ー見た編ー
「本当だよ。見たんだ」
そうパパに言ったら、夜中に起きてたことをまた怒られた。
流れ星に願ったら叶うのを知らないから怒るんだ。
僕はちゃんと調べたんだから。
流星群って、流れ星が1日だけじゃないって。
早く会いたいからね。
「ようちゃんに会いたい ようちゃんと遊びたい ようちゃんの声が聴きたい」
3回今日も唱えたよ。
流れ星は見えてなかったんだけど。
でも、そのときおっきいのが流れたんだ。
最初は、白くピカピカ眩しい、おっきな流れ星。
次に、赤い尾を引く、かっこいい流れ星。
山のほうに見たんだ。
って、言いに行ったのに。
パパは、ため息をついて言うんだ。
「ようちゃんに会えるっていう嬉しさはわかるけどね。明日の話だろう。そんなにはしゃいでたら、会う前に疲れちゃうよ。早く寝なさい」
って。
怒られたうえに遠足前のセイシンジョータイみたいに言われてもさ。
僕は小さい子供じゃないんだから。
はっきり言ったよ。
「本当だよ。見たんだ」
パパは、うーんと唸ってつぶやいたんだ。
「山のほう? ……車のライト。白い光はヘッドライト。赤い光はテールランプ」
ときどき1人で納得するんだよね。
「それは……。けい、とりあえず上着を取ってきなさい」
パパは電話をかけ出した。きっと浩二さんだ。近所のおまわりさん。
「あー、もしもし浩二? あのさ、うちの山の上に家が1軒あるじゃん? あそこってさ、星さん? やっぱり。ちょっと調べてくれるかな。星さんの行方。うん、頼むよ」
僕は上着を取りに行くふりをして、ドアを出てすぐ横に座った。
盗み聞きっていうと悪っぽいな。立ち聞き? でも、座ってるし。うん。座り聞きをしてた。
電話が鳴った。
「ああ、浩二。うん。え? 病院? ここらで1番近い。うん。わかる。行ってみるわ。おう、サンキュー」
僕はそうっと、上着を取りに行った。
出かけた先は、小さい病院。
「ようちゃん!」
「けい!」
僕らは抱き合って、グルグルまわった。
「ようちゃん、元気してた?」
「おう。オレ、超元気。けど、ちょっと寂しかったかもな」
「僕も元気。かなり寂しかったみたいだけど」
「あんなー、オレ、あの番組でハガキが読まれたんよ」
「知ってるよ! 聴いてたもん」
「なんで聴けたんだ? ま、いいや。テンション上がったよな!」
「上がった!」
「千社札届く前に来ちゃったから、今度送るよ!」
「うん! やったぁって、ようちゃんなんでここにいるの?」
僕は急に不思議に思った。
だって、明日のお昼に来るはずだったから。
「じいちゃんが怪我しちゃってさ。平気だって言うんだけど。父ちゃんが腫れてる足見て病院に急いだってわけ」
「えっ。大変だ!」
パパたちがあわてて来た。
「2人とも静かにね。ここは病院だよ。では、星さん。息子さん2泊3日でお預かりしますね」
「申し訳ありません。父の足が落ち着き次第迎えに行きますので。よろしくお願いします」
「え、ようちゃん今日からうちに泊まれるの?」
「そうだよ。けいくん、陽介と遊んでやってな」
「はい!」
ようちゃんのパパはカッコイイ。
あわてて車で来たのがわかるようなサンダルでも。
そう思っていたら、治療をしたおじいさんが病室に。
僕は、お礼を言いに行った。
「星のおじいさんは、帰れないの?」
「今日は無理のようじゃ。でも、ちゃんと見てるから心配せず、しっかり遊びなさい」
「ありがとう。願いを叶えてくれて」
「うんうん」
「僕、今日は星のおじいさんがうえに帰れるようにお願いするね」
ちゃんとお願いするのに。
パパってば意味不明なことをはさんでくる。
「あー、ちょっと意味違ってくるとアブナイぞー」
なにそれ。
でも、星さんは笑ってた。
「はっはっは。そうじゃな、はやく治りますように、にしてくれると嬉しいかの」
「わかった。すぐ治るからね」
「オレもするよ。じいちゃん、すぐだぞ」
うちに帰って、ようちゃんと流れ星に願った。
「おじいさんの足がはやく治りますように」
僕の願いはもう叶ったから。