学園へ
歩きながら彼を見る。小さな体。でも、纏う雰囲気は何処か重々しい。化け物狼に真っ先に対応して見せた事とあの鮮やかな手際も彼の異質さを物語っている。
「…。」
「…。」
さっきから二人とも無言だ。話題はあるけど話す気になれない。あの化け物みたいなのが居るかも知れないから。取り敢えず最寄りの避難所だった学校を目指しているけれど…。
「確かもう少しなんだけど。」
道が分からなくなりそうになる。見覚えはあるけれど蔦や木々が邪魔をして全く別の場所を歩いている気がしてくる。
「うーん?…あ、見えた!」
私が通う国内有数のマンモス学校。
有星学園。広大な土地と校舎は蔦やらなにやらに覆われて見る影もない。
「うわぁ。大丈夫かな。」
「ふむ。人の気配がする。結構な人数居るみたいだけど。」
気配とか何でわかるんだと突っ込みたいところをグッと堪えて校門まで行ってみる。すると見知った顔が険しい顔で立っていた。
「あ、有星副会長!」
綺麗な濡れ羽色の黒髪の彼はこの学園の理事長の孫にして生徒会の副会長をしている有星 仁ーありほし じんー先輩だ。因みに私は高等部2年だったりする。
「ん?あー。すまない。服装からしてこの学園の生徒だな。」
そう言うと有星副会長は手に持っていた生徒名簿を開いた。何でそんなものを持っているの?
「んー。ああ。
四宮 世羅 ーしのみや せらー か。」
私の名前を確認すると副会長は軽く頷いて隣にいる彼に目を向けた。
「その子は?」
「えっと、危ない所を助けてくれた恩人なんです。
まだ自己紹介はまだで名前は知らなくて。」
「そうか。差し支えなければ名前を聞いてもいいか?」
心なしか副会長の彼を見る目が厳しい気がする。
そんな視線を気にせず彼は口を開いた。
「先導 光輝ー せんどう こうきー。
一応、年齢は16だよ。」
「え?うそ。」
「…本当か?」
「見た目はこんなんだけど。あ、今年で17だったかな?」
まさかの同い年(予定)だった。
「そ、そうか。取り敢えず入ってくれ。外の化け物が入ってくる前に。」
そう言って副会長は校門を開いてくれた。私と彼こと光輝くんは学園の敷地に足を踏み入れた。
その瞬間ー。けたたましい音量のファンファーレが鳴り響いた。