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冴えないサラリーマンの、冴える手料理  作者: 九十九ユウキ
第二章 歩み出す調理器具
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間食 ぜーんぶ、ぜーんぶ、公認!!

※会話文のみです。


 樹と智里の恋人公認での騒ぎも収まり、そろそろお開きにしようかと言っていた時――。


「――あ、そう言えば、樹さんはどうやって私が居る場所が分かったんですか? 連絡、入れれてなかったのに……。」


「あぁ、それはですね、智里さんのキーファインダーの位置情報をスマホで探して、それを素にこの宿屋を探し出しました。更に電話で連絡を取ってみたら、智里さんのご実家が関わっている「お見合い」会場だと言われまして、エントリーしたんです。締め切り過ぎてたんで、一旦は断られましたけどね。」


「偶々、最終日にエントリーしてた人が諸事情で来れなくなったんで、滑り込みでオーケーしたっしょ。」


「どうしようかと思いましたけどね。何かしら事情を作っておかないと、会社も有給取らせてくれないですし……。」


「成程な。それにしても、片岡さんはネットに詳しいんじゃな。位置情報とか……。俺だって未だ使いこなせてないのに。この現代人め。」


「いやいや、職場の若い子達からレクチャーを受けたんですよ。だって私、メッセージの残し方とかも知りませんし。」


「でもまぁ、智里も悪い子じゃなぁ。連絡位、入れとっても良いものを……。」


「それはそうなんだけど……。だって、新年度に入って樹さんの残業が多くなってたし、やっぱりこういうの、忙しい時に言ったら迷惑かなって……。あと、私もメッセージの入れ方、知らない……。」


「いや、寧ろ「お見合い」って事しか伝え聞いてなかったので、事情が分からなくてモヤモヤして仕事が出来ませんでしたよっ。」


「えぇっ!? わ、私、お隣さんにも大家さんにもちゃんと伝えたんだけどな……。」


「あの大学生の方なら、徹夜明けで頭がしっかり回ってなかったですよ。大家さんは、ビックリし過ぎてよいしょよいしょの所しか覚えてなかったみたいです。「あの優しい智里ちゃんがー……。」って、泣いてました。」


「ひえぇっ!! 帰ったら、ちゃんと謝らないとっ!!」


「あと、この「お見合い」って、なんで犬同伴じゃないと参加出来ない事になってたんですか? 家にはハクが居たからエントリー出来たけど、最初、菅原さんに話を聞いた時、犬種や年齢の事を聞かれてよく分からなくて……。」


「あ、この「お見合い」はね、「犬同士」のお見合いなの。」


「犬同士……?」


「ウチは農場をしている傍ら、動物愛護センターと協力して犬の譲渡会もしているんだ。ウチはスタッフが増えるし、保護犬のしつけとして面倒を見るから害獣の被害も抑えれる。向こうは規格外の野菜や肉を無料で提供してるから経費削減だし、殺処分される犬が減る。ウィンウィンな契約を結んでいるんだ。」


「で今回、初の試みとして譲渡会を「お見合い」形式にして、ご家庭の事とかも伺いつつ、ちゃんと里親として引き受けてくれるかを見てたの。」


「でもそれって、お見合いと関係無いんじゃ……。」


「今回は、「先住犬が居るご家庭」を対象にしてたの。そのお家に居る犬と会わせて、ちゃんと交流が出来るかがポイントだね。」


「まぁ、来てくれた人達、皆自分ちの犬の自慢話ばっかりしてきたから、途中から頭が可笑しくなりそうだったけどな……。」


「確かに……。」


「お、お疲れ様でした……。」


「そういえば、環君の犬ってどんな子だったの?」


「あぁ、超大型犬のセントバーナードだったよ。」


「お、アルプスの少女に出てくるあの犬種か。樽を首につけている。」


「とっても大人しくて、可愛かったよ。」


「あれ? でも室内には居なかったですよね? それに、庭にも……。」


「白内障を患ってるらしくて暗い場所とか段差を怖がるから、障害を持った子用のドッグランで待っててもらってたんです。」


「成程。」


「まぁなんにせよ、今回の「お見合い」で何件か譲渡候補が出ましたし、ウチの宿屋の宣伝にもなったんで有意義でしたわ。」


「来月からの予約、一杯になちゃったんだよね。」


「おぉ、凄いですね。」


「また前田さんの所にはお世話になりますが、宜しくお願いします。」


「お願いしまーすっ。」


「はいよっ。ウチの野菜や牛達も喜ぶってもんだ。」


「うふふ、腕が鳴るわぁ。」


「そう言えば、ちいちゃんは来週東京に戻るんだっけ?」


「うん。荷物は最小限持って行って、新しく住む所探さないと。東京出る時に、アパート解約しちゃったから。」


「えっ!? た、大変じゃないのか……? 都会じゃあ、物件探しは戦場だと……。」


「まぁ、格安物件と好条件物件は諦めるかな。また、あのアパートで住めたら一番良いんだけど……。」


「あ、それなんですけど……。」


「? 鍵……?」


「実は、会社で取引させて頂いてる不動産会社さんからお話を頂きまして……。新築のマンションだそうで、入居者を募集しているそうなんです。良かったら、そこで住みませんか? 一応、許可を頂いて、中の様子も写真に撮ってあります。」


「あ、広くて綺麗……。じゃなくて、え、でも、そんな……。」


「勿論、智里さんの意志を尊重します。」


「……。」


「智里、ご好意に甘えても良いんじゃないか?」


「お父さん……。」


「そうよ。探すのだって一苦労するし、学校も復学するんでしょ?」


「お母さん……。」


「それに、片岡さんだって一緒に住むんでしょ?」


「……へ?」


「いやいや、「へ?」じゃないだろ。結婚前提なら、同棲しても良いじゃないか。」


「いやいやいやいやっ。だって、そんな……っ。」


「……い、今更ではないですか?」


「樹さん?」


「何度も家を行き来してますし、お花見の時とか事故であったとしても、一晩過ごしましたし。」


「あ、あの時は、司さん達も居ましたし……。」


「だとしても、私は智里さんと同棲、したいです……。ダメ……、ですか?」


「っ……!! わっ、私、だって、ど、どどど、同棲し、ししたっ……。あっ、アパートはっ!? 私は解約してしまいましたが、樹さんは住んでますよね!? だったら……!!」


「じ、実はですね、プロポーズすると決めた時に、アパートを解約して、更にマンションの契約をしたんです。大家さんには泣きつかれましたが、理由を伝えたら泣く泣く承諾して下さいました。」


「え……。も、もし、私が断ったら、どうするつもりだったんですか……?」


「一応、そんな事もあるだろうと思って不動産会社と話をしていまして、物件候補をいくつか見繕ってもらっています。まぁ、この鍵の部屋は私一人で小ぢんまり使わせてもらいますかね。後のスペースはハクの遊び場かな。」


「えぇー……。な、なんか、私の知らない所で凄い動いてるー……。と言いますか、折角の広い部屋が泣きますよ。」


「ふふっ。まぁ、これは一つの案でして、もし断られたとしても、私が何かしら理由をつけて智里さんを一緒に住まわすつもりでしたけどね。」


「なっ……!!」


「あら、やだぁ。片岡さんってば、意外と策士で大胆なのね。」


「ねぇ、おじいさん。これは、ひょっとすると……。」


「あぁ、もしかしたら、早くに拝めるかもしれんなぁ。長生きせんとな。」


 先の未来の事まで、公認された二人だった――。






END

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