ep.18 給金
マカオの交易所に仕入れた商品を下ろす。交易商人は満足そうに並べられた商品を眺めている。
「大丈夫だ、またお願いするよ」
「ありがとう」
予想以上の金貨を手渡される。マニラで仕入れた交易品は、どれも高値で売れたが特に高価だったのが蜜蝋だ。今、飛ぶように売れているらしい。
「カイリ、ごっ褒美ごっ褒美」
「わかったわかった。こら、引っ張るな」
上機嫌のクロエが鼻を鳴らしながらカイリの手を引っ張る。エルネストはいつも通り船に待機。ツァンは、夜まで船にいるよう命じている。おそらくマカオでツァンが捕らえられることはないだろうが、念には念を押す。
ツァンは、目立つ。まず背が高い。カイリは日本人にしては背が高い方だが、それよりも15センチは上背がある。なのに体は細い。簡単に言えばヒョロ長い。凄く特徴のある体型をしている。
「ここ、ここが良い」
「分かったから、引っ張るな」
装飾品などが絨毯に並べられた露店の前でクロエが立ち止まる。まぁ、予想以上の収入だったし、少しくらいなら買っても良いだろう。品物を物色するクロエを見ながらカイリは微笑ましい気持ちになる。なんだかんだ言っても女の子なんだな。露店の店主は、一つ一つクロエに品物を説明している。
「ん」
クロエが銀の装飾が施されたブレスレットをカイリの顔の前に差し出す。なぜか二つ。店主に値段を確認して、銀貨を数枚手渡した。
「ありがとう。こっちはカイリの分だよ」
「え?俺もつけるのか?」
「うん」
満面の笑顔。そんな顔されたら断れないな。カイリは苦笑しながらブレスレットを左手にはめた。クロエはそれを見て、ブレスレットを右手にはめる。そして、カイリの手をとった。
「おそろい」
はいはい、とカイリは観念する。まぁ、好意を持たれるのは悪くない。これから先もクロエがカイリにとって重要なパートナーなのは変わらないからだ。嫌われるよりは良いと思う。
二人は船に戻ると、ツァンが首を長くして待っていた。エルネストは船の点検をしていて相手にならず暇だったらしい。お前も手伝えよ、とカイリがツッコむとツァンは小さくなった。エルネストを呼んで来るように言うと、急いで部屋を飛び出ていく。なんとも従順なヤツだ。
「金貨2枚。まだ少ないけど、これは給金だから自由に使ってくれ」
「ありがとうございます。船長」
「お前はまだ何の役にも立っていないから、とりあえず銀貨5枚。これからの働きを見て給金をあげるかどうか判断する」
「分かった。ありがとう、アニキ」
船の一室を改造した会議室で、エルネストとツァンに給金を渡す。カイリは一ヶ月に一回、彼らに給金を渡すことにした。仲間といっても、彼らにも自由に使えるお金は必要だ。クロエにも渡そうとしたが、拒まれた。必要な時に必要な額を言うからいいという理由で。まぁ、本人がそういうなら良いかとカイリも納得する。
一通り給金の話を終え、次の予定を打合せする。今回はマカオで仕入れた生糸と陶磁器を仕入れた。マニラに行けば利益を稼げるだろう。そこまでカイリが話した後、エルネストが一つ提案をした。
「カピタン、次はファイフォに行ってみませんか?」
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