ボーイ・ミーツ・ガール・In Dungeon
続編です。
迷宮地下4階層、降下装置前。
構えた鉄骨を全力で振り下ろし、人形兵をまとめて粉砕。
遠間からの砲撃を壁盾で受け、大鐘が轢き潰す。
空を裂いて飛んだ鎖を跳躍で躱し、宙に出した鱗を足場に鉄骨を突き刺し、鎔鉱刀を発動して握力で爆砕。
武具創成・鉄骨丸で再生成した金属塊を振り回し、思いっ切り投擲。
引き潰れる金属の群れと、その奥から湧き出てくる人形たち。
迎撃しようとして、俺の両脇を駆け抜ける影が2つ。
「≪踊れ≫プルチネッラ、≪歌え≫カピターノ!!」
黒鉄色の糸が舞うように動き、道化師と軍人の人形が暴れ回る。
直後、激発音が連続し、前線メンバーを器用に避けて飛翔する弾丸。
まったく、羨ましい射撃精度だ。
散弾銃を突きつけて、魔力を籠め。
「狩猟霊」
「付呪・遠間殺し」
渦を巻いて飛ぶ散弾が戦列を食い破り、撃ち漏らしを薙ぎ切る暗緑色の剣閃。
人形の装甲が腐り落ちているところを見るに、錆び腐れの効果は乗っているようだ。
射程は15メートルほどしかなさそうだが、中距離範囲攻撃としては優秀。
消耗が激しいのか肩で息をしているが、そこらへんは俺がフォローすればいい。
とりあえず。
「アサカ様。攻撃後に硬直するのは、パーティー戦とはいえ、いかがなものかと存じます」
ぶん投げた鉄球が、アサカ様を狙っていたワイバーン型の脳天を砕いて地に墜とす。
精密狙撃が出来ずとも、これだけ的がデカければ、イヤでもあたる。
後方から放たれた鉄柱が迷宮の床を抉り、龍眼に従って思いっ切りしゃがみ込む。
直後、俺の真上を大鐘が薙ぎ払った。
ガランガランと騒音を鳴らして鐘が壁にめりこみ、叩き潰す。
振り返れば、両足でしっかりと踏ん張り、鎖を握りしめるリーンお嬢様。
血色のいい唇が、三日月のように吊り上がり。
「クロ、皆を守りなさい?────────卓越した神意の体現」
「かしこまりました!!」
「うぉあっ!?」
「ひぃん!?」
「あっぶなぁ!?」
全員に付呪・鱗を発動し、凄まじい衝撃に気合と根性で耐える。
引き抜かれ、そのまま振り回される大鐘。
真上から叩き下ろすソレを躱し、鉄骨を構え。
「衝突撃」
[炉]を起動して魔力を籠めた一撃を放つ、近接戦闘の基本技術…………に見せかけた、自前の魔力を武器に込めてぶん投げるだけの技。
渾身の一投が、前方の全てを吹き飛ばした。
「リーンさん。貴女にいろいろと助けてもらった身で、こんなことを言うのもあれだというのは、十分に理解しています。でも、コレだけ言わせてください。…………少しは、私たちのことも考えてください!!」
「なるほど?」
よっぽど怖い思いをしたのか涙目のミカ様と、コテンと首をかしげるリーンお嬢様。
とりあえず。
「僭越ながら申し上げます、リーンお嬢様。皆様の耐久力は、はっきり言って俺の1割もありません。リーンお嬢様の全力の一撃に巻き込まれれば、致命傷は免れないかと。広範囲を無差別に破壊する類の攻撃は、可能な限り控えるべきかと存じます」
「わかったわ。つまり、拳で殺せばいいのよね?」
「そういうことです」
納得したようにうなずくリーンお嬢様。
可愛らしい。
「………というか、ワンコ君、頑丈過ぎない?」
「それが取り柄ですので。このパーティーの中で、本気で固めた俺の防御を抜けるのは、リーンお嬢様とアサカ様のお二人だけかと思います」
リーンお嬢様に歯向かえない俺にとって、お嬢様の攻撃は致命傷になるし、相手の攻撃に耐えてから殺す俺の戦闘スタイルと、回避を強いられる一撃必殺の錆び腐れは、相性が致命的に悪い。
防御不能の魔術がないとも限らないし、今のうちに対策を練っておくべきか?
「あぁ………錆び腐れか。アサカ君、アレ、どういう原理になってるの?」
「………申し訳ないが、自分にはさっぱり。ただ1つだけ言えるのは、あれが防げないという事実だけだ。触れたもの全てが錆び腐るせいで、ロクに検査も出来ないしな」
「まぁ、アレの兵器転用は無理だろうね。下位互換の量産型だけでも作れたらいいんだけど………」
「神代の遺物の複製ともなれば、最低でも森鋼を媒介にする必要があるだろうな。近衛騎士団の副団長クラスでも買えない業物になるぞ」
「量産は無理そうだね」
「そもそも、アレは抜刀しているだけで使い手を錆び腐らせる。抜剣術が使えなければ錆び死ぬし、万が一防がれでもすれば、ただの自爆になる。汎用性という意味では、ミカの拳銃使いの方が上だ」
「…………ひょっとして、ミカちゃんのソレも」
「命中精度が運に左右されなくなるだけの地味な効果ですけど、便利ですよ?」
古びた拳銃2丁を弄ぶミカ様。
運よく当たることも運悪く外すこともなくなる拳銃、か。
ピーキーすぎる性能だが、持ち主の腕によっては、これ以上ないぐらい最適だろう。
………というか、今まで全部、純粋に実力だけで命中させていたのか。
なんというか、俺にはマネできそうにない。
「ちなみに言っておくけど、私の六合一宇幻想曲も遺物よ?重くて頑丈で魔術を無効化してくれるのだけど、重すぎて私以外には使えなかったわ?」
「…………それ、何キロあるんですか?」
「さぁ?どれくらいだったかしら?」
可愛らしく小首をかしげたリーンお嬢様が、ズドンと音を鳴らして鐘を地面に降ろした。
少なくとも、数百キロはありそうだ。
「なるほどね…………デメリットのせいで使える人間の少ない遺物は手に入りやすいのは、まぁ、当たり前か。ボクも探してみようかな?」
「カティア女史のあのからくり人形は、遺物ではないのか?」
「アレはボクの自作品だよ。ちょっとした遺物程度の性能はあるけど、既存の魔術理論を超越したような効果はない。だから、本物の遺物が欲しかったんだけど……………」
「迷宮に分類される古代遺跡からは、ときおり、強大な力を持った遺物が掘り出されると聞きます。この迷宮も、低レベルながら古代遺跡です。わずかですが、可能性はあるかと」
「慰めありがとう、ワンコ君」
呆れ混じりの溜め息を吐いたカティア様。
俺の首輪も遺物だということは、言わない方がいいだろう。
面倒事はごめんだ。
「とりあえず、遺物談義はこれくらいにした方がよろしいかと。まだ余裕はございますが、早く攻略するに越したことは無いでしょう」
「まっ、焦らず行こうよ。敵の戦闘力も大したことないしさ」
「クロのフォローはあるけど、油断したら私の攻撃で死ぬわよ?」
「…………みんな、くれぐれもリーンの前に立たないように、仲間の安全に気を配って戦うこと!!」
「俺は基本的に死なないので、巻き込むつもりで攻撃していただいて大丈夫です。場合によっては、俺ごと殺す勢いで攻撃してください。最悪、俺の後ろへ退避していただければ死ぬことは無いので」
「…………クロ殿。一つ聞いておくが、どれくらいの攻撃までなら防げる?」
「上位魔術程度なら問題なく。攻撃系の禁呪を至近距離で放たれても俺は軽傷で済むとは思いますが、余波で皆様が重傷を負うことになるかと」
「固くない!?禁呪に耐えるって、それ、お城の大障壁並みってことだよね!?」
「防ぐこと自体は可能ですが、一回使えば魔力が空になるので、連続で禁呪を撃たれるような状況は可能な限り避けてください」
「その状況、なろうと思ってなれるものじゃないと思うんですけど………………」
本当のことを言えば、禁呪を2,3発喰らっても俺は死なない。
俺が使っているヒトモドキの魔術は、自身の肉体を完全に変容させるものだ。
人間と同等の体組織になっているせいで、防御力は本来の龍鱗よりも低いが、ありあまる魔力によって自然発生する障壁は、簡単に破れるものじゃない。
仮に、禁呪以上の火力の攻撃を受けたとしても、それこそヒトモドキを解除すればいい。
常時発動している魔術を解除するだけだから一瞬でできるし、消耗もない。
お嬢様以外に見られてしまっても、暗闇属性の魔術で記憶を弄ってしまえば問題なし。
…………とはいえ、リーンお嬢様の友人相手に記憶改竄を施すのも、気が引ける。
極力、龍体は見られないようにしなければ。
「まぁ、クロを肉壁にするのはいいアイデアだと思うわ?」
「光栄です、リーンお嬢様」
「光栄なのか…………」
「アサカ君。何も考えない方がいいと思う」
「リーンもだいぶアレだけど、ワンコ君も結構イカれてるからね…………悪い奴じゃないんだけど」
「誰が、ゲス外道サイコサドですって?」
「そんなこと言ってないんだけどなぁ…………」
呆れたように笑ったカティア様が、マスケット銃を背負って立ち上がった。
精神的に疲弊していたらしいミカ様とアサカ様も、幾分か顔色がよくなっている。
唯一疲れを見せなかったリーンお嬢様はともかく、慣れない外泊と連戦でかなり消耗していたようだったが、それなりに回復した模様。
懸念事項があるとすれば。
「少し強い、か?」
事前調査によれば、この迷宮の難易度は、大したことない。
徒党を組んだゴロツキでも十分に潜れる程度のものだ。
それが、俺たちが苦戦するレベルにまで跳ね上がっているとなれば、何か不測の事態が起こったとみるべきだろう。
………とはいえ、皆様にお伝えするほどの問題でもない。
原因を見つけ次第消す、くらいでちょうどいいだろう。
「お嬢様、そろそろ攻略を再開するべきかと」
「わかったわ。行きましょう?」
「えぇ~…………もう行くの?あと少し休んでからでも」
「カティ。何か言ったかしら?」
「なんにも」
「………リーンさんって、恐怖政治とか得意そうですよね」
「だな。独裁国家とか作りそうだ」
「あなた達、好き勝手言い過ぎじゃないかしら?」
休憩時間はもう十分に取った。
そろそろ出発するべきだろう。
4層から5層に降りる道は、4層最奥にある、昇降機と呼ばれる古代遺物。
全員が乗り込んだことを確認して、遺物の起動レバーを引いた。
迷宮第5層、大広間。
駆動音を響かせるマリオネットとアサカ様が突撃し、人形の戦線を食い破った。
散発的に放たれる魔術の砲撃を万物誘引で大盾に引き寄せて防ぎ、鉄骨丸を投擲。
しゃがみこみ、頭上を通り過ぎる銃撃と、頭部を撃ち抜かれて倒れる人形。
地を這うように突っこんできたムカデ型を、盾の下端で圧殺し。
「多重起動・歯車巨砲!!」
「合わせます。怪力線」
カティア様の金属射出に合わせて怪力線を発射し、爆発。
散弾を2連射、まとめて吹き飛ばし、生成した鉄骨丸をぶん投げる。
最前線で大暴れするアサカ様とミカ様のコンビ。
アサカ様はともかく、ミカ様が前線に突っ込むのもどうかと思うが、気にしない方がよさそうだ。
援護射撃ならぬ援護投擲を繰り返し、隙を見計らって狩猟霊をぶっぱなす。
退屈そうに欠伸を零したリーンお嬢様が、ノールックで投げたダーツで敵を仕留めた。
幸いなことにイレギュラーもなく、順当に進んできている。
とりあえずの、援護投擲をしようとして。
「面白くないから突っこむわ?クロ、援護しなさい?」
俺の真横を金色が走り抜けた。
なぜか、本当になぜか大鐘を捨てて突撃するリーンお嬢様。
理解できない。
理解できないが、ヤバい。
即座に突貫しようとして、俺の肩を掴むカティア。
「このッ、放しやがれ!!」
「どうどう、落ち着いて、ワンコ君。とりあえず、障壁だけ張ってくれないかな?皆も、もう休んで6階の門番戦に備えよっか」
「なに言って」
「あの、カティア様、流石にソレはどうかと」
「リーンが本気を出そうとしてるんだ、クロ君も含めて、ボクたちが居ても邪魔になるだけだよ。悪い事は言わない、おとなしく休んだ方がいい」
「……………自分は、カティア女史に賛成だ」
「アサカ!お前ッ」
「アレには、ついていける気がしない」
妙なことを口走るクソ野郎を張っ倒そうとして、蝋色の鞘を握りしめる手が、カタカタと震えていることに気づいた。
前方を睨みつけ、硬直するアサカ。
何を見たのか問おうとした、その瞬間。
「開演・死闘」
直感に従って発生させた障壁が粉砕され、直後に張った3枚の内、2枚が一瞬で爆散。
肉体的なダメージこそ無いようだが、爆風に吹っ飛ばされる皆様。
衝撃波に耐えて眼を開き、視界の端を、鈍色の残像が通り過ぎた。
迷宮の壁にめりこんで動作を停止するゴーレム兵と、拳を振り切ったまま残心するリーンお嬢様。
まさか、殴り飛ばしたのか?
数十トンはある鉄塊を、人間が素手で?
いくらなんでも、コレは。
「………ごくまれに、世の理を外れた異常能力───異能───を備えた修羅がいると祖父から聞いていたが……………カティア女史、リーン女史はそうなのか?」
「その通り。能力名は英雄的蛮行。殺せば殺すほど、壊せば壊すほど、より強くより速くより堅くなる、個人が大軍を圧倒するための力。リーンを相手取るなら、少数精鋭で誰も瞬殺されないことが、戦いの舞台に上がるための最低条件になる。おまけに半吸血鬼の権能と、拳聖仕込みの近接戦闘術もついてくる。アレで未発達だって言うんだから、まったくもって末恐ろしいよ」
「なんていうか………………凄まじいですね」
視線の先で衝撃波が奔り、諸々の残骸が爆発四散。
騎兵型のゴーレム3体が突撃し、突っこんでいった時の倍の速度で壁に突き刺さる。
上段蹴りを叩きこんだ体勢から高々と足を掲げ、急接近したヒョウ型の人形兵を踏み潰すリーンお嬢様。
連続して振り抜いた拳がゴーレムを陥没させて吹き飛ばし、手刀の一撃がワイバーン型を切り伏せる。
金属外殻を素手で引き裂くあたり、かなり強化されてそうだ。
獣のようにしなやかで強靭な肢体が唸りを上げる度、量産されていくスクラップ。
戦車のようなゴーレムの突進を真っ正面からの掌底で跳ね返し、振り返りざまの裏拳が、騎士型の右半身を消し飛ばす。
半壊しながらもリーンお嬢様にタックルを仕掛けた騎士型と、ソイツごとお嬢様を貫く、突撃槍の一撃。
ちょっとした大扉ぐらいなら粉砕するであろう刺突は、なにか、硬質なものが砕ける音を鳴らして受け止められた。
まき散らされる歯車と砕けた切先の向こうで、血の一滴も流さずに拳を振るう、リーンお嬢様。
出来の悪い、安っぽい無双劇のような光景。
とりあえず。
「いや~………やっぱり、ここまで思いっきり暴れられると、むしろ清々しいよね」
「アレが、本物の人修羅か……………噂以上だな」
「なんで2人とも感心してるんですか…………?」
「皆様。防御陣形の設置が完了したので小休憩にしましょう。食事も、すでに準備しております」
「クロさん!?」
なぜか悲鳴を上げるミカ様を他所に、宝物庫からBRTサンドを取り出す。
防御障壁の全方位展開と固定化も終了したし、実際、俺に出来ることは今、なにもない。
皆様が食事を始めたのを確認して、おとなしく牛骨を齧った。
「……………流石に、少し疲れたわ?」
「お見事でした、リーンお嬢様」
「アレだけ暴れれば、普通は疲れるでしょ」
「普通はアレだけ暴れられないんですけどね」
「だな。全盛期のおじいちゃ………祖父でも、あそこまで戦えるかどうか……………」
戦闘終了後というか、蹂躙終了後の5階層。
降下中の昇降機の内部。
俺に背負われたまま溜め息を吐く、リーンお嬢様。
一帯に広がる惨状と、スクラップの山。
何やら頬を赤らめたアサカ様はともかく。
「とにかく、迷宮の最下層までもうすぐです。皆様、くれぐれも油断なさらないでください」
「あぁ、そうだ。みんな、ちょっと集まってもらっていいかな?」
「カティ。私の移動式ソファーは渡さないわよ?」
「いや、要らないけど」
「リーン女史、貴女にとってクロ殿は、一体なんだのだ?」
「食料兼奴隷兼傍仕え兼肉壁兼家政夫兼戦闘員、かしら?」
「光栄です。リーンお嬢様」
「光栄なんですか…………」
ミカ様が呆れたようにつぶやくが、意味が分からない。
リーンお嬢様に必要としていただけること以上の僥倖があるわけないだろうに。
「とにかく、さっさと集まってよ。まとめて強化掛けとくからさ…………行くよ?硬化歯車、怪力歯車、加速歯車、防御歯車………こんなもんでいいかな?」
「うぉ!?」
「きゃあっ!?」
幾重にも重なり、ミカ様とアサカ様の四肢に絡みつく魔術の歯車。
強化系の魔術のようだが、別種の魔術を複数、それも多人数を対象に発動するというのは、なかなかに出来ることじゃない。
それなりに連度も高いし、発動速度も申し分なし。
問題があるとすれば。
「カティア様」
「なんだい、ワンコ君?」
「強化が切れました」
「はぁん!?」
奇怪な悲鳴を上げるカティア様と、解けるように消えていく歯車。
よく見れば、分解された魔力が、煌めきながらリーンお嬢様に吸収されていくのが見えた。
周囲の残骸から立ち上った虹色のガスが、たなびいて吸い込まれていく。
「………………リーン。なにやってるの?」
「さっき使った開演・死闘って、とてもお腹がすくのよ?私の魔力がすっからかんなせいで、今の私の側で魔術を使うと、強制的にすべて吸収してしまうわ?」
「何やってんの馬鹿!?」
「暇だったもの、仕方ないでしょう?」
「仕方なくないでしょ!?」
「まぁ、アレだ。バフがなくても、リーン殿のアレなら、門番が何でも余裕で」
「冷却時間があるから、向こう1週間は使えないわよ?」
「……………その、なんか、アサカ君がすいません」
「ご安心ください。皆様。俺に、1つ策がございます」
主のミスのカバーもまた、奴隷の職務。
この程度の不測の事態なら、十分に想定の範囲内だ。
迷宮踏破訓練の開催を聞いてから考え続けた対処法に、漏れはない。
「まず、こちらの炸裂榴弾をご覧ください」
「ほほぅ?」
「これを20個ほどワイヤーで連結し、俺の体に括ります」
「ふむふむ」
「あとは、俺が突撃して敵に密着したうえで起爆すれば、討伐完了です」
「流石ね、クロ。褒めてあげるわ?」
「馬鹿なの!?主従そろってお馬鹿なの!?」
「失礼ね、カティ。確かにクロは頭の足りない駄犬だけど、私はバカじゃないわ?」
「君もだ!むしろリーンの方が馬鹿だ!!」
「あの、カティア女史、少し落ち着いて、冷静に」
「ボクは冷静だ!これ以上ないくらい冷静だ!!」
「カティアさん、それ、冷静じゃない人のセリフです!!」
我を忘れたように暴れ回るカティア様と、振り回されるミカ様とアサカ様。
そしてそれを見て愉快そうに笑うリーンお嬢様。
変にガチガチに緊張して突撃するよりも、こっちの方がいいだろう。
いざとなったら、俺が庇えば済む話だ。
できるだけ皆様に楽しんでいただくことを、心がけなければ。
ガゥン、と音を鳴らして停止するエレベーター。
散弾銃に弾を込め、大盾を構えて6層へ降りた。
次回予告
順調に攻略を続ける一行を、陰から監視する暗い影。
迷宮最深部の暗がりに、暗殺者は笑みを浮かべ。
「この仕事が終わったら、整体院に行くか」
次回「ブレイクボーン・タイトウェスト」




