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まおー様は絶望の未来を歩む  作者: 粘々寝
新訳1章:異世界転生勇者・タカシ
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新訳1章 第7話:勇者行為

人によっちゃマジで嫌悪感が沸く胸糞シーン。

主人公に感情移入するタイプで善良な方はブラウザバックの準備はできたかい?


逆にこのシーンに耐えられるなら今後のタカシ君が作り上げる酷いシーンは許容範囲になるでしょう。

ーーーーーーーーーーーーーー…

ノース村

ーーーーーーーーーーーーーー…


 白い光に包まれて身体の感覚は戻る。

 だが、ボロボロになった装備も服も元には戻らない。

 これまで稼いだ小銭もだ。幾度となく繰り返した最悪な目覚め。


「おお、勇者タカシよ。死んでしまうとは情けない」


 この台詞を聞くのも6回目になる。いい加減、聞き飽きている。


「それ、言わないと気が済まないのか?」

「規則ですので」


 青筋を立てて低い声で威圧し、神官帽子のおっさん相手にイキる俺はまさしく小物。

 一方、神官帽子のおっさんはと言えば、小波のように落ち着いた態度で応対する。

 大人とはこうありたいものだな。


「勇者タカシよ。ここは耐え忍んでください」

「耐える? あとどれだけの間、俺はリンチを耐え続けろって? ああ!!?」


 あれ以来、ライノスウォーロードは村の出口に張り込みだした。

 夜にこっそり村を抜け出そうとしても必ず出口に現れる。

 空を飛んでる悪魔の像に見張られている限り、この村から脱出することはできない。


 今、村の中で味方が居るとすれば、この神官帽子のおっさんくらいだ。


「もうしばらくの辛抱です。村の者達は魔族に操られているだけなのです。恨んではいけません」


 最初は罵声を浴びせられる程度で済んでいた。

 だが、首チョンパされた後に顔を出したら村中から化物呼ばわり。


 自分達ではライノスウォーロード相手に一切立ち向かおうともせず、

 見た目からしてボロボロで弱そうな相手には集団で全力でイキり倒す。

 挙句の果てに石まで投げられる始末だ。


 最初は見てるだけだった連中もそのうち一緒になって石を投げる。

 そのうちそれを楽しみ出す奴が出てくる。


 「さっさと出ていけ」だの「魔王の手先」だの好き放題言い放つ。


 どこかで見た事がある風景。

 どの時代でも安全な場所で群れてる連中のやる事は変わらない。

 異世界であってもそれは変わらない。


 無抵抗な相手を一方的に嬲る時、気持ちがよくなるのだ。凄く。

 その気持ちも凄くよく分かる。

 

 勇者であるから『ペインキラー』もあるし『ヒール』だってある。

 だが、殴られるといてぇしイラつくんだ。


 蚊に刺されたら叩き潰したくなるものだ。

 痒み止めを塗っておしまいにはならない。


「で? もうしばらくって何時までなんだ。俺の貯金はもう既に尽きてるから飯も食えねぇんだが。まぁそもそも飯も売ってくれないわけだがな」


 度重なる目覚めで64分割された全財産はもうすでに雀の涙。


 昔やっていた国民的RPGでは、

 何度も全滅してたら資金難で死んだ仲間を生き返らせる事もできなくなり、

 手持ちの装備とか薬草とか売って復活代金稼いでいた。

 挙句の果てには棺桶背負って全裸でフィールドに出てソロ活動だ。


 勇者ってのは楽な仕事じゃないとつくづく痛感する。

 全く、溜息しかでない。


「本国へ伝書鳩を飛ばしましたので、応援が駆けつけるまであと2週間はかかると思います。教会にはまだ数日分の蓄えがありますので今はそれで凌いでください」

「おっさん、俺に2週間もこの生活を続けろってのか? 冗談じゃねぇよ」


 罵声と扉を叩く騒音は昼の間は鳴り続ける。

 昼に外に出ようものなら腐れサイ男の前に引きずり出され、

 最悪の目覚めを繰り返す。拒否すれば投石が降りそそぐ始末だ。


「今の所、そうするしか方法がないのです」

「……ああ、そうだな、クソが!」


 毛布に包まり、両耳を塞ぎ、ただ闇が来るの待つだけの日。

 それが今の生活。やってる事は単なるニート。

 誰かが言っていたのを思い出す。勇者もニートも大して変わらない。と。


 夜のとばりが下りて来てからが勇者の時間だ。

 まるで生前の生活に戻ったかのような昼夜逆転体質に逆戻り。


 今の勇者にとっては闇こそが友達。

 煩くて暇な連中は叫ぶのに飽きて家に帰る。


 神官帽子のおっさんを起こさないように『忍び歩き』で歩き、

 教会の入り口にある扉のかんぬきを外して闇の世界に旅立つ。

 これが最近の唯一の楽しみなのだ。


 ジメジメした教会の中で過ごすより、夜風にあたれる方が遥かによい。


 なので余ったスキルポイントは『夜目』と『忍び足』と『隠れる』に振った。


 夜に村を出ようとしてもしっかりサイ男と悪魔の像が出口を見張っている。

 昨日はそれでやらかして6回目の目覚めを迎える羽目になった。

 24時間出口警備とかブラック企業もビックリの忠犬っぷりに涙が出る。


 なので、本日の深夜外出は村の脱出のためではない。

 

 以前はゲームの中だけの話、

 馬鹿馬鹿しいと思っていた事を真剣に検討する事になる。


 それは"勇者行為"


 記憶にある勇者は人様の家に土足で乗り込み、

 壺をぶん投げたり、タンスの中を漁ったり、金庫をこじ開けていた。

 それを真面目に実践しようというのだ。


 まず向かうのは勿論、服飾屋。

 売り物を失敬すれば破れてボロボロな服から着替える事ができる。

 バレなければ犯罪ではないし、盗まれるマヌケの方が悪いのだから。


 服飾屋の前まで着いた所で扉に耳を当て、息を殺して聞き耳を立てる。

 物音はしない。深夜であるため、

 当然扉はしっかり施錠されてしまっている。


 だが、勇者は諦めない。

 スキルシートを開き、『鍵開け』スキルも取得だ。

 これで現時点の全てのスキルポイントは使い切った。

 

 適当な角材から引っこ抜いた釘をそこいらの小屋に放置されている農具を使って潰す。

 釘を潰しきって薄くしてしまえば破ける程度の硬度しかなくなるので針金が作れるのだ。

 何だかんだレベルが上がって力がそれなりに上がったからこそ出来る芸当なわけだが。

 これで、勇者専用の魔法の鍵が作り放題ってわけだ。


 『鍵開け』スキルで獲物の御開帳。

 開錠の音と共に、服飾屋の中へ慎重に侵入する。


 所詮はド田舎の貧乏服飾屋。

 ボロい店内に飾ってある服の質はそれ程よいものではない。

 何度も通っている店なので中の間取りは把握している。


 ふと、カウンターの奥に掛けてある一着の上等な絹糸(シルク)で織られた服が目に入る。

 以前の店内には置かれていなかったものだ。


 前にフォレストキャタピラーの生糸をミリィに渡していた。

 それで編んだモノなのだと推測する。


 「元々は俺のだ。これくらい失敬したところで罰は当たらないな」


 忍び込んでおきながら、小声で呟く様はマヌケに映る事だろう。


 だが、それ以上に目の前の戦利品が気になった。


 壁に掛けられた非売品の服に手をかける。

 肌ざわりは滑らかで、今まで着ていたボロ服とはまるで別物だ。

 生前着ていた服よりも上等に思えるくらい品がいい。

 思わず舌なめずりしたくなる。


 突如、板の軋む音が店内の奥から響く。

 服に見とれていたせいで、足音に気がつくのが遅れた。


 「だ、誰……タ、タカシ君?」「チッ」

 

 僅かに聞こえるのは細い女性の声。見られた。

 すぐに口封じを謀るために女に肉薄し、手で口を塞ぐ。


「やっ!んんん!? んんんん!??」「騒ぐと殺すぞ」


 暖かい吐息が手にかかる。女の目頭には涙が浮かんでいた。

 もはや後戻りが出来ない所に来てしまっている。


 女の目の前に釘を見せつけ、刺す寸前の所で止める。

 そこで、女は状況を理解したのか何度か頷くともがくのは止める。


 我ながら見事な強盗殺人未遂だと感心するがどこもおかしくはないな。

 流石に殺すのは不味い。だが、説得も不可能。

 このまま女のために両手を使って時間を潰していては拉致があかない。

 なので賭けにでる。


「この事を黙って見ていれば殺しはしない。叫んだらすぐに殺してやる。いいな?」


 脅し対し、女は頷く。

 口元の拘束を解き、適当な衣類を使って腕を椅子に括り付ける。

 次に猿轡代わりに靴下を噛ませようとする。が。


「どうして……こんな事するの?」


 目の前の女は悲しそうに問いかけてくる。虫図が走る。

 

 どうして? 何故こんなセリフが出てくるのか心底理解に苦しむ。

 

 散々人の事を集団リンチしておきながら、

 自分は酷い目に遭わされないと思えるその図々しさに苛立った。


「お前らが俺にやってきた事を思い出せよ。石を投げ、罵倒し、嗤い、散々楽しんできたろ?」

「私はそんな事一度もしてない」

「うるせぇよ」「ひっ」


 思い返せばミリィにそれをやられた記憶はない。

 だが見ているだけの奴だって同罪だ。


「お前も、アイツらも、金髪野郎も許せるかよ。人を5回もぶっ殺しておきながら、化物呼ばわりもしやがってよ。だからお前らの望み通りなってやったんだよ。化物にな。けっ」


「確かに皆がタカシにやってる事は酷いことだと思うよ。ヨングルト君だって、きつい事言い過ぎだって思ったもの。でもこれじゃ、タカシ君、もう戻れなくなっちゃうよ」


「は? 俺に戻る所なんて、もうどこにもねぇんだよ。俺はこの先餓死し続けるか、お前らに嬲り殺しにされ続けるだけなんだよ。もういい加減黙れよ」


「ひっ」


 嗚呼、こういう時に言われる正論って奴は死ぬほど頭に来るんだよな。

 既に分かりきってる欠点を他人に指摘される時程苛つくものはない。

 被害者になった可哀想なヒロインぶりやがってよ。


 ふと、目の前の女の口を手で塞いだ時に感じた柔らかく温かい感触を思い出した。


 ……殺すのはダメでも楽しむくらいは構わないよな。

 どうせ、俺の立場はどう足掻こうが変わらない。

 あのむかつく金髪の雑魚野郎にも一矢報いてやるのも悪くない。


ーーー続きが見たい方はワッフルワッフルと入力してくださいーーーーー…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


 「酷いよ……タカシ君。こんなの……うっうう……」

 

 結局、彼を止める事は出来なかった。


 血がこびりついた椅子の言い訳はできない。

 体中にまとわりついた汗が気持ち悪い。

 涙が流れ続けるのが止まらない。 

 破かれた衣服も、荒らされた店内も誤魔化せない。


 いつか、彼は旅立ってしまうと思っていた。

 だから、日頃から世話になった彼への感謝のために服を織ることにした。

 だけど、彼のために織った旅人の服は彼の背負った罪を重くしてしまった。

 

 一体、何が、皆を変えてしまったの……


 もう…… 皆大嫌い……

タカシ君はついに勇者の業(GOU)を背負ってしまったわけです。

彼の勇気ある行為に乾杯。

なお、サクーシャはR18シーンを描写する勇気がなかった模様。


勘違いによる小さな嫉妬から始まり、友情を崩壊させ。

被害妄想から罪のない弱い人間に八つ当たり。フルコースじゃな?


闇落ちの連鎖が止まらない。

大天使ミリィちゃんもこの有様でございます。


基本、タカシ君ルートは女の子"も"容赦なく酷い目に遭うお話多めなので、

それが苦手な人はブラウザバックか章を飛ばすのマジオヌヌメ

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ネタバレありだけど設定気になったらこっち見てね

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