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結婚式

「おはよう」


「おはようございます、ハヤトさん」


「おはよう、ハヤト」


「おふぁよう……」


 こいつあくびしながら挨拶しやがった。


「兄さん、今日はいよいよですね」


「ああ、そうだな。色々な人呼んでるから、今日は忙しくなるな」


 あれから丁度今日で三年が経った。

 俺達はこの日に結婚式を挙げると決めていて、かねてから準備を進めていた。

 そして、とうとう約束の日が来たのだ。


「エリナ、一応聞いておくけど、今日が結婚式だって知ってるよな?」


「流石に馬鹿にしておるじゃろ。こんな重要な日、生涯忘れることはあるまい」


「聞いたリリー?生涯忘れないだって。意外に純情なところあるよね、エリナって」


「そうですね。何とかなのじゃ〜って言ってても、中身は立派な乙女ですから」


「ば、馬鹿にするな!!」


 意外にもエリナはいじられキャラを確立していて、しょっちゅういじられている。


「ていうか皆緊張しなさ過ぎじゃないか?来てくれた人の前でキッスするの恥ずかしくないのか?」


「「そういうことは言わないで(ください)!」」


 あ、普通に恥ずかしがってたんですね。


「このバカ兄さんはいつになったらデリカシーという言葉を知るんでしょう?」


「永遠に理解できんじゃろ。バカじゃし」


「仕方ないよ、バカだからね」


「そうです。仕方ないです、バカですから」


 こういう時ばっかり、同調するだから。


「ええい、うるさい!さっさと飯食って、教会行くぞ!意外と遠いんだから!」


 ったく、全く特別な日感がないじゃん。

 結婚記念日に祝うのかすら怪しくなってきたよ。



「うん、立派になってんじゃん」


「確かに前より大きくなった気がするね」


「……まさか、お前何かしたのか?」


「ああ、増築して綺麗にした」


「それは職権濫用なんじゃない?」


「そもそも俺達の街なんだからいいでしょ。適当な理由つけて手配した」


「よく許可してくれましたね。というか兄さんにしてはかなり手際がいいじゃないですか」


「バカめ。俺がそんなに手際良くできるわけないだろ。リリーが手伝ってくれたんだよ」


 ジト目でリリーを見る皆様方。

 まぁ、甘いところあるよな。


「そ、そんなことよりも早く行きましょう!もう準備されてるかもしれませんよ!」


「まぁそうじゃな。招待客の前でこの格好なのは示しがつかんしのう」


 そう言って、さっさと行ってしまうエリナ。

 それに続いて、女性陣は中に入っていってしまう。


 俺も急いで後に続く。


「ようこそいらっしゃいました。今日は結婚式を挙げたいということでしたね。準備はできております。新婦の方はどうぞこちらへ」


 シスターさんに言われて、三人は奥の控え室に進んでいく。

 俺達はどうすればいいんだ?


「ああ、領主様はただいまご案内しますので、少々お待ちください」


 それにしても結婚かぁ……ここまで来ても実感は湧かないんだよなぁ。

 まだ十代だから、日本にいたら大学生か。

 学生結婚てのはやっぱりこんなもんなのか?


「兄さんはもう結婚ですか……日本にいたら考えられませんね」


「まぁ、俺はここに来て価値観が色々変わってきたけど、あんまり実感湧いてない」


「ちなみに私は結婚に賛成ですよ?中途半端にイチャイチャされるのウザいですし、やるならきっちりとした大義名分というか、恥ずかしくない関係になった方がいいですからね」


 いつも通りの辛辣さだが、唯一の肉親であるところの刀香が祝福してくれるというのは中々に嬉しいものだ。


「わ、悪かったよ。そういうのは部屋でやります」


「でも私、いつまでもあそこの家にいていいんですか?邪魔じゃありません?」


 急にしおらしい感じになる刀香。


「いや?居ればいいんじゃん。俺達の姿が見ていられなくなったり、結婚したくなったりしたら、出で行けばいいよ。その時には少なくとも白金貨千枚は渡す。まぁ取り分的にはもう少し渡してもいいんだけどな」


 三年前のエリナみたいに出で行きそうになって焦ったぜ。

 だけど、刀香が出て行くとなったら、俺はどんな反応をするんだろう。


 結婚だったら、意外と怒るかも?

 いや、流石に恥ずかしいな。まぁでも、手塩にかけて育ててきた妹が居なくなるってのは、寂しいもんなんだろうな。


「分かりました。出て行きたくなったら言います」


「そうしてくれ」


 しばらくして、さっきのシスターさんが来てくれて、俺と刀香を案内してくれる。


「意外と似合ってますね。これっぽっちも似合わない物だと思ってたんですけど」


「酷いな」


 まぁ、俺もそんな気がしてなかった訳じゃないから、自分でも意外だ。


「じゃあ、私はあっちに遊びに行って来るので、兄さんは大人しくここで待っててくださいね」


「へいへい」


 うん、楽しそうで安心した。

 折角のめでたい日なのに複雑な顔されたら、嫌だからな。


 三十分程待っていると、刀香が帰ってきた。

 何か言うのかと思っていたが、ずっと黙ったままだ。


「何かあったのか?」


「……いえ、何というか……マジでヤバかったです」


 全く分からねぇ。

 まぁ後で見れるから楽しみにしておけばいいか。


 更に三十分待っていると、外が騒がしくなってきた。

 恐らく、招待客が集まってきたのだろう。


 それからしばらくして、誰かが部屋に入ってきた。


「調子はどうですか?ハヤト」


「あ、ユリシアさん。久しぶり」


「そうですね。もうあれから三年ですね。私は半年前に遊びに行きましたけど、その後どうでしたか?」


 ユリシアさんは結構遊びに来ている方で、逆にオルクスなんかはほとんど顔を出さない。

 今日の式にも来てくれるか心配だ。


「別にどうということはないよ。いつもは領主の仕事して、たまに皆と出掛けたり、サボったり、変わんないよ」


「まぁそうでしょうね。でも、今日は特別な日ですから、沢山お祝いしましょうね」


「そうだな。よろしくお願いします」


「はい、任せてください!パーティーの幹事は任せてください」


 こうしてユリシアさんとも話をすることができた。


 そして、式の開始時刻になった。


「これより、新郎ハヤト・キリュウ、新婦リリーシャ・フォン・アストレアス、新婦エリナ・ブラッド、新婦ミルの婚礼の儀を執り行います。まずは新婦の入場です」


 神父さんがそう高々に宣言すると、教会の扉が開かれて、三人が入場してくる。


「あ……」


 何も言えない。ただ綺麗なのだ。

 どれも違う純白のウェディングドレスに身を包んだ三人は、静かにバージンロードを進んでくる。


「どうですか?自分の花嫁達は」


「あ、いや……すごい綺麗だと思う」


「ったくこんな時まで気が効かんのう」


 や、やめて!エリナパパが怖い顔でこっち見てるから!


「まぁ、ハヤトらしいんじゃない?」


 微妙に傷つくが、何も言い返せない。


 誓いの言葉を交わして、指輪の交換に移る。


「では指輪の交換を」


 神父さんに促され俺は三つの指輪を取り出す。

 そして、リリー、エリナ、ミルの順で指輪を嵌めていく。


 俺が嵌め終わると、今度は三人が俺に指輪を嵌めてくれる。

 現金な話をすると、全部で白金貨百枚が吹き飛びました。


「最後は誓いのキッスですッ!皆さん温かく見守りましょう!」


 あれ?なんか急に神父さんおかしくなってないか?


 俺達はお互いに赤くなりながら、何度目か分からないキスを交わす。


「へー、淡白なつまらないキスだなぁ。もっとむちゅうって行きなよ」


 俺達はそんなことを急に言ってきた神父さんに思わず、ギョッとして、神父さんを見上げる。


 しかし、そこにはさっきまでの優しそうなおじいさんの顔ではなく、三年前に別れたオルクスの顔があった。


「お、おおお、おま……!!」


「はーい、皆さん!新郎新婦の退場でーす!拍手でお送りしましょう!」


 こいつ、後で殺す。

 だけど、祝いにきてくれたんだな。

 精霊手ずから祝福されちゃったな。


 俺達は拍手に包まれて、教会の外に出た。



 俺達はこれからも色々な苦難に立ち向かうだろう。

 それが、命を失う危機であれ、夫婦の危機であれ、俺は全力で乗り越えて行く。


 そんなこと起きないのが一番だが、やっと俺は自分が数奇な星の下に生まれた人間だと気づき始めた。

 だから、きっとそうは行かない。


 俺達は家族一丸となって、離れないようにお互いの手を取り合いながら、これから歩んでいくんだ。


 願わくば、これがその大きな節目にならんことを。



「はーい、皆さん寄って寄って!……よし、いい感じです!ハヤトはもっとちゃんと笑ってください。十秒で行きますね!」


 パシャッというシャッターを切る音が聞こえた。

 俺はこのシャッター音を生涯忘れないだろう。



「父さん!これ何の写真?」


「懐かしい物引っ張り出してきたなぁ……それはお前の母さんとの結婚式の写真だよ。母さん可愛いだろ?」


「うん!すごく綺麗!いつも怒ってる母さんとは大違いだ!」


「ハハハ!お前も言うようになったじゃん。どうよ、俺とこれから母さん談議するか?」


「あ、僕やっぱりやめとく」


「え、何だよ、急に。一時間のダイジェスト版で話してやろうと思ったのに……」


「へぇ……仕事サボって何をやってるかと思えば」


 奴め、これに勘付いて逃げやがったか。


「はぁ……本当にアイツの言う通り、いつでも怒ってんな……あ、やべ」


「あなたが私を怒らすようなこと言うからでしょう!?あ、待ちなさい!」


 子供にも恵まれて俺は楽しい生活を送っている。


 最初は魔王がいない世界なんて、とか思ってたけど、本当にこの世界に来て良かった。


「あ、またやってる。『縛鎖(バインド)』!」


「ミルさんありがとう。さぁて、何から話したらいいでしょうね……」


「その前に一つ言わせてくれ。お前っていつになっても綺麗だよな」


「ふぇっ!!?」


「どっちも変わらんのう。リリーもいい加減学べ。いい年して何乙女のような反応しておるのじゃ」


「いやいや、俺は本当のこと言ったまでだって。勿論お前も綺麗だぞ、エリナ」


「あーはいはい。ありがとう」


「勿論お前も……」


「あ、もういいから」


「ハーヤートーさーん!!?そこまでしばらく反省!」


「と、父様また怒られてる」


「放っておきなよ。父さんは本当にどうしようもないからさ」


 どうして、娘はこんなにも優しいのに、息子達は俺に意地悪するだろう?もう反抗期かしら?


「その通りよ。二人とももう放っておきなさい。あなたたちがいるとまた調子に乗るから」


 おお、おお、ひでぇ、ひでぇ。


「父様!私、母様達に頼んでおきますから!」


「ありがとう。今や俺の味方はお前だけだ」


「はい!任せてください!」


 そう言って、とてとて歩いて行く愛娘。絶対嫁にやらん。


 ああ、それにしても、本当に俺、


「幸せだ」

 今までお付き合い頂いた読者の皆様、遂に『異世界転生したのに魔王がいません!』を完結させることができました!本当にありがとうございました。


 連載当初は右も左も分からない私でしたが、今では中学生並みの文が書けてきたのでは……?と思っております。


 ここまで連載を続けてこれたのも皆様の応援あっての物です。重ねてありがとうございました。


 近いうちに次回作も書いていけたらと思っておりますので、そちらも良ければよろしくお願いします。


 では、また作品を通してお会いできるのを楽しみにしております。


 本当にありがとうございました!

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