過去話その2:まおー様になる資格
過去話その1の続きです。
レイディアナちゃんとのやり取りの前には見せないといけない設定補完みたいなものですね。
いや、本来はこれ過去話その1の直後に書いておかないといけない話ではあったんですが…
これは今から50年程前のお話
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獣魔領 魔城 シュールストレミング城内
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まおーは城内にある執務室に足を運んでいた。
執務室では大魔道が書類などを眺めてはハンコを押したりしていた。
それが何を意味しているのかはまおーに知る由もないし、
そんな事はどうでもよかった。まおーは大魔道に用があったのだ。
現状、魔族を取り仕切っている者といえば、
前魔王の側近であり教育係でもあった大魔道である。
彼ならば、魔王になるための資格を知っているだろう。
まおーは一応大魔道とは顔見知りであるし、城主なので警備のデーモンナイトも顔パスだ。
…まぁ、あまり良い顔はされないのだが。
大魔道はと羽ペンで書類に文字を書く作業を止めると、
ため息交じりでまおーに視線を移すのであった。
「まおーが私に用事とは珍しいですな。私はこう見えても結構忙しいのですぞ」
「それは知っている。が、聞きたいことがある」
「何でございましょう。魔法原則についての質問とかですと結構時間取るので後にしていただきたいのですが」
「俺が魔王になるにはどうすればよいのだ」
大魔道は呆れたような表情を見せた。世迷言を言ってるようにしか思えないという風に。
「一応理由は聞いておきましょうか」
「ヘレナの奴が魔王になりたくなさそうなので代わりに俺がなる」
「諦めなされ、まおーでは無理でしょう」
「何故だ」
「単純にまおーはよわっちすぎて魔族をまとめる事ができないでしょう。後若すぎますな」
「ヘレナなんて俺より年下で右も左もわかってないだろう」
「ヘレナ殿は特別なんですよ。下手をすれば現時点で先代魔王様以上のお力をお持ちですので」
やはり、返答される言葉は決まっていた。
単純に弱すぎると。まおーには分かりきっていた話である。
力、力が圧倒的に不足していた。
「またそれか。だが、俺の先祖は魔王をやっていたはずだろう」
「初代魔王サルヴァの事ですかな。当時の魔族といえば獣魔族しかおりませんでしたからな。単純に魔族全体が弱かった時期の話です。後に台頭する竜魔族や我々妖魔族と比べると力量は1,2段劣ります。それにまおーの血統は…アレですからな」
獣魔族は人が獣性を取り入れて変異した者の総称である。
それは、様々な姿をとる。ある者は一つ目の巨人、ある者はサイの顔をしている。
他の獣であったり、一部異形と捉えられてもおかしくない姿をする者もいる。
特徴は野生で生き抜くために雑食で病に強く、非常に筋力に優れている。というだけだ。
ちなみにまおーの血はこれが最も濃いのでややライオンっぽい面影を残している。
竜魔族は竜の呪いによって変異した者の総称である。
見た目は蜥蜴人間に角や翼が生えたようなものだ。
だが、ドラゴンさながらの強力な火炎ブレス、
強靭な鱗でできたスケイルメイルは鋼の武器を弾き、尾撃を放てば岩をも砕く。
凶悪な牙と爪は霊銀製のフルプレートメイルすら容易く引き裂く。
膂力に関しても獣魔族よりも高く、彼等には下手な防具や武器は不要なのだ。
妖魔族、魔法を使える者達の総称である。
土、風、水、火の4属性のエネルギーを魔法として自由に操る事ができる。
魔道を極めた者は、極寒の吹雪、地割れ、大津波、場を灼熱の焦土に変えたりできる。
最も、これを行うと双方に多大な犠牲が出るために実際に使われる事はない。
まおーには若干この血が混ざってたりするので一応魔法が使えるらしい。
今は使えないが。
他に屍魔族が存在する。
強い再生能力と吸血する事で眷族を作り出す能力を持っている。
肌も髪も雪のように真っ白く、紅い瞳が特徴だ。
力も獣魔族並に強く、四肢を切断されても身体はくっつける事ができる。
ただ、火あぶりにされたり日光を浴びると再生能力が落ちるという問題がある。
そして、血の濃さに比例して再生能力は上がり、日光や火に弱くなっていく。
ちなみにまおーはヴァンパイアロードのドラウグルと親戚だったりする。
なのでちょっとだけ身体が丈夫だったりするわけだが。
そうだ、まおーは獣魔族であるため、他の魔族と比べると劣っているのだ。
さらに、中途半端に多種族の血が混ざっているために、
本来の種族の力を発揮できない。雑種なのだ。
辛うじて初代魔王サルヴァの血筋を継いでいるだけの世襲魔族、それがまおーなのだ。
「……俺の血では魔王になれないと言いたいのか」
「結論を言ってしまいますとそうですな」
まおーは落胆する。生まれの時点でどうしようもない差ができているのだから。
あの魔族の少女は生まれの時点でどうしようもない定めを背負っているのだから。
血統とは、ロクでもないものだ。
前世代の負債を引き継ぎ、義務を果たす事を強制させられる。
その代わりに与えられる力も大きい。
力をきちんと使えるかどうかはまた別の話だが。
「なぁ、ならば大魔道が魔王をやる事はできんのか?」
「ヘレナ殿が居る以上、私が魔王になる事を他の魔貴族が認めないでしょう。私が滅んでしまえば魔族の文明や魔道技術は5世代は巻き戻ってしまいますからな」
大魔道は魔族の中で最年長であり、現在の魔道技術を飛躍させた存在でもある。
空中偵察用魔道ゴーレムのガーゴイル、拠点防衛用魔道ゴーレムのへルビースト、
などの自律式魔道ゴーレムをくみ上げる事が出来るのは彼しかいない。
後継者は育ててはいるが、魔道の真髄に至れているのは大魔道において他にいない。
だが、まおーは一つ気になったのであった。
「大魔道、何故お前は滅ぶ事前提なのだ」
「勇者を倒す事ができないからですよ。殺しても殺しても何度でも蘇りますからな。先代の魔王は勇者とその仲間を殺し続けるうちに次第に失意の底に沈み、無力感に苛まれるようになっていきました」
まおーは絶句するのであった。
魔王とはそれ即ち勇者に捧げるための生贄であるのだ。
「そんな役を、ヘレナの奴にやらせるのか」
「ええ、それがあの娘の定めなのです。酷なようですが」
「父親を勇者に殺されておるのだぞ?ヘレナは」
「それを言ったらまおーもそうでしょう」
まおーの父親も先代魔王の護衛をしている最中に討ち死にしている。
死因は爆死。神王国の聖戦士隊という爆発物を腹に巻きつけた男共にとり囲まれ、
自爆されて粉みじんになっている。死体すら残っていなかったという有様らしい。
そのため、まおーはこの若さで魔城シュールストレミングの城主となっているのだ。
「どうしても、俺は魔王になれないのか? 何か方法はないのか」
諦めきれないといった様子でまおーは食い下がる。
まおーは正直に言ってしまえばあの妖魔族の少女が好きなのだ。
だから気にかけていたりするし、代わりに魔王になるなんて言い出しちゃうのだ。
安っぽい恋心でも原動力にはなる。そういうものなのだ。
「うーむ、一応なれる可能性はあります。魔王になれるだけの相応しい実績があるなら、ですが。例えばサルヴァの行った偉業を成し遂げるという等をすれば、もしかしたら魔王と認められるかもしれませんな」
「例えば何がある」
食い入るようにまおーは食いつくのだ。
「そうでうすな。魔城の裏にある霊山には霧の頂という領域があります。そこに住むと言われる大魔獣フレースヴェルグを使役する。でしょうか」
「大魔獣フレースヴェルグだと?」
「ええ、巨大な大鷲で氷の魔法を行使すると記録に残っております。最も、霊山には他にも危険な魔獣が数多く生息していて危なっかしいので登山者など誰もおりません。死ににいくようなものです。」
「そうか。感謝するぞ。大魔道」
そういうとまおーは足早に執務室を出て行くのであった。
「あ、これ。やれやれ、仕方がない奴ですな。まおーは」
大魔道は仕事に戻り、執務室は静寂に包まれるのであった。
という事で過去話その3はまおー様の修行会になるわけですが。
これによってまおー様が筋肉ムキムキのマッチョマンの変態に変わるわけです。
雑種って良いよね。所謂器用貧乏って奴ですけど。
殺されまくってる勇者が何で折れないのかといえば
オールペインキラー(痛み防止)とリザレクション(復活魔法)が使えるため、
ゲーム感覚で攻撃を食らって死ねるし相手を殺せるのです。はい。
○ボタン連打してるだけなら666回死んで生き返っても問題なし。
デモ〇ズソ〇ルだって軽く3桁死んでるわけですし。痛み感じてなければいくらでも死ねます。
…いきなりミスリルなんて出しちゃったけど。どうしようこれ。
いわばチタンみたいな金属とし、軽くて鋼鉄と同程度に硬くて錆びにくい。薄青銀色
人間が入手できる希少な準最高位金属としておこう…
デモナイト製装備(デーモンナイト装備)もミスリルと同様の性能だけど黒色になる。
ルーライト製装備(魔王装備)はとにかく重くて硬くて錆びない蒼天色(深い蒼空色)
メッキ技術があれば色なんてあんまり関係ないんだけどね。




