魔法使いと夏の出会い
ホント・・・。何で気になって行っちゃたんだろうなぁ。ほんの少しの前の俺をぶん殴りたい。
「うわああああ!?!?」
今俺は地面へと落ちていっている。箒から落ちたんじゃなくて箒ごと真っ逆さまにだ。何で落ちたっていうと…
*
「光ってたのってここら辺だよな」
キョロキョロしながら、森の中へと目を凝らす。
「方角的にはこっちで間違いは無い筈なんだけど……」
ただ、今は夕暮れだ。辺りは段々暗くなっていっている。あれが太陽の光を反射していたのなら探すのは難しくなる。
――――――っ
「お!?」
今チラッと光が見えた気がした。いや、そうだ。ぜっったいそうだ!!
見えた方向はやはり間違っていなかったらしい。このまま真っ直ぐ前へ行けばあの光る何かへと辿り着ける。そうと分かれば、俺は迷うことなく箒を見えた方向へと前進させ始めた。はずなんだけど……
・・・・・
箒はうんともすんとも言わない。それにどんどん高度が低くなっていってるし。同時に魔力も腹が減った時のように空いてきているし……
「………?。『魔力が……空いてきている?』」
自分で自分の言葉に違和感を覚えた。自分の胸に意識を集中させて魔力を感じてみる。どんどん少なくなってきている。………これ、もしかして魔力消えていっている?
「嘘だろ!?」
魔力の消失の意味を悟ると、すぐに高度を下げ始めた。
「急げ!急げ!!」
せめてジャンプ着地でも大丈夫なとこまで!!ぐんぐん森へと高度下げていく。だけどまだ全然大丈夫じゃない高度に俺はまだいる。
・・・
「うわ、さっきよりも減ってる!?」
魔力が枯れれば、辛うじて維持できている滞空も出来なくなる。更に急いだけど………どうやらもう、遅かったらしい。
「……あ。」
箒はその浮力を失い。俺は、箒と共に地面へと落ち始めた。
「うわあああああ!?」
*
と、まぁ。こんな感じで今に至る訳なんだけど……
「どうすんだよこれぇぇぇぇ!?」
悲痛な叫びが響き渡った。
もう一度魔力練ってみる!?ダメだ、ここ魔力自体がない!!まだ自分の中の魔力でいけるか!?どっちか欠けたら魔法使えないんだからそもそもが無理だ!!
「駄目じゃねぇか!!」
思わず突っ込んでしまったが、そんな余裕すら存在しないことを思い出した。下を向いてみればぐんぐん森との距離が縮まっている。成す術無し。お手上げな状態だ。
あ、これ死
烏や蛙の鳴き声が、遠く微かに聞こえる。
「────ッッッ。」
起き上がろうとしたら、声にならない苦痛の声がでた。起き上がらない方が良いんだろうなー。暫く横になって痛みが引くのを待つか。
「いっってぇ……。」
これ全身打ちつけたんじゃないか?骨折とかは無いみたいだけど…。
「生きてるのが奇跡だな。」
思わずそんな言葉がでてきた。上を見てみれば木の枝が複数折れていた。あれにぶつかって助かったんだろうな。
────パキッ
「─ッ!?」
茂みの奥で何かが枝を折る音が聞こえた。猛獣?森の中ならどんな奴が居たって不思議じゃない。
「大丈夫?」
「へ?」
音のなった茂みから和服姿の少年が出てきた。てっきり危ない動物だと思って身構えていたからすっとんきょうな声がでた。
それが俺と、そいつの出会いだった。
拙い文ながらここまで読んでくださりありがとうございました。