表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある魔法使いと助手の異世界蹂躙記 もう手遅れだとか、遅すぎるなんてことは、ないんだよ と君は言った

作者: N通-

 俺は草原で大の字になって寝転んでいた。

 

 色々と理由があり、今はもう何もしたくない気分なんだ。

 

 そう、今更なんだ。もう何もかも手遅れになってしまった。それというのも、全部俺が悪かったのか? 解らない。

 

 頭の中で堂々巡りをしているうちに、不意に俺の顔に影が差す。逆光でも解る、きらびやかな金糸のような髪。パーティメンバーであり、幼馴染のエルフ、ルシアだった。

 

「なーに黄昏てんのよ、あんたらしくないない」


「うるせー。俺はもう何もかも失ったんだ。信頼も……パーティも」


「だからヤケになってこんな所で時間潰してるの?ダッサダサー」


 ……相変わらず人の傷を抉るようなことを平気で言うが、絶世の美人は何を言っても大体平気だからいいよな。と我ながら僻みっぽくて思わず苦笑してしまう。

 

「何よ、いつもみたいに言い返してこないの?ないの?」


「だってよ……俺が今、何ができるってんだよ」


 完全に拗ねたような俺の態度に、ルシアは心底呆れたように大きく溜息をついた。

 

「あのね。アンタがどう思ってるかは知らないけど。この世界はさ」


 そこで、ルシアは俺のわざわざ俺の隣に腰を下ろして、碧空を見上げて、力強く言い切った。

 

「もう手遅れだとか、遅すぎるなんてことは、ないんだよ」


 なんてことのない言葉。反論しようと思えばいくらでも思いつく。知ったふうな口をきくなとか、お前に何が解るんだとか。でも、俺はそのどれも選ばずに、ルシアを見上げて口を引き結んだ。

 

 そんな俺に向けて、ルシアは顔を合わせて、目を笑みの形に変える。

 

「まだ間に合うよ、エリオン」


「本当にそう思うか? ルシア」


「うん! だってエリオンの事一番解ってるの、私だからね」


「そう、か。じゃ、まあちょっと行ってくるわ!」


 俺は寝転がっていた状態から足を大きく上げ、その反動で一気に立ち上がる。

 

「ちゃんと謝るのよ?」


「ああ、ペルルの下着盗んだのと、シャリアスの風呂覗いたのと、ルシアは――まあいいか。じゃ、行ってくる!」


 しゅたっと手を上げてダッシュをしようとした所を、ルシアにガッシリと肩を掴まれた。

 

「あ、あのー、ルシアさん? このままだと皆の所に行けないなーって」


「ま て や」


「嫌です! だってエリオン絶対殺すって目してるもん!」


「何がもんだこのドスケベ外道! アンタそんな事本当にしてたの!? てっきり誤解だと思ってたのに――いや、待って。私には何をしたって?」


「そのことはいいじゃないですかー」


「簡潔に」


「はいっ! 寝てる間に胸触りました!」


 俺の正直かつ大胆な告白に、ルシアは顔を真赤にして腕を振り上げ――。

 

「手遅れだわこのアホタレーーーー!!!」



 碧空に、小気味よい平手打ちの音が響いた――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ