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第一章6 プロポーズ

 「やらなきゃ、助けて会ってミシェルに謝らなきゃ、私なんかどうなってもいいから」


 ミオはライベルトの助言をしっかりと受け取った。

 義光も理解した。

 サリエルに連れされたあの時、ミシェルと言葉を交わしたあの時、なにがあったのかもうっすら思い出した。


 「ーーーっ」


 義光はあの時完全に油断していた。背後に突然現れたサリエルがミオの心臓を容赦なくえぐりとった。そして連れ去った。その後の記憶が椅子に縛り付けられて目を覚ますまで完全に抜け落ちてないが、今、その証拠を確認した。ミオの心臓の位置にはスフロン水晶が青く輝いていた。心臓を抉り盗られたのに何故生きているのか。それは胸にあるスフロン水晶がミオを動かしてるからだと理解した。そのスフロン水晶を制御できるのは持ち主であるサリエルぐらいだが、前世の予備知識がある義光ならハッキングしてスフロン水晶を動かせる。歌うぐらいならサリエルの制御から外れて精霊歌を起動できる。起動さえしてしまえばあとは義光が生み出した精霊が全て動かしてくれるから。その後の自分なんてどうなってもいいと義光はスフロン水晶を経由して精霊を作りだし、精霊歌を起動した。



 「さすがに知識だけは豊富だね」


 「おい、サリエル。答えろ。ミオはどっちの勢力の管理者だ」


 

 歌が流れる。ミシェルを生き返させるための歌が流れる。精霊が義光の変わりに歌っている。義光も自分で歌を停止させないように厳重にロックもした。こうなるともうミオのスフロン水晶を壊さない限り歌は停止しない。契約が解除された状態での精霊歌だ。なにもサポートされていない。完全に手動での起動だ。そんな中で、ライベルトが刃をサリエルに向けたまま話した。




 「ーーーーっ!!(管理者?!なんのことだ…?っ!)」


 「どっちだと思う?」




 サリエルはそれに対抗して歌ってるミオの両手首を掴む。そのせいで自由が効かなくなった義光だが、精霊歌事態はスフロン水晶を経由して精霊が歌うことにより既に塔が動かしてる状態だ。

 精霊は不可視の存在になり、サリエルでは破壊できない。歌が流れたままの状態で、事態が進む。サリエルは話を聞かせるつもりなのだろう、ミオの意識はそのままにする。義光は慌てて反論する。管理者になった覚えがないからだ。それでも何故ライベルトがそう思ったか考えた。




 「違う、そんなのじゃない!(管理者になった覚えは全くないが、今考えたら契約無しで精霊歌を起動してしまってるな?!よくできたな俺?!精霊も作りだして、このまま話が進むとまずいな)」


 「【君はちょっと黙っとこうね。】」


 「ーーーっ!(ダメだ。サリエルの能力の一つ、「言霊」だな。これ以上は喋れないか。くそ、やられた。なにも弁解できん)」




 サリエルにそう言われてミオはあまり話せなくなる。

 サリエルの能力だ。義光も困惑する。

 明かに大人しくなったミオの様子を見て、十夜は叫ぶ。




 「ミオ!クソ、なにが管理者だ!彼女はごく普通の小学生だ。神無月の妹だぞ!お姉さんだっているのに」


 「だからだよ。普通の小学生は幾ら知識があったからって、あの少ないヒントで動揺せずにスフロン水晶をハッキングして動かせない。現に今だって、自分が管理者だって自覚してなくてそっちに動揺してら。しかも契約すら解除された状態で、精霊を生み出して精霊に歌わせるなんて普通できるか?ただ、そんな彼女を弁解するとすれば一つだけある。それは彼女にとって時間がないということだ。また意識をサリエルに乗っ取られるかもしれないから無我夢中で精霊歌を歌ってる。そんなところか」




 ライベルトの解説にサリエルは口笛を鳴らす。




 「正解だ。さすがだね。ミオは管理者の一人で、彼女は管理者になった自覚がない。ただし」


 「ただし…?」


 「(なにを話す気だ。デタラメを言うんじゃねぇぞ)」




 ライベルトはサリエルの話を聞く。彼は淡々とミオについて語る。




 「どこにも属さない。属せない。そのかわりこの世界にある、重要機関「地球・塔・ストリジア・天界」全てにおいて関わることができる。各管理者達は彼女をこう呼んでいたよ。グランドマスターとね」


 「っ、やっぱりその類の存在かよ。初めてあった時からそんな予感がしたんだ。」




 ライベルトが舌打ちする。そんな会話をしている内に、トレシィが十夜の呪いの解呪に成功する。



 「解呪したわ。少しは楽になったんじゃない。私は博士の援護をするから十夜は死なないように後ろの方に下がってて」


 「了解。すまないトレシィ。今回の事件、俺はただの足手まといだ。」


 「いいのよ。十夜、謝らないで(博士のスキルに関しては、十夜だけでも巻き添えにならないようにしないと。)」



 トレシィは捕まってるミオよりもようやく十夜にかかってた呪いを解呪でき、安心する。

 博士というのはライベルトの愛称だ。

 ライベルトのスキルに対して巻き添いにならないように、トレシィは再び十夜に守護の効果のあるスキルを上書きする。


 

 「ーーーーーー」



 歌が進めば進むほど、周囲の人工精霊が青く輝き目視できるようになる。形を纏うようになる。ミシェルの再起動が進む。義光は叫ぶ。黙れとサリエルに命令されていてもそれを打ち破るように。



 「ミシェルっ!」



 サリエルは笑みを浮かべる。義光は「言霊」のせいで声も出すのが苦しい状況だ。少しでもミシェルに手が届くように伸ばす。



 「【終わりだよ。ここから先は僕に従うんだ】」


 「ーーーッ」



 サリエルの「言霊」の効果で義光は意識を失くしそうになる。視界がボヤける。ミシェルの再起動が完了する。ミシェルの姿が見える。それにライベルトも反応する。歌は成功だ。



 「ミシェル!ミオを助けるぞ。」


 「うん!」


 

 元気そうだ。記憶も引き継いでるのだろう、ミシェルは状況を理解してる。容姿は変わらない。怪我も完治している。ライベルトはトレシィの方を見る。時間が無い。



 「援護頼む!」


 「当然!神崎家を無茶苦茶にしてくれた責任、償ってもらわなきゃね」



 トレシィは魔法陣を展開する。ライベルトとミシェルが走ってミオの所まで駆けつけようとする。



 「ミオちゃん!!」


 「ミシェル!」



 必死で義光はミシェルの手を取ろうとする。火事場の馬鹿力だろう。サリエルの言霊を無視してミオは叫んだ。

 あともう少しだ。

 もう少しなのにミオの視界は真っ暗になってしまう。

 何も考えられなくなる。





 ミオ(義光)は意識を失くす。

 一瞬のことだった。





 はやくミシェルの手を取らないといけないのにうまく体が動かなかった。





 すぐに目を覚ましたのに義光は久しぶりに自分の意思で歩くような感覚に襲われた。

 ミシェルは生き返ったんだ。あとは会って謝って、再契約するだけだと意気込む。

 ボヤける視界を無理やり見えるように目を凝らした。

 


 「迎えに来たよ、ミオ」


 「ーーー?!」


 

 ようやく身体の感覚を取り戻した義光はお姫様抱っこされていた。

 まったく知らない男性にお姫様抱っこされていた。

 ミシェルがいない。自分と同じぐらいの身長で小さかったあの子はいない。


 

 「誰か分からないって顔してるね。それも仕方ないか、あれからもう5年も経ってるんだもんね」


 「(5年…?5年って、なにそれ)」



 義光は男が言ってることが分からなかった。

 男はそんな義光の様子もお構いなしに、とても見覚えのある笑顔で囁いた。



「愛してます。俺の大事な愛しい人。俺が絶対に護ります。だから、結婚してください」

 


 お姫様抱っこをしながら、男は義光に優しくキスをした。

 プロポーズもされ、ミオは訳がわからず方針している。


「ミオ。もしかして俺の名前が分からないの?」

 

 男がようやく、そう聞いてくれたので義光はすぐにこくこくと頷いた。


「俺の名前はミシェルだよ。あれから5年経って15歳になったんだ。」


「ーーー?!ゲホ、ゲホッ(んな馬鹿なことがあるか、ミシェルは女の子で、なんで男ーー?!!!あ、いや、もしかして強くなるために男の子に?!変身できるもんな?!どんな心境の変化、っていうか、やべぇ、俺喋れない。どうしたらいい?!)」


 男の正体がミシェルだと知り、義光は驚きすぎて蒸せる。

 他に聞きたいことが山程あるが喋れない。

 涙目になりながら義光はミシェルと名乗る男にお姫様だっこされた。


 西暦2100年。人類は天界を相手に初めて勝利した。

 数多の犠牲の末、人類は天界まで辿り着いた。


 人類は堕天使サリエルの封印に成功する。


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