蘇生魔法
目を開けるとそこはミルと最初に出会った場所そっくりだった。
「おお、ハヤトよ!死んでしまうとは情けない!」
そこにいた美女、ラファエル様はそう言った。
何か今、聞き捨てならないセリフが聞こえた気がするんだが。二重の意味で。
「本当に情けないやつだ。転生して一ヶ月も経たずに死んでしまうとは……」
呆れたようにやれやれと手を振るラファエル様。
「あのぅ……俺、死んじゃったんでしょうか?スライムに取り込まれて……」
自分で言って、思い出すと寒気がする。
死ぬってやっぱり嫌だ。これは何回死のうと慣れる気がしない。
「うむ。ミカエルがああ言っていたのに手を出すから悪いんだ。蘇生についてはちょっと待っていろ。近くに通りかかった親切な人間が魔法をかけてくれている。ちなみに人間は基本的に一回しか蘇生魔法で蘇る事はできんからな」
勿体無いことをするなとまた手を振っている。
そ、そんなこと言われたって……。
まぁ手を出した俺が悪いけどさ。
「ていうか誰が助けてくれてるんですか?」
あんなところを通りかかる人なんて誰だろう?でも近くには街道が通っているのか。
「そんな下界の人間の名前などいちいち覚えてるわけないだろう?と言いたいところだが今回は別だ。有名人だからな。なんと勇者パーティーに参加していた者の娘だ!腕は確かだな」
運だけはいいやつだと笑っているラファエル様。蘇生魔法なんて高等な魔法を覚えてる人に会うなんてラッキーなことだ、そうそうにあることじゃない。
どんな人なんだろうか?
「おっとそろそろ終わるみたいだぞ。これ以上私の仕事を増やしてくれるなよ。さぁ出てゆけ!」
「ありがとうございました!」
最後までD○の王様みたいなセリフを言っているラファエル様を見ていると俺は眩い光に包まれる。
「……ぇ……ねぇ……ハヤト起きてよ!起きてってば!」
目を覚ますとミルが泣いて俺の体を揺すっていた。ビックスライムはすでに水になっている。
「俺、生き返ったのか……?」
「そうだよ!この人が助けてくれたんだよ!それにしても蘇生魔法を使える人に会えるなんて幸運だねハヤトは。でも今度からは絶対に言うことを聞いてね!?また死んじゃったら生き返れないんだからさ!」
プンプン怒っているミルの後ろには女の子がいた年は俺と同じくらいだろうか?
「生き返ってくれてよかったです。これも何かの縁、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
にっこり笑って丁寧に話しかけてくる。
よく見るとかなりの美少女だな。金髪のロングだ。ミルとタメはれるんじゃないか?
「ハヤトです。助けていただいてありがとうございました。お名前伺ってもよろしいですか?」
「私はリリーシャ・フォン・アストレアスです。よろしくお願いしますね、ハヤトさん。私のことはどうぞお気軽にリリーと呼んでください」
丁寧な人だなぁ。どっかのお嬢様みたいだ……ああ、そうだ。姓があるからホントにお嬢様なんだ。
いや待て……今アストレアスって言わなかったか?確かこの国の王族もアストレアスだったよな?もしかしてこれは!?
「もしかしてリリーシャさんはお、王女様だったりするの……?」
「気付かれてしまいましたね。私はご承知の通り、騎士王アレス・フォン・アストレアスの娘です。でもそんなに気を遣わないで下さいね。リリーと呼んでくれて結構ですから」
気軽に呼べるわけあるか!
すると馬車が近づいてきた。
「リリーシャお嬢様、どこへ行かれていたのですか!勝手に居なくなられてはお守りすることができませんぞ!」
執事のような格好をしたお爺さんが声を上げていた。
「そちらの方たちはどなたですか?」
「ああ、爺やこの方が死んでしまいそうだったから蘇生魔法をかけてあげたのよ」
「そ、蘇生魔法を!?お嬢様!蘇生魔法などという高等な魔法を使えるのはこの国でも国お抱えの医者の中でも一部のみ!むやみやたらに使うものではありませんぞ!?第一どこの馬の骨ともわからぬ人間に……」
ぶつぶつ執事さんが言っている。ひ、ひどい言われいようだな。
「ハヤトさんそんなに気を悪くしないでくださいね?爺やも私の身を案じて言ってくれてるだけなんですよ」
「そうだよハヤト。命を助けて貰って、しかもそれが王女様なんだからこういうこともあるよ。小説にもこういうのあるでしょう?」
俺はラノベを読まないからよくわからん。しかし漫画ではこういう展開はたまにあるかもな。
そんなことを考えていると執事さんが一息ついて言う。
「とにかく!お嬢様!もうすぐ出発のお時間ですからお早く馬車にお乗り下さい!」
どうやら出発の時間が迫っているようだ。
そういえばなんでここを通ったのか聞いてないや。
「そういえば姫様はどうしてここに通りかかったのですか?いくら街道が近くにあるとはいえ、ここまでは普通こないでしょう」
「ああ、それなら何か大きな魔物の気配がしたので馬車を降りて見にきていたのです。ただのビッグスライムだったようですけど」
でも人を助けられたんだもの、良かったですと言いながら馬車に乗る姫様。
「では皆さんご機嫌よう。お体には気をつけて下さいね」
「「はい、ありがとうございました!」」
二人でお礼を言うと馬車から手を振りながらいってしまった。
「でもあのビッグスライムちょっと大きかったような気がするんだよなぁ……」
まだ気にしてたのか。
はぁ、また死んでしまった。今日はこの辺で終わりにするか。
「さぁ帰るか」
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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