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執筆などのつれづれ

『この後、あんなことが起こるなんて思いもしなかった』とか書くの、本気でやめてくれない?

作者: 風待月


 タイトルの通り。


 もちろん実際に使われている文言は、厳密には差異がある。

 『その時、俺はまだ理解していなかった』とか。後に説明する内容とは少しズレるが要点は同じ『じっと見つめる眼があったことを、私は知るはずもなかった』とか。


 要するに、それまで平和な雰囲気を一人称形式で紡がれていたが、その後に急転直下な展開が起こると示唆する文章のことだ。

 すごく多いわけではないけれど、作品を読んでいると無視できない割合で、そういった文章を見かける。



 個人的な意見だけど。

 これ本気で止めてほしい。

 ブラウザバック要件を満たすほどウンザリする。

 物語に入り込んでいても、一気に醒める。



 一人称で読者に展開を説明する主人公たちよ。

 お前はいつ超能力者になった?



 ○ ○ ○ ○ ○ ○



 物語を語り手 (多くは主人公)の主観で説明していく一人称形式文章には、いくつかタブーが存在する。


①同シーン内での視点移動

②語り手が知るはずない情報を説明する


 その手のHowToを見れば他にもいくつかある場合もあるが、このふたつは絶対と言っていいくらい挙げられる。


 で。エッセイ議題の『~するとは思いもしなかった』系の話に当てはめると。


 当然②のタブーに触れる。

 神ならぬ身には、未来の出来事なんて知りようがない。

 未来『予想』なら誰でもできるけど(正しいかどうはさておいて)、正確な未来『予知』となると人間には不可能だろ。


 そして①のタブーにも触れる。

 『この後イベントが起こり雰囲気が変わる』という情報は、作中キャラクターには推測も不可能、作者でなければ知りようがない、神の視点によるものだ。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○



 例外的に、作中キャラクターが未来予知してる文章でも、許される場合もある。

 要は上記のタブーに触れなければいい。

 『語り手が知りえない情報』という部分を乗り越えて、『知りえる情報』であるなら、問題はない。



①物語が回想や伝聞


 聞き手 (読者)に向けて『過去こういうことがあったんだよ』と語っている物語ならば、語り手が結末まで知っていて当然なので、『(その時点では)あんなことが起こるなんて思いもしなかった』と語るのも当然。


 ただしその場合、過去時制の文章になる。

 文末、特に行動説明は『~した』になる。

 セリフと地の文では時間軸が違う文章になる。(セリフ=過去、地の文=過去を語っている現在)



②語り手が未来予知できる超能力者


 『未来の出来事を示唆』という意味においては、主人公ないし語り手が正確な未来予知可能という設定ならば、未来の情報も当然出せる。


 ただしその場合、『この後、あんなことが起こるのに』と既知の情報として書くことになる。

 『思いもしなかった』だと未知としての書き方で、『お前知ってんの? 知らんの?』とツッコまれる。



 このように例外はあるが、『この後、あんなことが起こるなんて思いもしなかった』などと書かれている、多くの作品は違う。

 主人公は未来予知できる超能力者ではなく、回想ではなく現在進行している出来事を説明している。

 よって例外に当てはめることができず、イラっとする。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○



 なぜ『この後、あんなことが起こるなんて思いもしなかった』みたいな文章が使われているかを考えると、いくつか予想できる。



①作者は『引き』のつもりで書いている


 この手の文章が使われる箇所は、ページ最下部であったり、途中でも場面展開する前であったりと、話の区切り直前だ。

 次の文章や場面へと繋げるために、こういった文言を使っている。


 そのほうが場面転換がスムーズに見える。


 またこのサイトにおける作品は安心・安全な書き方がされていない作品は見てもらえないなんて説もある。(真偽はさておいて)『この後イベントが起こるよ!』と読者に示唆して安心や心構えを作ってもらわないと、作品を読み続けてもらえないから、使っているのかもしれない。



②作者は書き慣れていない


 ①にも関連するが、自分のスタイルが確立していない作者がこういう書き方をする場合だ。

 こういう書き方をしてる他作品を見て、影響を受けて、自身も使っている。


 自分はなろう暦はそこそこ長く、アクティブユーザーとしては古参の部類に入ってしまうと思う。

 なのでこういう話をすると、展開に直接は関係しない説明を入れる時、やたら『閑話休題』を使ってた作品が多かったのを思い出す。『劣等生』に影響されたんだろーなー。



 そしてもうひとつ。

 自分のスタイルが確立していない作者は、『作者自身が知る情報』と『主人公 (語り手)が知る情報』の区別がついていない。


 これは作家経験よりも、人生経験の差と思うべきだろうが。

 余計なお世話だと自分でも思うし、実際どうかは知らないが、そういう書き方をする作者は、実生活で人付き合い上手くいってるのか心配になる。

 他人が自分と同じ情報を持っている前提で話していないだろうか?


 『昨日カズトモが~』とか言われても、その人とそれなりに親しくなければカズトモが誰か知らない。弟なのか彼氏なのか、話してる人物との人間関係なんて知るはずない。

 『映画の○○見たけど、原作と違って~』とか感想を語られても、まず相手が映画や原作を知ってるかどうかを摺り合わせないと一方通行な愚痴だ。

 『ほら、アレだよアレ』で通じると思われても、言われた側は困る。それでも相手が対応してくれるのが亭主関白とか勘違いしていたら、昨今なら離婚を叩きつけられても不思議ない。

 『今日のアジェンダについてどう思いますか? エビデンスはありますが、アグリーですか?』とか訊かれたら、大抵の人は『は?』だ。そして後で『意識高い系w』とバカにされる。


 そういう話し方してない?



③作者が未来予知できる、本物の超能力者


 これなら凡人には未来予知できないことを理解できず、作中キャラクターもできて当然と、そういう文章を書くのも仕方ない。

 これまでの人生で、上記した他者との情報格差も経験したことがなく、自分が他人と違うと知りえなかったということは、言葉にせずとも通じ合える一流のテレパシストでもあると思われる。



 一人称形式なのに『この後、あんなことが起こるなんて思いもしなかった』なんて文章をつける作者は、自分はきっと③であると信じたい。

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― 新着の感想 ―
本気で共感できます。このセリフで何回読むのを辞めたことか。
[一言] 興味深く拝読いたしました。 私としては、一人称の語り手が先の展開を知っているのは当然のことだと思っていました。 何故なら、「一人称小説とは、一連の出来事が決着した後に、語り手が、当時のこと…
[一言] 一言  作者様が他の方にコメントした感想欄から流れてきましたが、大変勉強になりました。  自分は連載開始前にかなり書き溜めていたのですが、その時はエッセイのタイトルにあるような言葉を何箇所…
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