二日目終了
「よっしゃー! ようやく深夜の見回りタイムっすね! 絶対幽霊を見つけましょうね!」
「赤間君少し落ち着きなさい。というか君さっきまで一人で旅館の中うろうろしてたよね」
興奮した様子で顔を輝かせている赤間を、呆れた様子で谷本が見つめる。
とはいえ、テンションが高いのは赤間だけの話ではない。柊もワクワクとした表情を隠そうともせず、その場で(なぜか)準備運動をしていた。
「昨日はだいぶ酔っぱらった状態で見回っちゃったからねぇ。今日は完全素面状態! やっぱ素面じゃないと怖さが半減するからね」
そう意気込む先輩と後輩を連れて、北城たちは深夜十二時の旅館内の探索を始めた。
途中、ちょっとした物音がするたびに赤間が足を止めて騒ぎ立てたりはしたものの、結局前日と同じく幽霊は発見できずに部屋へと戻ることになった。
部屋に戻りつくと、赤間がガックシと顔をうなだれさせながらぼやいた。
「はぁー、幽霊全然現れないっすね。やっぱあれっすかね、見たい人の前には現れてくれないものなんすかね。幽子先輩の幽霊センサーが反応してるし期待してたんすけど」
「なんかごめんね赤間君。変な期待持たせちゃって」
律儀にも幽子が赤間に対して謝罪する。まさか謝られるとは思っていなかった赤間がおろおろしていると、追い打ちをかけるようににやけ顔で柊が口を挟んだ。
「ちょっとー、幽子ちゃんに謝罪させるなんて、赤間君気遣いが足りてないよ。幽子ちゃんの幽霊センサーは私たちが勝手に当てにしてるだけなんだから」
あわわと慌てながら幽子にぺこぺこと頭を下げ始める赤間。一層恐縮した様子で困り顔になる幽子の顔を堪能した後、柊が幽子に頼んだ。
「ねぇ幽子ちゃん、私喉乾いちゃった。悪いんだけどそこのお茶入れてくれない」
「あっ、はい。皆さんも飲みますか?」
「うん、せっかくだからもらおうかな」
谷本が頷いたので、その流れから全員がお茶を飲むことに。
お茶を飲み干して一息つくと、急に眠気がやってきたのか、瞼が重くなってきた。北城以外のメンバーも同じらしく、皆一様にうとうとした様子になっている。
眠ってしまう前に、昨日同様ビデオカメラを設置しようと、全員でビデオカメラをセットしにいく。設置終了後、それぞれ自分の布団に入ると、あっという間に意識は闇の中に埋もれていった。