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8話

誤字脱字等ありましたらよろしくお願いします。

 時刻は午後6時半過ぎ。俺は街までりんご飴を送って別れたあと、雷さんの店に来ていた。エリート山オオカミの素材で防具を作ってもらうためだ。


「雷さーん、集めてきましたよー」

「おう、キントウか。どのくらい集めた?」

「結構集めてきましたよ。多分足りると思います」


そういってトレード画面に先ほど狩ってきたエリート山オオカミの素材をすべて乗せる。全部は使わないだろうから余ったらω姐さんの所にでも売りにいこう。


「どれどれ……おっ! 尻尾が多いな、レアドロップなのによく集めてきたな。これなら相当良いやつが作れそうだぞ」

「本当ですか!? それなら良かったです」

「それじゃ、二時間ほどかかると思うから出来たらコールするからそれまでどっかで時間潰しておけ」

「わかりました。あの、代金は今払いますか?」

「そんなの後でいいからさっさと行け。集中できん」


 使わない素材を返してもらって俺はその場をあとにした。その時になぜ雷さんはマーケットに店を出さないでこんな西口の近くなんかにいるのか聞いてみたところ自慢げに教えてくれた。


「そりゃ、俺は『隠れた名店』を目指してるからな。あんなテンプレな所にいちゃ、つまらないだろ? 実際、俺のお得意さんの中には攻略組の奴も何人かいるぞ」


変な人だなぁ……


△ ▲ △ ▲


 雷さんに防具製作を依頼した後、俺はω姐さんの店に来ていた。余った素材を売る為と、雑談というか情報収集の為だ。

 道具屋でポーションが売ってなかった理由を知っているかもしれないかと思ったからだ。


「ω姐さん、こんにちはー」

「ん? ああ、キントウか。どうしたの、雷んとこで装備作ってるんじゃないの?」

「今素材渡して作って貰ってるところです。あと二時間くらいかかるらしくて、暇だったんで余った素材の買い取りと雑談でもしようかと思って。もしかして今忙しいですか?」

「いや、全然ヒマ。暇すぎて適当に掲示板眺めてるくらいヒマだったよ。それで、素材は何があるのかな?」


 声をかけた時一瞬反応が遅かったのは掲示板を見てたからか。ゲームの中からでも見られるのは知らなかった。

 雷さんの時と同じように余ったエリート山オオカミの素材をすべて乗せる。

 さっき防具製作の為に使ってしまったので少なめだがそれなりの値がつくだろう。レアドロップもあるし。


「あのね、昨日よりオオカミの素材の値段が下がってるから、昨日より安く買い取っちゃうけどいいかな?」

「構いませんよ、それでお願いします」

「ごめんね〜じゃあはい、買い取り価格5000エンね」

「ありがとうございます」


△ ▲ △ ▲


 トレード画面に乗せられたエンを回収した俺はこの前から聞きたかったことを聞いてみる。


「そういえば、素材集めに行く前に道具屋に寄ったんですけど、ポーション系売ってなかったんですよね、もしかしてポーション専門店とかあったりして? ω姐さんは何か知ってますか?」

「ああそれね、キントウは知らなかったんだ。ここ最近、ポーション系の買い占めと転売が流行ってるんだよ」

「買い占めと転売?」

「キミ本当に知らないんだ……掲示板とかこまめに見といた方がいいよ。いろいろ載ってるから。それで買い占めなんだけどね、どっかのプレイヤーか誰かが毎日道具屋の仕入れと同時に全部買い漁っていくらしいよ。しかも、それを馬鹿みたいな値段で転売してるんだって。でもみんなポーションが無いと回復できないから渋々買うんだけど、第二陣とかあまりお金持ってない人たちは手が出せなくて困ってるんだ」


 ω姐さんによると、このゲームの店では店に在庫があるらしく、在庫が尽きると売り切れ状態になってしまうらしい。次の日には再入荷されているがそれも誰かにすべて買い占められてしまうんだそうだ。

 今現在、攻略は第二の街のボスまで見つかっていて、近々ボス討伐のパーティが組まれるとのこと。

 俺が今いる第一の街と解放されている第二の街もポーションの買い占めが行われているため、ポーションの値段が馬鹿みたいに釣り上がってるんだと。 

 道具屋で買えば一個100エンのポーションが今では一個500エンくらいで取引されている。HPは魔法があるからまだマシだが。MP回復はすべてMPポーション頼みだろうからな。魔法職は大変だろう。運営は止めないのか。


「でも治癒魔法がありますよね?」

「確かに魔法職の中に【治癒魔法使い】はいるけど、もともとあまり人気じゃなかったんだ。攻撃魔法が皆無だし、ソロじゃまったくプレイできないからね。しかもMPの燃費が馬鹿みたいに悪いんだよ。最初のうちは3、4回治癒魔法使っただけでMPが空になっちゃうから。レベルと熟練度が上がれば多少は使えるようになるんだけど……一緒にプレイしてくれる仲間と根気が必要なジョブだね。まぁ、この買い占めが起きてからは少しずつではあるけど人数は増えてきてるよ」

「そういや、さっき山で治癒魔法使いに会いましたけど、大変そうでしたよ。それなら生産職はどうですか? 【調薬】のスキル持ちがいるでしょ?」

「調薬ぅ? そんなスキル持ちがいたら今頃ポーション長者だよ。そんなスキルあるの?」


え、そうなの?てっきりメジャーなジョブだと思ってたんだが。マリオすげーじゃん! ポーション長者だって。あいつ気づいてるのかな? 多分というか絶対気づいてないだろうな……あとで教えてやろ。


「いや、俺のリア友がその【調薬】のスキル持ってるんですけど…」

「まっさか〜嘘でしょ? そんな人いるわけないって!βの時もいなかったんだよ?キントウ嘘ヘタだね〜」

「本当ですって! なんなら今からそいつ呼びましょうか?」

「いいよ〜いるならね〜」


 全然信じてないな……いいだろう目にもの見せてくれるわ!

 フレンドリストからマリオにコールする。


『ん、キントウ? どったん?』

「お前今どこにいる?」

『え〜、草原で薬草集めてるけど、何かあった?』

「お前に会いたいっていう人がいてな、悪いけど今から来れるか?」

『おっけーすぐ行くから待ってて』

「なら、マーケットに着いたらまた連絡くれ。迎えにいくから」

『はいはーい、じゃ後で』


 マリオとの会話が済むと、ω姐さんの方を向く。

 早く来ないかな〜姐さんの驚く顔が見てみたい。


「ちなみに【調合】じゃポーションは作れないからね。これは確認済みだよ」

「ふっふっふっ、ホンモノですって。楽しみにしていてくださいよ」

△ ▲ △ ▲


 しばらくしてマリオからマーケットに着いたとコールが来たので迎えに行きω姐さんの店まで連れてくる。さぁ、感動の対面だ! どんな反応するかな〜。


「それで、私に会いたい人って誰?」

「あそこにいる人だよ」

「あの、口がωになってる人?」

「そうそう、その人」


 俺がマリオを連れて再びω姐さんの店に戻ってくると、姐さんの方から話し始めた。先制攻撃か。


「はじめまして、私は《オメガ》っていう防具屋よ。よろしくね【調薬】のスキル持ちさん?」

「マリオです。調薬でポーション作ってます……ってなんでこの人知ってんのよ!?」

「ごめん、俺が教えた。なんかお前のジョブが珍しいらしくてな、確認の為にってことで」

「そうなのよ、今の所【調薬】なんてスキル、βの時も聞いたことが無かったから」

「そういうことでしたか、で私は何をすれば……?」

「とりあえず、初級ポーション作ってみてくれる? この場で」

「……まぁいいですけど」


 そういってマリオは何やらウィンドウを開いて操作しはじめた。と、思ったらすぐマリオの手元で何かがピカッと光ってマリオの手には透明な液体の入った試験管のようなものが握られていた。

 ポーションって透明なんだな、緑色かと思った。


「はい、初級ポーションできたっと」

「嘘……本当にポーションが作れるなんて……」


 絶句するω姐さんから初級ポーションを受け取って、ポーションを指でタッチすると詳細が書かれたウィンドウが表示された。


【初級ポーション】

初心者プレイヤーのHPを大幅に回復させるポーション。プレイヤーのレベルが10を越えると、効果が大幅に落ちる。


 しばらく驚きのあまり口をいつものωからポカーンと丸く開いていたω姐さんだが気を取り直したかと思うと、いきなりマリオにこんなことを提案してきた。


「マリオちゃん、まず貴方は露天用のマットを買いなさい。3万で買えるから。そうしたらポーションをひたすら売り続けるの。そうすれば貴方は5日……いえ、3日で大金持ちよ」

「どういうことですか?」


 ω姐さんからポーションの買い占めと回復手段の少なさを聞いたマリオは少し考えてから……


「あ、でもそういうことが嫌なら無理してしなくてもいいわよ? マリオちゃんの気持ち次第だし」

「いえ、やってみます!」

「今作れるのは初級ポーションだけ?」

「あと普通のポーションも作れます」

「なら両方作るといいわ。今確認されている中で、一番効果が高いポーションはグリーンポーションだけど、モンスターのレアドロップでまったく出回ってないから攻略組も基本普通のポーションを使ってるから」

「でも私3万もお金持ってないですよ」

「なら私が一個余分に持ってるから半額で売ってあげるわ。それに貴方の店のことも掲示板に載せておいて上げる」

「ありがとうございます。それくらいなら用意出来そうです」

「おいマリオ、本当にいいのか? 話を聞く限り相当大変だぞ?」

「大丈夫、頑張るから。それにポーションが無くて困っている人の手助けしたいから」

「そこまで言うなら止めないけど、それにω姐さんはいいんですか?これじゃあ姐さんにはメリットが無いじゃないですか」

「いいのいいの。私も今の状況をどうにかしたいと思ってたし、攻略が進まないと私たち生産職もレベル上げが出来ないのよ。だから結果的には私も得するの」

「じゃあ、私は今から採取してポーション量産してくるね! それと、何処で商売しようか?マーケットじゃ目立ちすぎて嫌なんだけど……」

「雷んとこの近くでいいんじゃない。事情を説明すれば面倒くらいは見てくれるでしょ」

「そうですね、あとで防具を受け取りに行く時にお願いしてみます」

「私からも連絡しとくね」


 ポーションの素材を採取するためにマリオと別れ、ω姐さんは掲示板での宣伝をする為の作業に入ってしまったので、一人で町中をブラブラしてたらいつの間にか二時間経っていたので雷さんの店に向かう。

 早く装備を見てみたいな。雷さんは軽装備職人だけど、軽装備ってどんなのがあるんだろう? 皮の鎧とかか、普通の服みたいなのも作れるんだろうか。

ポーション買い占めの話は無茶だったかなぁ…


改稿しました

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