逃走、覚悟
後ろから感じる猛烈な威圧感に耐えながら私達は走る。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
何れくらい走ったのかもう分からない。確かなのは止まれば死ぬと言うことだけ。
ふと、気になって隣を走っている彼を見る。驚いたことに息切れせず、後方を確認している。
「なかなか、しつこい。」
フードを被っているからどんな顔をしているのか分からないけれど忌々しいげな声色で大体察しがつく。
「まだ、走れる?」
「はぁ、はぁ。う、うん。」
彼からの問いに息を整えながら答えると彼は頷き前方に指を指した。
「確か、このまま真っ直ぐ行けば学校があったよね?」
「う、うん。私そこの生徒だし。」
周りの景色が変わりすぎて確証はないけれど覚えている道筋は間違っていないはず。国内有数のマンモス学校を忘れる筈もないのだけど。
「まずいな。あの化け物を連れていく訳には行かない。」
ちっ。と舌打ちをして化け物狼を睨み付ける。
確かにこのままだと他の生存者(?)が居たら大変なことになりそう。あの化け物相手じゃ警官が居ても勝てそうにない。かと言って別の道を探すのはー
「なら、ここで仕留めるか。」
彼は仕方ないな。と呟きながら足を止めて化け物狼に向き直った。正直血迷ったか?!と叫びそうになったのは内緒だ。
「あ、危ないよ!もしかしたら、銃を持った警官とかそれこそ自衛隊とか集まってるかも。そしたらあんな化け物狼なんて!」
言ってて無いな。と思った。彼に溜め息をつかれた。はい、すいません。
「銃が効くなら良いんだけど。もし通用しなかったら大惨事でしょ。」
「そ、そうだけど!」
「大丈夫だよ。失敗しても君は逃げれるでしょ。」
何か凄いこと言ってる。
「さてと。何処までやれるか。」
彼のほんの僅かに見えた口元は笑みを浮かべていた。何だこの子は。