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遥か彼方のパトリア ~西方航海録~  作者: 備後来々
第2章 東南アジア
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ep.21 人身売買

 金髪碧眼で左腕がない。夫婦から聞いたコエーリョの特徴だ。カイリ達は交易所を目指して急いでいる。これ迄に仕入れた情報から、一つの可能性が浮かんだからだ。


 まず、コエーリョは宿屋に泊まっていることから、ホイアンの外から来た人間だと分かる。西欧人だし、その可能性はかなり高い。次に、チャム人の娘を安値で買ったことから、その娘を自分の所有物にするか、もしくはさらに高値で売るかが推察できる。


 所有するのなら、しばらくすれば宿屋に二人で帰って来るだろうから心配はない。少なくともそこで、あの両親は交渉出来るはずだ。


 問題は、さらに高値で売る場合だ。所有しないのならすぐにでもお金に変えてしまった方が良い。普通はそう考えるだろう。もし、そうなってしまっていたら、探しだすのがかなり難しくなる。カイリはアルメイダから、奴隷商人の存在を教えて貰ったことがある。彼らは、本国で売り捌くための奴隷を世界各地で集めているらしい。まずは、交易所の商人からホイアンにも奴隷商人がいるのかどうか確認しなければならない。


「ああ。いるよ」


 交易所の商人は当然のように答える。カイリは場所を教えて貰い、ツァンと共に駆け出した。奴隷商人の名前はダリオ・アルボルノスというらしい。アルボルノス商会は本拠地マニラをはじめ、ホイアンやフエ、マラッカなどで現地人を拐っては奴隷として本国スペインへ送っているそうだ。他の交易品も扱ってはいるが、メインは奴隷らしい。


「アニキ、娘が売られてたらどうするんですか?」


 カイリの推察を聞いたツァンが訊ねる。

どうするか。カイリは買い取るしかないかなと思っている。そのことをツァンに伝えると、なんでそこまで肩入れするのか分からないと返された。確かに、そう言われるとそうなのだが。


 カイリ自身にも分からない。しかし、見て見ぬふりをするのが嫌だという思いはある。自分が助けられる人は助ける。カイリには一つの信念があった。かつて幼い頃の自分が受けたように、人を助ける力を持っている者は、その力を使える時に使うべきだ。


 暫くして、二人はホイアンのアルボルノス商会へたどり着いた。木造三階建ての大きな建物である。外壁の装飾は豪華絢爛といっていい。入口で待機している門番に取り次ぎを頼む。少し待たされた後、カイト達は中に通された。案内された応接室で待機していると、部屋のドアが開けられた。西欧人の男がゆっくりと入ってくる。


「ようこそいらっしゃいませ。アルボルノス商会のギゼと申します。本日はどのような品をお望みで?」


 中年の恰幅がいい男だ。背丈はカイリよりも低い。顔は笑っているが目は笑っていない。まだガキじゃないか、と値踏みされているようにも感じる。カイリが口を開く。


「初めまして。カイリ・ホアシと申します。突然ですみませんが、今日コエーリョと名乗る左腕のない男からチャム人の娘を購入されましたか?」

「左腕が……。ああ、はいはい。仕入れましたよ」


 ギゼが軽く答える。それを聞いて頭を掻くツァン。どうやら悪い方の予感が的中したようだ。


お読みいただきましてありがとうございました。

明日もよろしくお願いします。

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