メスガキとの邂逅
プライベートが糞過ぎで投稿遅れました。
ボク悪くないです(大罪人)
目が覚めた。
知らない天井だった。
………いや、ネタ抜きにマジで知らない天井だ。
やけに重い体を起こし、ぶかぶかの病人服とサイドテーブルの水差し。
水を飲もうとして、手に力が入らずにガラス製のそれを落っことしてしまった。
ガシャンと大きな音が響き、どこか異邦の空気を帯びたドアの向こうから、ドタドタと誰かの足音。
ふわりと鼻に香る、嗅ぎ慣れた、陽だまりのような匂い。
「クロ兄さん!!」
「ナナ、無事で」
ドアをぶち破ってダイブしてきたナナを受け止め、ミシリと背骨が軋む音。
気合と筋力で慣性を殺して、熱烈なハグを食らう。
大型犬にでも圧し掛かられているような気分だ。
というか、力、強。
「ほんとっ、何バカな事やってるんですか!!こんなにボロボロになって、何日も起きなくて、もしこのままだったらどうしようって、私、ずっと怖くて…………」
ポタリと、雫が頬に零れ落ちた。
クシャクシャに歪んだ顔と、涙で潤んだ蒼色の瞳。
すすり泣くナナを抱きしめて、ゆっくりと頭を撫でる。
柔らかな人肌の感触と熱を直に感じながら、慎重に言葉を選び。
「………すみません、ナナ。心配させてしまいました」
「………ほんとにそうですよ。私が、どれだけ心配したと思ってるんですか。無茶しないでください、なんて言っても意味ないのは知ってますけど、少しくらい、自分の事も考えてください。見てる私もつらいんですよ?」
「善処します」
「………そこは、約束して欲しかったですね」
苦笑いを浮かべたナナの目元を拭い、足がふらつくのを堪えて立ち上がる。
相変わらず腕は動かないし左目も見えないが、問題なし。
ナナに手を引かれるままに、見慣れない部屋を出た。
「ふむ…………左腕は萎えたまま、左目も相変わらず潰れておりますじゃ。内臓も随分ボロボロですし、はっきり言って、なぜ生きているのか不思議なくらいですな」
「処方箋は」
「入用なのは死亡診断書ですじゃ。儂もかなり長く生きておりますが、こんな重態で生きている人間を見るのは初めてですじゃ」
「なるほど?」
プン、と古黴のような独特の臭い。
落ち着いた木目調の木張りの床に座り、検診道具をしまう老医。
あの後すぐ拉致された俺は、同じく拉致されてきたらしき医者に診察されていた。
まぁ、それはいい。
色々ズタボロなのはデフォルトなので問題ないし、健康診断は大事だ。
問題は。
「ねぇ、クロは治るのよね?」
「わからぬ。儂も手を尽くしてみるが、こればっかりはどうにも…………」
はだけた色白の肌と、剥き出しの鎖骨の曲線。
ボディラインが浮いて見える着物には、黒地に金の流水紋が描かれていた。
牡丹の花をあしらった錦の帯を締め、背中に流した金髪には漆塗りの簪。
和服の裾から覗くすらりと伸びた健康的な太腿と、何故かブーツとニーソを組み合わせた足回り。
様になってはいるが、いささか露出度が高すぎる。
というか、なんで和服?
「あの、お嬢様。その服はどこで」
「この里の民族衣装らしいわ?似合ってるでしょう?」
ふふんと鼻を鳴らし、自慢げに笑うお嬢様。
色々と目に毒だが、それが気にならない程度にショックがすごい。
一歩間違えば露出狂扱いされるだろ、コレ。
「マジか」
コレが民族衣装なのか。
なんというか、この服を着こなせるのは普通にすごいんじゃなかろうか。
相当スタイル良くないと色々大変なことに。
「噓ですじゃ」
「………え?」
「嘘ですじゃ。おおかた、里長の孫娘の悪戯でしょうな。悪い子ではないのですが、3度の飯より人をからかう方が好きな子ですじゃ。お客人、どうか、許してやって」
「クロ」
「はい」
「見つけ次第叩きのめしなさい」
「かしこまりました」
「お客人、どうか、許してやって」
「叩きのめしなさい」
「かしこまりました、リーンお嬢様」
「じゃから、その、本人もそこまで悪気があったわけじゃな」
「悪気が無かったら何やっても許されるわけじゃないでしょう?社会を舐めたクソガキにはそれ相応の罰が必要かと」
「い、いや、でも、相手は子供で」
「子供だからこそ、今のうちに調教しておくべきでしょう」
「えぇ~………」
というか、今回の事件、場合によってはナナが騙されていた可能性も十分にあるわけで。
つまり生かしておくわけにはいかない。
「さぁクロ、メスガキを理解らせに行くわよ?」
「ちょっ、ちょっと待てい嬢ちゃん!!色々とまず」
焦って引き止めようとする老医を引きずったまま、部屋を出ていこうとするお嬢様。
流石に止めようとして、ガラリとドアが開く音。
質素ながら品のいい服の女中らしき人が、室内を見て見事に硬直した。
互いに見つめ合い。
「………お取込み中、失礼いたしました」
「失礼しないでください」
「申し訳ありませんが予定が生えてきそうな気がしないでもないので失礼させていただきます」
「なんですか予定が生えてきそうな気がするって」
「これにて失敬、ドロン」
「まさかの煙幕!?」
女中さんを説得するのに小一時間かかった。
「ナナさん!!」
「アマナさん!!」
ヒシっと抱き合うチビッ子2人を傍目に、急須から茶を注いで啜る。
ほのかに甘く香る独特の苦みを味わい、一息。
なんというか、落ち着く味がする。
大量に買って帰ろう。
濃緑色に色づいた液体をぐいと飲み干し。
「それで、お嬢様、今なんと?」
「ここは龍国じゃないわ?」
「つまり?」
「私が説明しましょう」
後ろから聞こえた無感情な声に振り返り、ここ最近で見慣れた義手。
ほんとに何故か和服を着ているが、黄銅色の義肢が剥き出しになっているせいで、どこか非人間的な、人形じみた様相を呈していた。
ある種怪物的なソレに、僅かに怯み。
「ご無事でしたか、クロさん」
「なんとか。そちらもご無事で何よりです」
「………クロさんが身を挺して時間を稼いでくださったおかげです。アレが無ければ、私だけでなくお嬢様方も危なかったでしょう。本当に、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げられた。
………少し、むず痒いような気分だ。
だが、悪い気分じゃない。
「それで、状況説明でしたね。クロさんがデコイになった後、結局エンジンが壊れたらしく列車が途中で立ち往生しまして。にっちもさっちもいかなくなっていたところを、たまたま通りかかったこの里の人に助けられて、今は龍国から迎えの船が来るのを待っている状況です」
「………つまり?」
「あと2週間くらいやることがない感じです。ニートですね」
「然様ですか」
「あまり休暇もとれていないでしょうし、クロさんもゆっくり休んでください」
「はぁ………」
休み、か。
正直言って、俺に休む必要があるとは思えない。
というか、そんなに疲れて見えたのか?
確かに、ここ最近の連戦で消耗してはいるが、それにしても。
「確かに、クロには休息が必要ね?」
「お嬢様」
「しばらくやることもないし、ちょうどいいでしょう?」
「………かしこまりました」
ふむ。
休めと言われても、どうやって休んだらいいのかよくわからない。
いや、マジで休みって何すればいいんだ?
強いて言うなら、釣りか、読書か、それとも。
「2週間寝るか…………?」
「正気ですか?」
「いえ、休みの日に何をすればいいのかわからないので、とりあえず寝ようかと」
「買い物に行くとか、劇場に行くとか、色々」
「あいにく趣味がないもので」
「えぇ…………」
引いたような声を出すエリナ様はさておき、仕事がないとなれば本当にやることがない。
そんなに多くの物を買う予定もないし、この里に何か買うようなものがあるかは未知数。
よくわからない木彫りの熊くらいならありそうだが、それくらいが関の山だろう。
「帝都の屋敷なら、ナナの写真コレクションを整理して時間を潰せたのですが………」
「え?」
「そろそろアルバムも6冊目に突入しますし、いい機会だったのですが、仕方ありませんね。また今度、時間を見つけて整理することにしま」
「あの、クロ兄さん、ソレ、初耳なんですけど?」
ケモミミをピクつかせるナナに、セリフの途中で遮られた。
………そういえば、ナナは知らなかったな。
「言ってませんでしたから仕方ないかと」
「仕方なくないです。というか、いつ、写真を撮ってたんですか?」
「割といつも、ですね。学院の裏庭の木陰で昼寝してるところとか、ソファーで2度寝しているところとか、クッキーを焼こうとして失敗したのを証拠隠滅しようとしてるところとか」
「クッキー失敗したのバレてたんですか!?というか、いつの間に!?」
「それと、本シリーズとは別に、対抗戦だけでまとめたアルバムも1つ」
「そんなに撮ってたんですか!?」
「もちろんです、ナナの晴れ舞台でしたから」
さらに言えば、特に写りがよかったものを厳選して集めたファイルが2冊ある。
どうしようもなく疲れた日に眺めて、気力を補充しているのだ。
このファイルの存在は、俺以外、お嬢様を含めた屋敷の誰も知らない。
隠し金庫に収納してあるうえ、何重にも仕掛けた魔術の錠前は、そう簡単に破れる代物じゃない。
「………クロ兄さん、ひょっとして、まだ何か隠して」
「それはそうと、アサカ様とミカ様はどこに?姿がお見えにならないようですが」
「ああ、2人は大長老様のところです。なんでも、いくつか話し合っておきたいことがあるらしくて」
「チョロイですね、このワンコ」
「ちょろ?」
悪い顔のエリナ様がしれっと毒を吐き、不思議そうに首をかしげるナナ。
可愛い。
じゃなくて。
「やはり顔を見せに行った方がよいのでは?」
「大長老様曰く、『全然休んでからでいいよ、マジで。儂も仕事したくないし』だそうです」
「フランクだな長老」
なんか思ってたのと違うぞ長老。
威厳あるのか長老。
会わないうちに不安になってきたぞ長老。
というか、仕事したくないとか長老失格だろ。
釈然としない心境をむりやり飲みこみ。
「とりあえず、何か仕事はありませんか?」
「とりあえず、休んでください」
ナナに叱られた。
白濁したぬるま湯に体を沈め、冷たく濡れた岩肌に体を預ける。
かたく絞った手拭いを頭に乗せて、湯煙の向こうで瞬く星空。
わずかに香る硫黄の匂いと、体の肉が解れていく感覚。
「………いいな、これ」
人の出歩かない深夜、集落の外れに建てられた露天風呂。
始めての体験だが、なかなかいいものだ。
なにげなく、目を閉じて
「………あのクソ龍、次あったらぶっ殺す」
人が弱ってるのをいいことに、ポンポコリンポンポコリンと雷を浴びせやがったあん畜生。
ナナの手前見逃してやったが、今度会ったら容赦なくかば焼きにして食ってやる。
というか、アイツがどっから湧いてきたのかわからん。
どこの馬の骨だか知らんが、少なくとも龍国内を縄張りにしている龍で間違いないはず。
この里の人間に訊けばいいし、それでわからなくても、2週間後、龍国政府に尋ねればいい。
初戦でやられこそしたが、同じ相手に何度も敗北する俺じゃない。
「ドタマぶち割って、ばら撒いてやる」
「えぇ………」
困惑したような声が聞こえて、いつのまにか、隣に幸薄そうな顔のおっさんがいた。
眉間に深く刻まれた皴と、眼の下に黒く染みついた隈。
確か。
「使節団代表、お仕事、お疲れ様です」
「君は…………あぁ、ヴァルハリエ家のご令嬢の」
「クロといいます」
「そう、クロ君だったね。君も疲れてるだろうし、ゆっくりしていくといい。この国の温泉は魔力が豊富に含まれている。傷や病気にも効くし、なにより心が安らぐ」
慣れた様子で手拭いを頭に乗せ、したり顔でうなずくオッサン。
「もしかして、よくこの国に来られるので?」
「こう見えて、外交庁の中では結構なやり手なんだよ。…………もっとも、屋敷じゃまるで立場がないがね。妻は冷たいし、娘には避けられるし、最近じゃ使用人からの扱いも心なし雑になってきてると来た。慰安旅行でもしなくちゃ、やってられないさ」
「それは…………」
オッサンの家庭事情が想像の倍くらいヘビーだった。
なんかもう、憐れすぎて他人の事なのに泣きそうになる。
「そんな事ばかりしてるから、こうなってるってのも分かってるんだけどね。かといって、この息抜きをやめる気にはなれない。というかぶっちゃけムリだ、心が持たない。家の外に救いを求めて、家族に疎まれて、また外に救いを求めての繰り返し。最近、娘のゴミを見るような視線がきつくてきつくて」
何でもない事のように話すおっさん。
悟った穏やかな顔が憐れみを誘う。
「それでは、俺はこのくらいで上がらせてもらいます」
「悪いね、邪魔しちゃって」
「どうぞお構いなく。ごゆっくりどうぞ」
いたたまれなくなって風呂を出た。
薄暗い灯篭の明りに照らされた、岩屋の中。
籐のゴザに正座する俺と、足が痺れたのか真横でプルプル震えるナナ。
正装らしき服を着て奇妙な形に髪を結ったアサカ様と、すまし顔で座るミカ様。
一見普通に座ってるように見えたお嬢様は、器用に下半身だけ霧化させて誤魔化していた。
この里の長老たちとの面会があるというのでここに来たのだが、その長老とやらが一向に来ない。
壁際で何も言わずに不動の構えを貫いている巫女さんたちが、圧倒的な気まずさを演出している。
というか、なんで巫女が?
本物の神職なのか、それとも格好だけ似たなんちゃって巫女なのか、判断に困る。
この国で神道………というか、龍信仰があるのならわかるが、それにしてもなぜここにいるのかわからない。
気候や風土が似ると文化も似るのか、それとも何か別の要因なのか。
非常に興味深。
「あの、クロ兄さん」
「どうかしましたか?」
「あし、痺れ」
小声で話しかけられて横を見ると、ほとんど痙攣する勢いでナナが震えていた。
顔真っ青だし、ほとんど泣きそうになってるし、流石に可愛いより可哀そうが勝つ。
「その~………すみません、少しいいですか?」
「…………なんでしょうか」
すっごく不機嫌そうな目で睨まれた。
苛立ちを隠そうともしない声音とジト目。
そういう趣味の奴ならともかく、俺に嬲られて喜ぶ性癖はない。
ないったらない。
「あの、途中退場って」
「お控えください」
「ですが」
「お控えくださ」
「あだっ」
不機嫌巫女のセリフを遮って、間抜けな声が響いた。
下半身の霧化の限界が来たのか、木張りの床に顔から倒れ込むお嬢様。
なかなか痛そうだな。
というか、結構べっちゃり顔面から行ったぞ。
大丈夫なのか?
「………わかりました。好きにしてください」
「すみません」
呆れたように溜息をつく巫女さんと、互いに支え合い、何度も転びかけながらヨタヨタと出ていくナナとお嬢様。
………まぁ、正座なんて慣れてないとかなりきついし、仕方ないか。
というか、長老とやらがマジで来ない。
いつまで人を待たせるのか、小一時間くらい問い詰めたくな。
「長老衆のおないりです。皆様、どうか、くれぐれもお静かに」
無感情な声に空気が固まり、一拍おいて、上座の方からヨボヨボと老人会じみた面々が入ってきた。
しわくちゃで背の曲がった、爺なのか婆なのか判別つかないような見た目の年寄りたち。
カタツムリの行進を思わせる歩みで着席し、爺が一人、コテンと横に倒れる。
一瞬、頓死したのかと思ったが、周りの人間が誰も助けに行かないあたり、いつもの事なのかもしれない。
爺連中の真ん中に座った少しだけ偉そうな爺がモゴモゴと口を開き、歯抜けのせいで何を言っているのかわからない。
眼の前が見えているのかどうかも分からない覚束ない目つきの老人。
念仏じみたモゴモゴ話と、年のせいか、後ろで寝始めるハゲ頭の老人。
床で転がったままピクリとも動かない老人。
ヘルプを求めるつもりで壁際の巫女さんの方を見て、立ったまま爆睡してた。
ブルータスよ、お前もか。
というか、アンタも寝るのか。
いいのか、それでいいのか、巫女よ。
アンタ、寝ちゃいけない人間だろ。
見損なったぞ。
そして終わらないモゴモゴ話。
気のせいか、さっきからずっと同じ話を繰り返してる気がする。
というか俺も眠くなってきた。
聞いてるだけなのにしんどいし、足も痺れてきたし、おまけに意識が薄れて来る。
瞼の奥が痒い。
頭が、うまく回らな。
「…………寝たか?」
「ああ、間違いなく寝たじゃろうて」
「しぇっしぇっしぇっ、若僧などこんなものよ…………しかし、なぜ我らの同胞が異邦から?」
「どこで生まれたのか気になるのう。グランの奴に似ている気もするが………」
「そうか?いや、言われれば似ているか………やっぱ似とらんじゃろ」
「ほれ、目と鼻のあたりとかそっくりじゃろ」
「ふがふがふが」
「お主は何言っとるかわからんのじゃ、黙っとれい」
「おぅいシゲさん、差し歯忘れとるぞ」
「ふがっ………ありがとうな、ヤマちゃん。………それで、どこまで話したかのう?」
「最初から話してくれい」
「もういいじゃろ。耄碌爺の話なんざ、聴きとうない」
「ワシら全員耄碌しとるじゃろ」
「「「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」」」
意識が、薄れ。
「お爺ちゃん!お客様来てるって本当!?」
「そこで寝とるぞい。踏まんようにな」
「わわっ………ホントに別の国の人なの?町の人と同じ色だけど」
「多分そうじゃろ、知らんけど」
「ほへ~………てっきり、金髪のお姫様が来ると思ってたんだけどなぁ………」
「来とったぞ。足痺れて帰ったけど」
「マジ!?会いたかったなぁ…………」
「会えるじゃろ、この里におるんじゃし」
「それもそっか」
「それより、おやつ食べていかんか?煎餅あるぞ」
「あっ、ずるいぞハナ婆さん!」
「残念、儂はマキ爺さんじゃ」
「あれ?ハナおばあちゃん、どこ行ったの?」
「腰が抜けて寝込みよった。今は布団の中じゃ」
「そのうち墓の中じゃろ」
「ワシら全員棺桶に両足突っ込んどるじゃろ」
「「「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」」」
………うるさい。
頭痛い。
脳味噌にガンガン響く。
痛みを訴える脳を抱えて起き、目の前に幼女がいた。
どっちかというと童女がいた。
金色がかった焦げ茶色のボブカットと、奇妙な虹彩を帯びた黒っぽい色の目。
どこかで見たような気がするが、思い出せない。
人の顔を不躾にジロジロ見て、何か奇妙なものでも見たような顔の童女。
しばらく黙考した童女が、ナニカを思い出したように首をかしげて。
「………もしかして、あの弱っちいオオカミさん?」
「何を言って」
脳裏をよぎる稲妻と、例のクソドラゴンの姿。
よく見れば、好奇心に輝く大きな瞳は、縦に割れた人外のソレだった。
まさか、コイツ。
「ほんと、出会い頭にいきなり襲い掛かってくるとか、何考えて」
「かば焼きにしてやるぅ!!」
「ちょっ、何を言って」
「待つんじゃ小僧!これには深いわけが」
「赫華!!!」
問答無用、顔面を引っ掴んで放ったゼロ距離インフェルノが、全てを消し飛ばした。
爆発落ちなんてサイテー!!
次回予告
メスガキキャンプファイヤーを敢行し、里の観光に移る主人公たち。
各々が散策を楽しむ中、クロ相手に乙女ゲーが幕を上げる!!
ヒロインレースを勝ち抜くのは誰か、乞うご期待!!
「クロ?」
「はい」
「私が一番よね?」
「いえ、その」
「私が一番よね?」
「その」
「私が一番よね?」
「………はい」
次回「逆圧迫彼女採用面接」




