7話
誤字、脱字等ありましたらよろしくお願いします。
さて、昨日ぶりでございます、東の山の山道。相変わらず薄暗くて岩ばっかだな。
じゃあ、防具作るのとレベル上げのためにエリート山オオカミを狩りまくりますか。昨日からオオカミをずっと狩っていたので行動パターンはほぼ頭に入ってるし、点棒を投げてから再び装備するまでの動きも無駄が無くなってきた。
もうここなら一人でも余裕だろう。点棒も補充したし準備は万端だ。ただ一つ不安なのはポーションが買えなかったことくらいか? 道具屋に売ってなかったので買わなかったんだが、もしかして街のどこかにポーション専門店みたいなのがあるのかもしれないし。あとでω姐さんか雷さんに聞いてみよう。
「とりあえずレベルを10まであげるとしますか」
△ ▲ △ ▲
二時間後、そこには地面に座り込んで休憩している俺が居た。
「はぁはぁ、これだけ狩れば素材も足りるだろ…あー!疲れた!」
二時間休まずにずっと狩り続けていたからな。あっちで狩ったら今度は向こうのオオカミを狩ってまたあっちでリポップしたオオカミを狩って……とかいう最早作業プレイ状態だったもんな。何匹狩ったかすら覚えてない。
おかげで相当な量のオオカミの素材が集まったし、レベルも12まで上がった。
その場で休んでいると遠くの方から突然、悲鳴が聞こえてきた
「きゃーっ! なんでよっ!」
どうした? なんかあったのか? 俺は休憩もそこそこに疲れていた体に鞭打って悲鳴の方に駆けていった。
△ ▲ △ ▲
駆けつけた先には8匹のエリート山オオカミに囲まれている少女がいた。杖を持っているのでおそらく魔法職だろう。MPでも切れて囲まれたのだろうか? 魔法職はMP切れたらただのお荷物だもんな。
ていうかなんで魔法職が初心者用フィールドにソロで居るんだ?
それより先に助けないと。
「おーい、助けは必要かー?」
「見てわかんないの!? 必要に決まってるじゃない!」
他のプレイヤーが戦っているところに横から攻撃を加える『横殴り』という行為はマナー違反とされている為に一応の了解を取っておこうと聞いただけなのになんだよ あの態度。ムカついたし、もう放っておいて帰ろっかな〜。
助けようか悩んでると少女が若干涙目になりながら叫んでいた。
「本当にお願いだから助けて! わたし犬科は苦手なの!」
「じゃあ、来るなよ……仕方ないなあんまり動くなよ?」
そう言って俺はオオカミの群れに向かって走っていく。その距離約10m。この間に両手の点棒を一匹につき三本投げつけ、二匹倒す。
この時点で群れとの距離約3m。俺がオオカミを倒したことによって他のオオカミたちのターゲットが俺に移った。その瞬間を見計らって俺はイベントリから出したMPポーションを少女に向かって投げつける。
Strにはステータスを振って無いが、この距離なら無事届くようだ。MPポーションが少女の体にぶつかり、MPを回復させる。
「俺が引きつけるから魔法でこいつら倒せ!」
「わ、私治癒魔法使いだから無理!」
「はぁ!? 嘘だろ?」
「えへっ、ごめんね?」
いや、謝れても困るんですけど。疲れてるっていうのにあと6匹のオオカミを倒せと? いいだろうやってやろうじゃないか。
「さっさと来やがれ! 犬っコロども!」
「頑張って〜」
「お前は俺のHP回復させてろ!」
「りょうかーい」
△ ▲ △ ▲
オオカミの群れとの戦闘が始まってから20分後、そこには死んだように地面にうつ伏せで倒れている俺とのんびりと休憩を取っている少女が居た。
今回はマジで死ぬかと思った。さっきは『もうここは一人でも余裕だぜっ』とか調子乗ってました、スイマセン……
「いやー、本当にアリガトね。おかげで助かったよ」
「て、手前ェ……」
首だけ動かして少女の方を見る。パッと見、身長が150㎝ほどしか無い。童顔に金髪に茶色が混ざったような色の髪と黒い瞳。全体的に幼いイメージを受けるこの少女はまさに『少女』としかいいようが無かった。
そ れはさておき、なぜ魔法職のしかも治癒魔法使いがソロでこんなところにいるんだ。
「なんであんたソロでここにいるんだよ?」
「あなただってソロじゃない?」
「俺は魔法使わないからいいんだよ、しかもあんたは治癒魔法使いじゃないか」
「失礼ね、治癒魔法にも攻撃魔法はあります!」
「へ〜、でもどうせ威力低くて連発してたらMP切れるのに気づかなかったんだろ?」
「ぐっ、それは……」
ほら図星だった。だいたいこのゲームパーティ組ませる為にこんなに職業細かくしてるらしいんだからソロでくるのがおかしいんだよな、俺を含めて。
まだ最初のフィールドだからってなめてたか。
「だいたい、山オオカミは戦闘が長引くと仲間を呼び寄せること知らなかったのか?」
「そのくらい知ってたわよ! でも途中でMP切れて杖で殴るしかなかったのよ」
「そうか。じゃあ俺は行くからお前も街に戻れよ」
と、手持ちのMPポーションを数個手渡して去ろうとすると後ろから呼び止められた。なんだよ、さっさと防具作りたいんだけどな。
「あ、あのっ名前教えて貰ってもいい? あとお礼がしたいんだけど…」
「俺の名前はキントウ。頭の上あたりに出てるだろ、『りんご飴』さん?」
名乗っても無いのにいきなり自分の名前を呼ばれた少女は俺に言われた通り俺の頭上あたりを眺めて、「あっ」と呟いた。
今まで知らなかったのか。
「それじゃあ、キントウ。お礼がしたいんだけど…」
「結構です」
「そう言わずにさ、うちの家訓なのよ『借りは出来るだけ早く返せ』って」
「残念だったな、俺の家の家訓は、『君子危うきに近寄らず』だ」
「なによ? 私が危ないっていうの?」
「実際に危なかったじゃねえか、MP切れた魔法使いなんてただのお荷物だろ?」
「今度は大丈夫だから、ね?」
「ね? じゃねえよ!」
ああもう、埒が明かない。これじゃいたちごっこだ、さっさと帰りたいのに〜
「仕方ない、今日の夜にここのボスに挑むからその時手伝ってくれ。それでいいな?」
「わかったわ、私に任せなさい」
しぶしぶりんご飴とフレンド登録をしてやっとの思い出街に帰ってきた俺であった……
ちなみに彼女は俺と同い年らしい。
「お前中学生?」
「中学生って言うな! 私は高一よっ!」
「まさか同学年かよ……」
改稿しました