オカルト研の宝
数十分に及ぶ探索の結果、結局、幽霊の姿は見ることができず、部屋へ戻ることになった。
「ちょっと私トイレ行ってくるね」
部屋に戻ってくると同時に、柊はそう言ってトイレへと向かった。
残った男三人は、寝る準備を始めつつ、もう一つ、幽霊観測用の仕掛けに取り掛かっていた。
「谷本部長。いつものアレ、ちゃんと持ってきましたか?」
「もちろん。これは我がオカルト研の宝だからね」
そう言って、谷本は古びたビデオカメラを取り出した。今ではほとんど見ることもなくなった、カセットテープ式のビデオカメラだ。
このビデオカメラは、かつて本物の霊を撮影したとして、オカルト研に代々伝わっているものである。その所有権はオカルト研の部長に受け継がれ、夏合宿と冬合宿の際には必ずこれをもって心霊動画等の撮影に臨むのが恒例となっている。
また、このビデオカメラ、古いものではあるものの、バッテリー式ではなく充電式で、継続六時間ほど撮影が可能。かつ、これまた継続六時間働けるライトを搭載した、中々優れた逸品でもある。当然カセットテープも六時間録画可能な高級品である。
このビデオカメラをどこに仕掛けるかを三人で話し合っていると、柊がトイレから帰ってきた。
「どうどう、今何してる感じですか~」
「ビデオカメラの設置場所を話し合っているところだよ。いつものこれを除くと、暗視カメラは二つしかないからね。どこに設置したらいいか……」
悩ましげな声を上げる谷本に対し、お気楽そうな声で柊が言った。
「この部屋の前の廊下に、オカルト研至宝のビデオカメラを設置してれば、それでいいんじゃない~」
「いや、さすがにそれは」
「俺も柊の意見に賛成だな」
谷本の言葉を遮り、白瀬が柊の言葉に賛同する。
「カメラを多く仕掛けたらいいというものでもあるまい。現に今までの合宿でも、カメラをたくさん仕掛けたからといって幽霊が映ったことは一度もなかった。ここは一番可能性の高いカメラを一台、自分たちの身近な場所に置いておくのが吉だろう」
「……まあ二人がそれでいいなら、僕にも異論はないけど。北城君もそれでいいかな?」
「はい。こういうのって、やっぱり映るときは準備してなくても映るし、映らないときはどんなに準備していても映らないものだと思いますから」
「分かった。じゃあこのカメラをそこの廊下に仕掛けたら僕たちも寝るとしようか」
谷本の指示のもと、ビデオカメラを部屋の前の廊下に仕掛ける。ビデオカメラの撮影範囲には、部屋の出入り口も入っているため、誰かがトイレにでも起きたら、その光景がばっちりと映るような配置になっていた。
カメラの仕掛けを終えた四人はそれぞれ布団を敷き、電気を消すと、すぐさま眠りに落ちていった。