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龍に生まれた少年は、異世界令嬢の奴隷になる  作者: 御星海星
異邦にて巨魁は朽ちる
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駄メイド・PROBLEM・To be Contenued

遅れてすみません。

入試関連の問題を退治したので、このあともう一本投下します。(投下できるとは言ってない)



 白くうねった波濤が、鋼鉄製の舷側にぶち当たって砕けた。

 青く澄み渡った空をのんきに飛ぶカモメと、細切れて漂ういわし雲。

 ビーチチェアに腰かけてアイマスクをかけ、静かな波音と、規則正しいエンジンの響き。

 真っ黒く塗り潰された世界の中で、ゆっくりと目を閉じて。



「クロさ~ん、起きてますか~?」


 アイマスクを剥ぎ取られた。

 俺を覗きこむ萌黄色の眼と、白く眩むような日の光を受けて輝く翡翠色の髪。

 頬っぺたを摘まもうとした機械の指先を、払いのけて。



「………見たらわかるでしょう、邪魔しないでください」

「構って欲しくなったので、つい」

「ついって何ですか、子供じゃあるまいし」

「私だって、たまには童心に帰ってみたくなるんです」

「………そういうものなんですか」

「そういうものなんです。ほら、さぼってないで構ってください。私疲れました」


 なんだか嬉しそうに笑って手を広げるエリナ様。

 かわいい。

 だがしかし。


「エリナ様がもっとちゃんとカティア様たちを制御できていれば、せずに済んだ苦労だったんですけどね」

「うぐっ」


 船を見るなり興奮して突撃するエリナ様と、里の巫女(龍)をナンパして何故か成功、そのままワンナイトラブしようとする変態、どさくさに紛れて暴れ散らかすアサカ様のとこのクソ爺。

 カティア様を磔にして拘束、変態に張り手をかまして昏倒させ、ちょっと少女がしてはいけない顔で短剣を構えるアマナ様を宥めすかし、舌先三寸口八丁手八丁で爺をだまくらかし撃退。

 重労働どころの騒ぎじゃない、本物の修羅場を見た。


「エリナ様がもっとちゃんと手綱を握っていれば避けられた悲劇です。責任取って休ませてください。というか暑苦しいので離れてください」

「暑苦しいってなんですか暑苦しいって。私も疲れてるんです、癒しをください。具体的には抱っこさせてください。できれば匂いも嗅がせてください」

「変態かよ」

「あっ酷い!!世の中には言っていい事と悪い事があるんですよ!!」

「今のは言うでしょ、普通」

「アーアーアーアー!聞ーこーえーなーいー!!私だって疲れました!可及的速やかで優雅で瀟洒な休暇を要求します!クロさんと一緒に南国バカンスしたいんです!労働はクソ!花の都バンザイ!!生殺しはもう嫌なんですよ!!」


 手足を振り回してジタバタするエリナ様。

 本人もかなりストレスが溜まっていたのだろうが………なんというか、こう、見ててかなり辛いものがある。

 ぶっちゃけ見てられない。

 ………見てられないが、ここ最近、エリナ様が過労気味なのも事実。

 撫でられるのも、まぁ、嫌いではないし、俺が少し我慢して相手が満足するなら問題ないだろう。


「………わかりました。どうせすることもありませんでしたし、少しだけなら」

「お仕事終わりましたっ、クロ兄さん!!」

「ぐふぅ」

「クロさん!?」



 駄々を捏ねられるよりはマシかと起き上がり、背後から奔る衝撃と激痛。

 後ろを見て、すっごくキラキラした目で抱き着いてくるナナ。

 可愛い。

 可愛いが、腰が痛い。

 すっごく痛い。

 でも可愛いから許しちゃう。

 全力全開のやせ我慢で、表情筋を取り繕い、



「ナナ、お嬢様のご様子はどうでしたか?」

「ダメみたいです!!」


 【お嬢様】の看護を頼んでいたので様子を聞いて、すっごくいい笑顔でサムズアップするナナ。


「………然様ですか」

「半吸血鬼という事ですし、種族的な問題でしょうね。というか、リーンお嬢様には里に残っていただいて、クロさんの転移(テレポーテーション)で連れてくればよかったのでは?」

「【お嬢様】が船旅をしてみたいと言われなければ、実際にそうなっていたでしょうね」

「………まぁ、あの方らしいですね」

「こんなにおっきなお船も見れるのに、なんだか残念ですねぇ………」



 コアラよろしく背中にしがみついてくるナナの視線の先には、文字通りの()()が浮かんでいた。


 凄まじく巨大な船体と艦橋構造物に、上空で旋回する飛行型の【鎧】を着込んだ哨戒兵たち。

 従来の砲撃用戦闘艦と違い、舷側ではなく艦体上に艦砲を搭載した独特の形状は、どこか積み木じみた印象を受ける。



「第7世代甲型魔導戦闘艦12番艦・ゴリアテ。主砲は艦首に搭載した59口径98センチ魔導崩壊砲。副主砲は艦橋前方に3門、後方に2門搭載した48口径52センチ4連炸裂・徹甲魔術投射砲。副武装に追尾式魔導弾頭射出装置を甲板上に56門、爆破粉砕式魔導水雷発射管を右舷、左舷それぞれに8門づつ。両舷側上に29ミリ機銃58門と、おまけに魔導化機動装甲兵がわんさか。最大装甲厚は812ミリ、加えて禁呪クラスの戦術級魔術に数発まで耐えうる障壁を展開可能………と。攻撃力と防御力を盛れるだけ持った、まさしく海上要塞。はっきり言って設計者は変態ですね」

「それを言うなら、こっちの船も頭おかしいですけどね」

「そうなんですか?」

「ええ」


 そう、実を言うと、今乗っている船も変態的所業の産物だったりするのだ。


 第7世代乙型魔導雷撃艦3番艦・ダビデ。

 ゴリアテを半分くらいまで縮めてよりシャープにしたような形状と、流線型を多用した装甲。

 見た目通り装甲は薄く、主砲も2連装25センチ砲2基と小さめだが、この艦の本領は雷撃戦だ。

 コンセプトとしては、普段は護衛艦兼哨戒の役目をし、戦闘に突入すれば最高速度で敵艦体の舷側を駆け抜けつつ魚雷を大量に投下し、致命的な打撃を与えることが目的となる。

 傾斜装甲を使用することで必要最低限の実質装甲厚を確保し、装甲重量を削減、減った分は新式発生炉のバカげた出力でカバーする、紛れもない脳筋仕様。

 まったく、これだから変態共は。

 こんなバカなものを浮かべて楽しいのか問い詰めてやりたいが、どうせ満面の笑みで肯定してくるのだろう。

 もげちまえ。



「えっと………よくわからなかったんですけど、強いんですか?」

「すっごく強いですね」

「ほへ~………クロ兄さんと、どっちが強いんですかね?」


 肩車の体勢で俺の顔を覗きこんだナナが、そんな事を聞いてきた。

 ………ふむ。

 軍艦と俺と、どっちが強いのか、か。

 考えたことは無かったが、まぁ。


「先手を取るか艦内に潜り込むかすれば、確実に俺が勝ちますね。主砲の斉射を食らい続ければ危ういかもしれませんが、そうでもない限り負けはありません」

「さすがですね、クロ兄さん」

「………クロさん、ちょっと頑丈過ぎませんか?」


 ありのままの事実を述べて、変なものでも見るような眼のエリナ様。

 文句を言いたいのをグッとこらえて。


「全力を出せるなら、の話です。かなり疲労した今の状態で蹂躙できるとは思っていません。それに」

「それに?」

「問題なのは、アレが卓越した一個人ではなく、数を揃えられる兵器だという事です。現に、アレと同型の戦艦を帝国は25隻も造り上げました。全艦体に一斉に襲われれば、長期戦は免れないかと」

「逆に長期戦ですむんですか」


 龍ですから。


「まぁ、何とかなります。個人的に気になるのは、材料をどこから持ってきたのか、ですね。戦艦自体の鋼材だけならまだしも、炉に使用する魔法金属をどうやって調達したのかが謎ですが………カティア様やエリナ様なら、何かご存じなのでは?」

「………申し訳ございませんが、海軍派閥と関係が濃い御当主様が直々に設計、建造されたものなので、詳しい事は何も。動力炉に関しても、完全に秘匿されているせいで詳細すら」


 軍閥に強い影響力を持つマルチリルダ家の、公爵令嬢おつきのメイドなら何か知ってるかもしれないと思って聞いてみたが、あっさり否定された。

 俺の計算が正しければ、一般的な動力炉に使用される魔法金属──────アダマンタイトとミスリル銀合金、純粋なオリハルコン──────を触媒にした魔力炉の出力で同型の艦を動かそうとした場合、軽く国が傾くレベルの出費になるはず。

 高額な魔法金属以外のものを触媒に使ったのか、あるいはまったく別の方式の動力源なのか、気になるところだが…………



「然様ですか」

「お役に立てず申し訳ございません」

「いえ、そもそも俺が無茶な事を言ったので」

「それもそうですね、今度パフェでも奢ってください」


 ペコリと頭を下げたエリナ様にペコリと下げ返し、なんだか変な事が聞こえた。

 前を向いて、いつも通りの能面顔のエリナ様。


「………」

「なんですか、そんな残念な生き物でも見るような顔して」

「現在進行形で残念な生き物を見ているので」

「酷いですね。あとでススキヤのケーキを奢ってください」

「かしこましました、エリナさ」


 なんか、酷い事を聞いた気がする。


「………今、なんと?」

「あとでススキヤのケーキを奢ってください」

「………」

「もちろん、特上をホールでお願いします」

「クロ兄さん、すすきや?って何ですか?」

「バカみたいに高い値段の老舗の菓子店です。はっきり言って金の無駄ですね」

「無駄とは何ですか、無駄とは。あそこのケーキ、すっごく美味しいんですよ?」

「それは………まぁ、食べたことがないので何も言えませんが、アレに金を使うなら、屋敷に資金を回すべきです。俺に出来る範囲でナニカしますので、それで我慢してください」

「………わかりました」


 エリナ様の要求にノーを突き返し、あからさまにがっかりされた。

 肩車の体勢から一回転して着地したナナを抱きかかえて、そのままビーチチェアに横たわる。


「クロ兄さん」

「なんですか?ナナ」

「………なんでもないです」

「然様ですか」


 仰向けになってぐで~んと伸びるナナの頬をもにゅもにゅし、同じように頬を挟まれる。

 柔らかな狼の耳と銀髪を撫で、『ぬふ~~………』と満足そうな溜め息。

 そのまま撫で続けることしばらく、ゴロゴロしていたナナが体を起こし。


「………あの、クロ兄さん」

「どうかしましたか?」

「………ケーキ、食べてみたいです」

「わかりました。帝都に帰ったら買って来ましょう」

「対応の差が酷い!?」

「当然の結果かと………そろそろ時間ですね。ナナ、船内に戻りましょう」

「はい!!」

「ちょっとクロさん!さすがにこの扱いには納得いかな」



 後ろでギャーギャー喚くエリナ様を放置して、船内に戻った。



























「【お嬢様】。大丈夫ですか?」

「………これがだいじょうぶに見えるなら、眼を抉った方がいいわ?」

「然様ですか」


 ベッドに寝たまま呻く【お嬢様】の額に氷嚢を載せて冷やし、調合台の上の素材をまとめる。

 ヒヨスの蒸留油と黒睡蓮の花弁、ミイラの指とイモリの黒焼き。

 材料全部を薬研にぶち込んでゴリゴリし、竜涎香と琥珀、暗月樹の樹脂を1摘まみ。

 蒸留装置に入れて火に掛け、冷却管の中を流れていく暗緑色の粘液。

 出来上がったソレにハチミツと香料を混ぜ、飲みやすい大きさに練って固めて。



「薬を用意しました、【お嬢様】。お飲みください」

「…………酷い味ね?」


 器に盛って差し出し、黒色の丸薬を口に含んだ【お嬢様】が、泣きそうな顔になった。

 口に水を含ませて、なんだか情けない顔の【お嬢様】。


「噛まずに飲みこんでください」

「………クロ、コレ、本当に飲まないといけないのかしら?」

「意識レベルを一時的に低下させる、一種の麻酔薬です。流水の上を渡れない吸血鬼(ヴァンパイア)の性質を無効化することは出来ませんが、こうやって誤魔化す方法ならいくらでもあります。比較的マシな手段を取ったつもりでしたが………」

「………わかったわ、飲めばいいんでしょう?」

「はい。いくつか用事がありますので、俺はここで失礼させていただきます」



 【お嬢様】に一礼して部屋を出て、廊下の角で不安げに揺れる銀色の尻尾とメイド服の裾。

 溜息を飲みこんで。


「大丈夫ですよ、ナナ。薬を出しておきましたから

「………ご主人様、大丈夫ですかね。船に乗ってからずっと辛そうでしたし………」

「吸血鬼である以上、どうしようもないかと。龍国まで一週間ほどかかるとのことですし、早く着くことを祈るしかないでしょう」

「………です、ね」

「さぁ、仕事に戻りましょう。ナナは積み荷のチェックをお願いします。俺は、向こうの代表と話をしなければいけないので」


 しゅんとしたナナの頭を撫でて、金属製の通路を行きすぎ、タラップへ。

 鋼鉄製の階段を下りて、交差する剣と神教国の聖印が描かれたテントに入り。





「失礼します。龍国使節団参加学生臨時代表のクロです。本日は、よろしくお願いいたします」

「うむ。アルトハイム神教国、征伐教会神父(ゴッドファーザー)。バーナード・エル・シュトロハイムだ。よろしく頼む」




 2メートルは優に超えているであろう長身に、重厚な白銀鎧の上からでもわかる圧倒的筋肉。

 普通なら大剣として使われるサイズの剣を左の腰に差し、左半身のみを覆う構造のマントから巨大な鉄骨じみた特大剣を覗かせる、灰色の髪の騎士。

 壮年の顔に深く刻まれた、無数の古傷と眉間の皴と、額から右頬にかけて刻まれた青く輝く紋章、無骨な印象を掻き消すような感じのいい笑顔。


 ………魔力量はそれほどでもないが、まともにやりあったらキツイな。

 少なくとも、弱体化した今の俺が正面から殴り合ったら負ける程度には強そうだ。

 気を取り直して。


「それで、バーナード様」

「バーナードでいい。今でこそ御大層な肩書を貰っているが、俺も元は農村の出身だ。堅苦しいのはあまり好きじゃない」

「では、バーナードさん。まずは予定についてお話を」

「ああそれと、お前たち、一回外に出てくれ。サシで話がしたい」

「ですが、バーナード様」

「構わん、コイツ相手にお前らが居ても、どうせ大した壁にはならん」

「………かしこまりました」


 後ろで控えていた騎士数名が、バーナードに促されてテントを出ていく。

 問題ないのか気になったが、まぁ、俺が何を言ったとて、どうこうなる問題じゃないだろう。

 何故か俺を睨みながら幕を下ろす騎士から、目を背け。


「では、そろそろ話を」


 ふりかえって、バーナードが土下座してた。

 わけがわからない。

 わけがわからないが、面倒事の匂いがする。

 猛烈な嫌な予感を務めて無視して、とりあえず起こしに。



「旧政府軍の関係者とお見受けする。どうか、俺たちの計画に協力してもらえないだろうか」

「うっげぇ」


 はい面倒事確定。






ドドドドド┌(┌ ^o^)┐ホモォ



次回予告


なんか妙にホモ臭いおっさんが登場し、後ろの危機を覚える主人公!

腐った妹にO☆HA☆NA☆SI(武力交渉)を仕掛けられた作者(お兄ちゃん)は、それでも必死に打開策を巡らせる!!

 汗と吐息の混じる薄暗い部屋に、鋏の音が鳴り響き。



「みぃつけたぁ」

「ぬ、なんのようで」

「臭い豚は、去勢しないと、ですよね」

「あぶなぁいっ」

「なんで避けるんですかぁ?よけるとぉ、当たらないじゃあないですかぁ」

「当たりたくないから避けるんだが!?というか、なんで急に」

「死ね」

「あっ、ちょっ、まっ、ぎゃあああーーーーーー!?!?」



次回「GOODBY・MYSON」


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