決勝戦~上~
今回、クロはほとんど出てきません。
ハウスですね。
「なっ、なななななななぁっ!?」
「うおっ」
真横で上がった素っ頓狂な悲鳴にびっくりして、相手選手の1人を見つめて絶叫するナナさん。
ずんぐりむっくりした鎧を着たまま隣の選手に抱きしめられて、迷惑そうな、けれど少し嬉しそうな顔の小さな女の子。
抱きしめてる人がちょっとアレな感じの顔になっていることを除けば、普通に姉妹で通りそうですね。
………というか、あの2人、アルトリア大公爵家の令嬢姉妹なんじゃ。
「なんで、なんでアマナさんがここにいるんですか!?」
「あっ、ナナさん!こんにちはです!!」
「こんにちは………じゃなくて!なんで、ここに」
「私、選手ですよ?」
「…………聞いてないんですけど」
いつになく低い声音と、黒色の髪の奥から覗く、睨めつけるような眼。
「それは、まぁ、言ってないですし」
「…………酷いです、アマナさん。こんな騙し討ちみたいなことされて、私、傷つきました」
「えっ!?ちょ、ちょっと、ナナさん、泣かないでくださいよぅ!!」
「私、怒りました!ぷんすかぷんです!」
「ナナさん、その、ごめんなさ」
「問答無用です!けちょんけちょんにしてやります!!」
「そ、そんなぁ~………」
『フシャーーッ!!』とネコみたいに威嚇するナナさんと、半分くらい泣きそうな顔のアマナさん。
普段の横暴さはどこかに行ったらしく、ぽかんとマヌケな顔のリーンさんとカティアさん。
色々とオーバーフローしたみたいな顔で突っ立つシーザー様と、アホ面のアサカ君。
………どうでもいいですけど、どんな顔してても割と絵になるのって、ほんとずるいですよね。
近寄って服の袖を引っ張って、「ぬおっ!?」と変な声を出して跳びあがるアサカ君。
普段は真面目で通しちゃってるクセに、こうやって不意討ちすると面白くなるんですよね。
「ミ、ミカ?急に、何を」
「なんでもない、かな?」
「………う、ん?」
困惑して首をかしげるアサカ君を愛でて、試合開始まであと2分。
「ほら、リーンさんもカティアさんも、集中してください!!もうすぐ試合ですよ?」
「ねぇ、リーン、ナナちゃん、少し明るくなった?」
「可愛いから問題ないわ?」
「なるほど?」
「馬鹿なこと言ってないで、早く戦術陣形を組んでください。ここで負けたら色々と台無しですよ!!」
トンと爪先で床を蹴り、抜き放った2丁拳銃の、掌に吸いつくような握り心地。
炸薬の調節も、銃の整備も、とっておきの奥の手の準備も、全て済ませてきました。
細工は流々仕上げを御覧じろ、です。
1つ、大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出し。
ブザーと同時に、銃把を引き絞った。
…………まさか、アマナちゃんに友達ができるとは、思わなかったな。
あの子、引っ込み思案だし、パイプ目当てのバカしかいないこの学園で仲良くなれる子がいるか不安だったんだけど………お姉ちゃんは、嬉しくて泣いちゃいそうなのです。
………はい、嘘ですごめんなさい。
お姉ちゃん、めっちゃ嫉妬してます。
ジェラシーです。
めっちゃジェラシーです。
血涙漏れそうです。
なんなの、あの黒髪の子。
可愛いしおっぱいデカいし羨まし………じゃなくて。
「………いや、普通に羨ましいな」
「クラリス様?」
「なんでもないよ」
不思議そうな顔のチームメイト───男だから名前忘れた───が尋ねてきたのをぶった切り、深呼吸。
確か………ナナちゃん?だったっけ?
私ほどじゃないけどイイ体してるし、顔もきれいだし、アマナちゃんは美人だし、色々と恵まれ過ぎじゃない?
というか、マジでかわいい顔してんな。
なんか、こう、虐めたくなるようなタイプっていうの?
泣いたらすっごい可愛くなりそう。
ついうっかりタガが飛びそうになるくらい美味しそうだけど………あのお兄ちゃんが怖いし、やめておくべきなんだろうなァ。
………それにあの目。
恋する乙女の眼だ。
好きな人に応援してもらってやる気満々な女の子の顔してる。
NTRは誰も幸せにならないって、それ一番言われてるから。
………まぁ、恋人セットで堕とすならそれも悪くな。
「お姉様。今は外です、気をしっかり持ってください」
「はっ!?」
ジトっとしたアマナちゃんの視線。
ごちです。
いや、そうじゃなくて。
「むしろご褒美です」
「お姉様?」
「間違えました。ごめんなさい」
「何と何を間違えたんですかね」
「ナニとナニを間違えたんですよ」
「………?」
わかってない様子のアマナちゃんの頭を撫でて、思いっ切り手を払われる。
いいの?そんなことして?
お姉ちゃん泣いちゃうよ?
「馬鹿なこと言ってないで、ほら、集中してください。もう始まりますよ?」
「は~い」
担いでいた槍を取り回し、下段に構える。
噂の狂犬の妹と、ヴァルハリエ家令嬢………金色の魔女。
私ってば最強だけど、今回のばかりは一筋縄ではいきそうにない。
久しぶりの全力の闘争の予感に、どうしようもなくワクワクする。
心臓の高鳴りに任せて、体を引き絞り。
開始のブザーと同時に繰り出した穂先が、棍棒とぶつかって火花を散らした。
「死になさい?」
「いきなり殺意髙くない!?」
「そうでもないわ?」
「そうでもなくないでしょ」
やたら重い打撃を弾き飛ばして、頭を叩き割ろうとした横薙ぎを回避。
リーンちゃん、可愛い顔して、やることがえげつないったらありゃしない。
私が言えた義理じゃないけど、そんなんじゃ、お嫁さんの貰い手がいなくなっちゃうよ?
というか、なんか、睨まれてるような気が。
「ねぇ、もしかして私、なんかやっちゃった?」
「私のナナを欲情した目で見たから殺すのよ。何か問題でも?」
「あっ、ふーん」
なるほど、同志だったか。
野郎を挟む必要が無いのはいい事だ、すごく良い事だ。
………やっべぇ、リーンちゃんもナナちゃんも可愛いからマジで涎が止まんな。
「援護っ、します!!」
「おっとっと」
銃弾をスレッスレで避けて、回避先に飛んできた偏差撃ちを弾き飛ばす。
実弾ならまだしも、装薬の少ないゴム弾程度、私には通用しないのだよ。
射線上に視線をやって、亜麻色の髪の二丁拳銃ちゃん。
可愛い。
思わず押し倒したくなるタイプの子だ。
しかも2丁拳銃。
この娘、わかってるタイプの子だ。
じゅるり。
「ッ、アサカ君!叩き切ってください!!」
「チィイィィッ!!!」
「あっ、チェンジで」
なにやら叫びながら切りかかってきた少年をスルーして二丁拳銃ちゃんに迫り。
「遠鳴り」
「弾き」
背後からの一撃を石突で弾いて、肩を掴む。
頑張る少年には悪いけど、このまま倒させてもら
「………ん?」
なんか、感触が、おかし。
「よそ見なんて、つれないじゃない?」
「あいったぁあ!?」
思いっ切り後ろからぶん殴られた。
振り向いて、バカげたサイズの大鐘をぶん回すリーンちゃんってちょっと待ってヤバ。
「噛み殺す戦車」
「のわぁっ!?」
「ふきゅうっ!?」
「きゃいんっ!?」
「うおぉっ!?」
「きゃあっ!?」
アマナちゃんと近くにいた剣士ちゃん、魔術師ちゃんを抱っこして飛び上がり、すごく物騒な音を立てて金属塊が空を裂く。
男子生徒2人は…………うん、頑張ってくれ給え、男子なんだし。
気絶したみたいだけど、うん、男子だし。
可愛い女の子は全てに優先されると思います。
私は悪くないです。
というか。
「リーンちゃん!野郎はまだいいとしても、せめて女の子の安全は確保して!!」
「………?」
「首傾げてもムダ!可愛いけど、可愛いけど!!」
「お姉様。そこは大事じゃないです」
「何を言うかこの可愛い子ちゃんが!!」
「むにぃ!?」
バカな事を言ったアマナちゃんをほっぺむにむにの刑に処して、着地狩りの抜き打ちを踏んづけて回避。
女の子2人を抱えたまま咄嗟に飛びのいた先、真っ黒い影が動いて。
「オッ、ラァ!!」
横殴りの一撃。
ガォンッっていった。
今、当たったら命に関わるタイプの音がした。
ちょびっと、殺意が高すぎやしませんかね?
2人を下ろして向かい合い、狼みたいに構えるナナちゃん。
………なるほど、ヤバそうなのは、金髪巨乳お嬢さまと巨乳妹、それから………ダメだ、女の子じゃないから名前が分かんない。
けど、あのサムライボーイも結構まずそうかな?
マルチリルダ家のお嬢さんは、まぁ論外として、噂の留学生ちゃんもそこまでの脅威ではなさそう。
………留学生ちゃん、ちんまいくせして、えっろい体つきしてんな。
いや、マジで、私好みの身体してる。
「アサカさん!身の危険を感じました、助けてください!!」
「ぐへへお嬢ちゃん俺らといい事しようや」
「キッモッ!?」
「下がっててシーザーちゃん!ボクが障壁を張るから」
「あっ、チェンジで」
「え?」
ツルペタに用はないので。
「いや、なんていうか、こう、柔らかさが足りないと言いますか」
「お前もか!お前も巨乳スキーなのか!!」
「ちょっ、カティア様、ステイです、ステイ、落ち着いて下さ」
「ボクは今!これ以上なく冷静だ!!!」
絶叫したツルペッタンが魔力を噴き上げて、その背後に出現するバカみたいな数の魔法陣。
いやな予感に思わずのけぞって、飛んできた鎖に脚を縛られた。
………あれ?
もしかして、これ、避けられないのでは?
「起動・連撃歯車砲!」
「やっべ」
「大防護!!」
放たれた鉄杭の群れに逃げようとして、金の円盾が全部防いだ。
私の目の前で、ちっちゃい体を精一杯広げて障壁を展開するアマナちゃん。
かわいい。
抱きしめたい。
「お姉様ッ、今真面目な時間です、くっつくのは後にしてください!!」
「はっ!?」
しまった、つい自我を失っていた。
気を取り直して槍を構え、人形兵の急襲を防ぐ。
そのまま一体の胴に突き刺して引き千切り、薙ぎ払って2体目を撃破。
振り下ろされた大鐘を躱して反撃に出て、横合いから突っ込んできたナナちゃんに吹っ飛ばされる。
ギリギリ受け身を取って、叩きつける日本刀の一撃。
横に転がって回避、思いっ切り蹴っ飛ばして体をかがめ。
「死体ガード!!」
近くに転がってた死体(死んでない)を引っ掴んでゴム弾を防御、ぬるっとした動きで踏みこんできたサムライボーイに死体をぶつけて足止めに。
なんかアマナちゃんから汚物を見るような眼で見られた気がするけど、お姉ちゃんは気にしない。
「勝てばよかろうなのだ!!」
「お姉様。さっきのはさすがにダメです」
「あ、やっぱりそう?」
よかなかったみたい。
でも気にしない。
なぜなら私はお姉ちゃんだから。
………というか、野郎がどうなろうが知ったことじゃないし。
というわけで。
「アマナちゃん!」
「マーサさん下がって!攻性防御壁!!」
「ちょまっ、うぉあぁ!?」
床から生えた無数の黄金剣を跳んで躱し、空中の私を狙った大鐘の薙ぎ払い。
気合一発、何とか弾いて、場外負けギリギリで踏みとどまる。
ふと、違和感を覚えて手元を見れば、槍が途中からグニャリと曲がっていた。
半壊したソレで銃撃をむりやり逸らし、咄嗟にしゃがんで頭上を掠める棍棒。
空を裂いて降る踵落としを受け流し切れず、左腕から嫌な音がした。
追撃を右手で掴み、体を入れ替えてあべこべに叩き伏せる。
虚空に躍る金髪と太腿の脚線美。
ブレイキンダンスよろしく首を刈る軌道を描いた軍靴。
一拍遅れで頬から噴出した血を気にも留めずに跳び退り、射出された大鐘を黄金の爆発が撥ね飛ばす。
「あんまり無茶しないでください、お姉様!!」
「ナイス判断だ、アマナちゃん!ついでに回復もよろしく!!」
「持続回復術!痛みはありませんか!?」
「モーマンタイ!」
メキャッだかボギッだかヤバめな音がしたけど、お姉ちゃんは元気です。
舐めるなよ野郎ども。
アマナちゃんに回復してもらった今の私の戦闘力は、53万だぞ。
槍はぶっ壊れたけど、拳で抵抗すればいい。
アルトリア流格闘術の真髄を、味あわせて。
「お姉様」
「なになにどうしたのアマナちゃんまさか抱きしめられた」
「武具創成・串刺し公」
脳内アマナちゃん日記が正しければ3週間と2日と16時間ぶりにアマナちゃん側から話しかけられた事実に興奮して、渡されたのは秘色の重刺突剣。
………あぁ、うん。
一気に興奮が冷めた。
というか。
「アマナちゃんアマナちゃん。後でお父様に怒られるよ?」
「大丈夫です。状況によっては私の判断で使ってもいいと、お父様からお許しが下りています」
「ならよし。ありがとね?」
得物を手に取って振り回し、しっくり馴染む感覚。
大きく息を吸って、吐いて、両半身に構える。
左手のみで柄を握り締め、右手を腰に。
足を肩幅に開き、相手を見据えて。
「暴牛の角」
「ガッ、ァア!?」
狙いすました刺突がサムライボーイの横腹を貫通。
引き抜いて蹴っ飛ばし、棍棒と拳の連撃を弾き、いなし、受け流す。
大鐘の薙ぎ払いを倒れ込んで躱し、銃口が、私の眉間を照準して。
「惜しいね、うん」
「………流石に、それは反則じゃないですか?」
「ところがぎっちょん、正攻法なんだなぁ、コレが」
6+6の合計12発、レイピアチクチクで全弾撃墜余裕でした。
振り払い、アマナちゃん狙いのマスケット銃の射撃を切り落とす。
サムライボーイからパクッ………借りた刀をぶん投げて銃を破壊し、跳びかかってきたナナちゃんを掴んで投げ飛ばす。
脱力した私の視界に映るのは、シーザーちゃんに甲斐甲斐しく介抱されるサムライボーイと、警戒するような女の子たちの眼差し。
軽くステップを踏んで。
「言っとくけど、私、槍よりレイピアの方が得意だからさ。気を抜いたら狩るから、そのつもりでいてよね?」
何気に、今まで書いてきた奴らの中で一番の変態かもしれん。
今まで書いてきた奴ら
・吸血巫女義眼クレイジーサイコレズ魔法少女。
・自分を飼い主だと思い込んでる駄犬
・カニバリズム系怪力少女。
・クソニート兄貴
・クソニートじゃない方の退役軍人兄貴。
・妖怪プラナリア男。
ワタクシのページから読めますので、エルデDLCでるまでクソ暇な兄貴姉貴たちは是非。




