俺、死す
俺は桐生隼人、今年高一になった特になんの取り柄もないごく普通の高校生だ。
少し変わったところと言ったら、家が有名な武士の血を引いているという事ぐらい。父親に剣術を叩き込まれたのである程度のそういう教養はある。
週に一回の剣術の時間以外は放任主義の家だ。
休みにやる事といえば、スマホゲームをするか、漫画を読むぐらい。
今は夏休みで徹夜で漫画を読んでいたところ。
朝になって冷蔵庫を開けると、大好きなコーラがなくなっていた。
しょうがないコンビニに買いに行くか。
外に出ると太陽が眩しく、目が眩んでしまった。
これも長時間家にいることの弊害か……。いや、夏休みなんだからしょうがないよな。
そんなことを考えながら歩いていると強い立ちくらみに襲われてしまった。
多分その時、歩道の外に出てしまったのだろう。
背後からクラクションが聞こえる……背中にとても大きな衝撃が走った。
そこで俺の意識は途絶えてしまった。
「起きて…ねぇ起きてってば!」
その声で俺は目が覚めた。
近くにはこの世のものとは思えない美少女が立っていた。
髪の色は赤に近いピンクで腰の辺りまで伸びている。肌は豆腐のように白い……我ながら例えが豆腐ってのはどうなんだ?
「やっと起きたね!早速で悪いけど君には伝えなければならないことがあるんだ……実はねあなたは死んじゃったの」
何を言ってるんだこの人は……?
そうかわかったこれは夢だな。こういうのを明晰夢って言うんだっけ?
折角なので話を聞いてみよう。えらい美人だしな。
「あなたは……誰なんですか?」
「私はミカエル、うーん聞いたことないかな大天使長ミカエルって」
大天使長って聞いたことあるな……。
よし、話をもう少し聞いてみよう。
「ここってどこなんですか?少し状況が理解できてなくて……」
「君の質問はもっともだね。ここはね、生と死の間の世界、どちらかというと君達で言うところの地獄に近い場所、冥界だよ。ここでは死者の案内をしているんだ。普段はここまで降りてくることはないんだけど、今回はたまたまね」
へぇーそうなんだぁ……ん?
今この人ここは死者の案内をする所だって言わなかったか?まさか俺は本当に死んじゃったの?
「あのー、もしかして俺、本当に死んじゃったんですか?」
「まぁ受け止められない気持ちもわかるけどね……うんそう君は車にはねられて、死んでしまったんだよ」
う、嘘だぁぁぁああぁぁぁ!?
「え?ミカエル様もしかして俺本当に死んじゃったの?マジで?まだやり残したことがあるのに?」
「それに関しては謝らせてほしいんだ。実はね本来君はあそこで死ぬはずはなかったんだ。私たち天界の者の手違いでね……本当にごめん!」
ごめんで済むかぁぁぁ!
「だけどね、ひとつオススメの話があるんだ!最近の日本の男の子とかってさ、ラノベとか読むでしょ?実はね今、天界では若くして死んでしまった子供を記憶とかをそのままにして、異世界に送ってあげるというキャンペーンをやっているんだよね」
そんなキャンペーンとか言う軽い企画でいいのかよ、とツッコミたくなったが、話の腰を折りそうなのでやめておいた。
というか俺も興奮していた。
「それって俺を異世界に送ってくれるってことですか!?」
「うん、そうだよ。しかも君は我々の手違いで死んでしまったからね、何かひとつだけ異世界に持っていける権利をあげよう!才能や武器、何でもいいよ!」
おお、これは燃えてきたぞ!こういう自分を変える機会を俺は求めていた。
それに所謂『チート』までついてくるとは、ラッキーじゃないか。
「何日でもいいからここでゆっくり考えるといいよ。私はいったん天界に戻るけど呼んでくれればわかるから。後、はいこれ資料ね」
どんだけあんだよ、分厚すぎだろ……。
「ありがとうございます。しばらく考えさせて下さい!」
「うん!それじゃあね」
それだけ言うと光の輪の中に入っていった。
それでは資料を見ていこう。なになに英雄の武器シリーズ?
『エクスカリバー』
かの有名なアーサー王が使っていた聖剣。 実は神が創った神器だった。
いきなり強そうなのキター!取り敢えず保留っと。
『ゲイ・ボルグ』
クー・フーリンが使っていた必中の槍。
これも神器。
これもやばそうだな……
『ニョルニル』
雷神トールが使っていたハンマー。
もちろん神器。
こんな具合に有名な英雄が使っていた武器が約百種類あった。
「次はオススメのとんでも特性?」
どうやら俺の行く世界には特性という生まれ持った特殊な能力みたいなのがあるみたいだ。
例えば『早熟』、これはレベルを上げるのに必要な経験値が半分になるというものだった。他にも剣士、弓手などの才能に関するスキルというのも沢山あった。
それから三日経った。
「ミカエル様ー」
「はいはーい!どう、決まった?持ってくもの?」
「はい。俺この『剣製』という特技にしました」
『剣製』これは剣を魔力によって自由につくり出すことができるという特技だった。
「ふむふむ中々渋いとこいくね。私はてっきりエクスカリバーとかその辺にすると思っていたよ」
「いやーなんかエクスカリバーって普通だなーと思ってこれにしました」
「ふーんそうなんだ。あ、言い忘れてたけど君を送る世界は勇者が魔王を倒した世界だからね。よかったね、危なくなくて!」
ん?勇者が魔王を倒した世界後のだと!?
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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