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まおー様は絶望の未来を歩む  作者: 粘々寝
2章:姫騎士レイディアナ
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過去話その3:霊山を登るまおー VS 大虎ドゥン

久しぶりの過去編第三弾

プロットが定まるまではこれでお茶を濁していくスタイル。


ほんとはダイジェスト形式で魔獣一気に5体くらいだして1話で終わらせるつもりだったけどあまりにあっけなかったのでこうなった。

これはまおー様がまおー様になる前の3番目のお話

ーーーーーーーーーーーーーーーー…

獣魔領 シュールストレミング 裏山

ーーーーーーーーーーーーーーーー…


 木々が生い茂る道なき道を掻き分ける小柄な漆黒の鎧。まおー16歳。

 彼は霊山に住むと言われる大魔獣フレースベルグを使役せんとするため、

 一人で霊山に足を踏み入れていた。


 まおーには全く土地勘がなかった。蔵書室から拝借した地図を見ても、

 山の麓付近の鉱脈や果樹の自生地帯までの道のりしか記されていない。

 

 そのため、道も整備されていない前人未到の地に踏み込む必要があった。

 通ってきた道を把握するために、木々に記号を掘ってきた。

 大まかな進路と彫った記号を地図に追記し、迷わないようにした。


 まおーの旅もそこまでは順調だった。


「なんだ……?」


 まおーは前方を警戒し、腰のポーチに手を伸ばす。

 魔獣に遭遇した時は肉を与えて逃げるのが手っ取り早い。


 前方から草木を掻き分ける音が鳴った。


「ぐるる……」


 という獣の唸り声と共に姿を現したのは、鋭い牙を持ち、黒と黄の縞模様の大虎だ。

 全長にしてまおーの2倍程度の大きさだ。


「何だ…ドゥンかよ。脅かせやがって」


 だが、まおーは父親に躾けられてドゥンの騎乗訓練済みだ。

 なのでドゥンの対処法も大体分かっているのでうろたえない。

 ドゥンは特定の花を与えると酩酊状態になり、その辺に寝転ぶ習性があるのだ。


「クックック、我の前に平伏し、頭を垂れるがよいわ」


 ドヤ顔でポーチから取り出したマタタビをドゥンの鼻元にちろちろと振ってやる。

 だが、ドゥンはそれを無視し、腕を振るった。


 まおーの胴体に凄まじい速度の猫パンチが炸裂する。


 …そう、たまに効かない固体もいる。餓えている固体なんかがそうなのだ。

 まおーはその事実に気がついていない。

 

「グハッ…うげぇ……」


 まおーは胸にモロに受けた圧力から悶絶する。

 漆黒の鎧が凹む威力の猫パンを受けたのだから、

 常人であれば内臓が破裂してもおかしくない。


 だが、腐っても獣魔族のまおーなので耐える。被部を押さえながら後ずさる。

 一撃で倒せない事に苛立ったのか、大虎はさらに敵意をむき出しにする。

 

「ガルルァ!」「ぐ……くそ、何しやがる!」


 まおーの頭を猫パンが掠める。僅かに頭を引いて猫パンを避けたはずだったが、

 完全には避ける事適わず、鼻を掠めて血が飛び散った。

 まおーの鼻に2本の赤い線が走っていた。

 ここにきてようやくまおーは自身の命の危機を察する。


「うぉおおおおおおお」「グルア!」


 大虎は後ろ足で立ち上がり、

 両方の前足の爪をあげ、まおーに向けて振り下ろそうとする。

 まおーは全身を低く屈めて大虎に向けて飛びつく。


 振り下ろされる爪をかいくぐり、まおーはドゥンの腹に抱きついた。


「どっしゃあああああああ」「ギャウ」


 まおーは全力を以って大虎を横に投げ倒した。

 巨体が地面に打ち付けられる事で土埃が舞う。だが、戦いはまだ終わらない。


 横倒しになった大虎はジタバタとしながら立ち上がろうとするのだ。

 その隙にまおーは全力逃走し、木を駆け登るのであった。


 まおーは枝の上で息も絶え絶えになりながら、下の大虎を見下ろす。


「ぜーはー、ぜーはー、こ、これだから下賎な魔獣共は困る…」


 大虎は獲物に逃げられた事を察したのか、とぼとぼと踵を返していったのだった。


「ああ…これは……思っていた以上に……キツイ…な、げふっ……帰るか……」


 念のため着て来た鎧がなかったら非常に危ない事になっていた。

 まおーも胸を押さえながらとぼとぼと踵を返していくのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


 魔城の医務室に通ったまおー様の診断結果は全治2ヶ月間の胸骨骨折だった。

 内臓へのダメージも多少はあったが、魔族さながらの耐久力で助かっている。

 こうしてまおーは無事、医務室ベッドの上で栄養食を食べるハメになったのであった。

 なお、大魔道にはこっぴどく怒られた。


 そして、ある日、魔族の少女へレナが見舞いにやってきたのだった。


「マオ……怪我するだなんて何やったの?」

「ハッハハハ、ちょっとばかし油断してな、いっててて…」


 まおーとしては気恥ずかしいので虚勢を張ってみたりするわけだが、

 戦闘時のハイな状態とは違い、安静時は痛みの自己主張が激しいのだ。


「もう、大人しくしてればいいのに」


 ヘレナは見舞いの果実をベッドの横に置き、椅子に座る。


「ヘレナ。野生のドゥンは恐ろしいぞ。俺もこの様だからな」

「あの子達ってそんなに怖いかなぁ?皆大人しくていい子だと思うけど」

「……あれでも結構危ないんだぞ?毎年死人だって出てるんだから」


 なお、生物としての直感から、

 ヘレナを前にすると大抵の魔獣は逃げるか頭を垂れる。

 それくらい普段から発しているオーラが桁違いだったりする。

 まおーならヘレナが二部屋挟んでも居るのが分かるくらいオーラ力があるのだ。


 まおーも実はヘレナを前にすると時折脂汗が浮いたりするくらいだ。


「じゃあ、そんな危ない所いかなきゃいいのに。マオはよわっちいんだし」

「ヘレナ……それほんと傷つくからやめてくれよ」

「それなら今度は怪我しないようにしてね」


 そう言いながら果実の皮を器用にナイフで剥いて、皿に添える。

 まおーはそれを手で掴んで口の中に放り投げるのであった。


「ああ、この次期魔王に同じ油断は二度とないと思って貰おうか」

「ふふ、頑張ってねまおー様。でも本当に心配だから危なくなる前には帰ってね」

「心配性だな。俺がこんな所でくたばるかよ」


 まおーは今も尚、心は折れていない。

 だけど流石に反省したので、

 傷が完治してからのリハビリの戦闘訓練は念入りにやっておいた。


 まだ、霊山の頂までは遠く、中腹にも至ってはいない。

 だが、少しずつ、白紙の地図に記号は書き足されていく。

 猶予は4年。それまでに大魔獣フレースヴェルグを使役するのがまおーの目標だ。

 

何でまおー様は剣で攻撃しないの?って疑問が浮かぶかもしれない。

あえて言うと殺す必要はあるのか?という所に尽きる。


逃げればいいし、

そうじゃなくても撃退でも十分ですし、

威圧すれば向こうが逃げてくれる事もあるのです。


野生動物同士の戦闘って大体そんなもん。

そもそも魔獣を使役しにいくのが目的なので殺傷する必要はないのだ。

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まおー様の対勇者戦線の設定

ネタバレありだけど設定気になったらこっち見てね

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