魔法使いは朝が弱い
「・・・暑い。」
カーテンを閉めながらもその暑さを主張してくる真夏の太陽。
「ほら、ハヤテ。起きなさいってば!」
「んんん……。」
更に俺を追い詰めるように閉められていたカーテンを開けながら起床を促してくる母さん。それによってさらに太陽の暑さが部屋を満たされる。だけど、未だに俺はベッドから出られずにいた。『出られず』というよりは出たくないのだ。まだ、眠っていたい。
「なんで、いつもよりこんな早くに起こすのさ。」
日の昇り具合をみると、夏の季節だからだろう。日の昇りはかなり早い。それにしたっていつもより起こされるがかなり早い。
「昨日の夜『明日は荷物沢山あるから朝早くから宅配しないといけないから、早く起こして』って言ったのハヤテでしょう?」
「……そんなこと言ってたっけ?」
「言ってたわよ」
そんなこと言ってたかなぁ…。ベッドから右手だけを出して近くにあるはずのメモ帳を探し出す。見つけた。そこに書かれている文字は未だ覚め切らぬ目でもハッキリと分かる字で書かれていた。
”今日は宅配日‼(荷物多いから早朝から始動‼)”
しかも、赤文字ででかでかと。大きく、赤文字で、感嘆符までつけて。…………うん。
「何でもっと早く起こしてくれなかったのさ‼」
「起こしわよ!ベッドでモゾモゾしてて起きてこなかったのはハヤテでしょう!?」
「そーですね!」
あの後の展開なんて余裕で予想がつくように現在繰り広げられている。”16歳になってまで何で自分で起きられないのかしらねー。”母さん、そんなこと言わないで。俺だってわかってるけどどうしても起きれないんだよ。
「ほら、さっさと食べないと間に合わないわよ」
「わかってるって」
テーブルに座るとほぼ待たずして母さんの料理が並べていく。今日は焼いたトーストに目玉焼きとベーコンをのせたものだ。時計を見ると、まだいつも宅配を始める時間よりは早い。だけど今日は荷物が多いせいですぐにでも出ないと今日中には終わらないだろう。小遣い稼ぎで始めたこの宅配業。日に日に荷物が増えていっている。いや、嬉しいことなんだけどその分忙しさが半端じゃないんだよね。
*
「ご馳走様でした。」
手を合わせて合掌。さ、手早く今回の配達場所と荷物を再確認しないと。取り扱いを気を付けなければいけない物もあるため慎重に行う。と、荷物の中にブニブニしてて弾力のある丁度手に収まるぐらいの丸い物が。配達先の人物の名前を見るとその中身が何なのかがすぐにわかってしまった。あの人の魔法って生物使うから……あぁ、考えたくもない!
「あ、そうだ、ハヤテ。私からも荷物を頼みたいんだけど。良いかしら?」
と、荷物を整理しているのを見計らって母さんも荷物の配達を願い出てきた。
「えぇー。」
「何よ、そんな嫌な顔して。」
「いや、だって・・・。」
―――荷物、とんでもなく重いじゃないか。
そう言おうとしたが、母さんの顔をみて噤んでしまった。無言かつ笑顔。いや、目が笑っていない。とにかく母さんの威圧に怯んで言えなかった。
「それじゃあ、よろしくね。いつも通り玄関に置いてるからね。」
無言を肯定として受け取った母さんはさっさと戻っていってしまった。玄関を見ると荷物が、ひぃ、ふぃ、みぃ…数えるのを止めたくなるほど多かった。
「それじゃあ、行ってきまーす!」
「気を付けるのよー」
「はーい」
母さんの荷物も纏めた大きめの袋を2つ、愛用しているケヤキでつくった箒につけてバランスを崩さないように力強く空へ飛んだ。今日は日差しがとんでもなく強いせいで飛んでから間もないというのにもう額に汗が出てきている。それでも風が頬を横切り涼しく思える。
「さて、今日も張り切っていきますか!」
自分に言い聞かせるように。風の流れに乗りながら更に強く空を飛び抜けた。
拙い文ながらここまで読んでくださりありがとうございました