血煙が渦巻き、薄汚い肉片が漂う海面を、最高速度のボートが疾走し。
「八艘跳び」
俺の肩を伝う、軽い衝撃。
止める暇すらなく、ナナの細身の体が、宙を舞っていた。
血塗れの地獄絵図の中でさえ絵になるような、芸術的な跳躍。
時間が止まったのかと錯覚しそうなほど粘ついた世界の中で、純白の大鎌を振りかぶったナナの腕が、ミチリと音を立てて確かに軋む。
ゾッとするほど無機質な憤怒を孕んだ獣の眼が、俺を睨み下ろし。
「刈り取って殺せ─────死神のッ、鎌!!」
悍ましさすら帯びた切断音が2回鳴って、大量のインスマスが一瞬で消し飛んだ。
ついでに俺の前髪も少し持って行かれた。
大鎌を振り切った体勢のまま自由落下するナナの腰に影鞭を巻き付けて回収し、僅かに険を帯びた、碧い瞳。
苛立ったように、薄い唇が歪み。
「クロ兄さん」
「はい」
「私、無茶しないでくださいって、前も言いましたよね?」
「はい。ですが今回のコレはってナナ後ろ危な」
「ですがもよすがもありません!!今後一切ムチャはしないでくださいっ、いいですね!?」
ナナの後ろから這い寄っていたインスマスが激昂したナナに頭を引っ掴まれて、そのままミンチにされた。
諸々の体液や臓器を撒き散らしながら絶命した半魚人を他所に、ナナが、呆れたようなため息をつき。
「………とにかく、クロ兄さんはもうちょっと自分を大切にすることを覚えてください。無茶が効くのと無茶をしていいのとは別なんですよ?」
困ったように眉を寄せたナナがマシンガンを乱射し、ボートに上りかけていたインスマスが蜂の巣になって落っこちた。
「それは………いえ、その通りですね。ところでさっきから」
「まぁ、その………クロ兄さんが私のために頑張ってくれているのは嬉しいんですけれど、だからと言ってクロ兄さんが傷つくとこを見たいわけじゃないんです」
俺を諭すようにそう言いつつ、ノールックで発射されたロケランが遠くで騒いでいた指揮官っぽいインスマスと取り巻きA~Kを爆殺した。
「こちらこそ、そう言ってもらえると嬉しいのですが、あの」
「………まぁ、私が何を言ったところでクロ兄さんはクロ兄さんのままなんでしょうけど、せめて、周りを心配させないように気を付けるくらいはしてください。いいですね?」
「………わかりました」
「ならいいんです」
俺の眼を見つめたままニパッといい顔で笑ったナナが、そのまま裏拳でインスマスを叩き殺した。
もうやだ怖いウチの妹怖いんですけど。
「ほらっ、お話は終わりです!皆さんも早く働いてください!!」
「ドンマイお兄ちゃん、きにすんなっていってぇやぁあ!?」
たわけた顔のフィリアに掌底をたたき込んで悶絶させ、床に転がしておいた投槍───投げ魚雷?を投擲。
盛大に水柱が上がり、粉砕されたインスマスの残骸が飛散する。
悪臭立ち込める中、龍の眼が、人間のソレを醜怪に模したような歯を捉え。
「皆様!もうすぐ出口です、こじ開けるので衝撃に備え」
「ナナッ!!」
「了解です、ご主人様!!」
皆様に警告しようとして振り返った俺の目の前で、ナナがお嬢様を担いでぶん投げた。
うん、ぶん投げた。
ナナが、お嬢様を。
ハハッ
「ナナナナナナ!?貴女、何を」
「バックアップはします!存分にやっちゃってください!ご主人様!!」
「ありがとう、ナナ。愛してるわ?」
英雄的蛮行の連続破壊ボーナスで爆発的に強化された身体能力に物を言わせたお嬢様が、あろうことか海面を蹴って加速した。
黄金の砲弾のように奔ったお嬢様が、大鎌を、水平に構え。
「付呪・食人月────茨十文字」
どす黒く染まった刃が閃き、一拍、ゾブリと音を立てて斬撃痕が喰われた。
ボートの上に降りそそぐ血の雨と、空中で気絶して落下するお嬢様。
スライディングしたナナがお嬢様を回収したのを傍目に、血塗れのボートが血霧の中を突き進む。
化け物じみたスケールの歯茎に激突する寸前、全力で魔力を搔き集め。
「短距離転移!」
内臓のひっくり返るような感覚と、薄暗がりに慣れた目を焼く、青く澄み渡った空。
空中に躍り出たボートが、波飛沫をあげて着水し、潮風の匂い。
刹那、小柄な2つの影が駆け。
「狙いよしっ、撃ちます!!」
「ブッッ殺してやる!!」
鼓膜が潰れそうな射撃音が木霊した。
黒々とした巨体をのたくらせて大暴れしていたあやかしの頭部が爆炎に包まれ、巨大な頭が、破城槌か何かのように海面に叩きつけられる。
石畳の上に引きずり出されたミミズがそうするような、嫌悪感を催すような蠢動。
………この様子なら、こちらを追ってくる心配はないだろう。
ここで無理に仕留めずとも、このまま逃げ切ってしまえばいい。
「カティア様!エンジン最大出力ッ、最大船速で海域を」
………待てよ?
俺は今、何を考えた?
逃げる?
逃げるだと?
この状況で?ここまで散々やられておいて、逃げるだと?
確かに、それが最善手なのは間違いないだろう。
だが。
「気が変わった」
「わ、ワンコ君?」
「ナナ、今から面白いものを魅せてあげます。そう何度も出来る芸当ではないので、見逃さないでくださいね?」
「はいっ!!」
勢いよく返事したナナの頭を撫でて愛で、宝物庫から龍の頭を取り出した。
大きな水柱をあげて落下したソレに、軽く手を触れ。
「煉獄鎖」
膨大な魔力で構成された龍の肉体を分解、掌握し、造り上げたのは、冒涜的に歪められた漆黒の鎖の群れ。
生ぬるく脈打つソレが、暴れ狂うあやかしの巨躯に絡みつき、複雑な紋章を刻みこんでいく。
限界を訴えるような頭痛を、笑い飛ばして。
「強化術式・厄災、天災、終末砲、魔神共の黄昏、魔王軍」
余剰魔力で自己強化の補助魔法を重ね掛けし、照準を合わせ。
「少しお勉強といきましょうか、ナナ。魔術の威力というものは、術者の力量と注ぎ込んだ魔力の量、それから魔術を行使するために使った術式の煩雑さによって決定されます。早い話、術者がへっぽこでも膨大な魔力と大規模な魔法陣さえあれば、理論上は戦略級魔術の行使すら可能なわけです。………コレは、その極地の1つとでも思ってください」
掲げ、握りしめた右手を、思いっ切り振り下ろし。
「地獄門」
瞬間、虚空が裏返って現出した暗黒空間が、五感を塗り潰すように炸裂した。
どす黒く悍ましいまでの闇を湛えた無数の眼が怪物を見つめ、海が凍り付き、同時に焼け爛れていく。
あやかしの体表が大きく波打ち、一刹那の後、葉巻の端を切り落とすような無造作な動きで、あやかしの首が刎ねられた。
暗い色の血を撒き散らす胴体から不可視の腕が肉片をむしり取っていき、悪夢めいた槍衾が突き刺さる。
まさしく地獄めいた戯れの幻視が数秒の間続き、ガシャンと、鉄扉の閉まるような音がして、もはや原型をとどめていない醜い屍だけが残された。
酩酊にも似た高揚と、虚脱感を飲みこんで。
「まぁ、ざっとこんなもんです。十分な量の魔力さえあれば、俺のような三下でもこれくらいは」
「ワンコくん?」
「カティア様、どうか致しましたか?」
「あれ、ボクのなんだけど、どうしてくれんの?」
何故かプルプルしてるカティア様にそう言われて初めて、そういやあの龍の頭、頼まれて持ち出してたのを思い出した。
懐から取り出した治癒の水薬をイッキして。
「ナナに良いところを見せたくてやりました。反省も後悔もしていません」
「うっきゃあぁああああああぁぁあああ!!!!!」
「ちょっ、お嬢様、ステイ!ステイですお嬢様!!落ち着いてください!!」
「うるっせぇ」
「ちょっと皆様!?見てないでっ、止めるの手伝って」
「いやよ。巻き込まれたくないわ?」
「えっと………その、すいません」
「ごめんなさい、エリナ様。私は無力です」
「あ~………ほら、カティアちゃん?気持ちは分かるけど、そろそろやめたほうが」
「黙ってろ!!」
「んぎゃばっ」
「お姉ちゃん!?」
モンキースパナで俺の頭を叩き割ろうとするカティア様と、その背中にしがみついたままズリズリと引きずられるエリナ様。
やさぐれた顔のメスガキがぼやいてそそくさと距離を取り、なんだか泣きそうな顔のエリナ様が発したヘルプが、容赦なく切って捨てられた。
全員がそれとなく距離をとる中、バカなのか人がいいのか下心があったのか、仲裁に入ろうとした変態がレンチの犠牲になって海に転落。
ここ最近で慣れ親しんだカオスが場を支配し始め、悲鳴と歓声と嬌声と絶叫が響き渡る。
ボートの縁に腰を下ろし、仰向けに寝っ転がり。
「いい天気だな」
「言ってろ、このバカッ!!」
入道雲を見ていた俺の脳天をレンチが直撃した。
あと1話くらいで幕間挟んで今章も終わりですかね。
次回予告
旧世界の怪物を粉砕☆ 玉砕☆ 大☆喝☆采した主人公一行は、長旅の末に龍国へ辿り着く。
ほのぼの和風ファンタジーを予想していた主人公の前にお出しされたのは、まさかの薩摩ホグワーツで────!?
「おはんのはレビオサー、おいどんのはチェストーー!!」
「名を申せ!」
「おはん名を申せ!!」
「えっ、いや、急に何を」
「もう言わんでよか!!!」
「グワーーーーっ!?」
「クロ兄さん!?」
「誤チェストにごわす」
「またにごわすか」
次回「凶悪!!示現流の恐怖(恐怖)」




