ー触った編ー
「本当だよ。触ったんだ」
パパにそう言ったら、また怒られた。
夜中に起きていたから怒ったんじゃなかったの。
まだお風呂あがったばかりだよ。
流れ星に願いごとした話を学校でしたら、みんな今日やるって言ってた。
けいのパパは、夜に起きてても怒らないんだね。いいなーって言われたのにさ。
いいけどね。
僕は今日も願いごとしようと思ってるし。
それはそうと、星さんって冷たいんだね。
学校の帰りにね、おじいさんが畑の向こうに座ってて。
僕「大丈夫?」って聞いたんだ。
そしたら、おじいさんは「落ちちゃっただけだから、少し休めば大丈夫じゃ」って。
でも、やっぱり心配だったから、お水を運んで飲みながら休むのにつきあってたんだ。
それで、おじいさんに「落ちちゃってうえに帰れるの?」って聞いたんだ。
「もちろんじゃよ。帰らないと光をつけててあげられんからね」
って言うんだ。これって絶対、星さんじゃんって思ってさ。
だって、僕が祈っちゃって、その願いごと聞くために落ちてきちゃったんだよ!
いや、聞いてから落ちちゃったのかな。
どっちにしろ僕のせいだと思って謝ったの。
「おじいさん、ごめんなさい。僕がようちゃんに会いたいって言ったから」
「ようちゃんか。それは、明日の次の日のことか。よかったよかった」
ニコニコしてようちゃんのこと話すんだ。
おじいさんは何で知ってたんだろう。
あ、当然だよね。星さんだもん。
なのにパパってば、こう言うんだ。
「溝に落ちてたら大変じゃないか。そのおじいさんは、怪我してないのかな。もっと早くパパに言いなさい。しかし、どこの人だろうね。大丈夫。空ではない。けいは、もう眠いんだな。湯冷めするから早く寝なさい」
って。
怒ったうえにダンゲンしちゃって。
絶対信じてないじゃないか。
僕は、おじいさんに手を貸して立たせてあげたんだよ。
だから、お星は冷たいんだって思ったんだもの。
はっきり言ったよ。
「本当だよ。触ったんだ」
パパは、うーんと唸って考えてた。
「ご近所さんに、おじいさんは多いからなぁ。しかし、うえに、となると星さんかもしれないね。きっと美味しい料理を用意しようと思ったんだろうな。星さんは……」
「おやすみなさい」
やっぱり星さんじゃないか。
パパは素直じゃないんだから。
話し出すと長くなるから部屋に行ったよ。
「ようちゃんに早く会えますように。あ、おじいさんが光をつけれますように」
流れ星は見えなかったけど、念のため。