戦慄の騎士団長~ゴブリンを添えて~
「にい様!」
帰宅しようと帰っているとアリアが大声で俺たちを呼んでいた。
「大変です! キヒロの森でゴブリンが大量発生しているそうです!」
「なんだと! 他の団員たちは!」
まずいな…………。 あそこは人こそ滅多に入らないが村から近い所にある。 早いうちに倒さなきゃ村に被害が…………。
「ほかの団員は皆ギャンブルに行っています!」
「そうだった!」
クソッ! 忘れていた!
「何やってるんですか! ていうか、なんでこんな時にギャンブルなんて行ってるんですか!?」
あ、やっぱそこ気になるよねぇ。
「まぁ、それは後で説明するとして、今はとにかく急いでキヒロの森に急ごう」
「わ、わかりました!」
「アリアはホームで待機! 他の団員が帰ってきたら情報を話して貰っていいか?」
「了解しました!」
二人ともいい返事だ。
「こっちだ、ハリスト!」
「は、はい!」
村の入り口と真逆の方向。 そこにキヒロの森がある。
俺たちは森へと急いだ。
「ここがキヒロの森…………」
クリート・ハリストさんがポツリとつぶやく。
「クリート・ハリストさんはここで森から出てきたモンスターを倒してくれないか?」
「りょ、了解しました…………」
今回は返事が小さい。 それもそうだろう。 初めての任務で戦闘なのだ。
「大丈夫だ! 俺を信じて待っていてくれ」
「ひゃ、ひゃい!」
今度の返事は…………って、なんだか今日の俺、返事を気にしすぎじゃないか?
「まぁ、いいか…………、そういえばさっきの言葉引かれたか? 引かれたな…………」
俺は一人で森を突き進む。 しばらくして川にたどり着いた。
念入りに調べていく。
「いたっ! ゴブリンが3体…………」
俺は近場にあった小石を遠くの川に投げる。
「ガガブガ! ギャギギブギャ!」
「キャキャッブ!」
石が立てた音に反応してゴブリンたちが一斉に俺に背中を見せる。
俺はあらかじめ持っていた弓でゴブリンの一匹の頭を打ちぬいた。
「ギャァァァアア!」
大きな声を上げてゴブリンが絶命する。
次は音を立てずに移動し、逆方向に陣取った。
俺はまた小石をゴブリンより遠くの川に投げる。
「ギャギャグブ!」
怒り狂ったゴブリンがまた俺に背を向けた。
もちろんのごとくまた一匹と絶命させる。
次は動かず石を自分の近くに投げて音を立てる。
するとゴブリンはするとゴブリンも馬鹿じゃないので今回は音が鳴った逆のほうを見る。
「ギュギュブラ!」
最期の一匹が絶命した。
「ふぅ、久々の戦闘だから緊張した…………」
でも目撃情報は正しかったようだ。 念には念を入れて今日一日中調べておこう。
と、まずは報告して住民の避難から進めなくちゃな。
俺は駆け足でクリート・ハリストさんが居るところに行った。
「クリート・ハリストさん!」
「団長さん! 良かったぁ、あ、ゴブリンは!?」
「情報は本当だった。 さっき3体倒したがまだいるかもしれない。 クリート・ハリストさんは村の人たちを町の中央一ヶ所に集めていてくれ、俺はもう一回森に入る」
「わかりました……気を付けてください……」
「そんなことは言われなくてもわかってるよ」
「何ですか、せっかく人が心配しているのに!」
「お前こそ村の人たちを守ってくれよ?」
「そんなことはわかっています」
俺たちは騎士団員である。
騎士団は民を守るために全力を尽くす。
「行くぞ!」
「はい!」
俺たちの関係も朝からと比べて少しは緩和できただろうか?
できたと思いたい……。
あれ? なんだかおかしい。
森に入って1時間ほど過ぎたが、さっきからゴブリンどころか動物すらいない。
嫌な予感がする。 こんなときの嫌な予感って良く当たるんだよなぁ……。
「ギギャギャギビブ!」
ゴブリンの声がした。
急いで声がした方へ向かう。
「ギャ、ギャ……」
それは生き途絶えようとしたゴブリンだった 。 良く言えばペッちゃんこ。
もっと詳しく言えば、ゴブリンの最大の特徴である大きく膨らんだお腹を含め足にかけて原型をとどめてないほどに押し潰されていた。
「マジかよ……」
そして目の前にいる生物。
通常この森に居るはずもない生物。
「オーガ……!」
俺の身長ほどのゴブリンよりさらに大きく大体3倍程の身長に、大きな牙、膨れ上がった筋肉。
「グッ……グラァァアアア!」
オーガは俺に気づくと一歩を踏み出す。
その一歩でゴブリンの頭が潰れた。
「に、逃げないと!」
駄目だ……足がすくんで動け────
「グファ!」
次の瞬間には俺は吹き飛ばされていた。
一瞬にしてオーガが視界から見えなくなるほどに吹き飛ばされた。
「村の人たちを避難させないと……!」
不幸中の幸い、木には衝突しなかった。 もししていたなら俺は今頃肉片となってそこらじゅうに散らばっていただろう。
俺は立ち上がるために右腕を着こうとしたが空振りに終わる。
「右腕が千切れたか……」
俺の右腕は肘から先がなくなっていた。
良く見てみると腹の一部も腕と一緒に吹き飛んでいた。
「クソ……やっぱりあの一撃受けて何にもないなんてないよな……」
しかし俺の意識はまだある。 体も動かそうとすれば動かせる。 痛みは麻痺してわからない。
「なら、村まで行くしかないな……」
オーガは俺が死んだと思っているだろう。 追って来ていないのがいい証拠だ。
そして普通なら野生の動物で溢れているが今はオーガのおかげでこの周辺には動物が滅多にでない。
村にオーガが行ってしまったら?
止めよう、こんなことは今考えるな! 今は一刻も早く村にオーガを出たことを伝えるんだ!
「親父が、守ってきたものを……守るんだ!」
俺は最後の力を振り絞り村へと急いだ。
説明不足なところがあるところは修正しますので感想などで教えてもらえると幸いです。