2章 第18話:飛翔す
レイディアナちゃんとのイチャコラ回
無事魔王城に回収完了するというだけのお話。
展開がスローになってきました。はい。2章もようやく後半戦。やったね!
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獣魔領 スカージの村近郊
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魔王と呼ばれる上裸の男に追従し、村の外に出ている。
一度シュールストレミングと呼ばれる城まで案内してくれるようだ。
あれから、魔王から流行り病と獣人の成り立ちについてもう少し詳しく聞いた。
始まりは人々がこの地を開拓した事によって起こった。
人が魔獣の領域に土足で踏み込み、魔獣と争って傷を負った事から始まった。
病を発症した者は数週間で身体が腐り落ちて死に至る。そんな病が流行り病だった。
そして、それは伝染した。獣から人へ、虫から人へ、人から人へ、感染った。
人々は疑心暗鬼になり、病と疑わしい者を迫害していった。
その迫害された人間の最終処理施設が隔離所だった。
人々は自身で人を殺すのに罪悪感を覚えた。だから獣に処理させたのだそうだ。
しかし、本来皆死ぬはずだった末期患者達は生き延びた。
獣人へと変貌する形で。彼等は、生き延びた。迫害した者への復讐を誓って。
その結果生まれたのが魔王、だった。
これまでの歴史上、獣人達はほぼ皆殺しになった事もあったそうだ。
ただ、病は根絶する事ができないため、そのうちまた獣人は誕生する。
一度開けてしまったパンドラの箱は二度と閉じる事ができないのだそうだ。
世界にはそういった出来事が吐いて捨てる程ある…そうだ。
……酷い話だと思った。何度目だろうか。こう考えるのは。
獣人達が騎士国を襲うのも当然だと思った。
私だって、もうしばらくここに居て生き延びていたらそう思い始めたのかもしれない。
魔王の戯言だと切り捨てる事はできる。だが、私は知っている。
知ってしまった。病になった者たちの末路を。だから疑う事はできなかった。
争いを止める方法は分からない。
人と獣人はもう手を取り合う事が出来ないほど拗れてしまっている。
だからお父様は選んだ。殲滅という形を。
結果は目の前にいる男によって止められてしまったけれど。
今はとにかく、争いによって苦しむ人々を減らしたい。
騎士国も獣人も全て。理想論だというのは分かっている。
そんな事をぼぉっと考え続けていたら、上裸の男が足を止めた。
目の前に人の数倍する巨大な大鷲が佇んでいた。
以前の獣人要塞で見かけた。
空から氷の槍を降らしてクロスボウ隊を壊滅させた魔獣。
その威容を前にして怯んでしまう。
だが、上裸の男が大鷲に近づくと人懐っこく嘴を擦り付けているのだ。
そして、上裸の男は頭を撫でている。
はたから見れば信じられない光景だった。
「待たせたな。ヴァルフォアルよ」「キュエ!」
「そ、その魔獣は一体……」
「余の使い魔よ。中々愛くるしいだろう?」
どこがだ!と声に出したい気持ちは抑えた。「あ、ああ」
上裸の男は大鷲に飛び乗り、
背中に取り付けられたクラに跨って片手でたずなを掴みながら私を手招きするのだ。
「乗れ」
言われるがままに背中に乗ろうと近寄ると、
大鷲は翼を大きく広げて私を睨み、甲高い咆哮をあげたのだ。
「キュエエエエ!」
鬼気を浴びせられて思わず竦みあがってしまった。
そのプレッシャーは大虎の魔物などとはもはや別の次元にある。
生物としての格が違うのだ。
「一度だけ背に乗せるのを我慢してやってくれ」「キュエエ…」
上裸の男は大鷲をなだめると力無く鳴いて翼をたたんだ。
どうやら乗る事を許してくれるようだ。
上裸の男の手を借りて大鷲に乗った。
だが、一つ困った事になった。
「何をしている、早く余に掴まれ」
「い、いや、待ってくれ。それは」
掴まる事が出来る部位が目の前の上裸の男しか居ないのだ。
その、色々と困った。身体を密着させないといけなかったりするから。
「振り落とされたいのならばそのままでいるがよい」
「わ、分かったから」
この男は女性への配慮というモノを知らないのだろうか。
……愚問だった。未だにそんな事を考えている私の方がおかしいのか。
ただ、暫く水浴をしていないので、どうしても気になってしまう。
……この男は恐らく気にしていないのだろうな。きっと。
私の身体はこの男と同質なのだから、嗅覚だって優れているはずなのに。
上裸の男に抱きつく形で手を回した。
腹には包帯が巻きついているので傷口に触れないようにした。
私が刺した傷だ。かわす事も出来たはずなのに受けた傷。
血が滲んでいた。
「よし、飛べ。しっかり掴まっていろ」
「キュエエエエエエエエ!」
大鷲は甲高い咆哮を上げながら飛翔を始める。
羽ばたきで周囲に土埃が舞った。
地面から飛び立った辺りから身体が沈む程重くなるような感覚を覚えた。
「うわっ」
思わず上裸の男に必死にしがみついてしまった。
逞しい背筋に胸があたってしまい、どぎまぎするのだが。
……目の前の男は全く意に介していない。少し自信を無くした。
……いや、もともと無いに等しいのだが。だから男物の鎧だって着れるのだし。
どうでも良い事は考えないに限る。
心地よく冷たい風が吹き抜ける。
空を飛んだのは生まれて初めてだ。
遠くに見える山々、森、全てが新鮮に感じられた。綺麗だった。
下側を見下したらゾワっとする感覚が全身を駆け抜けた。その、怖かった。
だから、強く抱きしめてしまう。暖かい温もりを感じていた。
やっぱり少し恥ずかしい。
数刻の間、ずっと新しい景色を見続けていた。
地を這う獣達。あの大虎が大地を駆けて獲物を食らってる様を見かける。
ここは残酷な場所だ。弱い者達は皆食われていく。人も例外ではない。
同じく空を飛んでいる翼の生えた馬達、怪鳥、
遠方には小さな山と見まがうが如く大きな鈍獣。
本当に、色々なモノが見えた。
世界は広い。このまま何もかも棄てて何処かへ飛んでいってしまいたい。
争いも、病も、餓えもない世界へ。そんな事を思っていた。
だけど。そんな事は許されない。
「魔王」
「どうした」
「綺麗だな。この世界は」
「気にした事もなかったな」
「貴公は中々寂しい奴だな」
「ふん」
「一つ言い忘れていたことがある」
「なんだ」
「その、貴公の事は許せない。だが機会をくれた事には感謝している」
「それはお主が選択したことだ。感謝される言われは無い。どの道もう二度とロクな道は歩くことはできない事だけは覚悟しておけ」
忠告、それは恐らく善意なのではないだろうか。
魔王が善意など持つものなのだろうか。絶対悪の存在が?
「貴公は、どうして魔王なのだ。やはり私にはそう思えないのだ」
「魔王も、勇者も、単なる"役目"でしかない。中の人格なんぞ関係ないのだろう。魔王はどうあっても魔王でしかない」
どこか投げやりな様子で上裸の男は言う。
やり取りの際でも時折感じた。
スティレットで刺した後の時、挑発してロングソードを投げ渡した時、
今思えば、まるで殺されたいかのような……
「役目…… か」
立場は人を縛る。
お父様も王だから、一番強いから魔王と戦う姿勢を見せなければいけなかった。
真っ先に逃げてくれればそれが一番良かった。
でも、それを立場が許してはくれない。
無責任な結果論でしかない嘲笑を死んでからも一身に受けた。王だったから
私は、その点自由になった。何もかも失くしてしまったから。
今、ここで隙だらけの魔王の腰からロングソードを引き抜いて背後から切りつける事が出来る。
何もかも投げ出して、この力を使って何処か遠くに逃げる事だって出来る。
今も残っているモノは騎士としての矜持だけ。
だから、それはやらない。
「実に下らない。役目よ」
吐きすてるように上裸の男は言った。
かける言葉もなかった。
やっぱりこの上裸の男に魔王は向いてないな、と思った。
夕日は沈む頃、黒曜石で出来た荘厳な城が見えてきた。
ただ、城で一部天井が吹き抜けになっている箇所があった。
そ~らを自由に飛んだ時の感想はどんなものか。
意外とペガサスナイトとか怖い兵種だと思うんだがどうなんだろうか。
上裸の男と密着24時とか割とアレな図面になってしまった。
でもしょうがないよね。そうするしかないんだし。
1週間洗ってないオルゴーモンの臭いスレを思い出す。そういう流れ
2ケツしながら空中飛ばすべきか、魔獣が跋扈する地を1日かけて歩くか。どっちが安全なんやら
地面歩かしたら食料補給の狩描写入れないといけなくなるしね!




