ー聴いた編ー
「本当だよ。聴こえたんだ」
パパに言ったら、夜中に起きてたことを怒られた。
だいたい、流星群が見れるよって言ったのはパパなのに。
願い事したらって言ったのに。
そりゃあ前の家のときだって、夜中にゲームしたり、ラジオを聴いたりしてたさ。
ここは関東圏、山梨。
僕たちは、1週間前に引っ越してきたばかり。
小学校にも慣れてきた。
でも、やっぱり友達と別れたのは寂しかった。
パパだって、そう思ってくれて流れ星の話をしてくれたんだと思ったのに。
僕は流れ星に願った。
3回唱えれば叶うんだろう?
「ようちゃんに会いたい ようちゃんと遊びたい ようちゃんの声が聴きたい」
そのとき、ラジオから聴こえてきたんだ。
「お便り来てまーす。『よう10歳。引っ越していった友達のけいくんに会いに行きます』おー、いいね。『おじいちゃんの家に遊びに行くのですが、住所が近いので寄ってもいいとお父さんが言ってました』って。くあー、セイシュンだね。良かったね、よう!『いつも次の日にこの番組の話で盛り上がっていました。会ったら、けいが聴いていないかもしれないので、教えてあげようと思います』だってさ! 10歳で夜中きついだろー。でも、ありがとね。面白い話いっぱいするから眠たくなるまで聴いてよな。けいにもハガキ読まれたぞって話せるね。ああ、そうだな。番組グッズの千社札。2人分送るから1個あげてなー」
って、前の家でいつも聴いていた番組で、ようちゃんのハガキが読まれたんだよ。
ちゃんと覚えて言いに行ったのにさ。
パパが不思議そうに僕に言うんだ。
「前に住んでたのは熊本だ。けいの聴いてたっていうそのラジオ番組は、ローカルみたいだよ。ここでは聴けないんだ。空を見ながら寝ちゃったんだね。風邪をひくから、ちゃんとお布団で寝なさい」
って。
怒ったうえに寝ぼけてたとか、冗談じゃないよ。
僕のこと信用してないんだ。
何回でも言うよ。
「本当だよ。聴こえたんだ」
パパは、うーんと唸って人差し指を立てた。
「聴こえないはずのラジオ。澄んだ空気に流れ星。ははーん。それは電離層という現象だね。用は電波の伝わり方の問題で……」
「おやすみなさい」
僕はパパの話を途中でさえぎって、部屋に戻った。
長くなりそうだと思ったから。
だって結局、ようちゃんのハガキが読まれたのは本当で。
ようちゃんが遊びに来るのも本当だ。
だったら流れ星に感謝だよ。
窓からペコリと礼をして布団に入った。
「早く会いたいなぁ」