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創作世界で幼女に転生したら色々恨まれてしまって、死なないように頑張る話‬  作者: 篠原えれの
西暦2100年 二章 惑星ストリジア
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第二章2 未開の地に飛ばされて

 ミオは目を覚ます。

 朝日が眩しい。丸一日眠ってしまったのだろうか。



 「(ここはどこだ)」


 

 そこはミオにとっても義光にとっても見知らぬ土地だった。

 森だ。見渡す限り木々しかない。

 周囲にリジャックが不時着してる様子もない。煙があがってる様子もない。



 「(体中が痛い、ミシェル。どこだ。俺はここにいるぞ)」



 ミオの体はボロボロだった。

 あの時ミシェルとミオはピリット達の攻撃をリジャックで回避することができずに直撃してしまったのだろう。

 全身傷だらけで骨が何も折れてないのが奇跡だった。

 リボンも外れて、長い金髪がボサボサになって毛先は焦げている。

 そのおかげでぱっと見誰であるか分からないのが救いだろうか。



 義光はうまく歩けない体を無理やり動かした。




 「(森の中でも、なんでもいいから何か見つけないと。それさえ分かれば此処がどこか分かる)」




 この土地特有の物を探す。天気は晴れで青空が広がっている。



 「(分かるのは、現在地が各国の首都じゃないってことか。)」



 この世界では珍しく「結界」が張られてなかった。

 それはつまりこの世界において各国の首都でないことを意味する。

 義光はPNTウイルスの空気感染も懸念したがどうやらその様子もなくこの土地の空気はとても澄んでいた。



 「(空気がとても綺麗だ。PNTウイルスにも感染していない大地となるとさらに候補が絞れるな)」



 「結界」は人々がピリットとPNTウイルスによる空気感染の脅威から逃れ、生きるための必需品だ。

 遥か昔に天界を裏切った神が各国の首都に結界を張りそして姿を消した。

 無限に再生する消して破れることのない結界。


 

 「(ま、あの状況からして此処が惑星ストリジアなのは確定ーーー。嘘だろ、契約すらしてないのに未開の地へ一人突入とか)」



 他にもっとヒントがないか、人になるべく見つからないようにミオは歩いた。

 もうあの首筋に浮かんでいたミシェルとの契約の証であるスフロンコードは消えてしまってる。

 胸元のスフロン水晶も今は青い輝きを失い、生きているのも不思議な状態だ。能力も当然使えない。

 義光の嫌な予感はすぐに当たった。



 「■■■ーーーー!」



 ピリットだ。それも人型のピリットが15体。精霊型ではなく人型。

 そう、PNTウイルスを経由してピリットの攻撃を喰らえばヒューマンもピリットになってしまう。

 ゾンビのように沢山増殖する。

 この大地には彼等の侵入を拒む結界は存在しない。

 アージェリカで武装するかミシェルのように特殊な訓練を重ねなければ接触した瞬間にPNTウイルスに感染して終わりだ。


 

 「(感染したらどうなるか分かったことじゃない。逃げないと)」



 義光の現在のステータスは何もスキルを持ち合わせてない無能力者に等しい。以前のように風の魔術は使えない。

 ジェットやミシェルの様子でサリエルにミオが好き勝手に使われていたことは分かるが具体的に何をしていたのかまでは分からなかった。



 「■■■!!■■!!」


 「(走るに決まってんだろ!)」



 ピリットが走ってくる。噛まれたら感染してピリットになってしまう。

 ならこちらも走るしかない。歩けなくても無理やり足を動かして逃げるぐらいのことはできる。



 「こんなところに生命反応って珍しいな」


 「天界で政府と天使がドンパチしたらしいし、もしかしたらその生き残りかもね」



 会話が聞こえた。男と女の声だ。

 あともう少しで追いつかれそうになったタイミングで、紫色の砲撃が人型のピリットをまとめて貫いた。



 「(助かった。上からの砲撃、しかも人工精霊の気配を感じなかった。そうなると砲撃主の属性は博士と同じ太陽か)」



 15体もいたピリットが一瞬で倒された。 

 その砲撃は魔法や魔術の源である人工精霊の気配を感じない珍しいものだった。

 この世界は所謂魔力の代わりになるエネルギーが人工精霊の他に太陽が該当する。

 この世界において人工精霊の次に太陽は欠かせない存在だ。

 契約の際に生まれる属性が太陽であれば、人工精霊ではなく、太陽エネルギーを使って体力及び対価を支払えば能力を使用できるようになっている。

 


 「大丈夫?カザンに乗れる?」



 金髪の少女が緑色の毛並みが特徴的なオオカミのような精霊に乗って上空から降りてくる。

 オオカミ型の精霊はカザンと言うらしい。

 少女に手を刺し出されて、顔を見て義光は驚く。



 「(ごめん喋れないんだ。って、嘘だろ。シェル?!シェルヴァ・イバース?!カザンでなんとなくそうかなって思ったけどマジかよ。)」


 

 驚きながら義光は頷く。

 義光を助けてくれた金髪の少女の名前はシェルヴァ・イバース。シェルは愛称になる。

 若い精霊だ。生まれてから数十年しか経っていない。容姿も20代前後で落ち着いている。

 彼女は希望の協会というギルドに所属する精霊だ。

 人の容姿を持つ彼女は精霊の中でも最上位に区分される上級精霊になる。

 精霊は人の容姿に近付けば近付くほど階級があがる。

 その判定は厳しい。

 ミシェルのように完全に人の容姿を持っていても、その正体が人工精霊であると分かると、それは下級の要素があると判定されてしまいクラスが下げられてしまう。

 そういう意味では、一時的に人になれる精霊は五万といる。



 「(ということはなんだ、此処はエルサイアからそんなに離れてないのか。もしくはギルド希望の協会に近い。それなら結界がなくて空気感染してないのも納得できる。あそこは結界じゃなくて湖と協会が神聖な場所すぎてピリットも魔物も侵入できない、天然の要塞だから。なら此処はエルサイアから少し離れたラウル王国。その境界線か)」



 シェルヴァのことも理解しながら、義光は現在地も大凡理解した。

 気象条件と彼女の所属とその歴史を見返して納得する。

 カザンの背中に乗ると彼に小言を言われる。

 よく聞いてみるとさっき聞いていた男性の声ではないことが分かる。


 

 「はやくしろ。人型のピリットもそうだが魔物の気配も複数感じる。」


 「うん。そうだね。」



 シェルヴァが頷く。

 その場を急いで離れる。ピリットと周辺の魔物達が反応する前に。

 後ろを見ると既に大群がシェルヴァ達を追って来ていた。

 あまりの数の多さによく眠ってる間彼等に襲われなかったなとミオは身震いした。



 「大丈夫。迎撃するし、もうすぐ聖域に入るから奴らは追ってこれないよ」


 シェルヴァの言う通りカザンが高速で移動を始めた瞬間ピリット達が一斉に紫色の砲撃によって更に迎撃された。



 すると青色の電子パネルが開く。

 ミシェルが使っていた同じタイプのものだ。

 相手の容姿が分かる。



 「そっちの嬢ちゃんの容態は」



 彼の名前はシュテー・イデアール・ウングリュックだ。

 紫髪が特徴的だ。

 童顔で若く見え20代に見えるが今年で35歳になる。

 種族はヒューマンだ。目付きが悪いのが救いだろうか。



 「(あっ、マジで。シュテーじゃん。シュテー・イデアール・ウングリュック。地球人で契約者。まじか。じゃぁあの紫色の砲撃はシュテーがやってくれたんだな。通信してるってことはシュテーはもしやこの場にいないでいつものことなら協会に居てるな?攻撃も協会からしたってなるから、すげぇな。現在地と協会の距離がどれぐらい離れてるか分からんからなんとも言えないが)」


 

 移動しながらシェルヴァがシュテーに報告する。 



 「とりあえず大丈夫そう。ただ、ちょっと調子が悪そう。怪我してるし、喋れないみたい」


 「(そう、そうなんだよ。喋れないしあとケガが痛いです。)」



 シェルヴァの言葉にミオが頷いてるとシュテーが少し考えて言う。



 「端末はもってないのか」


 「(もってないです。あ、そうだね端末使えば文字入力で伝わるね)」



 首を振って、持ってないとアピールする。

 シュテーの言葉に確かにそれなら喋れなくとも話が伝わると義光もハッとする。



 「シェル、端末貸してやれ。」


 「いいよ。えっと、入力できる?言葉は全然共通語でいいからね」



 シュテーの指示に、シェルヴァも心よく引き受けてくれる。

 青い電子パネルが入力しやすいようにキーボードになってミオの前に出てくる。



 「(もちろん。なんなら旧エルサイア語でもいいんだけど。よっしゃーー!!!これで喋れないストレスから解放されるぜ!!)」



 義光は少ない間だが学校に通って、共通語を学んでいる。

 しかしこの5年の間で持っていた端末も紛失し、連絡手段など全くない状況に立たされていた。

 ようやく話すことができることに歓喜する。

 義光は入力すれば喋ってくれるアプリをシェルヴァにインストールして貰う。

 なるべく自分の声に近いタイプの入力アプリを選んだ。



 この世界の言葉は基本的に誰でも話せるようにと共通語が生まれ、それは日本語でも英語でもないので誰にでも親しみやすい言語となっている。

 今シェルヴァ達の言葉をミオが理解できてるのも共通語のおかげだ。



 シェルヴァ達はピリットから逃げながら情報を共有した。


 


 


 

 


 

 

 


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