初めての魔物狩り
ギルド登録してから二ヶ月が経った。
冒険者ランクは取り敢えずEになった。
この世界での手っ取り早く強くなる方法、それはスキルの習得だ。
スキルというものは便利なもので習得するだけで戦闘時の動き方が分るものもあるのだとか。
こういうの場合はスキルを習得するまでに動きを覚えている場合がほとんどで、スキルはサポートしてくれている感覚に近い。
つまりどちらかというとスキル習得までの過程が大事になってくるというわけだ。
スキル習得で強くなれると聞いてすぐにスキルポイント集めの方法を探した。
スキルポイントを入手する方法、それは当然レベル上げだった。
レベル上げとはつまり経験値稼ぎだ。
経験値とは誰にでもあるものでその生物が生まれてから今まで得た経験なのだ。だから経験値稼ぎというのは根本的には生物の命を奪うということだ。
この二ヶ月は薬草取りとかそういう簡単な依頼をやっていたが、とうとう魔物狩りをしなければならないときが来たようだ。
冒険者というのがどんなものかも分かってきた。要は何でも屋だ。
そもそも掲示板には公的機関からの依頼と民間からの依頼の二通りがあってその中から好きな依頼をやる。
民間からの依頼にはしょうもないものも多く、例えば荷物運びなどである。
そんな依頼でもしっかりやればとランク評価の対象となるので低ランク冒険者は結構やっていたりする。安全だしな。
そして、そんな低ランク冒険者である俺たちはついに討伐依頼デビューなのだ。
エドナ郊外そこは平原になっていた。
ここにいるのはド定番のスライムや一角ウサギなどの所謂雑魚だ。
実はまともな戦闘は初めてだったりする。
俺は最初からあったスキルポイントでスキル『初級剣技』を、ミルは『初級魔法』と『魔力操作』を習得した。
この『初級剣技』はさっき言ったようにサポートのような感じになるのだが、『初級魔法』の様な魔法系スキルはスキルとして習得しておく事で本来必要な詠唱を一単語に抑える事ができる。
スキルを習得しなくても一単語どころか無詠唱で発動出来る人もいるそうだが、まぁ初心者には無理だ。
「ハヤト、いくらS級のセンスがあるからって無茶したらダメだよ?」
「分かってるって、多分大丈夫だろ」
最初の敵はスライムだった。
集中すると敵の動きが遅くなったように見えた。まるでスーパースローだ。
「なんだこりゃ!スライムがさらにのろくなってる!?」
「それはセンスの効果だよ。身体能力全般が底上げされているんだね」
流石S級だな。底上げの能力もハンパじゃないな。
「うおぉぉッ」
と声を出して攻撃してみるが、スキルが発動しているのか、上段から剣を振り下ろすとあっさりとスライムは溶けて無くなってしまった。
スライムの場合は溶けてなくなるが普通なら体が残るので戦利品を回収するのだそうだ。
そんな調子で交代で昼前から夕方まで魔物を狩っていた。
余談だが一角ウサギの討伐証明部位は角で、内臓を抉ったりする訳でも無いが角を切り落とすだけで頭の中身が見えてしまうので吐きそうになってとても辛い。
冒険者は毎日こんな事をしなければならないと思うと大変だと感じた。平和ボケした日本人には辛い現実だぜ、こりゃ。
「案外サクッといけるもんなんだな」
「確かに意外と弱かったね。私は八までレベルが上がったけどハヤトは?」
「俺も同じだよ」
軽く頷くと気になったことがあったので聞くことにした。
「そういえば前から気になってたんだけど、天使的な力ってどうなってんの?」
そう、天使的な力だ。ミルは天使なのだから俺より高い能力があってもおかしくないと思ったのだがミルはA級だった。
「うーんとね。多分地上に降りたときに人間と同じスペックになったんだと思う。まぁでもこれでもいいかなって思ってるよ」
「そうか」
この世界にミルを連れてきてしまったことに罪悪感を感じていたが、ミルの言葉で少しマシになった気がした。
次の日
また魔物狩りに出かけた。
何か遠くで動いるぞ?
「ミルー、なんか遠くで動いてるんだけど、ありゃなんだ?」
「この距離で見えるってことは多分ビッグスライムだよ。ハヤトは絶対に近づいちゃダメだよ!スライムはデカくなることで一気に物理耐性が増すんだよ。だから剣士のハヤトは絶対に近づいちゃダメ」
「もう少し近づいて私が魔法で焼くからハヤトは近くで見ててね。成長した私を見せてあげるよ!」
「わかった。今回は見学させてもらうよ」
ミルの本気見せてもらうとしよう。
ミルも魔法使いのセンスA級を持っているから初級魔法でも十分対処出来るはず……。
「ミル、魔法使いのセンスってどんな効果があるんだ?」
「魔法を使うときに消費魔力が減ったり、魔法を習得しやすくなったりするんだよ。他にも色々な効果があったはずだよ」
もう少し近づいてみるとかなりデカかった。
「あれ、おかしいな?本当はもう少し小さいはずなんだけどやけにデカいね。まぁいいか燃やす分には一緒だもんね」
「『フレア』!」
初級の弱い魔法だがセンスがあるのでそこそこの威力になっている。だが、流石のビックスライム、まだピンピンしている。
「『フレア』、『フレア』、『フレア』!!」
ミルは三連で魔法を放つ。
流石に効いたようでビックスライムは溶けかけていた。
なんだか手を出したくなってきた。
ここまできたら流石に大丈夫だろう。
よし俺も斬りかかろう。剣を構えて下段で構える。
「せいッ!」
また声を出して攻撃してみる。
俺は決まったと思ったが、ぶにょんと弾き返されて尻餅をついてしまった。
「ハヤト危ない!」
「えっ?」
俺は思わず振り返ってしまう。
「ゴボ、ゴボゴボッ!!」
苦しい!体内に取り込まれたんだ!
ミルが急いで走ってくるのが見える……
俺の意識はここで途絶えた。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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