シスコン×シスコン 悪夢のドリームマッチ編
やだこのキャラ、作者漏れてるわ。
「ナナ。武器は持ちましたか?水筒は?お弁当は?おやつは準決勝戦が終わってから食べてくださいね」
「あの、クロ兄さん」
「そうだ、鎧の最終点検がまだでしたね。ついでにバズーカもつけておきましょう」
「クロ兄さん。それ、アウトです」
「ならお嬢様のぶっ壊してぶっ壊すをお借りして」
「あんな変態武器撃てるわけないじゃないですか!バカなんですか!?」
「対戦相手を全員ミンチにすればナナの一人勝ちです」
「アウトですよ!!」
『うにゃーっ!!』と叫んだナナがバックとバズーカ砲を放り捨てたのを慌ててキャッチし、尾を逆立てるナナ。
可愛い。
隠蔽魔術が切れていたのを掛け直し。
「………ナナ。それは、私が変態だって言いたいのかしら?」
「えっ、いやっ、そんなわけじゃ」
「お仕置きが必要みたいね?」
「にょわぁ!?」
にたりと笑ったお嬢様に絡みつかれて、ナナが悲鳴を上げた。
写真を撮ろうとして、カメラがない。
というか、左腕が動かないせいで写真が撮れないんだった。
…………腕を切り落として義手に挿げ替えれば、動くようになるか?
また今度、試してみるか。
それよりも。
「いいですか、ナナ。非常に、非常に残念ですが、俺は仕事があるので、今日の試合を見れません。怪我の無いように気を付けて戦ってくださいね」
「わかってますよ、それくらい。クロ兄さんは心配性なんです。私だって、それなりに強く」
「場合によっては、暗殺者や魔術、暗器の類が場外から乱入してくる可能性もあります。警戒を怠らないようにしてください」
「………マジですか?」
わかりやすくピタリと硬直するナナ。
かわいい。
「マジです」
「まじですか?」
「マジです」
「………ご主人様、大丈夫ですよね?」
「………さぁ?」
「ご主人様!?」
泣きそうな顔で尋ねて、お嬢様のセリフに思いっ切り取り乱すナナ。
少しかわいそうな気もするが、本当のことを言ってしまえば油断に繋がるだろう。
なら、せいぜい怖がってもらった方がいい。
「それでは、お嬢様。俺はこれで失礼させていただきます」
「ま、待ってくださいクロ兄さん!暗殺者ってどういう」
「頑張ってくださいね、ナナ。優勝出来たら、なんでも好きな料理を作ってあげますから」
「全部まとめてけちょんけちょんにしてやります!!」
ほとんどやけみたいな悲鳴を背後に、部屋を出た。
「…………んで、今、こうなってるって訳か」
「そういうことです。…………それと、もう少し詰めてください。せまっ苦しいので」
「無茶言うんじゃねぇ。コレ、1人乗りなんだぞ?」
薄暗い影の中でモゾモゾと体を動かし、圧迫感。
不可視の刃───認識疎外と空間断絶の効果を持った遺物───によって周囲から隔離されたこの空間は、観客席の真上、天井裏に作られている。
より広範囲の警戒が出来て、なによりも舞台への突入がスムーズに行えるこの場所は、襲撃を監視するのに最適な立地。
問題は、空間断絶による監視スペースが想像以上に小さかったこと。
フィリア曰く、「単独での潜入任務に使うもので、複数名を入れることは想定していない」らしいが。
「普段からそうやってたんですか」
「いや、いつもは片足だけだ。お前も入れるなら、どうしてもこれだけ削らなきゃいけないからな」
何でもないみたいに答えるフィリアは現在、俗にダルマと言われる状態だった。
持ち込んでいるのは、俺が使ういくつかの道具と、不可視の刃を仕込んだ右腕分の義手のみ。
出るとこ出ているうえに背が高いフィリアだが、両足と片腕がないだけでかなりの体積の削減になる。
いざという時は俺が動けばいいし、こんな雑な解決法でも特に問題は発生しないのだ。
まさか襲撃者も、こんなバカな護衛の存在は考えないだろう。
………これで対処されたら、まぁ、笑うしかないな。
「では、作戦をもう一度確認します。通常時は異常がないかの確認に専念し、非常事態は空間断絶を解除し次第、俺が龍星で突貫。全てを粉砕してナナを救出します」
「馬鹿かテメェは」
「間違えました。非常事態時は俺が舞台に突撃し障壁を突破、最優先で皆様を救助、回収し、襲撃者を粉砕します」
「わかった。…………なぁ、ペット。1つ、いいか?」
「どうかしましたか?」
双眼鏡のピントを合わせ、異常がないか確認し。
「その、トイレ」
「無理ですね。試合終了まで諦めてください」
「ふっざけんなよ!?この年になって漏らすとか、マジでシャレにならな」
「諦めてください」
「このっ、くそったれが!」
「よかったですね。これで次からは、オムツを履いて来れますよ?」
「ふざけんなよ!?というか、マジでヤバ」
「あれ?」
「ナナ?どうかしたのかしら?」
「いえ、なんか、フィリアさんの断末魔が聞こえた気がして」
「………そう?私には何も聞こえなかったのだけれど?」
「なら勘違いですかね」
それにしてはやけにはっきり聞こえたように思いますけど………まぁ、ご主人様も言ってますし、私の気のせいですかね。
クロ兄さんにあんなことを言われたせいで、いつもより感覚が過敏になってるのかもしれないです。
まったく、クロ兄さんって、たまに意地悪になるんですよね。
キライです。
………あっ、このクッキー美味しい。
流石クロ兄さんですね。
「ナナさん。その、調子はどうですか?」
「絶好調ですね。絶好調すぎてお腹減りました!」
「………大丈夫そうですね」
呆れたような、バツの悪そうな顔のシーザー様。
ひょっとして、風邪でも引いてると思われたんですかね?
「大丈夫ですよ、シーザー様。バカは風邪をひかないって言いますし」
「…………それ、自分がバカだって言ってるようなもんですよ?」
「………はっ!?」
「今更気づいたんですか」
慌てて口を閉じて、後ろからの視線。
振り返って、笑顔のご主人様。
「ねぇ、ナナ。こっちに来てちょうだい?」
「なんですか?」
手招きされるままに近寄って。
「優勝出来たら、今度こそ2人だけでデートに行きましょう?」
「愛してますご主人様!!」
「きゃあっ!?」
気づいた時にはご主人様を押し倒してました。
抱きすくめたままソファーにもつれ込んで首筋に顔を埋めて、甘い匂い。
ああもうダメだ可愛いご主人様可愛い。
いい匂いするし柔らかいし可愛いし優しいしカッコいいしなのに少しおバカだし、無敵か?
舐めたい。
首に噛みついてペロペロしたい。
というか、もう、我慢しないでいいですよね?
このまま押し倒して、ぐちゃぐちゃに
「あの、ナナさん。試合前です。落ち着いてください」
「はっ!?」
………危うく、狼さんになるところでした。
やっぱりご主人様はご主人さまです。
なんていうか、こう、魔性の女って感じです。
「………ナナ?」
「私悪くないですご主人様がかわいいのが悪いんです」
「おおっと、これは攻守逆転かな?」
「カティア様は黙っててください」
「辛辣だっ!?」
オーバーリアクションのカティア様を黙らせて、オオカミ耳に響く、少し湿ったような、呻くような声。
………そういえば、手に、何かやわらかいものが。
………………なるほど。
「コレって、本当にこうなるんですね」
「ちょっ、あっ、んんっ!?」
変形する塊2つをもにゅもにゅと揉んで、いつになく焦った様子のお嬢様。
自分のをやってもそんなに楽しくなかったですけど、コレ、ほかの人にやる分には楽しいですね。
ずっと揉んでいたくなる、ほどよい弾力といいますか、クセになる感触です。
「ナナ、そろそろ、手をどけて」
「楽しいから嫌です。試合開始までこのまま揉ませてください」
「ナナ!?」
試合開始寸前まで揉んだせいでご主人様から恨めしそうな目で見られましたけど、まぁ、色々と痴態を拝めたので、結果オーライです。
「瞬殺、でしたね」
「瞬殺、でしたね、じゃねーよ。こちとら膀胱死にかけたんだぞ?」
準決勝戦終了後、選手関係者控室。
睨みつけてくるフィリアを無視して背伸びして、双眼鏡をテーブルに置いた。
試合開始と同時に突撃したナナが相手チームの前衛2人を撥ね飛ばして気絶させ、返すシャーマンスープレックスが魔術師らしき女学生をノックアウト。
そのままアサカ様とミカの2人組が暴れてゲームセット、まさに蹂躙だった。
リーンお嬢様がリングの中央でコチコチに硬直していたのが気になるが……………まぁ、そこまで大した問題じゃないだろう。
というわけで。
「フィリア。先にお嬢様方のところへ戻っていてください。俺は少し用事を片付けてから行きます」
「手伝わなくていいのか?」
「問題ありません。1人で十分片付きます」
「おぅ、わかった。決勝戦開始前に終わらせろよ?」
「ええ。わかっています」
あくび1つ、ひらひらと手を振って歩いていくフィリアを見送り。
「オ、っ、えぇええぇぇ………っ」
ほとんど喉を塞いでいた血の塊を吐き出し、グズグズに腐敗した肉塊が床に零れ堕ちた。
何かおかしいと思っていたら、コレが混じっていたのか。
道理で、いつもより苦しかったわけだ。
口の中に充満した血なまぐさい液体を吐き、逆流したソレが気管に入り込んで盛大に咽る。
息をする度にゴビュゴビュと嫌な音が鳴り、口元に当てた手の合間から赤黒いものが噴出する。
目が眩み、立っていられずに壁に倒れ掛かり。
「ねぇ、君、大丈夫?ちゃんと息してる?」
見上げた視界に映る、緋色の影。
心配するような、どこかあざ笑うような気配を帯びた、嫌な声。
「ぅ、あ」
「うん。ダメみたいだね。とりあえず医務室」
「疑似、再誕」
「………へぇ?さすが男の子、気合あるじゃん」
ヤケクソで疑似再誕を発動し、持ち直した。
根性で立ち上がって、見かけ、お嬢様より少し年上くらいの、ピンクに近い髪色の女生徒。
…………誰かは知らないが、嫌な予感がする。
一歩、距離を取って。
「あ~もう、血だらけじゃん。ほら、これ使って?」
「………どうも」
一瞬で距離を詰められた。
グシャグシャと雑にタオルで顔を拭かれ、差し出されたガラス瓶の中で蠢く緑がかった灰色のナニカ。
「それと、はい。私謹製の中級回復薬。吐血くらいならコレで回復するはずだから」
「いえ、必要な」
「大丈夫大丈夫!飲みやすいように甘く味付けしてあるから!!」
「………いえ、そうじゃな」
「遠慮しないでよ。やせ我慢してると、治る怪我も治らないよ?」
「………ご厚意に感謝いたします」
押し付けられた回復薬を飲み干して、地獄みたいに甘い。
なんか、こう、人体に致命的な甘味を感じる。
というかこれ、摂取して大丈夫じゃないタイプのもんだろ。
気分、わる
「おえぇえぇぇ…………」
「ほら、情けないぞ男子。もっとシャキッとしないと」
「誰のせいだ誰の」
「え~おね~ちゃん分かららな~い」
「キメェんだよハゲ」
「ひどっ!?というかハゲてないです~ふさふさです~」
「ハゲにしてやろうか?」
宝物庫から取り出したバリカンを構え。
「まったくも~………弟が増えたみたいで嬉しかったのに、カワイイ見た目してこんな凶暴な子とか聞いてないよぉ~………」
「………もしかして、兄弟がいらっしゃるので?」
「うん。天使みたいな妹が1人」
「なるほど」
グッといい笑顔でサムズアップする女。
同志だったか。
「申し訳ございませんでした。どうか、非礼を詫びさせていただきたく」
「………ん?どゆこと?」
「妹さんが、いらっしゃるのですよね?」
「………まさか、君も?」
「はい。妹がいます」
「かわいい?」
「とても」
「ねぇ」
「はい」
「握手しよっか」
「同志よ、貴女との出会いに感謝します」
ガシッと組んだ手は、思いのほか温かかった。
「それでさ!頑張って勝ってお姉ちゃんに褒めてもらうんだって息巻いててさ、なんか、もう、分かるでしょ!?」
「わかります」
「わかるでしょ!?妹がマジで尊過ぎて、お姉ちゃんはつらいのです!!」
「ついつい撫でてあげたくなるんですよね」
「そうそう!出来るんなら写真にとって残しておきたいんだけど、私、撮るの下手でさ」
「もしよろしければ、今度、お教えいたしましょうか?」
「本当!?願ったりかなったりだよ!これで夢のアマナちゃん全集が作れるんだ!!」
「楽しそうですね、それ」
そういえば、撮りためていたナナの写真、また今度ファイリングしておかないとな。
結構な数になっていたし、綺麗にまとめて保存しておこう。
「そうだ!昨日アマナちゃんがさ、お友達が出来たって私の部屋まで言いに来てくれてさ!なんかもう、私泣いちゃって」
「奇遇ですね。ナナも昨日、初めて友達が出来たと嬉しそうにしていました」
やはり兄として、妹が幸せになってくれるというのは嬉しいものだ。
………そうだ、な。
「失礼。お名前を窺ってもよろしいでしょうか?」
「アルトリア。気軽にアルちゃんって呼んでよ」
「では、アルちゃん様」
「違うそうじゃない」
「1つ、相談を聞いていただけないでしょうか?」
「なぁに?」
「もし、もし仮に、自分があと数年の命だとして、妹に何をしてあげられるでしょうか?」
「………君。もうすぐ死ぬの?」
「あと2年持つかどうか、といったところです。たったそれだけの時間で妹に何をしてあげられるか、最近は、ずっとそればかり考えています」
「そう」
「じゃあ、ずっと妹の側にいてあげればいいじゃん」
何でもないような呟きに思わず横を向いて、虚空を見る、透き通った琥珀色の瞳。
「簡単な話だよ。あと2年で死んじゃうなら、死ななきゃいい。3年でも、5年でも、10年でも20年でも、君の妹を守ってあげればいい」
「ですが」
「ですがもよすがもないよ。お兄ちゃんとかお姉ちゃんっていうのはね、妹のためならなんだって頑張れるものなんだよ。君が妹を愛していて、守ってあげたいと思うなら、ね。……………それとも、君の想いは、たかが1度死んだだけで挫けるような、薄っぺらいものなのかな?」
「………いいえ」
「なら決まりだ。思う存分、妹を幸せにしてあげればいい。………そりゃ、私たちはお姉ちゃんだしお兄ちゃんだ。ずっと一緒にはいられない。私たちの一番大事な人は、いつかきっと、別の誰かと一緒になって、幸せな道を歩いていく。
それでいいじゃないか。
でもせめて、せめて私たちが傍にいてあげられる、その間だけでも、思いっ切り幸せにしてあげればいいんじゃないかな?」
………そう、か。
何も、死ぬ必要は、ないのか。
「それにさ。……………私、目の前でお兄ちゃんが死んでるんだよ。子供の時、暗殺者に襲われて。
…………すっごく、怖かった。
苦しかった。
辛かった。
悲しかった。
怖くて怖くて、頭がどうにかなりそうだった。
優しくて強くて、なのに少しふざけてて、いつも笑ってたお兄ちゃんが、壊れたオモチャみたいに、転がってたんだよ。
あの時の私と同じ目に、アマナちゃんを合わせたくない。
………………元妹、現お姉ちゃんの私に言わせれば、自分のお兄ちゃんが死んだときの妹の気持ちを考えるべきだと思うよ?
君の命は、君の死は、君だけの物じゃないんだ。君が死ねば傷つくかもしれない人がいることを、忘れないで欲しい。
君が本当に、妹ちゃんを大切に思っているなら、ね?」
「………ご忠告、感謝いたします」
目から鱗が落ちたような気分だ。
俺が死んでナナが傷つく可能性を、考えていなかった。
………いや、それ以前に、生きようとすらしていなかった。
龍の隠し棘の毒は、確かに強烈だ。
解毒の魔術も効かない上に、次第に肉体を蝕み、腐らせ、溶かしていく。
だが、治療法がないとは限らない。
シーザー様の奇跡で進行を妨げられているのならば、治療法だって、あるのではないか?
そうだ。
その通りだ。
何故、今までその考えに至らなかったのかが、不思議でならない。
まるで、意識を誘導されてでもいるような。
「お~い?大丈夫?前見えてる?」
「………何をやっているのですか、貴女は」
目の前に奇怪な動きを繰り返すバカがいた、
「いやさ、君が急に動かなくなるから気になって」
「大丈夫です。大したことじゃありません」
わずかに鈍い体を引きずって、椅子から立ち上がり。
「………あの」
「どうかした?」
「時間、大丈夫ですか?」
「………やっべ」
二人同時に壁かけ時計を見て、決勝戦開始まであと10分。
「やばいやばいやばい!!決勝戦まで行って遅刻して不戦敗とか、マジでアマナちゃんに嫌われちゃう!!お姉ちゃん死んじゃうって!!」
「おお落ち着いてください!全力で走れば間に合います!!」
「わかった!ありがとう!それじゃ」
ドタバタ慌ただしくバックを背負ったアルトリア様が、駆けだして。
「う、ん?」
アル、トリア?
あれ?
どこかで、聞いたような。
『アルトリア大公爵家令嬢、クラリス・フォン・アルトリアとその妹、アマナ・フォン・アルトリア。この2人には注意が必要ね?』
あっ。
「待ってください、アルちゃん様!!貴女、もしかして名前」
「ごめん時間ないから!!でも楽しかったよ!じゃあね!!」
文字通り、一陣の風と間違えそうな速さで遠ざかっていくアルちゃん様に対し、俺はただ見送ることしかできなかった。
普段はまとも(当社比)なのに妹が絡むと途端にIQが低下する主人公。
次回予告。
世界のハザマから妹の奮闘を応援するお兄ちゃん。
剣と魔術と異能の交叉する決勝戦の裏、暗闇を跳ねまわるのは誰の刃か。
最愛の妹に危機が迫る時、龍の牙が唸りをあげる!!
「シスコンパンチ!」
「シスコンパンチ!」
「シスコンキック!」
「シスコン旋風脚!!」
「もうダメだこの奴隷、早く何とかしないと」
次回「燃えよシスコン」
シスコンとドラゴンって語呂似てますよね。




