第7話 隙と大剣
「第4回戦Dグループ決着ゥゥゥゥ!!!!!!」
会場中にアナウンスが響き渡る。それに負けないぐらいの歓声。
正直やり過ぎた。参加者だけぶっ飛ばすつもりがフィールドまで破壊してしまった。
砂などを払い観客席を一瞥する。あんぐりと口を開いた者、目を見開いてる者、笑みを浮かべてる者、無表情の者………気にしないでおこう。
「これで本戦を通る者が出揃いましたぁぁぁぁ!!!」
アイムさんは懐から球体を出し空へと掲げる。するとホログラム映像みたいなのが映し出される。
そこには本戦へ出る俺を含む4名の名前が提示されていた。
Aグループ 勝者
タトンノ・カナヤ
Bグループ 勝者
ザック・ナカワ
Cグループ 勝者
エイジ・アルファン
Dグループ 勝者
ユウヤ・ウヅキ
俺は一つの名前へ集中させる。エイジ・アルファン、俺と似ている装備の金色の髪をした青年。
「休憩をとります、一時間後本戦を開始します!!!では後ほど」
時間がある
ならば
やることは一つだ
「飯食いに行こ」
普通に動いて小腹が空いていたのだ。幸いモニターからギルドを見ると今のところ空いている。
それを確認するや否や転移魔法の術式へと駆け寄る。白い光が体を包む、それと同時に体がグラッと揺れる。
気持ち悪い、元々酔いやすかったのであんまり関係ないと思う。多分。
「おーいユウヤ!」
白い光から視界が晴れ、目の前にいる女性 メンナさんがパタパタと駆け寄ってくる。
「君はやることなすこと規格外過ぎるんだよ、フィールドを崩壊させるなんて聞いたことないよ」
「その件に関してはちょっとやり過ぎたというか………」
事実、使えるだけのバフを使って全員を場外にした。まぁそのバフが強力にし過ぎたのが原因だが。
この他に未だ解放されてないスキルがあるため………頭が痛い。
「まぁ見てて面白かったからなんでもいいけどね」
ケラケラと笑いながらそう返してくるメンナさん。笑い事じゃないっす。
「はぁ…取り敢えずご飯食べたいんでなんか軽いものあります?」
「おーけー」
適当に返し厨房へと姿を消す。
俺は目を瞑り、次の本戦のことを考える。相手のことを分析しようと思ったが寝てたのでそれは無理だ。ならどうするか答えは決まっていた。
Cグループにいたエイジ・アルファンを見ていた時に聞こえた『予想通りとか………思った?』という声だ。
ここが異世界なのでなんらかの魔術なのかもしれないな………だが俺の脳内で浮かべていた言葉をそのまま口にされたのだ。
はっきり言って興味深い、そんな魔術があるなら見て見たい気もする。
「お待たせー、なぁにボケーとしてんの?」
そんなことを言いながらメンナさんが皿を片手に厨房から出てくる。
「あ?え、いやなんでもないですよ」
「そうかい」
そう返すとコトッと音を立て俺の前に手に持っていた皿を置く。そこには野菜や肉などを挟んだサンドウィッチらしきものが乗っていた。
「普通に美味そう」
「普通とは失礼な。これでも評判はいいんだから」
嘘くせぇとか思いつつサンドウィッチを手にとりかぶりつく。
直後一つの言葉が口からこぼれた。
「うめぇ。ナニコレ凄い美味いんすけど」
頭をあげメンナさんに向かって言い放つ。それを聞いたメンナさんは腕を組みドヤ顔をする。なんか腹立つ。
その後は何も考えず食べた。気づいたら完食していた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さん」
手を合わせ合掌する。
席から立ちメンナさんに一言送ろうとした瞬間背後から肩を掴まれる。
「おい!お前がユウヤだな?」
「そうですけど」
めんどくさいことには首を突っ込みたくないが返事しないほうが多分怠いことになると思ったので取り敢えず後ろに向き返事しとく。
見たところ少しだけ装備をつけており背中に大剣を背負っている。
「予選の『アレ』何をした?」
鋭き眼光で睨みつけられながら問われる。『アレ』とは全員場外にしたことを指しているのだろう。
流石にスキルで吹っ飛ばしましたぁとか言ったら斬られると思ったので
「まぐれです」
はぐらかした。
多分こっちの方が殴られそうな気がしたがもう言ってしまったので戻れない。
だが予想していた反応とは程遠かった。
「ふん!………それが本当か次の試合でハッキリする!」
「どう言おうが勝手ですが名前ぐらい名乗ってくれません?」
大体予想は出来ているが………ここは知らないフリをしておこう。
ここで名を名乗らないなら試合でボコボコにしてやる。
「タトンノ・カナヤだ………」
意外にも名乗った。
まぁ試合で当たったらボコボコにしますけど。
「タトンノさんですね。Aグループの勝者の、そんな人が俺なんかに目をつけてくれるなんて嬉しい限りです」
精一杯の皮肉を並べる。
学生してた時にも皮肉を言い過ぎてたぐらいだ。そのおかげで友と呼べる者はあまりいなかったが。
「………」
俺の皮肉に聞く耳を持たないのか無言のままスタスタと去っていく。
それを見送り一つの確信へ至る。
次の試合あの人と当たりそうだなぁ………………
「本戦1試合目!!!!!!【豪腕】の異名を持ち、ギルドランク〈Ⅴ〉タトンノ・カナヤ 対 規格外の言葉を具現化したような人物ユウヤ・ウヅキ!!!!!!!!!」
はい………当たりました
「よもや最初の相手が貴様とはな………ユウヤ。だが俺が相手とは運が悪いな」
ホンッッット運が悪いな。いやマジで。
だって背中にある大剣ヤバそうだもの。俺の鉄の剣じゃあ絶対折れる。
「はぁ…全力で相手させてもらいまーす!」
適当に返し、背中から剣を抜く。正直剣を折りたくないから使いたくはないんだが………真正面にいるタトンノは大剣を前にかざしてくる。
どう勝とうかな………やっぱバフしかないな。
「両者とも構えましたね?では行きますよ!!!試合開始ぃぃぃぃぃぃ」
試合開始の合図が響き渡る。勝てるとかどうよりも、俺はアイムさんの喉が心配です。
そんなことを思いつつ正面の相手を見据える。
「流石ギルドランク〈Ⅴ〉………気迫が違うぜ…!」
ステータス0だから知らんが………なんかあまり気迫に気圧されないな。
こっちにしては不幸中の幸いだな。そのままスキルを使用する。
「むん!!!!予選の時とは違う!!!!!!」
タトンノさんが突進してくる。俺は目を見開く。スキルを使用するには頭で想像するか、言葉に出すかなのでバレないよう大体は想像するはずだ。
だが今俺が想像する瞬間に突進してきやがった。つまり
バフかけてる暇ねぇ………
もちろん突進を避けれるほど落ち着いてなかったので腹にタックルをもろに受ける。
「グォォッッ!!!」
衝撃波ではないのでフィールドを削りながら後退する。
なんとか耐え血を吐き出す。腹を抑えながら取り敢えず時間が出来たため
自動回復付与 チェイン5
身体強化 チェイン5
攻撃強化 チェイン4
大剣特攻 チェイン5
大剣耐性 チェイン5
剣術強化 チェイン3
盛れるだけ盛る。バフを。
「はぁはぁはぁ…」
「まぁ耐えてもらわねば拍子抜けだからな」
「ふん………ここでは終わらねぇよ」