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創作世界で幼女に転生したら色々恨まれてしまって、死なないように頑張る話‬  作者: 篠原えれの
西暦2100年 二章 惑星ストリジア
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第二章16  後藤カノン

 後藤カノンがエーディンの病院へ侵入しようとしたその頃、レッド隊のメンバーも後藤カノンの姿を捉えた。



 「ーーー殺す。許さない、全て、破壊する。」


 「(いけない、またどれが偽物ダミーか本物かわからない程度に精度をあげて来たわね。本物かどうか分からないじゃない!)」



 雪平白は思わず、本物そっくりな彼女の姿を見て舌打ちをする。

 戦艦アルテミスのメンバーは後藤カノンが分身コピーを創れることを知っている。

 しかし、現状ではそれを本物かどうか見分けるだけの能力スキルが戦艦アルテミスのメンバーにはなかった。

 正確には、経験を積んでようやく最近になって識別することができるようになったばかりであった。

 偽物は、目が虚であったり、カタコトであったり、言葉を発しなかったり、魂の気配を感じなかったりした。

 偽物は様々であったが、今回のそれは本物そっくりな容姿と言葉を話す。魂の気配までそっくりそのままだ。見分けるのは難航した。



 「目標発見しました。全力で、精霊弾を回避してください!」


 「了解!」


 「カノン!お姉ちゃんだよ、聞こえる?!」



 雪平白は透かさずレッド隊のメンバーに警告する。

 一同が雪平白の命令に従う中で、カナンのみがアージェリカを使ってカノンと対話を試みる。

 


 「危険です。回避してください!」



 雪平白はカナンに警告する。

 カノンに関する資料は事前に読ませたはずなのに、と雪平白は警告を無視するカナンに苛立つ。



 「お前なんか知らない!!」


 「効かないよ、そんな攻撃!」



 カノンはカナンの言葉に反応して、さらに精霊弾を拡散させた攻撃を放つ。

 能力(防衛プログラム)を行使して、カノンの精霊弾を次々にカナンは防いで行く。



 「お前なんか、知らない。私にはお兄ちゃんしかいない!」


 「違う、カノンの兄弟きょうだいは、姉妹しまいは私しかいない!カノンのそれは、カノンが創り上げた空想(理想)にしか過ぎないの!」


 「ーーーお兄ちゃんを、否定するな!!お前は、お兄ちゃんに会ったことも無いくせに!!」


 「カノン!あなたは私に何度も会ってるでしょ!!生まれてからずっと一緒だった!」


 

 カナンは理解していた。雪平白の警告の意味も、渡してくれた資料も。

 カノンが叫ぶ兄のことも、資料を通して理解していた。

 理解していた、つもりだった。



 「ーーーー?」


 「■■です、カナン!防いでください!!」


 「(えっ、何!?聞こえない!しかも見えない、この警告アラート、カノンの兄?!■■(アンノウン)?!)」



 カノンが言う兄の名前も、それが■■であることを理解していた。

 カナンは、何度も彼に会ったことがある東阪ミノルやギラン・ニフルヘイムに話を聞いた。

 それでもカナンはどうしても、皆が次々に口にする■■の名前を聞き取れたことがなかった。姿も見ることができなかった。

 彼と存在のあり方が似ているというミシェルの名前はきちんと聞き取れて姿を見ることはできたのに、■■だけはカナンは聞くことも見ることができなかった。



 「気付くのが遅いよ。せっかく、僕の姿が見えない貴重なヒューマンなのにこんなに鈍感では意味が無い」



 ■■が、翔一が、白と黒が特徴的なアージェリカ「アル・シエンテ」を操作して衝撃波をカナン目掛けて放った。

 カナンには翔一の攻撃が見えてない。防衛プログラムが衝撃波に自動反応して防ぐがそれも防ぎきれそうにない。



 「ーーーー」



 「(だめ、やられるーーー!)」



 彼の名前は翔一。カノンが創り上げた空想の兄。

 この作戦が始まる少しだけ前に安藤俊則が話した、■■(翔一)の名前をカナンは理解することができなかった。



 「調子に乗るなよ、この青二才が」


 「また君か。ちょっとは成長したのかな、水使い」


 「瀬戸隊長…!えっ、■■(アンノウン)が本当に、そこにいるんですか?!」


 「あぁ。白と黒が特徴的なβ型アージェリカに乗っている。翔一はそこにいる」



 翔一の姿と名前を認識することができないカナンは、一彦が話す翔一の名前を聞き取れない。

 困惑しながらも後方に下がって、身構える。




 「流星よ、君は惑星ほしの子だ。あま駆ける雷となれーーー【アル・マギナ】!!」




 翔一がアル・シエンテに装備されている白く輝く剣を天に翳して詠唱する。魔法だ。




 「剣型の高エネルギー弾幕が来ます!防いでください!」


 「えっ?!わ、分かりました!」




 無数の白い剣が次々に周囲の人工精霊を吸収して形成。レッド隊目掛けて、解き放たれる。

 雪平白が、翔一の姿や攻撃が見えないカナンのために防衛プログラムの展開を支持する。

 防衛プログラムならば、スキルの所有者が攻撃を認識できてなくても事前のイメージトレーニング次第で、展開さえしていれば防ぐことが可能だ。

 慌てながら防衛プログラムで攻撃を防ぐカナンを見て、翔一はほくそ笑む。



 

 「この攻撃にいつまで耐え切れるかな」


 「それはこちらの台詞だ!」




 セージと一彦が前に出る。

 セージが扱うアージェリカの名前は「デルタ」。彼が使う能力スキルに合わせて、細身のデザインになっている。



 「サイコキネシス、威力50%!」


 「相変わらず、機体の性能に振り回されてるみたいだね君も。同じサイコキネシスなら、神殺しや、東阪ミノルの方が上かな」

 

 「御宅はそれで終わりか、空想の怪物が!」

 


 セージが解き放ったサイコキネシスを、翔一はアル・シエンテを使って簡単に避けていく。

 そう、翔一の言う通りセージはサイコキネシスの出力を最大限で解き放つことがすぐにできない。

 何度も放つと自分の体は勿論、アージェリカの方が衝撃に耐えきれずに壊れてしまうからだ。

 以前全力の一撃を放つことができたのは、あの一回だけだったからだ。何度も使用することができる技ではない。



 「ドラゴンよ!」


 「なるほど、そう来たか。」



 サイコキネシスを使って、セージが龍を次々に形成して行く。空中戦闘ならではの空間を利用した戦い方だ。

 能力スキルのエネルギーが凄まじくそのせいで身体や機体が壊れてしまうなら、広範囲にエネルギーを行き渡らせたらいいという逆転の発想から生まれたその技は、凄まじくエネルギーを消耗するが、それぞれに対してダメージを最小限に抑えられた。


 「(凄い、セージさんの全力、初めて見た…!)」


 カナンはその光景に圧巻する。姿が見えなくとも、そこに■■(アンノウン)がいる風に感じ取れた。

 セージは4体のドラゴンを翔一目掛けて解き放つ。



 「でも、残念だ」


 

 四方八方をドラゴンで囲まれた翔一はアル・シエンテを使って逃げることができない。

 それでも余裕そうな表情で、翔一は瞬間移動テレポートを使ってアージェリカごと逃げようとする。



 「それはこちらの台詞だ」


 「お兄ちゃん!!」


 カノンが翔一の危機を察して叫ぶ。カノンが危機に気付くよりも一彦の反応が速かった。



 「ジタドルゥ(水よ、全てを破壊しろ)」

 


 一彦が周囲一体に対して、水を形成して操作する能力を行使する。

 一彦はサドネスを使って、翔一がいるその空間をセージが形成した龍ごと水で埋め尽くす。

 一彦はーーー翔一を、アル・シエンテを、サドネスの大鎌槍を使って切り裂いた。

 アル・シエンテごと翔一が消滅する。



 「お兄ちゃん…?そんな、嫌だ、嫌だよ、何処にも行かないで、お兄ちゃん…」



 消滅した翔一を見て、カノンは激しく動揺していた。




 「その後藤カノンは偽物です。本物は他に居ます!」


 「了解、です…!」



 それを見た雪平白がすぐに偽物であることに気付く。カノンが、これぐらいのことで動じる訳がないことはもう、理解しているのだ。

 何故なら、本物の後藤カノンはこれぐらいのことで翔一が死なないことを理解しているから。

 それはカナンもこれまでの交戦データを見ているので理解している。



 「正解。ここのオペレーターは相変わらず優秀だね。さっきのはよく効いたよ。」



 次の瞬間にはーーー後藤カノンが消滅して、そこには翔一がアル・シエンテごと復活していた。





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