第1話 布団と異世界
俺はこの日
異世界へと召喚された
異世界転生ではない召喚だ
ラノベや漫画にハマった男子なら夢見る
アレだ
そして「力」を手に入れた
そう
ものすごい
すごく微妙な力を
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俺の名は雨月 裕也、十九歳で大学一年だ。性格は基本的に「やらなくていいもの」はとことん「やらない」というものだ。要するに面倒くさがり屋だ。大学は行ってるが基本スペックは「凡人」だ。
学校へ行きたくなかったらまず行かないのが主義なのだ俺は。だが今日はサボりにはならない何故なら今日は祝日だからだ。そして祝日に何をするか?俺のたどり着いた答えは一つ。
「寝よう」
一択だった。一人暮らしなため基本的に何でもしてるが睡眠時間は中学生や高校生とあんまし変わらないため取り敢えず寝れるときは寝るのが俺の主義だ。
そうと決まれば布団に入るだけだった。開いていたパソコンの電源を落としパーカーのチャックを閉め布団へと滑り込む。一晩一回も入ってなかったので布団の中はひんやりしている。体をモゴモゴと動かし一番良い位置を探る。
「良し……おやすみ」
位置を探り当て誰もいないのに「おやすみ」と言い放つ。これが俺の日常だったりする。
俺にとって睡眠は一つの娯楽だったりする。だから今この状態こそ人生の楽しみと言っても過言ではないのだ。
さて明日は何をしようーーーーーーーー。
そこで俺の意識は闇へと消えた。
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「うぅぅ……ああぁ」
目が覚めた。あまりにもいい気持ちではないが取り敢えず寝れたので良しとしよう。
そう思い立ち上がろうとするも違和感に気づく。被っていた布団がないのだ。否それだけではなく枕まで。あるのはシーツだけ。
「どうなってんだ……これ」
上体を起こし周りを見る。窓などは一切なくスコップやノコギリなどの工具しかなくどう考えても物置部屋だった。
一瞬拉致かと思ったが自分の現状を見るにその可能性はすぐ放棄された。
「まぁ考えるよりも、先に外に出てみるか」
俺はドアノブを回し外に出る。そこで見えたのは人だった。ただ日本人よりも少し違う。その時俺は一つの考えにたどり着く。
「もしかして……ここ異世界か……?!」
そう異世界。アニメや漫画などにある異世界だ。中学の時や高校の時によく読んだりしていたのでかなり馴染み深い。
「まさか……異世界に来ちまうとはな」
あまりの出来事にその場にへたれ込む。周りを通り過ぎてく人達は俺を見るなり不思議という感情の眼差しを向けてくる。正直辛い。
「つーか俺死んでないから転生ではないわけだな。つまりアレだ異世界召喚だ!……ん?だとすると俺は布団の中で召喚を喰らったのか」
一人で考え勝手にまとめ上げる。確かに服装はズボンにパーカーというあまりにも寝巻き臭のする格好だからだ。
「と言っても異世界へ来れたのは感謝感激なんだが……こっからどうするかねぇ」
今まで読んだラノベやアニメでは奇跡的な力を得てたり偶然なんかが重なって人生ゴールインとかだったのだが生憎、今の俺にそんな力なんかも見られないため途方にくれる。
「君?どうかしたのかね?」
「ふぇ?」
唐突に話しかけら声が裏返る。声をかけてきた主の方へ体を動かす。そこにはあからさまに警備員らしき人がいた。
(そうだ……この人に頼ろう、悪いが犠牲になってもらうぜ!おじさん)
「君ここで何してるのかね?」
「あ、いえ目が覚めたらこの小屋の中で寝ていて外に出ても訳が分からず」
俺の言い分に顎に手を当て頭をひねりだす。それもそうだ……こんな何処のやつかも分からないやつがいきなり訳が分からないことを言いだすのだから。
というか今思ったが言葉は日本語らしいな、ちょっと発音が微妙だが。何処の世界も一緒なのだなと思った矢先警備員のおじさんが口を開く。
「身分証明書あるかい?」
「ら…らい…せんす?何ですかそれ?」
「持ってないのかい?」
「あ、はい」
その後色々教えてもらい取り敢えず身分証明書を作りにギルドへと向かうことになった。
俺の異世界冒険は最初からアクセル全開で波乱が巻き起こることになるとはこの時知る由もなかった。
ギルドーーーー。
「でけぇ………」
第一声がそれだ。市にある図書館の倍のでかさは誇っている。
ギルドについて一様説明すると冒険者が集う場所であり、そこではクエスト受注や装備の売買などがされており身分証明書も作れるそうだ。ちなみに身分証明書なるものは十五歳のときに作るものらしい。失くす人もいるっぽい。
でかさに驚愕しててもあれだったのでとっとと中に入る。そこには多くの人で賑わってた。
「おじさんが言った辺りはあそこか」
警備員のおじさんが示してくれた場所へと走る。そこには受け付けのおばさんがいた。
「あのーすみません」
「はいよ、なんだい?」
陽気な声で返事してくる、おばさん。
「身分証明書発行お願いできますか?」
「あいよ!んじゃそこに手を置いて!」
おばさんが示すそこには四本の爪に掴まれた真珠があった。
(すげえ……魔具っぽいな)
そんなことを思いながら言われたとおり手を置く。すると真珠が緑色に光りだす。
「これ何してるんですか?」
「ん?これはステータスを読み上げてるのさ」
(ステータス??そんなもんあるのか?)
「心配しなくてもステータスは私には見えてないよ。本人にしか見えないからね」
なるほど一様プライバシーは守られるのか……徹底してるなぁ、安心だ
とか思ってるとこの世界について聞いてみる。
「あの聞きたいことあるんですけど」
「いいけどその前に名前教えてもらえるかい?」
(そう言えば名乗ってなかったな……異世界だと外国方式で家名が後ろにして言った方が違和感ないよな)
「ユウヤ・ウヅキです。すいません、すぐに名乗るべきでしたね」
「いんや……別にいいさ。私はメンナだ」
(なるほどメンナさんか……迷惑かけそうだなこれから)
「んで聞きたいことって言うのは?」
「この世界についてです」
この異世界で生きてく上で最も大事なことを聞いとかねばならない。それがこの世界についてだ、生きるためには得れるだけの情報を得ることだ。
「ほぉ〜訳ありだねぇ……いいさ教えてあげるよ」
メンナさん空気が読めている。俺に聞いても困るだけだと察してくれたのだろう。俺もこんな大人になりたい。
「この世界はね七つの大陸に分かれており、それぞれの大陸に一つのダンジョンがある。ダンジョンは《絶対迷宮》とも呼ばれダンジョンにはギルドでランク〈Ⅴ〉まで上がった者しか行けない。
ダンジョンには魔人族がいるということだけしか分かってないんだよ、それぐらい行ってる人材がいないもしくは帰ってくることがない。こんぐらいかな?あぁ後は『神具』なんて物があるらしい、詳細はよく知らないんだけどね。もう手どけていいよ」
言われたとおり真珠の上から手を離し話の内容を頭の中で再生する。
(ダンジョンか……その前にギルドでランクを上げなきゃならねぇな)
「ほい完成さ」
メンナさんが手の平サイズの一枚のカードを渡してくる。身分証明書だ。それを受け取り頭を下げる。
「ステータス確認は二回タッチすれば見れるから。後これ、登録初めてっぽいから」
そう言い俺の前に布の巾着を差し出してくる。それを持ち中身を除く。中には金色のコインが大量に入ってた。
「何ですか?見た感じお金っぽいですけど」
「その通り身分証明書を初回登録すると援助金が寄付されるの。存分に使ってくれたまえ」
なんて初心者に優しいシステムだ。ありがたく使わせてもらおう。再び頭を下げそのままギルドを出る。
「援助金で装備なんかも買いたいけど、その前にステータス確認だよな」
俺は期待に胸を膨らませ張り切って二回タッチする。するとゲームでよくあるバナーみたいに表示される。目を凝らし凝視する。
「ヘ………………………………………??!?!」
絶句した。
きっと俺にもチート並みのステータスなんだろうと思っていた。
だが現実は甘くなかった。
ユウヤ・ウヅキ 19歳 男
Lv.0
攻撃:0
防御:0
耐性:0
敏捷:0
魔力:0
魔耐:0
【スキル】
[運で決まる戦闘力]Lv.0
[桁違いの能力量]Lv.0
【特定の条件で解放されます】
[封じ手]
[勝利への切り札]
[0よりも1へ]
[触れた者への影響]
[強者の余裕]
こんなだったのだ。
表示バグってる。
だって
ステータス全部「0」やん…………………………